心肺機能は赤血球が多いほど高い?血液検査の濃さと酸素を運ぶ総量を分ける

心肺機能と赤血球の関係は、血液検査の濃度だけでは読み切れない。全身の総ヘモグロビン量、血漿量、最大酸素摂取量を区別し、競技者の相関研究や献血後の試験、高地での研究を比較する。健診の数字を体力の点数に置き換えず、自分の記録と向き合うための見方を紹介する。

健診の結果を机に広げ、赤血球の欄に指を置く。「この数字が高い人ほど、長く走れるのだろうか」。検査票は細かいが、そこに持久力の順位までは印刷されていない。

答えの芯は、全身にある量と、採った血液の濃さを分けることだ。代表レベルのホッケー選手を調べた研究では、総ヘモグロビン量は最大酸素摂取量と相関したが、ヘモグロビン濃度やヘマトクリットは相関しなかった。対象はドイツ代表の男女であり、この相関を18〜39歳の一般女性の体力判定へそのまま当てはめることはできない。[4]

赤血球の入れ替わりと細胞の年齢は、既存記事「運動習慣で赤血球の入れ替わりも変わる?体力の向上と細胞の年齢を分けて読む」に譲る。ここで考えるのは、血液検査の数字から、酸素を運べる全身の量や実際の運動能力をどこまで読めるかである。

採血直前の汗や飲水の影響は、既存記事「ホットヨガ後の血液検査は汗で濃く見える?血球と水分の変化を読み分ける」に譲る。こちらでは、採血の準備よりも、血液の測定値と持久力の関係を中心に読む。

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血液検査の濃度と、全身にある量は別の問いだ

ヘモグロビンは、血液の酸素運搬に関わる成分である。その「濃度」と「総量」は名前が似ているが、研究では分けて測られる。ホッケー選手の研究でも、静脈血のヘモグロビン濃度を調べる検査とは別に、専用の再呼吸法で総ヘモグロビン量を測っている。同じ欄を違う単位で表示しただけ、という関係ではない。[4]

濃度が答えるのは、一定の血液の中にどれだけあるかという問いだ。総量が答えるのは、体内を循環する血液全体にどれだけあるかという問いである。液体成分である血漿の量も一緒に考える必要がある。血液量を測る方法を整理したレビューでは、糖尿病性腎臓病患者の血液量評価を扱い、総ヘモグロビン量から赤血球と血漿の容積を推定する方法が説明されている。患者の薬剤への反応を18〜39歳の健康な女性へそのまま当てはめることはできず、ここでは測定法の区別を参照する。[19]

ヘマトクリットは、血液中で赤血球が占める容積の割合を表す。割合なので、赤血球側の変化と血漿側の変化を区別するには、それぞれの量を見る必要がある。血液量の測定を扱ったレビューが赤血球容積と血漿量を別々に取り上げるのも、濃さの変化だけで全体の増減を決められないためである。[19]

たとえば、同じ濃さの飲み物でも、小さなカップと大きなポットでは、中にある成分の総量が違う。血液を飲み物と同一視はできないが、「濃さだけでは全体量が決まらない」という算数は共通する。検査票の濃度が同じだから全身のヘモグロビン量も同じ、と読み替えないことが出発点だ。[4][19]

研究で用いる再呼吸法は、総量を測るための専門的な検査である。ホッケー選手の研究では一酸化炭素を利用した最適化された方法が使われた。家庭で呼吸を工夫して確かめる課題ではなく、研究で何を測ったのかを理解するための情報として受け止めたい。[4][19]

この違いを知ると、健診の値を無視する必要も、体力の点数に変換する必要もなくなる。濃度は濃度として医師に判断してもらい、運動能力は運動能力として捉える。総量を調べた研究の結論を、自分の検査票の濃度の欄へ直接当てはめない、という使い分けである。[4]

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代表選手では総量と持久力が結び付いた

ホッケーの研究対象は、ドイツ代表の女性17人と男性17人である。平均年齢は女性が24.8歳、男性が24.2歳だった。若い成人が対象という点では読者に近くても、国際大会で競う選手という運動歴は大きく異なる。18〜39歳の一般女性への適用には、競技歴と運動水準の違いが限界となる。女性の参加者も代表選手であり、年齢が近いだけで一般女性の持久力の基準にはできない。[4]

体重当たりの総ヘモグロビン量は、女性が平均10.6 g/kg、男性が12.5 g/kgだった。最大酸素摂取量は、女性が46.6 mL/min/kg、男性が55.8 mL/min/kgである。最大酸素摂取量とは、強い運動時に取り込める酸素量の最大値を捉える指標で、この研究では走行台の検査で求めた。[4]

総ヘモグロビン量と最大酸素摂取量の相関係数は、女性で0.56、男性で0.57だった。相関係数は、測った値同士がどの程度一緒に高く、または低くなるかを表す。男女それぞれの集団内で関連があったことは、単に男女の平均の差を並べた話とは区別して読む価値がある。[4]

