連載「体型は変えられるか」全10回の第2回です。
ある部位の運動をすれば、その部位の脂肪が減る——部分痩せ(spot reduction)と呼ばれるこの考えは、運動指導の現場で半世紀以上語られてきました。腹の運動で腹の脂肪を、腕の運動で腕の脂肪を落とす。直感には合っています。使った場所の燃料が使われる、というのは自然な発想です。
この考えは、実は検証しやすい形をしています。片腕だけ、片脚だけを鍛えれば、鍛えた側と鍛えていない側を同じ人の中で比べられるからです。年齢も食事も生活も同じ、遺伝も同じ。これほど条件の揃った比較は、運動生理学では珍しいものです。そして実際、その形の実験が数十年にわたって繰り返されてきました。
結論から書きます。局所の脂肪分解そのものは、収縮している筋肉のすぐ隣で確かに起きています。しかし、訓練した側の脂肪が反対側より減るという結果は、統合すると出てきません。分解が起きることと、その場所の脂肪が減ることは、別のことだからです。
この回では、まず片側訓練の試験を見て、次に統合結果を、そのあとで局所の脂肪分解を直接測った生理学の研究を扱います。最後に、局所効果を示したと報告している試験を、無視せずに検討します。

片側だけ鍛えるという設計
片側訓練という設計の強みを、先に確認しておきます。通常の運動試験では、運動群と対照群が別の人でできているため、年齢・食事・生活習慣・遺伝の違いが結果に混ざります。ところが同じ人の左右で比べれば、これらはすべて揃います。全身の脂肪が減ったのか、鍛えた側だけが減ったのかを、一人の中で切り分けられるわけです。部分痩せという主張を試すには、これ以上ない形です。
最も規模の大きい片腕訓練の試験を見ます。
Kostek MA, Pescatello LS, Seip RL, et al. Subcutaneous fat alterations resulting from an upper-body resistance training program. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2007;39(7):1177-1185.
104名(男性45名・女性59名)が、非利き腕だけを12週間鍛えました。皮下脂肪は、皮脂厚計(キャリパー)と磁気共鳴画像(MRI)の両方で測られています。結果は、測り方によって食い違いました。皮脂厚で見ると、男性では鍛えた腕の皮下脂肪が減り、鍛えていない腕では減っていません(P < 0.01)。ところがMRIで見ると、性別を問わず、二つの腕のあいだに差はありませんでした(P > 0.05)。
著者らの解釈は明快です。皮脂厚計は筋腹の一点をつまむだけなので、その一点の変化しか拾えません。MRIは上腕の全長にわたる変化を捉えるため、訓練への反応のばらつきがより大きく見え、腕どうしの差は有意になりませんでした。同じ実験から、測り方次第で「部分痩せは起きた」とも「起きなかった」とも読める——この事実が、この分野の混乱の出発点になっています。
脚でも同じ設計の試験があります。
Ramírez-Campillo R, Andrade DC, Campos-Jara C, et al. Regional fat changes induced by localized muscle endurance resistance training. Journal of Strength and Conditioning Research. 2013;27(8):2219-2224.
男性7名・女性4名が、非利き脚だけを12週間、週3回鍛えました。1回のセッションはレッグプレス960回から1200回という極端な量で、負荷は1回挙上できる最大重量の10〜30%です。全身の体脂肪量は5.1%減りました。ところが減ったのは訓練した脚ではありません。上肢で10.2%、体幹で6.9%減り、訓練した脚では有意な変化がありませんでした。摂取エネルギーは前後で変わっていません。使った場所以外から減ったという、直感とは逆の結果です。
有酸素運動でも結果は同じです。三浦(Miura)らは、日本人の若年女性8名に片脚だけの自転車こぎを12週間、週3回、1回60分行わせました。強度は最大酸素摂取量の約40%です。超音波で測った大腿の皮下脂肪の断面積は、訓練した側と訓練していない側でほぼ同じでした。訓練した脚では持久的な運動時間だけが延び、組織の構成は変わっていません。
統合するとどうなるか
個々の試験は人数が少なく、結果もばらつきます。片側訓練の試験だけを集めた統合解析があります。
Ramirez-Campillo R, Andrade DC, Clemente FM, et al. A proposed model to test the hypothesis of exercise-induced localized fat reduction (spot reduction), including a systematic review with meta-analysis. Human Movement. 2021;23(3):1-14.
