
手足を動かす研究を斜めリーチの証明にしない
腕と体幹の関係を考える周辺の研究に、スプリンター型の腹筋運動とクランチを比べた無作為化比較試験がある。スプリンター型とは、走る動作を思わせる手足の運動を組み込んだ腹筋運動だ。反り腰による腰痛のある40人を対象に、各群が10回を3セット行い、運動中の筋活動と運動前後の腰の角度を測った。腰痛と反り腰のある人での結果を、18〜39歳の健康な女性にそのまま当てはめることはできない。[18]
その結果、内腹斜筋と外腹斜筋の活動は、スプリンター型の群でクランチ群より高かった。腰の角度は両群で低下した。[18] これは、手足の動きが加わった腹筋運動で、筋肉の参加の仕方が変わりうることを考える材料になる。
ただし、手足を使うスプリンター型と、仰向けで腕を斜めへ伸ばす動作を同じ種目として扱うことはできない。対象者も反り腰のある人であり、健康な女性の腕の位置を比べた実験とは異なる。似た見た目の運動を寄せ集めて「斜めのほうが優秀」という結論にするのは、比較の組み合わせを変える読み方である。[1][18]
さらに、この試験が扱ったのは直後の変化だ。腰の角度がその場で変わることから、続ければ姿勢が恒久的に変わるという結論へは進めない。筋活動の違いと角度の変化を分け、それぞれがいつ測られたかを見る必要がある。[18]
運動動画で「腹斜筋の活動が高い研究がある」と紹介されたときは、種目名だけでなく、参加者と比較相手も確かめたい。健康な人の正面と斜めを比較したのか、症状や姿勢の特徴がある人の別種目を比較したのか。それによって、今日の自分の練習への近さは変わる。[1][18]
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筋活動と、続けた後の筋力を分ける
その場の分担が分かっても、それだけでは練習を続けた後の筋力の変化は決まらない。別の視点を与えるのが、腹直筋離開のある産後女性を対象にした試験だ。腹直筋離開とは左右の腹直筋の間が開いた状態を指す。産後6〜12か月の女性70人を、運動する群と介入しない群に分けた無作為化比較試験がある。18〜39歳の女性でも、産後かどうかや腹直筋離開の有無が異なれば、この結果をそのまま当てはめることはできない。[9]
運動群は、頭を上げる運動、カールアップ、ひねりを伴うカールアップを含むプログラムを、週5日、12週間行った。結果は、腹直筋間の距離を改善も悪化もさせなかった。一方、腹直筋の厚さと筋力は増加した。[9]
具体的には、筋厚の群間差は0.7 mmで、95%信頼区間は0.1〜1.3 mmだった。筋力は測定角度10度で群間差9 Nm、95%信頼区間3〜16 Nmだった。[9] 信頼区間は、差の推定に伴う不確かさを示す範囲である。活動を記録した実験とは違い、こちらは練習期間を経た後の筋肉の厚さと力を評価している。
ここでも、ひねりの単独効果を取り出すことはできない。複数の動きを組み合わせたプログラム全体の結果だからだ。「ひねりも含む運動で筋力が増えた」と「ひねりを入れたから筋力が増えた」は、似て見えて別の文である。後者を確かめるには、ひねりの有無以外の条件をそろえた比較が必要になる。[9]
産後の腹直筋離開については、産後女性を対象とする16試験、698人をまとめた系統的レビューとメタ分析もある。18〜39歳の女性全般への適用には、産後の腹直筋離開を扱った結果であるという対象の違いを考慮する必要がある。[11] 複数の研究を集めて検討した報告で、通常のケアと比べた腹筋運動による距離の減少は、6試験、161人の分析で平均0.43 cmだった。95%信頼区間は0.05〜0.82 cmの減少で、著者らは臨床的に意味のある減少とは評価していない。[11]
このレビューと産後の試験は、腹筋運動に何を期待するかを整理する。距離の平均的な変化が小さいことと、筋力に変化があることは矛盾しない。腹直筋の間隔、筋厚、筋力は異なる評価項目である。[9][11] 鏡に映る輪郭も加えてすべてを「効いた」の一語で済ませると、何が変わったのかが見えなくなる。
産後のお腹の回復そのものは既存記事「お腹痩せの科学 第5回 産後の腹直筋離開、隙間より先に取り戻したい筋力」の領域である。ここで産後の研究を読む目的は、斜めリーチを勧めることではなく、測る項目と時間によって答えが変わると理解することだ。[9][11] 産後の状態や痛みなど個別の健康上の判断は医師に相談する。
レビューの平均値を読む際には、研究の質にも注目したい。産後の16試験をまとめた報告では、偏りのリスクが低いとされた試験は3本だった。[11] 多数の研究を集めたというだけで、腕を伸ばす方向のような細かな疑問まで確定するわけではない。広い問いへの平均的な答えと、特定の動作への答えには、それぞれ合った研究が必要になる。
たとえば、産後の試験で腹直筋間の距離は、おへその上の安静時測定で群間差1 mm、95%信頼区間は−1〜4 mmだった。[9] この幅を含めて読むと、数字が正だったという理由だけで悪化と呼べないことが分かる。小さな数値の向きだけを拾わず、著者らが改善も悪化もないと評価した結果を保つ。その姿勢は、日々の運動の説明を大げさにしないためにも必要だ。[9]

よくある誤解
「斜めへ伸ばせば腹斜筋だけを使える」という理解は正確ではない。ひねり方向に応じて腹斜筋の活動は変わったが、正面の動作でも腹斜筋は負荷の増加に応じて活動を高めた。体幹をひねるかどうかと、筋肉が参加するかどうかは単純な対応ではない。[1]
