インナーマッスルの骨盤底筋は足首で変わる?つま先の上下と収縮の研究を読む

骨盤底筋を意識するとき、足裏を床につけるか、つま先を上げるかで何が違うのか。女性を対象とした足首の角度の研究とメタ分析から、安静時の筋活動と最大収縮、自分で動かす場合と傾斜で支える場合を読み分ける。筋活動の増加を尿もれの改善と同じにせず、練習の条件を選ぶ視点を示す。

洗面台の前で骨盤底筋を意識してみる。足裏を床につけたままか、つま先を少し持ち上げるか。視線は顔に向いていても、研究者が見ていたのは足首である。立った状態で足首の位置を変えると、骨盤底筋の筋活動にも違いが生じるという報告がある。[1][4]

答えの芯は、足首は練習の条件になり得るが、つま先を上げれば誰でもよく鍛えられるとは決まらない、である。女性の研究をまとめたメタ分析では、つま先を下げる方向の姿勢より、上げる方向の姿勢で最大収縮時の筋活動が大きかった。一方、足首が中間の位置と上げる方向との間には、有意な差がなかった。[6]

ここでいう「大きい」は、測定中の筋活動の話だ。足首の角度を変えた日の反応と、練習を続けた後の尿もれの変化は分けて読む必要がある。[6][17] 靴を履き替えただけで練習を済ませたことにはしない。その線引きをしたうえで、足元の小さな違いを見ていこう。

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足先を外へ向ける話ではなく、上下に曲げる話である

検索で「つま先の向き」と見ると、足先を外側へ開く姿勢を思い浮かべるかもしれない。今回扱うのはその回転ではなく、足首を上下に曲げる条件だ。つま先をすね側へ近づける方向を背屈、反対に足先を伸ばす方向を底屈と呼ぶ。研究では足首の中間位、背屈位、底屈位を比べている。[1][6]

この区別は、文章を実際の動きへ置き換えるときに役立つ。「つま先を上げる」と言われて足指だけを反らした姿勢と、足首の角度を変えた姿勢を同じ条件として扱わないためだ。足指だけを反らしても、足首を曲げたことにはならない。かかとと足先の位置関係を見れば、どこを動かしたか確かめやすい。論文の問いは足首の位置と骨盤底筋の活動との関係である。[4][6]

骨盤底筋の活動は、筋肉が働く際の電気的な信号を記録する筋電図で調べられている。健康な成人を対象とした研究では、骨盤底筋用の肛門・腟プローブと、脚の筋肉に取り付けた電極を使い、さらに骨盤の動きを立体的に捉えている。足首だけの写真から結果を推測した研究ではない。[1][2]

また、立つか寝るかという全身の姿勢の問いは、既存記事「インナーマッスルの骨盤底筋は立って練習する?寝た姿勢と違う収縮の読み方」に譲る。ここで絞りたいのは、立っている場合でも足首の条件が変われば同じ練習と呼べるのか、という点だ。姿勢の名前が同じでも、その内側の設定は同じとは限らない。[1][2]

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まとめた研究では、背屈は底屈より大きかった

女性の足首の位置と骨盤底筋を扱った系統的レビュー・メタ分析には、4研究が含まれた。系統的レビューは一定の手順で研究を集めて検討する方法で、メタ分析は複数の結果を統計的にまとめる方法である。ここでは、安静時と最大随意収縮時を別々に比較している。最大随意収縮とは、自分の意思でできるだけ強く力を入れたときの収縮だ。[6]

安静時の活動は、誘導された15°の底屈位と比べて、中間位および誘導された15°の背屈位で有意に大きかった。最大随意収縮の活動も、底屈位より背屈位で大きかった。つまり、つま先を下げる側の位置と上げる側の位置で、骨盤底筋の電気的な活動に差があったという結果である。[6]

ただし、中間位と15°の背屈位を比べると、安静時にも最大随意収縮時にも有意差はなかった。背屈が底屈より大きかったという結果から、さらに「平らに立つより背屈が必ず優れる」と階段を上がることはできない。比較した相手を省くと、慎重な結果が強い指示に変わってしまう。[6]

数値で確かめると、中間位と背屈位の最大随意収縮の比較で報告された推定値は0.97、95%信頼区間は−0.77〜2.72だった。信頼区間は推定に伴う不確かさの幅を示す。この幅は差がないことを表す0をまたいでおり、有意差を認めなかったという判断と対応する。誰にとっても完全に同じという意味ではなく、優劣を断定する結果ではないという読み方になる。[6]

