ツイストプランクは速く回すほど効くのか。体幹の回転を調べた投球・打撃・ゴルフなどの研究から、動く速さ、回す範囲、骨盤と胸の動く順序を分けて読む。筋活動と腰への負荷を混同せず、競技者の結果を日常の練習へ広げすぎないための見方と、自分の動きを確かめる手がかりを示す。
動画の音楽に合わせて骨盤を左右へ振っていると、途中から「自分で回している」のか「流れで往復している」のか分からなくなる。ツイストプランクで回数を増やす前に考えたいのは、速さだけで運動の中身を比べられるか、という問いだ。
答えの芯は、速く回したという事実だけでは、腹筋への効果や腰を支える負荷の大小は決められない、である。体幹の回転を調べた研究でも、回転速度、骨盤と胸の動く時点、筋力、競技成績は同じ指標として扱われていない。速さと成績が関連する研究もあれば、回旋筋力と成績に関連がなかった研究もある。[9][14][18]
ここで扱うのは、競技の回転速度から何が分かるかという研究の読み方である。以下の研究はツイストプランクの速度を操作して効果や腰への力を比較した試験ではなく、この種目に最適な速さを指定する根拠には使えない。ボール上の支持面を扱う「プランクはボール上で腕を回すと違う?円を描く動きと体幹の負荷を研究で読む」とは問いを分け、ここでは動く速さと動作の順序に焦点を絞る。

速い回転と、よい練習は同じ意味ではない
回転の研究で使われる角速度は、回転角度が時間に対してどれだけ変わるかを表す量だ。たとえば投球研究では、骨盤と上部体幹それぞれの回転角度や最大角速度を測り、球速との関係を検討している。回した範囲と、その範囲を動いた速さは別々に記録される。[18]
日常の動画では、画面の中で腰が忙しく動くほど強い運動に見える。しかし、左右へ大きく振る動きと、狭い範囲をすばやく往復する動きは、同じ「速い」に見えても条件が異なる。研究を自分の練習に結び付けるなら、まず回転角度と角速度を区別する必要がある。投球研究では、実際に角度と速度が別の測定項目になっている。[18]
プロ野球投手を高球速群と低球速群で比較した観察研究では、高球速群で上部体幹の回転や角速度が大きかった。一方、体幹角速度と球速の相関係数は0.29で、著者らは弱い関連としている。速く回る投手ほど速い球を投げる傾向があっても、回転速度だけで球速を説明する結果ではない。対象はプロの競技者であり、18〜39歳の女性のマット上の練習へそのまま当てはめることはできない。[18]
この研究の目標は速い球を投げることであり、床で体を支える練習の優劣を決めることではない。競技では達成したい成果が明確にあり、その成果に対して動きを測っている。ツイストプランクでも、自分が確かめたいのが左右の動かしやすさなのか、姿勢を保って動けることなのかを先に言葉にしたい。「速く動いた」は記録になるが、それだけでは練習の目的になりにくい。まずは今日の練習で確かめたいことを書き出してみたい。
高球速群と低球速群では、手が離れる時点や前足の接地時点など、投球の局面も区別されていた。手が離れる時点の上部体幹の回転角度と球速の相関係数は0.18、前足の接地時点では0.17だった。同じ回転角度であっても、いつの角度を比べたかまで含めて結果を読む必要がある。動きの途中の写真だけを切り取って、全体の働きを言い当てるのは難しい。[18]
また、この比較は同じ投手に回転速度を変えさせて長く追跡した試験ではない。高球速群の特徴を見つけたことと、誰でも体幹を速く回せば同じ成果になることは分ける必要がある。競技者の動作を見て、原因をひとつだけ抜き出さない読み方が求められる。[18]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
骨盤と胸の回る時点を分けて測る
体幹をひねると聞くと、上半身全体がひとかたまりで回る図を思い浮かべがちだ。だが、大学野球投手18人の全力投球を調べた研究では、軸脚、骨盤、上部体幹の回転を別々に測っている。軸脚の回転角度は骨盤の回転と正の相関を示し、骨盤と上部体幹の角度差とは負の相関を示した。大学の競技者の投球を調べた結果であり、18〜39歳の女性の床上での回旋へ適用するには課題が異なる。[11]
同研究で球速と正の相関を示した変数は、前足が接地した時点の骨盤と上部体幹の角度差だった。全身が一斉に大きく回ればよい、という単純な図にはならない。どの部分がどの時点まで回り、別の部分との間にどの程度の差があるかが、投球では検討対象になっている。[11]
