連載「体型は変えられるか」全10回の第4回です。
第2回では、片腕や片脚を鍛える実験から、部分痩せが統合結果として検出されないことを見ました。今回はそれを、最も多く問われる部位に絞ります。腹部の運動を続ければ、腹囲は減るのか。
この問いは、二つの別の問いが重なっています。ひとつは「腹部の運動で腹部の脂肪が減るか」。もうひとつは「メジャーで測った腹囲という数字が動くか」。この二つは同じではありません。腹囲は、皮下脂肪と内臓脂肪と腹壁の筋肉と、その日の消化管の中身をまとめて測っている数字だからです。
結論から書きます。腹部の運動だけでは、腹部の脂肪も腹囲もほとんど動きません。一方、全身のエネルギー消費を増やす運動は、腹囲と内臓脂肪の両方を動かします。動かす要因は、腹部を使ったかどうかではなく、消費エネルギーの総量です。

腹部の運動だけを行った試験
腹部の運動で腹の脂肪が減るという考えが根強いのには理由があります。腹部の運動をすると、その場で腹が熱くなり、翌日には筋肉痛が出ます。身体がそこで何かをしたという感覚は強く、感覚と結果を結びつけたくなります。しかし感覚の強さは、脂肪が減ったことの証拠にはなりません。この点は第2回で見たとおり、局所の血流と脂肪分解が実際に上がることとも矛盾しません。起きていることと、残る結果は別です。
設計としていちばん素直なのは、腹部の運動だけを追加して、他は変えないという形です。
Vispute SS, Smith JD, LeCheminant JD, Hurley KS. The effect of abdominal exercise on abdominal fat. Journal of Strength and Conditioning Research. 2011;25(9):2559-2564.
運動習慣のない健康な成人24名(男性14名・女性10名)を、腹部運動群と無介入の対照群に無作為に割り付けました。腹部運動群は7種類の腹部運動を2セット10回ずつ、週5回、6週間続けています。摂取エネルギーは期間中ずっと一定に保たれました。
結果は明確でした。体重、体脂肪率、腹部の脂肪率と脂肪量、腹囲、腹部の皮脂厚、腸骨上部の皮脂厚——いずれにも有意な効果はありませんでした。変わったのは筋持久力だけです。カールアップの反復回数は、腹部運動群が47 ± 13回、対照群が32 ± 9回と、有意な差がつきました。腹の筋肉は確かに鍛えられ、そして腹の脂肪は減っていません。
食事制限と組み合わせた試験もあります。
Kordi R, Dehghani S, Noormohammadpour P, Rostami M, Mansournia MA. Effect of abdominal resistance exercise on abdominal subcutaneous fat of obese women: a randomized controlled trial using ultrasound imaging assessments. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2015;38(3):203-209.
体重の多い女性40名を、食事制限のみの群と、食事制限に12週間の腹部筋力運動を加えた群に分けました。腹部の皮下脂肪厚は超音波で測っています。12週間後、両群とも体重は減りましたが、群間の差は有意ではありませんでした(P = .45)。腹部の皮下脂肪、腹囲、ヒップ周径、体格指数、体脂肪率、皮脂厚のいずれについても、群間に有意な差は出ていません。食事制限に腹部の運動を足しても、腹部の脂肪が上乗せで減ることはなかったということです。
腹囲が動く条件
では腹囲はどうすれば動くのか。有酸素運動の試験を統合した解析があります。
Armstrong A, Jungbluth Rodriguez K, Sabag A, et al. Effect of aerobic exercise on waist circumference in adults with overweight or obesity: A systematic review and meta-analysis. Obesity Reviews. 2022;23(8):e13446.