「深い腹筋が働けば、その種目が深部の筋トレに最適だ」とも限らない。腹横筋は負荷に応じて活動を増したものの、最高活動は最大収縮の40%で、著者らは筋力トレーニングとして最適ではない可能性を挙げた。参加したか、どの程度参加したか、何を目的とするかを続けて考えたい。[1]
「筋電図の値が高いほうなら、続けた後の筋力も必ず大きくなる」という期待も、今回の比較の範囲を越える。腕の位置とひねりを調べた実験は動作中の活動を測り、産後の試験は複数の動きを組み合わせた後の筋力を測った。異なる研究の結果をつないでも、斜めと正面の長期的な優劣は決まらない。[1][9]
誤解を避けるために、動画の「効く」を自分の言葉に置き換える方法がある。動作中に筋肉が参加することなのか、続けて力を出せるようになることなのか。それとも腹直筋の間隔なのか。どれを知りたいかが決まれば、実験の筋活動、試験後の筋力、距離の分析を取り違えにくくなる。[1][9][11]
今日からできること
- 腕の位置を変える前に、正面の動きを基準として言葉に残す。3通りの腕の位置を扱った研究を手がかりに、「腕はどこ、胸はどちら」と条件を分けて記録する。[1]
- 斜めへ手を伸ばすときは、腕だけを運んでいるか、胸もひねっているかを確認する。5通りの動きを比べた研究の結果を、自分の動作へ無条件に当てはめない。[1]
- 左右を比較するときは、どの向きでどこに力を感じたかを残す。右側の筋肉を測った結果であり、「右向きが全身に優れる」という意味ではないと覚えておく。[1]
- 深部を意識する日は、腹横筋の最高活動40%を達成目標にしない。研究の測定値と、自宅で感じる力の入り方を別の記録として扱う。[1]
- 続けた変化を考えるときは、動作中の感じと後日の力の変化を別に書く。12週間の産後の試験も、筋力と腹直筋間の距離を別々に評価している。[9]

オンザショアで、動きを確かめる予定をつくる
腕の位置と胸の向きを確かめる機会をつくるなら、動きを意識して取り組む日を予定に置きたい。オンザショア立川店は営業時間8:00〜23:30、年中無休である。JR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fにある。帰宅の途中に寄るか、予定の前に時間を取るか。住所と営業時間は、運動を生活の予定へ置くときの手がかりになる。
溶岩プレートを敷いたスタジオのホットヨガに加え、常温のヨガやピラティス、パーソナルトレーニングもある。ヨガのレッスンは25種類以上だ。種目の名前だけで決めず、続けて通う時間と合わせて選択肢を確認したい。
妊娠中は溶岩ホットヨガに参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。
ヨガの体験レッスンは税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルを含む。店舗案内と料金で条件を確認し、日時を決める際は体験予約へ進める。
参考文献
[1] Abdominal Muscle Activation During Common Modifications of the Trunk Curl-up Exercise — Crommert ME, Bjerkefors A, Tarassova O, Ekblom MM., 2021, Journal of strength and conditioning research. DOI: 10.1519/jsc.0000000000002439
[9] Curl-up exercises improve abdominal muscle strength without worsening inter-recti distance in women with diastasis recti abdominis postpartum: a randomised controlled trial — Gluppe SB, Ellström Engh M, Bø K., 2023, Journal of physiotherapy. DOI: 10.1016/j.jphys.2023.05.017
[11] Conservative interventions may have little effect on reducing diastasis of the rectus abdominis in postnatal women – A systematic review and meta-analysis — Benjamin DR, Frawley HC, Shields N, Peiris CL, van de Water ATM, Bruder AM, Tayl, 2023, Physiotherapy. DOI: 10.1016/j.physio.2023.02.002
[18] Immediate Effects of Sprinter-Pattern Exercise on the Lordotic Curve and Abdominal Muscle Activity in Individuals with Hyperlordosis — Lee S, Kim H, Jung J, Lee S., 2023, Medicina (Kaunas, Lithuania). DOI: 10.3390/medicina59122177
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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