1833件の記録から13件が条件を満たし、14歳から71歳までの1158名が対象となりました。13件はいずれも方法論的な質が高いと判定され、研究間のばらつきも小さく(I2 = 24.3%)、報告バイアスの兆候もありません(Eggerの検定 p = 0.133)。
統合には37の比較が含まれます。うち17は訓練した側の脂肪がより減っており、20は訓練していない側のほうが減っていました。個々の効果量は-1.21から1.07まで散らばりますが、統合すると-0.03(95%信頼区間 -0.10〜0.05、p = 0.508)、つまりゼロと区別がつきません。著者らの結論は「局所の筋訓練は局所の脂肪組織に影響しない」というものです。
| 読むときの確認点 | 具体的に見ること |
|---|---|
| 測定法 | 皮脂厚計の一点か、MRI・DXA・超音波か |
| 比較の相手 | 反対側の肢か、別の人の対照群か |
| 消費エネルギー | 両群で揃えてあるか |
| 食事 | 記録・統制されているか |

局所の脂肪分解は、確かに起きている
ここで話は反転します。部分痩せを否定する訓練試験とは別に、収縮している筋肉のすぐ隣で何が起きているかを直接測った研究があるからです。
Stallknecht B, Dela F, Helge JW. Are blood flow and lipolysis in subcutaneous adipose tissue influenced by contractions in adjacent muscles in humans? American Journal of Physiology. Endocrinology and Metabolism. 2007;292(2):E394-9.
10名の健康な男性が、片脚ずつ強度を変えて膝伸展運動を行いました。大腿の皮下脂肪組織の血流をキセノンの洗い出しで、脂肪分解を組織間質のグリセロール濃度から算出しています。結果、収縮している筋肉に隣接する皮下脂肪では、休んでいる筋肉に隣接する皮下脂肪より血流が高くなりました。最も低い強度では6.6 ± 1.0に対し3.9 ± 0.8 ml/100g/分です。最も高い強度では、脂肪分解が88 ± 31に対し-9 ± 25 nmol/100g/分でした。著者らは、特定の運動が局所の脂肪分解を起こしうると述べています。
血流のほうをより精密に測った研究もあります。
Heinonen I, Bucci M, Kemppainen J, et al. Regulation of subcutaneous adipose tissue blood flow during exercise in humans. Journal of Applied Physiology. 2012;112(6):1059-1063.
健康な若年女性6名が、断続的な等尺性の膝伸展運動を三段階の負荷で行いました。陽電子放出断層撮影(PET)で測った血流は、活動している筋に隣接する脂肪組織で、安静時の1.0 ± 0.3から4.1 ± 1.4、5.4 ± 1.8、6.9 ± 3.0 ml/100g/分へと、強度とともに上がりました。一方、活動していない筋に隣接する脂肪組織の血流は、どの強度でも安静時と変わりません。局所性は確かに存在します。問題は、その局所性がどこへ消えるのかです。
分解されても、その場所の脂肪は減らない
脂肪細胞から切り出された脂肪酸は、その場で使われるわけではありません。血流に乗って全身を回り、必要としている組織に取り込まれます。つまり、隣の筋肉が分解を促した脂肪酸も、共通のプールに合流します。どこで分解されたかは、どこで使われるかを決めません。
さらに、分解された脂肪酸がそのまま消えるとも限りません。運動中に切り出された脂肪酸のうち、酸化されずに脂肪細胞へ戻って再び中性脂肪に組み立て直される分があります。分解の速度と、組織から運び出される速度は別々に決まっており、血流が追いつかなければ、その場で元に戻ります。ハイノネンらが示したとおり脂肪組織の血流は運動で数倍になりますが、それでも筋肉の血流に比べれば桁が小さいままです。
量の問題もあります。局所の運動で追加的に分解される脂肪は、全身の脂肪量に比べればごく小さく、しかも脂肪組織の血流には上限があります。ラミレス・カンピージョらの試験で、上肢と体幹の脂肪が減って訓練した脚が減らなかったのは、全身のエネルギー収支が負に傾いた結果として、その人の減りやすい場所から減ったからだと考えられます。減る順序は、鍛えた場所ではなく、その人の脂肪分布の癖が決めます。この癖がどう決まるのかは第3回で扱います。

局所効果を示した報告をどう扱うか
否定的な所見だけを並べるのは公平ではありません。局所効果を報告した試験も複数あります。
Scotto di Palumbo A, Guerra E, Orlandi C, Bazzucchi I, Sacchetti M. Effect of combined resistance and endurance exercise training on regional fat loss. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness. 2017;57(6):794-801.