25件の無作為化比較試験・1686名を統合したところ、有酸素運動は対照群に比べて腹囲を3.2 cm減らしました(95%信頼区間 -3.86〜-2.51、p ≤ 0.001)。腹囲の変化は内臓脂肪の変化と関連しており(β = 4.02、95%信頼区間 1.37〜6.66、p = 0.004)、強度の高い運動のほうが減り幅が大きくなっています(-4.2 cm対-2.50 cm)。
量と効果の関係を細かく見た解析もあります。
Jayedi A, Soltani S, Emadi A, Zargar MS, Najafi A. Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis. JAMA Network Open. 2024;7(12):e2452185.
116件の試験・6880名を統合し、週あたりの運動時間30分ごとの効果を推定しています。体重は0.52 kg(-0.61〜-0.44)、腹囲は0.56 cm(-0.67〜-0.45)、体脂肪率は0.37%(-0.43〜-0.31)減りました。内臓脂肪の面積は1.60平方センチ(-2.12〜-1.07)、皮下脂肪の面積は1.37平方センチ(-1.82〜-0.92)減っています。腹囲と内臓脂肪の推定については、根拠の確実性が高いと評価されました。
この数字の読み方が重要です。週30分あたり0.56 cmということは、臨床的に意味のある腹囲の減少には、中〜高強度で週150分以上の運動が要ると著者らは述べています。腹部の運動を何百回やっても、消費エネルギーの総量としては大したことがありません。効いているのは部位ではなく量です。
| 指標 | 週30分あたりの推定変化 | 根拠の確実性 |
|---|---|---|
| 体重 | -0.52 kg | 中 |
| 腹囲 | -0.56 cm | 高 |
| 体脂肪率 | -0.37% | 中 |
| 内臓脂肪の面積 | -1.60平方センチ | 高 |
| 皮下脂肪の面積 | -1.37平方センチ | 中 |
効果は運動時間が週300分に達するまで、ほぼ直線的に伸びていました。つまり打ち止めが早く来るわけではありません。ただし同じ解析は、軽度から中等度の有害事象がわずかに増えることも報告しています。その大半は筋骨格系の症状で、参加者100名あたり2件多いという規模でした。量を増やすことには、相応の負担が伴います。

内臓脂肪には何が効くか
腹囲の内側には、皮下脂肪と内臓脂肪という性質の違う二つの層があります。どちらがどれだけ動くのかは、別々に測られています。
Yarizadeh H, Eftekhar R, Anjom-Shoae J, Speakman JR, Djafarian K. The Effect of Aerobic and Resistance Training and Combined Exercise Modalities on Subcutaneous Abdominal Fat: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials. Advances in Nutrition. 2021;12(1):179-196.
43件・3552名(うち女性2684名)を統合したこの解析では、腹部の皮下脂肪面積が有酸素運動で13.05平方センチ(-18.52〜-7.57)、筋力トレーニングで5.39平方センチ(-9.66〜-1.12)、両者の組み合わせで28.82平方センチ(-30.83〜-26.81)減りました。有酸素運動と筋力トレーニングの直接比較では有意差はありません。
内臓脂肪については、運動の種類を並べて比較したネットワークメタアナリシスがあります。チェン(Chen)らが84件・4836名を統合した解析では、有酸素運動・筋力トレーニング・両者の併用・高強度インターバルのいずれも内臓脂肪を減らしましたが、順位づけでは高強度の有酸素運動と高強度インターバルが上位に来ました。筋力トレーニング単独は最も効果が小さく、しかも男性と体脂肪率の低い群では効いたものの、女性と体脂肪率の高い群では有意になりませんでした。
Irwin ML, Yasui Y, Ulrich CM, et al. Effect of exercise on total and intra-abdominal body fat in postmenopausal women: a randomized controlled trial. JAMA. 2003;289(3):323-330.
