連載「体型は変えられるか」全10回の第5回です。

ここまでの4回は脂肪の話でした。脂肪の側では、総量は動くが付く場所は選べない、というのが結論です。では筋肉の側はどうか。狙った場所を狙ったとおりに育てられるのでしょうか。

筋肉は脂肪と違い、使った場所そのものが太ります。この点で、部分的な変化はそもそも起こります。問題は解像度です。どの筋が育つかというレベルでは選べるとして、同じ筋のなかのどこが育つかというレベルではどうか。そして、筋の形そのものは変えられるのか。

結論から書きます。同じ筋のなかでも太り方は一様ではなく、種目の選び方でその偏りは変わります。しかし統合してみると部位ごとの差は小さく、筋の形そのもの——筋腹の長さや腱の付き方——を訓練で変えられることを示した研究はありません。

この回では、非一様な肥大という観測から始めて、種目選択で動く範囲、統合したときの効果の大きさ、そして変えられない部分の順に見ていきます。

体型は変えられるか 第5回 筋肥大の部位特異性狙った場所は育つか|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

筋肉は一様には太らない

筋肉が全長にわたって均等に太るわけではないことは、磁気共鳴画像を使った研究で確かめられています。しかも、どこが太るかは、そのときの運動でどこが強く使われたかに対応していました。

Wakahara T, Miyamoto N, Sugisaki N, et al. Association between regional differences in muscle activation in one session of resistance exercise and in muscle hypertrophy after resistance training. European Journal of Applied Physiology. 2012;112(4):1569-1576.

この研究は二段構えです。まず12名の男性に肘の伸展運動を1セッション行わせ、直前と直後の磁気共鳴画像から、上腕三頭筋のどの部位が強く活動したかを推定しました。別の12名には同じ内容を12週間、週3回続けさせ、断面積の変化を測っています。結果、1セッションでの活動の割合は遠位部で最も低く、12週間後の断面積の増加率も遠位部で最も小さくなりました。使われた場所が太るという、素朴だが確かめられていなかった対応が示されたことになります。

同じ研究室は、多関節の種目でも同じ検証を行いました。

Wakahara T, Fukutani A, Kawakami Y, Yanai T. Nonuniform muscle hypertrophy: its relation to muscle activation in training session. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2013;45(11):2158-2165.

12名の若年男性が、肘の伸展に多関節種目を用いて12週間、週3回訓練しました。今度は、活動の割合が中央部で最も高く、最も近位の部位より有意に高くなっています。断面積の増加率も同じ分布を示しました。前の研究と偏りの向きが違うことに注目してください。どこが育つかは筋の性質ではなく、選んだ種目で決まります。

なぜ同じ筋のなかで活動に偏りが出るのか。ひとつの筋が複数の神経枝に支配され、支配する領域ごとに動員されやすさが違うこと、筋束の走行と関節角度の関係が部位によって異なることが挙げられています。運動中の酸素化の状態が部位で違うという報告もあります。ただし、これらのどれがどれだけ効いているのかは決着していません。観測された現象と、その原因の説明とのあいだには、まだ隔たりがあります。

種目を変えると、育つ場所が変わる

この含意を直接試した試験があります。

Zabaleta-Korta A, Fernández-Peña E, Torres-Unda J, Garbisu-Hualde A, Santos-Concejero J. The role of exercise selection in regional Muscle Hypertrophy: A randomized controlled trial. Journal of Sports Sciences. 2021;39(20):2298-2304.

訓練量と強度を揃えたうえで、一方の群はスミスマシンでのスクワット、もう一方の群はレッグエクステンションを行いました。大腿直筋と外側広筋について、近位・中央・遠位の三か所の成長を比べています。結果、レッグエクステンション群では大腿直筋の三か所すべてが有意に太りました。スクワット群では、外側広筋の中央部だけが有意に太っています。

Burke R, Piñero A, Mohan AE, et al. Exercise Selection Differentially Influences Lower Body Regional Muscle Development. Journal of Science in Sport and Exercise. 2024;7(4):449-459.