運動習慣のない女性16名を、上半身の筋力運動のあと自転車こぎをする群と、下半身の筋力運動のあと腕エルゴメーターをこぐ群に分け、8週間続けました。上半身群では上肢の脂肪量の減少率が下肢より大きく(-12.1 ± 3.4%対-4.0 ± 4.7%、P = 0.02)、下半身群では逆になりました(-2.3 ± 7.0%対-11.5 ± 8.2%、P = 0.02)。
Brobakken MF, Krogsaeter I, Helgerud J, Wang E, Hoff J. Abdominal aerobic endurance exercise reveals spot reduction exists: A randomized controlled trial. Physiological Reports. 2023;11(22):e15853.
過体重の男性16名を、腹部の持久的運動を加えた群と、走行のみの群に無作為に割り付け、10週間・週4回行いました。消費エネルギーは酸素摂取量で揃えてあります。体幹の脂肪量は腹部運動群で697 g(3%)多く減り、全身の脂肪量と体重の減りは両群で同程度でした。パオリ(Paoli)らの8週間の循環形式の訓練でも、腹部の皮下脂肪の減少が報告されています。
これらをどう読むか。共通するのは標本が小さいことです。16名、16名、14名という規模では、偶然の偏りが結果を左右します。測定法も、超音波・皮脂厚計・二重エネルギーX線吸収測定法と混在しており、第1回で触れたとおり、それぞれ誤差の出方が違います。そして消費エネルギーを厳密に揃えた設計は、これらのうち一部にとどまります。局所の運動を足せばその分だけ総消費が増えるため、全身の脂肪が減り、たまたま近い部位で先に検出された可能性は残ります。
統合解析に含まれた13件は片側比較という最も統制の効いた設計であり、そこでは効果がゼロでした。一方、肯定的な報告は設計も測定もばらばらです。現時点で言えるのは、局所効果があるとしても、統制の効いた設計では検出できない大きさにとどまるということです。「無い」と断定するのではなく、「あっても見た目を変える規模ではない」と読むのが妥当でしょう。
練習する人にとっての意味
含意は三つです。第一に、気になる部位の運動を増やしても、その部位の脂肪が先に減ることは期待できません。第二に、だからといって局所の運動が無駄なわけではありません。筋肉は鍛えた場所に付き、姿勢や動きの質は変わります。第三に、脂肪の総量を減らしたいなら、量の稼げる運動と食事のほうが効きます。運動様式ごとの体組成への効き方は別の記事にまとめてあります。
測定の限界も、毎回あわせて意識しておく必要があります。周径は巻き方で数センチ動き、皮脂厚計は測る人と測る位置で変わり、二重エネルギーX線吸収測定法にも数百グラム単位の誤差があります。統計的に有意な差と、鏡の前で分かる差は別のものです。数百グラムの局所差が報告されても、それは見た目の変化を意味しません。
最後に、この所見の受け取り方について。部分痩せが起きないという事実は、努力が届かない領域があるという話であって、身体に欠陥があるという話ではありません。減る順序を選べないのは、その人の身体が間違っているからではなく、脂肪の代謝がそういう仕組みで動いているからです。特定の部位を目の敵にして運動量を増やしても、返ってくるのは手応えのなさだけです。総量に効く手段に労力を振り向けたほうが、結果として遠回りになりません。
次回予告
第3回は「脂肪はどこに付くか——遺伝・性差・ホルモン」を扱います。今回くり返し出てきた「その人の減りやすい場所」が何で決まるのかを、主役に据えます。ウエストとヒップの比に関連する遺伝領域は数百見つかっており、その多くは女性でより強く働きます。閉経前後で分布がどう動くのかも、縦断研究の実測値で見ていきます。
この連載の全10回
- 第1回|体型を決めるもの——骨格・脂肪分布・筋量
- 第2回|部分痩せは起きるのか(この記事)
- 第3回|脂肪はどこに付くか——遺伝・性差・ホルモン
- 第4回|腹筋運動で腹囲は減るか
- 第5回|筋肥大の部位特異性——狙った場所は育つか
- 第6回|姿勢とシルエット——骨盤前傾・胸椎後弯の実像
- 第7回|体組成の測り方——体脂肪率という数字の誤差
- 第8回|見た目が変わるまでの期間——実測値
- 第9回|様式の比較——筋トレ・ピラティス・ヨガで体型は違うか
- 第10回|総括——変えられないものとの付き合い方
出典