別の研究では、成人男性投手18人、平均年齢21.7歳の投球を分析した。骨盤の回転速度が最大になる時点で、体幹が自身の最大回転速度に対してどれほど速く回っているかを計算したのである。体幹の絶対的な速さだけを見るのではなく、骨盤の動きに対する相対的なタイミングを取り出した研究だ。成人男性の投球で得た関連を、18〜39歳の女性のツイストプランクへそのまま当てはめることはできない。[9]
この相対的な体幹回転速度は、球速と負の相関を示した。つまり、対象となった投手では、骨盤が最も速く回る時点に体幹の回転が相対的に抑えられているほど、球速が高い傾向だった。同時に、肘や肩の関節トルクとも負の相関があった。関節トルクとは、関節を回そうとする作用の大きさである。[9]
ここで大事なのは、回転を抑えるという言葉を「負担を減らす」と読み替えないことだ。同じ動作上の特徴が、高い球速とも、大きい肘・肩のトルクとも結び付いていた。成果と負担を同じ方向の善し悪しで整理できない例である。しかも測っているのは肘と肩であり、この数値を腰の負荷と呼ぶこともできない。[9]
相対的な速度という言葉にも注意したい。ここでは、それぞれの投手の体幹の最大速度で値を調整している。骨盤の速度が最大となる時点の体幹速度を、単に遅い・速いと比べたものではない。肘のトルクとの相関係数は−0.508、肩との相関係数は−0.507だった。これらは対象者の間の関連の強さであり、体幹速度を変えた時にトルクがどれだけ増減するかを示す換算率ではない。[9]
ツイストプランクへ持ち帰れるのは投球のねじり方そのものではなく、観察する場所を分ける姿勢だ。胸が向きを変えたのか、骨盤が動いたのか、足の接地まで変わったのか。動画を見返すなら、回数より先にそこを確認したい。投球で区別されている部位の動きを、自分の観察でもひとまとめにしないための工夫である。[9][11]
回旋筋が強いことと、速く動けることも別である
エリートゴルファーを対象とした相関研究には、男性14人、女性14人が参加した。平均年齢は男性19.6歳、女性17.7歳で、股関節や体幹の筋力とクラブヘッド速度の関連を調べている。ここでも「体幹を使う競技だから体幹の回旋筋力が成績を決める」とは先に決め付けていない。女性も含むが若いエリート競技者の比較であり、18〜39歳の一般女性の練習効果を直接示すものではない。[14]
測定には一定の角速度で関節を動かす条件が使われ、体幹回旋などの最大トルクが評価された。その結果、股関節を伸ばす筋力やジャンプの最大パワーなどはクラブヘッド速度と正の相関を示した。一方、筋肉が縮みながら発揮する体幹回旋筋力とクラブヘッド速度との相関は認められなかった。[14]
これは「腹筋は不要」という結果ではない。測定した回旋筋力と、ゴルフのスイングで得られる速度が、同じものではなかったという結果である。体幹をひねる見た目が共通していても、筋力測定と全身動作の成果を置き換えることはできない。筋力に関連がなかったという事実を、体幹全体の役割の否定にまで広げない読み方が必要だ。[14]
投球研究で体幹の角速度が球速と弱く関連したことと、ゴルフ研究で回旋筋力とクラブヘッド速度が関連しなかったことは、互いを打ち消す結果ではない。対象競技も、測った能力も、成果の指標も違うからだ。「ひねりが大事」という言葉だけで両者を束ねると、この違いが消えてしまう。[14][18]
仕事帰りにマットを敷いて行う練習でも、「速く往復できた」「脇腹が疲れた」「同じ姿勢で動けた」は別の記録として残したい。感覚を持つこと自体を否定する必要はない。ただ、その日の実感を筋力向上や長期的な成果の証明にしない。ゴルフ研究が筋力と競技の速度を別々に測ったように、自分の記録にも項目の違いを残しておく。[14]
数字で読む回転速度の研究
149人:高球速群71人と低球速群78人を比較したプロ野球投手の研究。回転速度を変える介入試験ではない。[18]
0.29:同研究の体幹角速度と球速の相関係数。関連は弱いと評価された。[18]
18人:骨盤の最大回転速度時点に注目した成人男性投手の研究の対象人数。[9]
−0.504:同研究の相対的な体幹回転速度と球速の相関係数。絶対的な最高速度の相関ではない。[9]
男女各14人:回旋筋力とクラブヘッド速度の相関が認められなかったゴルファー研究の対象。[14]
12人:自分で選んだ速さと速い動きで、手を目標へ伸ばす課題を比較した健康な若年成人の人数。[19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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