連載「体型は変えられるか」全10回の第3回です。
第2回の終わりに「その人の減りやすい場所」という言い方をしました。同じだけ体重が落ちても、腹から先に細くなる人と、顔や胸から先に細くなる人がいます。逆に体重が増えたとき、どこから増えるかにも決まった順序があります。この順序は、本人が選んでいるわけではありません。
脂肪がどこに付くかは、健康リスクの観点から長く研究されてきました。腹の内側、内臓のまわりに付く脂肪は、代謝の面で不利に働くことが繰り返し示されています。一方、腰から太ももにかけて付く皮下脂肪は、むしろ保護的だと考えられています。この違いを追いかけるうちに、分布そのものを決める遺伝的な仕組みが見えてきました。
結論から書きます。脂肪の分布には数百の遺伝領域が関わり、その多くは女性でより強く働きます。分布のパターンは選べません。しかし総量が減れば、どこに付いていようと全体として細くなります。
この回では、分布の遺伝、性差、そして閉経前後の変化を順に見ます。最後に、ストレスホルモンと腹部の脂肪をめぐる説明を、どこまで言えるかという観点から検討します。

「分布」とは何を指しているか
脂肪の置かれ方は、二つの軸で語られます。ひとつは皮下か内臓かという深さの軸。もうひとつは、上半身寄りか下半身寄りかという位置の軸です。腹部に集まる型は上半身型あるいは中心性、腰と太ももに集まる型は下半身型と呼ばれます。
研究で最もよく使われる指標は、ウエスト周径をヒップ周径で割った比です。体格指数で全体の量を調整したうえでこの比を見ると、量とは独立した「どこに付くか」の成分を取り出せます。ただしこの比は、周径の測り方の誤差をそのまま二重に受け取る指標でもあります。後で触れるとおり、周径は分布の変化を捉える道具としては鈍いものです。
深さの軸と位置の軸は、完全に独立ではありません。腹部に脂肪が多い人は、皮下と内臓の両方が多い傾向があります。ただし比率には個人差があり、同じ腹囲でも内臓脂肪の量は大きく違います。画像で測らなければ、この違いは外から分かりません。腹囲という一つの数字が、深さの違う二種類の脂肪をまとめて表していることは、以降の回でも繰り返し効いてきます。
分布に遺伝が関わることは、双生児研究の段階から見えていました。シャウスボー(Schousboe)らの成人双生児の研究では、ウエスト周径の遺伝率が女性0.48・男性0.61、ヒップ周径が0.52・0.58と推定されています。全体の量を表す体格指数と同程度の値です。
数百の遺伝領域が関わっている
どの遺伝領域が関わるのかを網羅的に探す解析は、2010年前後から規模を増していきました。
Heid IM, Jackson AU, Randall JC, et al. Meta-analysis identifies 13 new loci associated with waist-hip ratio and reveals sexual dimorphism in the genetic basis of fat distribution. Nature Genetics. 2010;42(11):949-960.
32件の全ゲノム関連解析を統合し、最大77,167名を解析したこの研究は、13の新しい領域を見つけました。追試には最大113,636名が使われています。重要なのは、これらが体格指数で調整したうえで検出された点です。全体の太さとは独立に、脂肪の置かれ方だけを動かす遺伝的な違いが存在するということになります。
規模はその後さらに大きくなります。
Shungin D, Winkler TW, Croteau-Chonka DC, et al. New genetic loci link adipose and insulin biology to body fat distribution. Nature. 2015;518(7538):187-196.
最大224,459名を解析し、体格指数で調整したウエスト・ヒップ比に関連する49領域(うち33が新規)が同定されました。これらの領域は脂肪組織で発現する遺伝子に富んでおり、脂肪細胞の分化、血管新生、転写制御、インスリン抵抗性といった過程が関わることが示唆されています。
Pulit SL, Stoneman C, Morris AP, et al. Meta-analysis of genome-wide association studies for body fat distribution in 694 649 individuals of European ancestry. Human Molecular Genetics. 2019;28(1):166-174.
