首こりが気になる電話中、受話器を肩に挟むのをやめれば楽になるのか。頭を回す実験や頭に載せる機器の研究から、向き、重さ、支え方を分けて考える。筋活動が下がっても不快感が増えた結果を読み、手持ちとヘッドセットを比べる際の観察点、首の運動と痛みの関係まで確かめる。
電話中、ペンを持つために首で受話器を支えていないだろうか。相手が話し始めたところで、手元の書類に記入欄を見つける。受話器を肩と耳の間へ移し、空いた手でペンを探す。会話は続いているが、首だけは書類仕事まで引き受けたような格好になる。
首こりが気になるなら、その挟み方を見直すことは日常の工夫の候補になる。手持ちとヘッドセットのどちらが楽かは、通話中の仕事内容と使い心地を分けて確かめたい。ここで読むのは、頭を回した実験や頭に載せる機器の支え方の研究であり、電話の持ち方を直接比較した結果として扱わない。[6][7][14][15]
答えの芯は、手を空けることと首が楽になることを分ける、という点にある。頭の向きで左右の筋活動は変わり、機器を支えて筋活動が下がっても不快感が増す例がある。電話中も、首の傾きだけでなく、動かしやすさや自分の感じ方まで見たい。[6][7][14]

電話の持ち方は、まず動作の違いとして見る
受話器を肩で挟む、片手で持つ、通話用ヘッドセットを使う。日常では同じ「電話」でも、手を使う条件は違う。肩で挟んで記入する場面と、手で持って相手の話を聞く場面では、電話以外の作業も変わっている。持ち方だけを比べたいなら、何をしながら話したかも一緒に振り返ると整理しやすい。
たとえば、電話を肩に挟むのは受電直後だけなのか、入力が終わるまでなのか。首を傾けるのは受話器を押さえるためか、横の画面を見るためか。同じ姿勢に見えても、変える対象は違う。道具を替える前に、自分の机で実際に起きている動作を言葉にしてみるのである。
ここで区別したいのが通話用の機器と、映像を表示する仮想現実の機器だ。仮想現実は、頭に載せた表示装置で映像を見る仕組みであり、以下ではこれを映像用ヘッドセットと呼ぶ。引用する機器研究はこの装置の重さや支持方法を調べている。耳元で会話するためのヘッドセットへ、数値をそのまま当てはめることはできない。[6][7][15]
それでも読む価値はある。支える場所を替えたら筋肉の働きはどう変わるのか、重さの位置が違えば首にかかる力も変わるのか、という問いが共通するからだ。ただし、共通する問いがあることと、同じ効果が得られることは別である。電話の選び方を決める証明ではなく、観察すべき項目を考える材料として使う。[6][7][15]
既存記事「姿勢改善でスマホは両手で持つ?片手操作と肩・首の負担を分けて研究で読む」には画面を操作する際の持ち方を譲る。ここで扱うのは、通話しながら手を空けたい場面である。首をどう伸ばすかという隣の記事の問いとも分け、通話中の作業条件に焦点を置く。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
頭を横に向けると、左右の働き方は変わる
頭の向きの影響を調べた実験では、健康な参加者17人が運転シミュレーターで制動場面を経験した。正面を向く条件と、頭を右へ約63±9度回す条件を比べ、頭の動きと首の筋活動を測っている。仮想の運転場面における健康な参加者の比較であり、18〜39歳の女性の電話業務へそのまま当てはめるには、場面の違いを考慮する必要がある。[14]
測ったのは胸鎖乳突筋と僧帽筋だ。胸鎖乳突筋は首の前側から横にある筋肉で、僧帽筋は首から肩・背中に広がる筋肉である。この実験では、右を向いたとき、反対側に当たる左側の筋肉で基礎的な活動が高くなり、制動への活動開始が遅れた。右側では活動が低く、正面と右向きの間で目立つ活動変化は認められなかった。[14]
この結果が示すのは、頭を回すと左右の筋活動が異なる、ということだ。筋活動を左右まとめて「首の力み」と呼ぶと、向きによる違いを見落とす。ただし、これは制動を伴う実験であり、電話中の首こりや、その後の痛みの発生率を測った結果ではない。[14]
また、頭を横に回す動きと、耳を肩へ近づけるように倒す動きも同じではない。右向きで得られた結果を根拠に、受話器を挟んだ側と反対側のどちらが必ずこる、と決めることはできない。実験が比べたのは正面と右向きである。この境界を保ってこそ、頭の向きに注目する意味が残る。[14]