- Ramirez-Campillo R, Andrade DC, Clemente FM, et al. A proposed model to test the hypothesis of exercise-induced localized fat reduction (spot reduction), including a systematic review with meta-analysis. Human Movement. 2021;23(3):1-14.
- Kostek MA, Pescatello LS, Seip RL, et al. Subcutaneous fat alterations resulting from an upper-body resistance training program. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2007;39(7):1177-1185.
- Ramírez-Campillo R, Andrade DC, Campos-Jara C, et al. Regional fat changes induced by localized muscle endurance resistance training. Journal of Strength and Conditioning Research. 2013;27(8):2219-2224.
- Miura A, Yamamoto N, Yamaoka Endo M, et al. Effect of aerobic leg exercise training on subcutaneous adipose tissue of thigh in young Japanese women. Journal of Physiological Anthropology. 2009;28(5):247-250.
- Stallknecht B, Dela F, Helge JW. Are blood flow and lipolysis in subcutaneous adipose tissue influenced by contractions in adjacent muscles in humans? American Journal of Physiology. Endocrinology and Metabolism. 2007;292(2):E394-9.
- Heinonen I, Bucci M, Kemppainen J, et al. Regulation of subcutaneous adipose tissue blood flow during exercise in humans. Journal of Applied Physiology. 2012;112(6):1059-1063.
- Scotto di Palumbo A, Guerra E, Orlandi C, Bazzucchi I, Sacchetti M. Effect of combined resistance and endurance exercise training on regional fat loss. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness. 2017;57(6):794-801.
- Brobakken MF, Krogsaeter I, Helgerud J, Wang E, Hoff J. Abdominal aerobic endurance exercise reveals spot reduction exists: A randomized controlled trial. Physiological Reports. 2023;11(22):e15853.
- Paoli A, Casolo A, Saoncella M, et al. Effect of an Endurance and Strength Mixed Circuit Training on Regional Fat Thickness: The Quest for the “Spot Reduction”. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2021;18(7):3845.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。体型や体重が気になって食事・運動・人づきあいに支障が出ている場合、特定の部位への強い不満が頭から離れない場合は、自己流の減量を進める前に医療機関にご相談ください。関節や腰に痛みがある方、高血圧・心疾患・糖尿病の治療を受けている方は、新しい運動を始める前に主治医に確認してください。