訓練経験のある30名が、左右の脚で別々の種目を8週間、週2回行った試験もあります。大腿直筋の結果は単関節種目に有利で、事後確率は0.910から0.990の範囲でした。外側広筋は逆に多関節種目に有利で、0.875から0.994です。下腿では、膝を伸ばした状態での底屈が腓腹筋内側頭の厚みに有利でした(事後確率0.991)。同じ「脚を鍛える」でも、種目によって育つ筋と育つ部位が違います。

この二つの試験には共通する強みがあります。どちらも同じ人のなかで左右または条件を分けており、第2回で見た片側比較と同じ原理で、個人差を消して比較できています。一方で規模は小さく、前者は二群合わせて数十名、後者も30名です。事後確率が0.9を超えたという表現は「効果がある確率が高い」という意味であって、効果の大きさが実用的であることを保証するものではありません。

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それでも部位ごとの差は小さい

ここまでは個々の試験です。統合するとどうなるか。

Varovic D, Wolf M, Schoenfeld BJ, Steele J, Grgic J, Mikulic P. Does Muscle Length Influence Regional Hypertrophy? A Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Sports Medicine. 2025;46(14):1027-1036.

関節可動域や種目選択によって筋の長さを操作し、部位ごとの肥大を測った12件を統合した解析です。近位(筋長の25%)で標準化平均差0.05、中央(50%)で0.07、遠位(75%)で0.09。いずれも信頼区間がゼロをまたぎ、効果は些少と判定されました。増加率に直すと、近位0.57%、中央1.22%、遠位1.88%です。長い筋長での訓練が遠位に有利という傾きは見えるものの、差は実用上の等価範囲に大きく収まっています。

著者らは、比較された条件どうしの筋長の差が平均で21.8%しかなかったことを挙げ、解釈には慎重であるべきだと述べています。「長い」と「短い」の差が小さければ、出てくる差も小さくなるのは当然だからです。

個々の試験でも、差が出ないことは珍しくありません。

Zabaleta-Korta A, Fernández-Peña E, Torres-Unda J, Francés M, Zubillaga A, Santos-Concejero J. Regional Hypertrophy: The Effect of Exercises at Long and Short Muscle Lengths in Recreationally Trained Women. Journal of Human Kinetics. 2023;87:259-270.

健康な女性38名が、傾斜台でのアームカールか、プリーチャーカールのどちらかを9週間、週3回行いました。プリーチャーカール群では上腕の遠位(70%の位置)が2.7 ± 0.43 cmから2.94 ± 0.44 cmへと有意に太りましたが、傾斜台群ではどの部位も有意には太っていません。そして群ごと・部位ごとに比べると、成長の差は有意になりませんでした(群間 p = 0.274、部位間 p = 0.571)。方向は見えるが、統計的に区別できるほどの差ではない——これがこの領域の現状です。

問い研究が示していること
どの筋を育てるか種目で選べる
同じ筋のどこを育てるか偏りは生じるが、差は小さい
筋の形そのもの変えられるという根拠はない

筋の形そのものは変えられない

部位ごとの太り方より、さらに変えにくいものがあります。筋の形です。

Mangine GT, Redd MJ, Gonzalez AM, et al. Resistance training does not induce uniform adaptations to quadriceps. PLoS ONE. 2018;13(8):e0198304.

訓練経験のある男性15名が、高強度・低容量の下半身の訓練を8週間、週2回行いました。断面積の増加は外側広筋で2.96 ± 0.69平方センチ、大腿直筋で0.59 ± 0.20平方センチと、筋によって大きく違いました。一方、筋束の長さは大腿直筋で-1.03 ± 0.30 cmと有意に短くなり、外側広筋では変わっていません(-0.05 ± 0.36 cm、p = 0.901)。部位ごとの差は、この試験では検出されませんでした。

