インナーマッスルの肩トレは肘を曲げる?伸ばす動きと外旋する力を研究で読む

肩のインナーマッスルを鍛えるとき、肘を曲げる場合と腕を伸ばす場合では何が違うのか。バンド運動や外旋運動の研究をもとに、肘の角度、肩の位置、動かす速さを分けて読む。筋活動の大きさを長期の効果と取り違えず、上級者向けという言葉に頼らずに練習条件を確かめる視点を示す。

バンドを手に取り、肩の運動の見本と見比べる。見本の肘は曲がっているのに、自分は伸ばしたほうがきつい。「こちらが上級なのか」と思う場面だ。だが、バンドを使った動作の比較では、肘を大きく曲げる動きと、肩を大きく開く動きで、強く活動する筋肉や関節にかかる回転方向の負荷が違っていた。きつさを、そのまま肩の奥への効き目の順位にはできない。[1]

答えの芯は、肘を曲げる形にも意味があり、伸ばせば必ず外旋する筋肉をより鍛えられるとは決められない、ということだ。外旋は肩で腕を外向きに回す動きである。肘を曲げた姿勢でも外旋の筋力測定や筋活動の実験は行われている。曲げた見た目だけで、練習のレベルを判定する理由はない。[11][16][19]

既存記事「インナーマッスルの肩トレは肘を離す?外旋する角度で変わる筋肉の働きを読む」には、肘を体から離す位置の話を譲る。ここで追うのは、肘の曲がり方を変えたとき、肩の位置や運動の内容まで変えていないか、という問いである。

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肘の角度と肩の位置を別々に見る

肘を曲げることと、肘を横へ持ち上げることは別の条件だ。研究でも、肘の曲がりと肩の開きは区別して記録される。健康な男性を調べた筋力測定では、肩を横へ90°開き、肘を90°曲げるなど、複数の角度をそろえて外旋の力を測った。単に「肘を曲げて測定」とするより、姿勢の条件が細かく決められている。男性の測定結果を18〜39歳の女性の筋力評価にそのまま当てはめるには、対象の違いを考慮する必要がある。[16]

日常の見分け方としては、肘の内側がどれほど折れているかと、上腕が胴体のどこにあるかを、別の項目として眺めるとよい。これは研究の角度設定を読み解くための整理である。肘を伸ばしたつもりで上腕まで後ろへ引いたなら、変えたのは肘だけではない。肩を水平に開く運動と外旋する運動を、同じ動きとして比較しないことが出発点になる。[1][16]

肩の外旋に関わる筋肉として、棘下筋と小円筋が挙げられる。これらは肩の動的な安定性に関わる筋肉でもある。研究では、その外旋の力と、運動中に筋肉がどれほど活動したかが、それぞれ測定されている。力の測定値を知りたい場面と、筋肉の分担を知りたい場面では、読むべき結果が異なる。[16][17]

「インナーマッスル」という検索語は入口として便利だが、研究を読むときは棘下筋なのか小円筋なのか、名前までたどりたい。同じ外旋の運動でも、バンドの条件や腕を動かす面によって、棘下筋、小円筋、肩甲骨の周囲の筋肉の活動は変わっている。肩の奥という大きな箱に、結果を全部入れないほうが分かりやすい。[17]

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曲げる動きと伸ばす動きでは何が違ったか

直接の手掛かりになるのが、男性26人を無作為に分けたバンド運動の比較である。一方は太極拳を応用した開閉動作、もう一方はリバースフライという、腕を横へ開く抵抗運動を行った。各群は13人で、動作の計測、表面筋電図、筋骨格モデルによって特徴を比較している。男性の動作比較なので、18〜39歳の女性でも同じ筋活動の分担になるかは別に検証する必要がある。[1]

開閉動作は肘の曲がりが大きく、肩を水平に開く角度と前へ上げる角度が小さく、動作がゆっくり均一だった。リバースフライはその逆で、肘の曲がりが小さく、肩の水平な開きと前方への角度が大きく、速度は速く不均一だった。腕が長く見えるかどうかだけでは、実験で起きた違いを説明しきれない。[1]

関節を回そうとする力であるトルクにも違いがあった。開閉動作では肘を曲げる方向のトルクが大きく、リバースフライでは肩を水平に開く方向と外旋方向のトルクが大きかった。一方、棘下筋への刺激は開閉動作のほうが大きいと報告された。肩の外旋方向のトルクが大きい動作と、棘下筋への刺激が大きい動作が、同じ側にはそろわなかったのである。[1]

このずれは大切だ。「肩への負荷が増えた」と「狙った筋肉の活動が増えた」を同義にしないためだ。リバースフライでは三角筋の前部・後部、肩甲下筋、肘を伸ばす筋肉への刺激が大きく、開閉動作では棘下筋、烏口腕筋、肘を曲げる筋肉への刺激が大きかった。運動の名前が似ていても、仕事の分担は違う。[1]