69万人規模のこの解析では、346の領域に463の信号が見つかりました。そして全体の約3分の1が性によって効き方の違うものでした。ウエスト・ヒップ比を上げる側の対立遺伝子を最も多く持つ上位5%の人は、下位5%の人に比べて、代謝症候群の判定に使われる閾値を超える比を持つ確率が1.62倍でした。分布は、生活習慣の結果としてだけ決まるのではありません。

性差——同じ領域が男女で違う働き方をする
この分野で最も一貫している所見が、性差です。
Randall JC, Winkler TW, Kutalik Z, et al. Sex-stratified genome-wide association studies including 270,000 individuals show sexual dimorphism in genetic loci for anthropometric traits. PLoS Genetics. 2013;9(6):e1003500.
ランドール(Randall)らは27万人規模で男女別の解析を行いました。性差が明確に出たのは7領域で、そのすべてが女性で有意、男性では有意になりませんでした。注目すべきは、どの指標に性差が出たかです。身長・体重・体格指数・ヒップ周径では性差が見られず、ウエストに関わる指標でのみ現れました。効き方が男女で逆向きになる領域は見つかっていません。差は方向ではなく、強さに現れます。
Rask-Andersen M, Karlsson T, Ek WE, Johansson Å. Genome-wide association study of body fat distribution identifies adiposity loci and sex-specific genetic effects. Nature Communications. 2019;10(1):339.
ラスク・アンデルセン(Rask-Andersen)らは、英国の大規模コホート362,499名について、腕・脚・体幹への脂肪の配分そのものを解析し、98の独立した関連を報告しました。うち29はそれまで体格の形質と結びつけられていなかった領域です。そして37の変異は女性で効果が強く出ています。著者らは、女性における脂肪の配分に、間葉系に由来する組織や内分泌組織、細胞外基質の維持と再構築が関わることを示唆しています。
これらの所見は、第1回で見た骨格の話と重なります。男女の体型の違いは、単に量の違いではなく、置かれ方を決める仕組みの働き方の違いでもあるということです。思春期に現れ、閉経前後で薄れるという分布の性差の時間的な経過も、性ホルモンの関与を示唆しています。ただし、ホルモンの変化だけで観察される変化を説明しきれるかどうかは、まだ決着していません。
上に付くか下に付くかは、別々の仕組み
ウエスト・ヒップ比という一つの数字は、実は二つの異なる原因から大きくなります。ウエストが太いからか、ヒップが細いからか。この二つを分けて追いかけた研究があります。
Lotta LA, Wittemans LBL, Zuber V, et al. Association of Genetic Variants Related to Gluteofemoral vs Abdominal Fat Distribution With Type 2 Diabetes, Coronary Disease, and Cardiovascular Risk Factors. JAMA. 2018;320(24):2553-2563.
452,302名の欧州系参加者を解析し、体格指数で調整したウエスト・ヒップ比に関連する202の独立した変異が同定されました。参加者の平均年齢は57歳、比の平均は0.87です。そのうえで、ウエストに特異的な遺伝スコアと、ヒップに特異的な遺伝スコアが別々に作られました。二重エネルギーX線吸収測定法で確かめると、それぞれが確かに腹部の脂肪増加と、腰・太ももの脂肪減少に対応していました。
興味深いのは、どちらのスコアも糖尿病や冠動脈疾患のリスク上昇と結びついていた点です。糖尿病についてはヒップ側のスコアのオッズ比が2.54(95%信頼区間 2.17〜2.96)、ウエスト側が1.57(1.34〜1.83)でした。腹に付きやすいことと、腰や太ももに付きにくいことは、別々の仕組みであり、どちらも代謝に関わります。体型の話としては、同じ「くびれ」に見えるものが、まったく違う成り立ちをしうるということになります。

閉経前後で分布は動く
分布が生涯を通じて固定されているわけではありません。女性では、閉経の前後で明確な移動が起きます。これは横断的な比較ではなく、同じ人を追いかけた縦断研究で確かめられています。
Lovejoy JC, Champagne CM, de Jonge L, Xie H, Smith SR. Increased visceral fat and decreased energy expenditure during the menopausal transition. International Journal of Obesity. 2008;32(6):949-958.