閉経後の女性173名を、中強度の運動群とストレッチの対照群に無作為に割り付けた試験もあります。運動群は週平均176分の身体活動を行い、最も多く報告された種目は歩行でした。12か月後、体重は対照群より1.4 kg(95%信頼区間 -2.5〜-0.3)、全身の体脂肪率は1.0%(-1.6〜-0.4)、腹部の皮下脂肪は28.8 g/平方センチ(-47.5〜-10.0)少なくなっています。運動時間が長いほど脂肪の減りも大きいという用量反応が見られました。腹部を狙っていない運動が、腹部の脂肪を減らしています。内臓脂肪の減少は信頼区間の下端がゼロをまたいでおり、この試験単独では確実とは言えませんが、方向は一貫しています。
腹壁の緊張と、見た目の変化を分ける
腹部の運動をすると腹まわりが変わった気がする、という経験は珍しくありません。ここで区別が要ります。腹部の運動で確実に変わるのは、筋の持久力と、腹壁を引き締めておく能力です。ヴィスピュート(Vispute)らの試験でもカールアップの回数だけが変わりました。
腹壁の筋が緊張すると、腹部の張り出しは一時的に小さくなります。メジャーを巻いたときの数字も、腹壁の緊張・呼気か吸気か・食後の時間によって数センチ動きます。これは脂肪が減ったことではありません。姿勢が変わって腰椎の反りが減れば、横から見た輪郭も変わります。腹腔内圧と体幹の筋の関係は別の記事で扱っています。
見た目が変わることと、脂肪が減ることは、別々に起こりえます。どちらも価値がありますが、混ぜて語ると期待がずれます。腹部の運動に脂肪の減少を期待すると裏切られ、筋の働きの変化を期待すれば得られる、という整理になります。

例外的な肯定報告
腹部の運動で体幹の脂肪が余計に減ったとする報告もあります。
Brobakken MF, Krogsaeter I, Helgerud J, Wang E, Hoff J. Abdominal aerobic endurance exercise reveals spot reduction exists: A randomized controlled trial. Physiological Reports. 2023;11(22):e15853.
過体重の男性16名を、走行に腹部の持久的運動を組み合わせた群と、走行のみの群に割り付け、10週間・週4回行いました。消費エネルギーは酸素摂取量で揃えてあります。体幹の脂肪量は腹部運動群で697 g(3%)多く減りました。全身の脂肪量と体重の減りは両群で同程度です。
この報告は無視できませんが、16名という規模では偶然の偏りが結果を左右します。また、腹部の運動を加えた群は運動時間そのものが長く(57分対45分)、強度の構成も異なります。同種の設計で再現されるかどうかが、今後の判断材料になります。一件の肯定報告は、統合結果を覆しません。覆すのは、同じ設計での再現です。
測ることの限界
腹囲という指標そのものの限界も押さえておきます。グリーンデール(Greendale)らは、閉経移行期の女性を長期追跡した解析のなかで、ウエストとヒップの周径は脂肪分布の変化を捉える感度が低いと明記しています。画像で測った腹部の脂肪が年5%を超えて増えている時期にも、周径の変化率は1%前後にとどまりました。
測定そのものの誤差も小さくありません。巻く高さ、張力、測る人、呼気か吸気か——これらを揃えなければ、数センチの差は簡単に出ます。二重エネルギーX線吸収測定法や画像による評価にも誤差があり、内臓脂肪の面積は測る断面の高さで変わります。統計的に有意な差と、鏡の前で分かる差は別のものです。ここで見た統合結果の多くは、数センチ、あるいは数平方センチという規模でした。
練習する人にとっての意味
整理します。腹部の運動は、腹部の筋の働きを高めます。これは姿勢や動作の安定に関わる、それ自体で意味のある変化です。ただし腹部の脂肪を選んで減らす手段ではありません。腹囲を減らしたいなら、効くのは総消費エネルギーを増やす運動と食事の側です。
もうひとつ、期待の水準の話があります。ここまで見た数字は、いずれも平均であり、個人差の幅はその何倍もあります。同じ運動量でも、大きく減る人とほとんど減らない人がいます。統合解析の効果量は「この運動をすればこれだけ減る」という約束ではなく、「集団の平均としてこれだけずれる」という記述です。数週間で腹囲が大きく変わるという話は、どの研究にも書かれていません。
最後に、腹囲という数字との付き合い方について。腹囲は健康リスクの指標としては有用ですが、日々の測定値を追いかける対象としては不安定です。食事の内容、水分、時刻、測る人が変われば、実際の脂肪量が動いていなくても数字は動きます。数字が下がらないことを自分の失敗と受け取る必要はありません。測るなら、同じ時刻に同じ条件でというのが最低限の条件で、比べるのは週単位ではなく月単位の傾きです。
次回予告
第5回は「筋肥大の部位特異性——狙った場所は育つか」を扱います。脂肪の側では部位を選べないことを見てきましたが、筋肉の側はどうか。同じ筋でも部位によって太り方が違うことは実測されており、種目の選び方で変わる範囲もあります。一方で、筋の形そのものは変えられません。その境目を見ていきます。
この連載の全10回
- 第1回|体型を決めるもの——骨格・脂肪分布・筋量
- 第2回|部分痩せは起きるのか
- 第3回|脂肪はどこに付くか——遺伝・性差・ホルモン
- 第4回|腹筋運動で腹囲は減るか(この記事)