対して、ヘモグロビン濃度とヘマトクリットには、その関連が認められなかった。ここで否定されたのは、この選手集団で「濃度や割合を見れば持久力も同じように分かる」という読み方である。血液検査としての価値が否定されたわけでも、すべての人で濃度が無関係だと証明されたわけでもない。[4]

また、相関は運動処方ではない。この研究は、選手の総量と運動能力を測って比べたもので、総量だけを増やす介入で各人の体力がどれほど伸びるかを検証したものではない。集団の中で関連する指標が見つかっても、その値を自分の目標に設定する段階までは進めない。[4]

同じ研究で調べた鉄の状態の指標は、総ヘモグロビン量や最大酸素摂取量と関連しなかった。この結果を「鉄は誰にも関係ない」と広げるのも誤りだ。対象は調査された代表選手であり、鉄の不足がある一般の女性への補給効果を試した研究ではない。鉄を足すべきかという問いと、血液の総量をどう読むかという問いは、ここで分けておこう。[4]

濃度の上昇と、赤血球の増加を分ける

濃度と総量のずれは、特殊な環境の研究でよく見える。男性を対象に、頭を下げた姿勢で16日間過ごす群6人と、通常の重力環境で過ごす群7人を比較した実験がある。男性の特殊な安静実験なので、18〜39歳の女性の日常生活での変化量へは直接当てはめられない。血漿と赤血球の変化を分けて考える材料になる。[8]

頭を下げて過ごした群では血漿量が15%減り、ヘモグロビン濃度が6%上がった。一方、算出された赤血球容積は12%減ったものの、この減少は統計的に有意ではなかった。つまり、濃度が上がったという確かな変化と、赤血球の量が増えたという説明とは一致しない。血漿の減少を伴っていた点が重要である。[8]

ここは、研究の結果を強く言い直さない注意も必要だ。「赤血球容積が確実に12%減った」とは書けない。有意ではなかったという結果まで含めて読む。それでも、濃度の上昇だけを根拠に赤血球の増加を宣言できない、という論点は残る。[8]

また、この実験は頭を下げた長期の安静条件で行われた。仕事帰りの運動や暑い日の採血とは、姿勢も活動も異なる。日常へ持ち帰るのは割合の予測ではなく、「濃度が動いた時には、液体側も動いていないか」という見方だ。研究条件を外して数字だけ借りると、かえって検査票が読みにくくなる。[8]

血液量の測定法のレビューでも、赤血球容積と血漿量を分けて評価する方法ごとの特徴が整理されている。直接測定する部分と、別の値から推定する部分が異なるため、研究結果を比較する際には測定対象も確かめたい。赤血球数、濃度、割合、総量を、ひとまとめに「血が増えた」と呼ぶと、この違いが消えてしまう。[19]

測定法のレビューが扱う色素の希釈法では、直接推定されるのは血漿量で、赤血球容積はそこから推定される。一方、吸入した一酸化炭素の希釈を利用する方法では、総ヘモグロビン量を測り、赤血球や血漿の容積を推定する。研究に「血液量を測った」とあっても、何を出発点に算出したのかには違いがある。[19]

これは、方法の名前を読者が暗記するための話ではない。たとえば総ヘモグロビン量を測った選手研究と、ヘモグロビン濃度だけを測った検査を比べる時に、同じ測定だと思わないための手掛かりになる。論文の見出しに似た単語があっても、結果が答える問いは測り方によって異なる。[4][19]

さらに、ホッケー研究では総量を体重当たりで示している。体全体の量をそのまま比べることと、体重で割って比べることも区別したい。研究で示された女性と男性の平均値は、その集団の特徴を説明する数字であり、読者が到達すべき基準ではない。単位まで残して読むことで、違う意味の数値を同じ物差しに載せる誤りを減らせる。[4]

通勤時の階段が楽になったとしても、それだけで総ヘモグロビン量が増えたとは判定できない。反対に、健診で濃度が前回と変わらなかったからといって、持久力も変わっていないと断定することはできない。代表選手の研究でさえ、濃度と最大酸素摂取量には関連が認められなかった。自分の運動の実感と血液の検査値を結ぶ時には、間に測定対象の確認を挟みたい。[4]

数字で読む血液と心肺機能

女性17人・男性17人:総量と最大酸素摂取量の関連を調べた代表ホッケー選手の人数である。[4]

相関係数0.56・0.57:女性・男性それぞれの総ヘモグロビン量と最大酸素摂取量の関連であり、濃度の相関ではない。[4]

血漿量15%減・濃度6%増:頭を下げて16日間過ごした男性の実験で、液体側と濃度が逆方向へ動いた。[8]

総量6.4%増:男性バイアスロン選手の高地訓練での変化だが、最大酸素摂取量は有意に増えなかった。[6]

最大酸素摂取量7.2%低下:閉経前の女性10人を対象にした献血後の予備的研究での平均変化である。[2]

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