閉経前の女性156名を4年間、毎年測定した研究です。腹部の皮下脂肪は全員で増えましたが、内臓脂肪が有意に増えたのは、期間中に閉経した人だけでした。睡眠中のエネルギー消費の低下は、閉経した群のほうが1.5倍大きく(-7.9%対-5.3%)、脂肪の酸化は閉経した群で32%減っています。閉経しなかった群では変化していません。
Greendale GA, Han W, Finkelstein JS, et al. Changes in Regional Fat Distribution and Anthropometric Measures Across the Menopause Transition. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 2021;106(9):2520-2534.
より長期の追跡もあります。380名を中央値11.8年追跡したこの解析では、腹部の脂肪は閉経移行期の前に年1.21%ずつ増えていたのが、移行期には年5.54%へと加速しました。内臓脂肪は移行期から年6.24%、腰・太ももの脂肪は年2.03%増えています。閉経後は増加が鈍り、腰・太ももの脂肪はむしろ年-0.87%と減少に転じました。
| 時期 | 腹部の脂肪 | 腰・太ももの脂肪 |
|---|---|---|
| 閉経移行期の前 | 年1.21%増 | ほぼ横ばい |
| 閉経移行期 | 年5.54%増 | 年2.03%増 |
| 閉経後 | 年0.90%増 | 年-0.87%(減少) |
この研究はもうひとつ重要なことを述べています。ウエストとヒップの周径は、分布の変化を捉える指標としては感度が低い、という指摘です。実際、周径の年あたりの変化率は1%未満で、画像で測った脂肪量の動きよりずっと小さく出ています。メジャーで測った数字が動かないことは、身体の中身が動いていないことを意味しません。
ストレスホルモンの話をどう扱うか
「ストレスで腹に脂肪が付く」という説明は広く流通しています。副腎から出るコルチゾールが腹部の脂肪蓄積を促す、という筋書きです。ここでは慎重に書きます。今回見てきた遺伝研究も縦断研究も、この因果関係を検証した設計にはなっていません。
観察研究で両者に関連が見られること自体は珍しくありませんが、関連は方向を教えてくれません。腹部の脂肪が多いこと自体がホルモンの動きを変える可能性もあり、睡眠不足や飲酒量といった別の要因が両方に効いている可能性もあります。この連載では、扱える根拠の範囲を超えた因果の主張はしません。ストレスへの対処が有益かどうかは別の問いであり、腹部の脂肪を減らす手段としての効果とは切り分けて考える必要があります。
研究そのものの限界も書いておきます。ここで見た大規模な遺伝解析は、その大半が欧州系の集団で行われました。東アジア系やアフリカ系の集団を対象にした解析も進んでいますが、規模は小さく、見つかる領域も一部食い違います。ある集団で得られた遺伝スコアを別の集団に当てはめたときの予測力は、目に見えて落ちます。ここまでの数字を、そのまま自分に当てはめられるとは限りません。また、遺伝領域が見つかったからといって、そこから何が起きているかまで分かっているわけではありません。関連の発見と、仕組みの解明のあいだには、まだ大きな隔たりがあります。
分布は選べないが、総量は動く
ここまでの所見を、実践の言葉に直します。第一に、脂肪がどこに付くかは選べません。数百の遺伝領域と、性別と、年齢に伴うホルモンの変化が関わっており、運動の種類で書き換えられるものではありません。
第二に、それでも総量は動きます。総量が減れば、分布の比率が変わらなくても、各部位の絶対量は減ります。腹が出やすい人は、痩せても相対的には腹が目立つかもしれませんが、腹そのものは細くなります。分布を選べないことは、変化がないことを意味しません。内臓脂肪については、有酸素運動と減量で減ることが繰り返し示されており、この点は第4回で扱います。
第三に、測り方の限界を毎回思い出す必要があります。周径の測定は巻く高さと張力で数センチ動きます。二重エネルギーX線吸収測定法や生体電気インピーダンス法にも誤差があり、特に後者は体内の水分量に左右されます。写真で見た印象は、照明と角度と姿勢で変わります。統計的に有意な差と、鏡の前で分かる差は別のものです。年1%の変化は、数年積み重なって初めて見えてきます。
次回予告
第4回は「腹筋運動で腹囲は減るか」を扱います。第2回の部分痩せの話を、最も問われることの多い部位に絞って検証します。腹部の運動だけを行った試験の結果、腹囲という指標がどれだけ動くのか、そして内臓脂肪には何が効くのかを、統合解析の数字で見ていきます。
この連載の全10回
- 第1回|体型を決めるもの——骨格・脂肪分布・筋量
- 第2回|部分痩せは起きるのか
- 第3回|脂肪はどこに付くか——遺伝・性差・ホルモン(この記事)
- 第4回|腹筋運動で腹囲は減るか
- 第5回|筋肥大の部位特異性——狙った場所は育つか
- 第6回|姿勢とシルエット——骨盤前傾・胸椎後弯の実像
