女性がプロテインで太るか気になったとき、表示カロリーから尿への損失を引いてよいのか。消化率と代謝エネルギー、体に残るたんぱく質の違いを、豚や牛の栄養研究から読み分ける。動物実験の数値を女性の摂取量に置き換えず、表示と研究の数字を混同しないための確認点を示す。
帰宅してプロテインの袋を見る。「たんぱく質が入っているのだから、飲んだ分だけ体重が増えるのか」。今度は検索画面に「尿にエネルギーが出る」とあり、表示の数字から少し引けそうな気がする。袋の裏と体重計の間で、計算だけが忙しくなる。
表示カロリーから、尿に出る分を自分で差し引くための根拠は、ここで扱う研究からは得られない。成長期の豚では、消化エネルギーに差が出ても代謝エネルギーには差が出なかった。18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、この記事では体重増加の予測ではなく、エネルギーの指標の違いを読む。[6]
袋の表示、研究の代謝エネルギー、体重計の値。この数字には、それぞれ違う役割がある。以下では、飼料と排出物を測る試験、原料を比較する試験、推定式を検討する研究の順に、何を測って得た結果なのかを整理する。[6][7][15][20]

表示の数字を引き算する前に、測る段階を分ける
食品に含まれるエネルギー、消化されるエネルギー、代謝エネルギーは、研究では別の指標として扱われる。成長期の豚を使った試験では、飼料、便、尿それぞれのエネルギーと窒素を分析していた。口から入ったものだけを数える測定とは、集める試料から違うのである。[6]
消化エネルギーは、食べたエネルギーと便に出た分を区別する側の指標である。そこからさらに、尿へのエネルギー損失も関わる段階として代謝エネルギーを見る。豚の試験で便と尿を分けて集めるのは、消化の段階と、その先の評価を混ぜないためだ。専門用語の違いは、単なる名前の付け替えではない。[6][15]
ただし、ここに出てくる代謝エネルギーを、筋肉になった量と読み替えてはいけない。同じ試験は窒素が体に残る量も別に測定している。エネルギーの評価と、たんぱく質の蓄積を調べる評価を並べる設計そのものが、両者を同じ指標として扱っていないことを示す。[6]
たとえば袋に書かれた数字を見て、「消化されない分があるなら、その分は数えなくてよい」と考えたくなる場面がある。ここでは一度、引き算の手を止める。この豚の測定値は特定の飼料を与えた結果であり、人向けの商品の表示を修正する係数ではない。測定の仕組みを知ることと、手元の数字を変更できることは別である。[6]
検索語の「プロテイン 体重増加 女性」は、飲むかどうかの判断を求めている。一方、実験で問われているのは飼料の評価である。生活の問いを忘れず、それでも答えの届く範囲を広げすぎない。この距離感を保つと、「尿に出るから太らない」という短絡にも、「飲んだ分は全部体に蓄積する」という短絡にも進まずに済む。[6][15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
豚の試験では、消化エネルギーの差がそのまま残らなかった
この区別を具体的に示すのが、成長期の豚40頭を使った無作為化試験である。大豆粕を含む飼料と、大豆粕を減らして合成アミノ酸を加えた飼料を比較した。18〜39歳の女性の摂取量や体重変化への直接適用はできない。アミノ酸とはたんぱく質を構成する成分であり、この試験では必要とされる不可欠アミノ酸を満たすよう飼料が組まれていた。[6]
豚は代謝測定用の設備で飼育され、飼料に慣れる5日間の後、便と尿を4日間集めた。採取する日をそろえ、排出されたものまで調べている。体重計に乗った前後だけを比較して、使えたエネルギーを推測した研究ではない。[6]
大豆粕を減らすほど、エネルギーや窒素の消化率が下がり、消化エネルギーも低下した。一方、代謝エネルギーには飼料間の差が認められなかった。少なくともこの条件では、「消化エネルギーが低いから、代謝エネルギーも同じように低い」という読み方は成り立たなかった。[6]
さらに、体に残った窒素の量は大豆粕を減らした条件で少なくなったが、摂取量や吸収量に対する保持の割合は高くなった。ここでいう保持とは、入った窒素のうち体に残った分を評価することだ。残る量が減ることと、残る割合が上がることは、同時に起こりうる。[6]