ただし、この研究を「肘を曲げるほど棘下筋に効く」という角度だけの法則にはできない。肩の角度、速度、手の位置も一緒に異なる比較であり、研究者もそれらを筋活動やトルクの違いに関わる要因として挙げている。肘だけを変えた実験と、動作全体を比べた実験の境界は、ここにある。[1]

この比較は、同じバンドを持つ動作でも、腕を動かす目的を確認する必要があることを示している。肩を横へ開く仕事を増やしたいのか、棘下筋の活動に注目したいのかで、読む結果が変わるからだ。手が同じ場所に到達して見えても、途中の関節の使い方と速度には違いがある。終点の写真だけで運動の中身を判断するのは難しい。[1]

実際に比較したい運動があるなら、伸ばした姿勢の写真と曲げた姿勢の写真だけでなく、動作の始まりから終わりまでを確認したい。研究が扱ったのも、止まった形の美しさではなく、動いている間の角度、速度、筋活動、トルクだった。肘の曲がりは、その中の重要な項目だが、唯一の項目ではない。[1]

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肘を曲げた外旋にも複数の筋肉が参加する

肘を曲げた姿勢は、外旋の研究で繰り返し使われている。けがのない男子大学野球選手19人の実験では、立ってバンドに抵抗する際の腕の位置を比較した。肩を90°開き、外旋して肘を曲げた姿勢は、肩甲骨の下側に関わる僧帽筋下部と棘下筋の活動を引き出しながら、僧帽筋上部と三角筋中部の活動を抑える特徴を示した。男子競技者の結果を18〜39歳の一般女性へそのまま当てはめるには、競技経験と性別の違いが残る。[19]

ここでいう「抑える」は、比較した条件の中での筋電図の結果である。筋電図とは、筋肉の活動に伴う電気的な信号を記録する方法だ。この研究は動作中の分担を調べた実験であり、その場の活動の大小から、長期間続けたあとの筋力や、一般の女性の肩の状態まで結論を延ばす読み方は避けたい。[19]

健康な男性労働者10人を調べた別の筋電図実験では、肩を90°開き、肘を90°曲げて立って外旋する運動で、僧帽筋上部の活動が比較した運動の中で最も高かった。棘下筋や小円筋などは、うつ伏せで腕を水平に開き、親指を上へ向けて十分に外旋する運動で最も高く活動した。男性労働者の結果であり、18〜39歳の女性でも同じ運動が最も高い活動を示すかは、この比較だけでは判断できない。[18]

「先ほどは上部の活動を抑えると言ったのに」と感じるところだ。比較相手を確認すると、矛盾を急いで片づけずに済む。大学野球選手の研究はバンドへの抵抗と腕の位置を比べ、労働者の研究は複数のリハビリテーション運動を比べている。参加者も運動条件も違う。肘が曲がっているという共通点だけでは、肩全体の活動を予測できない。[18][19]

中央線の車内で見た短い動画には、たいてい比較相手が映っていない。「この形が最もよい」という説明に出会ったら、何と比べた最もよいなのかを確かめたい。筋肉の名前、姿勢、使った道具がそろって初めて、研究結果と目の前の運動を結びつけられる。[17][18][19]

腕を支えるかどうかも肘の運動に関わる

肘の曲げ伸ばしをするとき、上腕を支える条件にも研究の手掛かりがある。健康な15人を対象とした実験では、反対側の手で上腕を保持しながら肘を自分で曲げ伸ばしする運動などを調べた。細いワイヤーを使った筋電図で肩周囲の筋活動を測り、上腕を保持した肘の運動では棘上筋の活動が低かったと報告している。[13]

棘上筋は、この実験で肩甲下筋、棘下筋とともに調べられた肩の筋肉である。ここで確認したいのは、肘の運動でも上腕を支える条件が測定結果に関わるという点だ。「肘を動かすだけだから肩の条件は無関係」とは扱えない。一方、この結果を棘下筋だけを強く鍛える方法と読み替えることもできない。[13]

練習を相談するときも、「曲げると楽、伸ばすときつい」だけで終えず、上腕を何かに預けていたかまで伝えると条件が明確になる。床に寝て行うのか、立って行うのか、支えがあるのか。研究ではこうした設定を区別している。見た目の肘の角度だけを拾うより、運動を再現するときの情報が増える。[11][13]

数字で読む肘と肩の条件

26人:開閉動作とリバースフライを比較した男性参加者。肘だけでなく肩の角度や速度も異なる実験である。[1]

15人:上腕を支えた肘の運動などを調べた健康な参加者。棘上筋の活動の違いが報告された。[13]

19人:腕の位置とバンド抵抗を調べた、けがのない男子大学野球選手。一般の読者とは対象が異なる。[19]

90°:外旋の筋力測定で設定された肘の曲がり。肩の角度などもそろえた条件の一部である。[16]

0.98:同じ検者による外旋筋力測定の信頼性指標。95%信頼区間は0.95〜0.99で、トレーニング効果の大きさではない。[16]

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