- 第7回|体組成の測り方——体脂肪率という数字の誤差
- 第8回|見た目が変わるまでの期間——実測値
- 第9回|様式の比較——筋トレ・ピラティス・ヨガで体型は違うか
- 第10回|総括——変えられないものとの付き合い方
出典
- Heid IM, Jackson AU, Randall JC, et al. Meta-analysis identifies 13 new loci associated with waist-hip ratio and reveals sexual dimorphism in the genetic basis of fat distribution. Nature Genetics. 2010;42(11):949-960.
- Shungin D, Winkler TW, Croteau-Chonka DC, et al. New genetic loci link adipose and insulin biology to body fat distribution. Nature. 2015;518(7538):187-196.
- Pulit SL, Stoneman C, Morris AP, et al. Meta-analysis of genome-wide association studies for body fat distribution in 694 649 individuals of European ancestry. Human Molecular Genetics. 2019;28(1):166-174.
- Randall JC, Winkler TW, Kutalik Z, et al. Sex-stratified genome-wide association studies including 270,000 individuals show sexual dimorphism in genetic loci for anthropometric traits. PLoS Genetics. 2013;9(6):e1003500.
- Rask-Andersen M, Karlsson T, Ek WE, Johansson Å. Genome-wide association study of body fat distribution identifies adiposity loci and sex-specific genetic effects. Nature Communications. 2019;10(1):339.
- Lotta LA, Wittemans LBL, Zuber V, et al. Association of Genetic Variants Related to Gluteofemoral vs Abdominal Fat Distribution With Type 2 Diabetes, Coronary Disease, and Cardiovascular Risk Factors. JAMA. 2018;320(24):2553-2563.
- Lovejoy JC, Champagne CM, de Jonge L, Xie H, Smith SR. Increased visceral fat and decreased energy expenditure during the menopausal transition. International Journal of Obesity. 2008;32(6):949-958.
- Greendale GA, Han W, Finkelstein JS, et al. Changes in Regional Fat Distribution and Anthropometric Measures Across the Menopause Transition. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 2021;106(9):2520-2534.
- Schousboe K, Visscher PM, Erbas B, et al. Twin study of genetic and environmental influences on adult body size, shape, and composition. International Journal of Obesity. 2004;28(1):39-48.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。体型や体重が気になって食事・運動・人づきあいに支障が出ている場合は、自己流の減量を進める前に医療機関にご相談ください。腹囲や体重が短期間に大きく変わった場合、閉経前後の症状で生活に困っている場合、ホルモン療法を検討している場合は、婦人科をはじめとする医療機関で相談してください。






