体脂肪を落とすために筋トレを始めると、消費カロリーの少なさが気になることがある。呼吸で測る酸素の量、無酸素性のエネルギー、セット間の回復を分け、実験の数字から消費量の読み方を考える。同じ重さと回数でも変わる条件や、心拍からの推定値を日々の記録に使う際の注意点も示す。
仕事帰りに重りを持ち上げ、腕にはまだ力が入りにくい。それなのに運動記録の消費カロリーは控えめだ。重りを片付けて記録を見直し、「これだけしか使っていないのか」と思う。そんなときは、頑張りの採点より先に、その数字が何を数えているかを確認したい。
筋トレの消費は、運動中の酸素摂取だけでは捉え切れない。酸素を直接使わない無酸素性のエネルギー供給と、持ち上げ終わった直後の回復も考える必要がある。筋トレの熱量を扱うレビューは、連続した有酸素運動の測り方をそのまま当てはめることに疑問を示している。[1]
ただし、測り落としがありうるという話を、そのまま「本当は大量に体脂肪が減った」と読み替えてはいけない。ここで読む実験の主役は、筋トレ中と直後のエネルギー消費である。[3][5][6] 体脂肪を減らすことを自分の目標にする場合も、まずは運動記録の数字が届く範囲を知るところから始めたい。

息で分かる消費と、息だけでは拾いにくい消費
研究で使う酸素摂取量とは、体が取り込んだ酸素の量である。筋トレの実験では、これを使って有酸素性のエネルギー消費を推定し、血中乳酸の変化などから無酸素性の消費を別に推定する方法が取られている。[3][6] 「息で測る」は、息切れの強さを自分で採点することとは違う。
無酸素性とは、エネルギーを供給する過程で酸素を直接必要としない側を指す。筋トレの消費を有酸素性と無酸素性に分けた実験では、どちらも評価の対象になっている。[6][9] 無酸素運動という名前だから酸素を一切使わない、と受け取ると、この測定の組み立てが見えなくなる。
既存記事「有酸素運動と無酸素運動の違いは息で分かる?乳酸の境目との一致を研究で読む」には、運動の境目をどう捉えるかという問いを譲る。こちらで考えるのは、重りを持ち上げた仕事の熱量を何から見積もるかだ。隣の「体脂肪を落とす運動は休暇で戻る?二週間の中断と活動量の変化を研究で読む」が扱う中断後の変化とも区別したい。
連続して歩いたり走ったりする運動と違い、筋トレは短い動作と休みが交互に入る。レビューでは、持ち上げている最中より、その直後の回復で酸素摂取が大きくなる例も示されている。[1] 重りが止まった時点と、体のエネルギー消費を数え終わる時点は、必ずしも同じではない。
たとえば記録を読むとき、「動いていた間」と「休みを含む運動全体」のどちらなのかを区別すると理解しやすい。セットを終えてベンチに座っている時間は、見た目には休みだ。しかし直後の回復も評価に入れる研究では、その時間の酸素摂取を測定している。[1][5] 休息も、運動の組み立てを読むための時間になる。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
無酸素性の割合は、種目と推定法を添えて読む
男性14人を対象にした実験では、最大で持ち上げられる重さの80%を用い、限界まで行った筋トレのエネルギー供給を調べている。最大で持ち上げられる重さを基準にした負荷の表示が、最大挙上重量に対する割合である。[9] 日常の「きつい重さ」を、研究ではこうして条件として定める。男性を対象とした結果なので、18〜39歳の女性の消費割合にそのまま当てはめることはできない。
この研究で推定された無酸素性の割合は、ベンチプレスで77.66±6.95%、ハーフスクワットで87.44±6.45%だった。[9] かなり大きい割合だが、すべての筋トレに使える換算係数として保存する数字ではない。どの運動を、どの負荷で、どこまで続けたかが付いている。
同じ研究でも、肘を伸ばす種目では63.91±9.22%、上からバーを引く種目では71.99±13.73%であった。[9] 「筋トレの無酸素性は何割か」と単独の答えを探すより、種目が変われば結果も違ったと読む方が実験に忠実である。スクワットの割合を腕の運動へそのまま移すことはできない。
方法にも条件がある。研究者は軽い負荷での酸素摂取をもとに、高い負荷で必要となるエネルギーを外挿し、実際の酸素摂取との差を累積酸素不足として扱った。[9] 外挿とは、測った範囲の関係を、その先の条件まで延ばして推定することだ。この方法で得られるのは、測定と外挿を組み合わせた推定値である。