日常に引き寄せるなら、電話の位置だけでなく、見たい物がどこにあるかを確かめる場面だ。受話器を手で持っていても、横の画面を見続けるなら、頭を向ける作業は残る。反対に、通話用機器を使っても、書類を探すたびに横を向くことはある。持ち方と視線の行き先を別々にメモすれば、自分が何を変えようとしているか明確になる。
立川駅北口の夕方、帰宅前の電話を受けながら予定表を見る。そんな場面を思い浮かべてもよい。電話を持っていた手より、画面を置いた場所の方が気になるかもしれない。これは診断ではなく、作業を観察するための問いである。
重さを支える場所と、首にかかる力は同じ話ではない
若年成人20人を対象にした実験では、映像用ヘッドセットの表示部の重さ、目より前にある位置、後ろに加えるおもりを変えた。参加者はゆっくりした動きや速い動き、周囲を探す動きなどを行った。研究者は首の関節にかかる回転作用を推定し、同時に筋活動を測っている。対象は若年成人で、18〜39歳の女性だけを対象とする結果としてそのまま当てはめることはできない。[15]
この回転作用をトルクと呼ぶ。ここでは、関節を回そうとする力の働きとして考えればよい。表示部の質量を750g追加すると、調べたすべての動作で関節トルクの実効値がほぼ倍になった。実効値とは、変動する測定値を全体の大きさとして表した指標である。これは装置を追加した実験の比較であり、電話機の重さの目安ではない。[15]
重さの位置も関係した。表示部の重心を目の前方へ4cm遠ざけると、ゆっくりした回旋、速い回旋、探索動作で、頭蓋骨と首の最上部付近の関節トルクが約20%増えた。同じ質量であっても、どこにあるかを区別する必要がある結果だ。[15]
一方、後ろのおもりでつり合いを取ると、回旋や探索動作で首の上部のトルクは下がったが、首の下部のトルクは下がらなかった。「バランスが取れた」という印象より、首の上部と下部で結果が異なった点が重要だ。どこを測った結果かを添えると、読み方が変わる。[15]
さらに、この実験の筋活動は、ヘッドセットの構成間では有意に変わらず、動作の種類によって異なった。速い回旋で最も大きかったのである。関節トルクの差と筋活動の差は、同じ形では現れなかった。機器の評価を、重さか筋活動のどちらかだけで済ませにくい理由がここにある。[15]
通話用ヘッドセットを選ぶときに、この実験の質量を合格基準として使うのは適切ではない。装置の大きさも仕事の内容も違うからだ。日常の比較では、頭に何かを載せる方法、手で受話器を持つ方法、机に置いて通話する方法を、単に「手が空く順」に並べないことが出発点になる。[15]
動きの方向による違いも見逃せない。この機器実験では、首を前後に動かす軸では、動的なトルク成分は全体の20%以下だった。一方、回旋する軸では動的な成分が50%を超えていた。頭に載せた物の影響を考えるとき、静止している状態と、向きを変えている状態を区別する理由になる。[15]
これは「電話中に頭を動かさない方がよい」という勧めではない。実験で比べた動作の力学的な違いであり、動きを止めた生活を評価した結果ではないからだ。首の上部の数値が下がる方法でも下部の数値は下がらなかったことと合わせ、単純な合計点で機器を順位づけしにくい結果として受け止めたい。[15]
自宅の机で比べるなら、通話だけの日と、通話しながら画面と紙を行き来した日を、同じ条件として扱わない工夫ができる。「この持ち方は楽だった」という感想に、そのとき何を見て何をしていたかを添えるのである。実験が動作を分けたように、日常の感想にも場面を添えると、次に試す変更を選びやすい。[15]
また、電話を手で持つ方法を選んでも、空いている手での入力を続けるのか、話を聞く間はいったん入力を止めるのかで仕事の進め方は違う。機器を新しくすることだけが選択肢ではない。受話器を挟む必要が生じた作業を見つけ、入力と会話をどう組み合わせたいか考えるところから始められる。
数字で読む首の支え方
17人:正面と右向きの頭位を比較した制動シミュレーター実験の参加者数。電話中の追跡調査ではない。[14]
20人:重さや重心を替えた映像用ヘッドセット実験の若年成人の人数。[15]
約20%:表示部を前方へ4cm遠ざけた際、一部の動作で首の上部の関節トルクが増えた割合。[15]
32人:装置の重さを肩へ分散する支持具を評価した実験の参加者数。[6]
13%と12%:その支持具で減った頸部の僧帽筋と胸鎖乳突筋の活動。不快感は逆に増えていた。[6]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