筋の内部構造が訓練で動くことはこのとおり示されています。しかし、筋腹がどこから始まりどこで腱に移行するか、腱が骨のどこに付くかは、解剖学的に決まっています。ヌネス(Nunes)らは、筋の大きさと構造の変化が部位ごとに異なるため、一か所だけの測定では訓練の効果を正しく捉えられないと指摘し、複数部位での測定を提案しています。裏を返せば、測る場所を選べば結論が変わるということでもあります。

形の話をもう少し具体的にします。上腕二頭筋の筋腹が肘の近くまで長く伸びている人と、早い段階で腱に移行して肘の手前で途切れる人がいます。これは腱の付着位置の違いであり、力こぶの見え方を大きく左右します。ふくらはぎの腓腹筋も同様で、筋腹が下まで続くか、上半分で終わるかには明確な個人差があります。訓練で増えるのは筋の断面積であって、筋腹の始点と終点ではありません。どれだけ太らせても、始まっていない場所には筋肉は現れません。これは第1回で見た骨格の話と同じ層の制約です。

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「内側を狙う」「長く細い筋肉」という言い方

運動指導の場では、特定の言い回しが繰り返されます。ここまでの所見に照らして整理しておきます。

「内側を狙う」については、同じ筋群のなかで種目によって寄与の大きい筋が変わることは確かです。バーク(Burke)らの試験でも、多関節種目と単関節種目で育つ筋が分かれました。したがって完全な誤りではありません。ただし、狙える単位は「筋」であって、筋のなかの任意の一点ではありません。そして差の大きさは、統合すると数パーセントの水準です。

「長く細い筋肉をつくる」という言い方については、根拠が見当たりません。筋束の長さは訓練で動きうるものの、その方向は種目や筋によって一定せず、マンジーニらの試験ではむしろ短くなった筋もありました。筋が外から見てどう見えるかは、その筋の断面積と、上に乗っている皮下脂肪の量と、骨格の寸法で決まります。特定の運動様式が「筋肉の質」を別物にするという主張は、測定に裏づけられていません。種目の変化そのものの効果については、カシアーノ(Kassiano)らが系統的に整理しており、体系立てた変化は有益だが過度な入れ替えは妨げになりうる、と結論しています。

測定の限界と、研究対象の偏り

この分野の研究には、共通する制約があります。第一に、参加者の多くが若年の男性です。カシアーノらが検討した8件・241名はすべて若年男性でした。女性を対象にした試験は増えていますが、まだ少数です。

第二に、測定法です。筋の厚みを超音波で測る方法は簡便ですが、探触子の当て方と圧のかけ方で値が動きます。磁気共鳴画像は精度が高い一方で、断面の位置を厳密に再現する必要があります。訓練直後には筋内の水分が増えて厚みが一時的に増すため、測定の時期も結果を左右します。

第三に、期間です。ここで見た試験は8週間から12週間が中心でした。より長期に続けたときに部位ごとの差が積み上がるのか、それとも頭打ちになるのかは分かっていません。統計的に有意な差と、鏡の前で分かる差は別のものです。数ミリの厚みの差は、皮下脂肪の厚みの個人差に容易に埋もれます。訓練量と肥大の関係そのものは別の記事にまとめてあります。

練習する人にとっての意味

三点にまとめます。第一に、種目の選び方には意味があります。同じ部位を同じ種目だけで鍛え続けると、育たない筋や部位が残ります。可動域の広い種目と、関節角度の違う種目を組み合わせるほうが、結果として全体が育ちます。

第二に、狙える単位を見誤らないことです。「この種目で外側だけを」という粒度は、研究が示している範囲を超えています。示されているのは、筋群のなかのどの筋が主に働くかという単位までです。

第三に、外から見える形は、筋の断面積だけでは決まりません。皮下脂肪の厚み、骨格の寸法、腱の付着位置がすべて関わります。訓練で動かせるのは、そのうち筋の断面積と脂肪の総量です。残りは動きません。動かない部分があることは、訓練が無意味だということではありません。動く部分に働きかけた結果として、身体は強くなり、疲れにくくなります。見た目はその副産物のひとつにすぎません。日常の動作が楽になることや、疲れずに一日を過ごせることのほうが、鏡に映る輪郭よりも先に変わります。