この結果には、数字を読むときの実用的な教訓がある。「利用効率が高い」とだけ聞いても、体に残った総量が多いのか、取り込んだ量に対する割合が高いのかは分からない。割合の分母を外して紹介すると、研究とは反対の印象まで作れてしまう。食品の優劣を決める前に、量と割合を分けて読みたい。[6]
また、これは大豆粕の一部を別の材料で置き換えた試験である。いつもの食事にプロテインを加えた女性の生活とは、比較の形が異なる。置き換えた結果を追加した結果として紹介すると、研究の出発点が変わってしまう。大豆か合成アミノ酸かという名前だけで、自分の体重の行方を決める材料にはできない。[6]
この試験では、合成アミノ酸を加えた飼料ほど粗たんぱく質が少なくなるよう設計されていた。つまり「同じたんぱく質量で、形だけを変えた」と単純化するのも正しくない。研究の結果を読むには、何を増やしたかに加えて、何を減らしたかも追う必要がある。比較の中身を省くと、原料名だけが原因だったように聞こえてしまう。[6]
一方で、不可欠アミノ酸の条件は満たしていても、日々のたんぱく質の保持は同じにはならなかった。これは、条件を満たしたという説明と、測定結果が等しかったという説明を分ける例になる。栄養の設計段階でそろえた項目と、実際に測定して比較する項目は分けて確認する必要がある。[6]
同じ豚の研究でも、原料が変われば結果は変わる
別の無作為化試験では、妊娠中の豚に使う酵母と大豆粕の栄養価を比較した。18〜39歳の女性のプロテイン選びに、その結果をそのまま適用することはできない。アミノ酸の消化を調べる実験と、エネルギーを調べる実験を分けている。小腸の終わりにあたる回腸での消化率と、便や尿まで集めて評価するエネルギーは、ここでも別々のものさしだった。[15]
エネルギーの実験に参加したのは妊娠中の豚18頭で、酵母は大豆粕より消化エネルギーも代謝エネルギーも低かった。値を示す際の基準は乾物、つまり水分を除いた重さである。原料同士を比較するときには、同じ重さというだけでなく、水分を含めた重さかどうかまでそろえて読む。[15]
前の成長期の豚の試験では、消化エネルギーに差があっても代謝エネルギーに差は出なかった。今回の妊娠中の豚では、消化エネルギーと代謝エネルギーの両方に差が出た。結果は同じではないが、片方を間違いとして捨てる必要もない。原料も対象の状態も比較方法も違う試験だからである。[6][15]
ここで注意したいのは、酵母や大豆粕の乾物を基準にした値を、飲み物の値として読まないことだ。研究で評価されたのは飼料原料であり、女性が飲む調製済みのプロテインではない。「酵母はこの値だから自分の飲み物も同じ」と置き換えると、対象だけでなく、比べている物まで入れ替わる。[15]
同じ試験では、酵母の多くのアミノ酸について、回腸で評価する消化率も大豆粕より低かった。一方、有機物や粗たんぱく質、総エネルギーの全消化管での見かけの消化率には差が認められなかった。見かけの消化率とは、摂取と排出の差から評価する指標である。どこで何を調べるかによって、差の見え方まで変わっている。[15]
「消化率が同じだった」という言葉だけを切り取ると、エネルギーもアミノ酸の利用も全部同じだったように聞こえる。しかし、この試験の結果はそう単純ではない。小腸の終わりで調べた成分、消化管全体で調べた成分、代謝エネルギーを、見出しの短い言葉にまとめすぎないことが大切だ。[15]
妊娠中の豚の試験でも、採取までの手順が決められていた。エネルギーの実験では飼料に慣れる5日間を置き、その後の5〜6日間で便と尿を定量的に集めている。飲食した直後の印象や、排尿した回数を手掛かりにエネルギーを推定したわけではない。生活の中で尿が多かった日に、使われなかったカロリーが多いと考える根拠には置き換えられない。[15]
数字で読むエネルギー評価
成長期の豚40頭:大豆粕を減らして合成アミノ酸を加えた飼料の無作為化比較である。[6]
便と尿の採取4日間:成長期の豚の試験では、この期間の排出分まで調べた。[6]
3812と3714 kcal/kg:妊娠中の豚で調べた酵母の、乾物基準の消化エネルギーと代謝エネルギーである。[15]
4264と4157 kcal/kg:同じ試験の大豆粕について、乾物基準で消化エネルギーと代謝エネルギーを比べた値だ。[15]
64頭:ヒマワリ原料の違いを比較するために使われた成長期の豚の頭数である。[20]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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