安静時の比較にも、不確かさを伴う推定値がある。中間位と誘導された底屈位の比較は−1.36、95%信頼区間は−2.30〜−0.42、誘導された背屈位と底屈位の比較は−1.65、95%信頼区間は−2.49〜−0.81と報告された。著者らはどちらも底屈位より活動が大きい結果としている。負の符号だけを見て「筋活動が減った」と読むと、比較の方向を取り違える。[6]

背屈位と底屈位の最大随意収縮の比較では、推定値は−2.28、95%信頼区間は−3.96〜−0.60だった。これも背屈位の活動が大きいと報告された結果である。数値を紹介するときには符号だけを抜き出さず、どちらとどちらを比べたか、安静時か最大収縮時かを一緒に置く必要がある。数字が詳しくなるほど、条件の説明を短くしてよいわけではない。[6]

この推定値を、筋力が何倍になった、尿もれが何割減ったという数字に置き換えてはいけない。足首の研究が比べた筋活動と、症状の研究が調べる改善量は、測る対象が違う。読み手が知りたい最終的な効果ほど、途中の数字で代用しないことが大切だ。[6][17]

安静時と締めたときでは、角度の順位も違う

安静時は意識して最大限に締めている場面ではない。その状態の筋活動と、力を入れた瞬間の最大活動を分けると、角度を選ぶ話が単純なランキングではなくなる。足首のメタ分析でも両者は別の評価項目として扱われた。日常の姿勢の話なのか、収縮練習の話なのかを、先にそろえたい。[6]

閉経前で、軽度から中等度の合併症のない腹圧性尿失禁がある女性20人を調べた予備的研究では、水平な立位と、背屈・底屈それぞれの角度を比べた。背屈は5°、10°、15°、底屈も同じ角度の条件で調べられている。この研究では、背屈の各条件での骨盤底筋の緊張は、水平な立位や底屈より有意に大きかった。対象は尿失禁のある女性であり、18〜39歳の女性全般に同じ角度が適するかは、この結果だけでは判断できない。[8]

ところが、安静時の活動では10°の背屈と15°の背屈に差がなかったのに対し、最大活動は10°のほうが15°より大きかった。研究者は10°の背屈について、不快感が少なく、最大収縮を促しやすい条件として報告した。角度を大きくすれば結果も大きくなる、という予想に沿わない部分である。[8]

さらに同じ研究では、軽い5°の底屈で、5°や15°の背屈より最大活動が大きく、10°の背屈とは差がなかった。底屈を一括して「働かない姿勢」と呼べない理由がここにある。安静時の緊張、最大活動、快適さを同じ物差しで扱うと、この違いが見えなくなる。[8]

水平な立位と底屈との間では筋電図の差がなかった、という結果もこの予備的研究にはある。一方で、軽い底屈が最大活動を促した比較もあった。ひとつの論文の中にも、差があった比較と差がなかった比較が並ぶ。「足首で変わる」という見出しだけでは、この細かさは伝わらない。水平な立位を基準にした結果と、背屈の各角度を基準にした結果を混ぜずに読むことが大切だ。[8]

対象者の条件にも目を向けたい。健康な成人の実験から練習姿勢の候補を考えることと、尿失禁がある女性の実験から症状のある人の収縮を考えることは、出発点が違う。前者で大きい筋活動が出た条件を、そのまま後者の全員へ勧めるのではなく、両方の研究でどこが共通し、どこが違うかを確かめる。今回の研究群では、背屈だけでなく底屈でも活動が大きかった条件がある点を残しておきたい。[1][2][8]

この対象は症状のある女性であり、結果も予備的なものである。健康な人が行う一般の運動へ、その角度をそのまま処方する読み方は避けたい。足首の角度は候補となる条件であって、家庭で正確な数字を再現できたら合格という試験ではない。最大の角度を目指すより、何を測ったときの結果かを確かめることが先に来る。[8]

数字で読む骨盤底筋と足首

4研究:女性の足首の位置を検討した系統的レビュー・メタ分析の採用数である。[6]

15°:メタ分析で安静時の比較に使われた、誘導された背屈・底屈の角度である。[6]

0.97:中間位と背屈位の最大随意収縮を比較した推定値。95%信頼区間は−0.77〜2.72で、有意差はなかった。[6]

20人:閉経前で軽度から中等度の腹圧性尿失禁がある女性を対象とした予備的研究の人数である。[8]

10°と15°:予備的研究では、背屈の安静時活動に差がなく、最大活動は10°のほうが大きかった。[8]

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