- 第5回|筋肥大の部位特異性——狙った場所は育つか
- 第6回|姿勢とシルエット——骨盤前傾・胸椎後弯の実像
- 第7回|体組成の測り方——体脂肪率という数字の誤差
- 第8回|見た目が変わるまでの期間——実測値
- 第9回|様式の比較——筋トレ・ピラティス・ヨガで体型は違うか
- 第10回|総括——変えられないものとの付き合い方
出典
- Vispute SS, Smith JD, LeCheminant JD, Hurley KS. The effect of abdominal exercise on abdominal fat. Journal of Strength and Conditioning Research. 2011;25(9):2559-2564.
- Kordi R, Dehghani S, Noormohammadpour P, Rostami M, Mansournia MA. Effect of abdominal resistance exercise on abdominal subcutaneous fat of obese women: a randomized controlled trial using ultrasound imaging assessments. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2015;38(3):203-209.
- Armstrong A, Jungbluth Rodriguez K, Sabag A, et al. Effect of aerobic exercise on waist circumference in adults with overweight or obesity: A systematic review and meta-analysis. Obesity Reviews. 2022;23(8):e13446.
- Jayedi A, Soltani S, Emadi A, Zargar MS, Najafi A. Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis. JAMA Network Open. 2024;7(12):e2452185.
- Yarizadeh H, Eftekhar R, Anjom-Shoae J, Speakman JR, Djafarian K. The Effect of Aerobic and Resistance Training and Combined Exercise Modalities on Subcutaneous Abdominal Fat: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials. Advances in Nutrition. 2021;12(1):179-196.
- Chen X, He H, Xie K, Zhang L, Cao C. Effects of various exercise types on visceral adipose tissue in individuals with overweight and obesity: A systematic review and network meta-analysis of 84 randomized controlled trials. Obesity Reviews. 2024;25(3):e13666.
- Irwin ML, Yasui Y, Ulrich CM, et al. Effect of exercise on total and intra-abdominal body fat in postmenopausal women: a randomized controlled trial. JAMA. 2003;289(3):323-330.
- Brobakken MF, Krogsaeter I, Helgerud J, Wang E, Hoff J. Abdominal aerobic endurance exercise reveals spot reduction exists: A randomized controlled trial. Physiological Reports. 2023;11(22):e15853.
- Greendale GA, Han W, Finkelstein JS, et al. Changes in Regional Fat Distribution and Anthropometric Measures Across the Menopause Transition. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 2021;106(9):2520-2534.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。腹囲や体型が気になって食事・運動・人づきあいに支障が出ている場合は、自己流の減量を進める前に医療機関にご相談ください。腹部の膨満や腹囲の急な増加が続く場合、運動中に腰や腹に痛みが出る場合、腹部の手術を受けたことがある方や妊娠中・産後の方は、新しい運動を始める前に主治医に確認してください。