次回予告

第6回は「姿勢とシルエット——骨盤前傾・胸椎後弯の実像」を扱います。ここまでは骨・脂肪・筋という組織の話でしたが、同じ身体でも立ち方によって輪郭は変わります。骨盤の傾きや背中の丸みが実際にどれくらい個人差を持つのか、それが運動で動くのか、そして姿勢と痛みの関係がどこまで確かめられているのかを見ていきます。

この連載の全10回

  1. 第1回|体型を決めるもの——骨格・脂肪分布・筋量
  2. 第2回|部分痩せは起きるのか
  3. 第3回|脂肪はどこに付くか——遺伝・性差・ホルモン
  4. 第4回|腹筋運動で腹囲は減るか
  5. 第5回|筋肥大の部位特異性——狙った場所は育つか(この記事)
  6. 第6回|姿勢とシルエット——骨盤前傾・胸椎後弯の実像
  7. 第7回|体組成の測り方——体脂肪率という数字の誤差
  8. 第8回|見た目が変わるまでの期間——実測値
  9. 第9回|様式の比較——筋トレ・ピラティス・ヨガで体型は違うか
  10. 第10回|総括——変えられないものとの付き合い方

出典

  1. Wakahara T, Miyamoto N, Sugisaki N, et al. Association between regional differences in muscle activation in one session of resistance exercise and in muscle hypertrophy after resistance training. European Journal of Applied Physiology. 2012;112(4):1569-1576.
  2. Wakahara T, Fukutani A, Kawakami Y, Yanai T. Nonuniform muscle hypertrophy: its relation to muscle activation in training session. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2013;45(11):2158-2165.
  3. Zabaleta-Korta A, Fernández-Peña E, Torres-Unda J, Garbisu-Hualde A, Santos-Concejero J. The role of exercise selection in regional Muscle Hypertrophy: A randomized controlled trial. Journal of Sports Sciences. 2021;39(20):2298-2304.
  4. Burke R, Piñero A, Mohan AE, et al. Exercise Selection Differentially Influences Lower Body Regional Muscle Development. Journal of Science in Sport and Exercise. 2024;7(4):449-459.
  5. Varovic D, Wolf M, Schoenfeld BJ, Steele J, Grgic J, Mikulic P. Does Muscle Length Influence Regional Hypertrophy? A Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Sports Medicine. 2025;46(14):1027-1036.
  6. Zabaleta-Korta A, Fernández-Peña E, Torres-Unda J, Francés M, Zubillaga A, Santos-Concejero J. Regional Hypertrophy: The Effect of Exercises at Long and Short Muscle Lengths in Recreationally Trained Women. Journal of Human Kinetics. 2023;87:259-270.
  7. Mangine GT, Redd MJ, Gonzalez AM, et al. Resistance training does not induce uniform adaptations to quadriceps. PLoS ONE. 2018;13(8):e0198304.
  8. Nunes JP, Blazevich AJ, Schoenfeld BJ, et al. Determining Changes in Muscle Size and Architecture After Exercise Training: One Site Does Not Fit all. Journal of Strength and Conditioning Research. 2024;38(4):787-790.
  9. Kassiano W, Nunes JP, Costa B, Ribeiro AS, Schoenfeld BJ, Cyrino ES. Does Varying Resistance Exercises Promote Superior Muscle Hypertrophy and Strength Gains? A Systematic Review. Journal of Strength and Conditioning Research. 2022;36(6):1753-1762.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。体型や体重が気になって食事・運動・人づきあいに支障が出ている場合、特定の部位の見え方が頭から離れない場合は、医療機関にご相談ください。関節や腱に痛みがある方、心疾患・高血圧の治療を受けている方、手術や外傷からの回復期にある方は、高強度の筋力トレーニングを始める前に主治医に確認してください。

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