負荷の設定だけでなく、推定法が種目に合っているかも結果を左右する。この研究では、総エネルギー需要の推定精度はベンチプレス、肘を伸ばす種目、上からバーを引く種目では許容できたが、ハーフスクワットではそうではなかった。[9] 大きな無酸素性の割合だけを抜き出すと、この種目ごとの精度の違いを見落とす。

同じ重さと回数でも、持ち上げ方で熱量は変わる
男性10人、平均年齢23.2歳の実験では、最大挙上重量の70%でベンチプレスを5回ずつ、3セット行った。重さと回数をそろえたうえで、下ろす時間と上げる時間の配分を変えた比較である。[5] 18〜39歳の女性で同じ消費の差が生じるかは、この男性の実験だけでは判断できない。
比べたのは、下ろしも上げも1.5秒、下ろし4秒と上げ1秒、下ろし1秒と上げ4秒という条件だ。セットにかかる時間は、それぞれ15秒、25秒、25秒だった。[5] 重りを持つ時間を増やすことと、重りを重くすることは、この実験では区別されている。
有酸素性の運動中消費には、動作条件による差が見つからなかった。しかし無酸素性の消費は、順に16.5±8.1、21.6±8.1、26.7±7.2 kJと異なっていた。[5] kJはエネルギーを表す単位である。酸素の側だけを見て「同じ消費だった」と結論すると、比較で現れた別の差を落としてしまう。
回復を含めた総消費も、順に60.2±23.8、80.0±27.7、84.2±28.3 kJで、短い時間の条件が低かった。[5] ここでの±は報告された平均値に添えられたばらつきであり、信頼区間として扱わない。数字が細かく見えても、誰もが同じ値になるという意味ではない。
研究者は、今回の差を重さと回数による仕事量や特定の上下動の配分よりも、筋肉に張力がかかっていた時間と関連づけている。[5] 負荷、回数、張力がかかる時間は別々の条件として扱う必要がある。最大挙上重量の70%という設定の結果を、軽い重りや別の種目に移すには条件の違いを考えたい。[5]
家での記録に生かすなら、「重さと回数が同じだったから、先週と消費も完全に同じ」と決めつけない読み方が合う。動作の速さまで変わった日は、その変更をメモに残す材料になる。[5] 記録欄には「今日は上げる動きをゆっくり行った」と書くだけでも、前回と違った条件を後で読み返せる。カロリー欄を埋めるためにテンポを操作するより、何を変えた日なのかが後から分かる記録を目指したい。
セット間の回復まで、どこを数えた値なのか
運動後過剰酸素消費とは、運動後に安静時を上回って取り込まれる酸素を指す。筋トレの研究では、各セットの後の回復も測定対象になる。[1][5] よく聞く「運動後も消費が続く」という言葉を読むなら、まず研究が扱う時間の範囲を確認する必要がある。
先ほどのテンポの実験では、各セット後の回復に対応するエネルギー消費は、短い条件で38.6±17.8 kJ、長い条件で50.2±23.5 kJと50.0±22.6 kJだった。[5] 持ち上げている最中だけでなく、直後も条件による差が見られたわけだ。休憩の時間が、測定上は白紙ではなかった。
レビューは、回復の消費と直前の無酸素性消費との対応が弱いことも指摘している。[1] 直後の酸素摂取を測れば、持ち上げた最中の無酸素性の仕事をそっくり逆算できる、という単純な関係ではない。運動中と回復を分けるのは、同じものを別名で数えるためではないのだ。
レビューはさらに、回復の酸素を熱量へ換算する係数について、運動中とは分ける仮説を提示している。回復時の酸素1 Lを19.6 kJ、4.7 kcalに相当するとする提案である。[1] これは計算の前提自体が検討対象になる例だ。呼吸を正確に測れたとしても、それをどのように熱量へ置き換えるかという段階が残る。提案された係数を、あらゆる運動に確定した規則として当てはめる読み方は避けたい。[1]
数字で読む筋トレの消費測定
14人の男性の実験では、負荷80%のベンチプレスの無酸素性寄与は77.66±6.95%という推定である。[9]
10人の男性のテンポ比較では、セット時間は15秒と25秒であり、重さと回数はそろえていた。[5]
同じテンポ比較で総消費は60.2±23.8 kJと80.0±27.7 kJなどで、短い条件の方が低い。[5]
10人の男性の測定法比較では、ベンチプレスの心拍法の典型誤差率は18〜37%に及ぶ。[3]
31人の運動習慣のある女性の検証では、個別調整した機器でも筋トレの参照法との同等性は認められなかった。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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