30代のつむじで利き手は分かる?髪の渦と左右差、食い違う研究の読み方

つむじが左巻きなら左利き、という話はどこまで本当か。関連を認めた研究と、認めなかった大きな調査を比較する。髪の渦の向きと位置、利き手、言語を扱う脳の側を分け、日本人の観察や男性を対象とした研究から、頭頂部の写真で自分や家族の左右差を決めつけないための見方を整理する。

美容室で頭頂部を鏡に映してもらったとき、髪の渦が思っていた向きと違って見えた。「左巻きの人は左利きらしい」と聞くと、家族の頭まで確かめたくなる。だが、つむじの写真から利き手を当てる方法として、この話を頼りにするのは難しい。関連を認めた報告がある一方、1,212人を調べた研究では、渦の向きと利き手に関連が認められなかったからだ。[2][15]

鏡で確かめられるのは髪の流れであり、手の好みや言葉を扱う脳の側は別に調べる必要がある。ここでの問いは薄毛や髪の量ではない。30代になって気になった渦から体の左右差を読めるか、という問いだ。研究が食い違う理由を考えるには、回転方向だけを見たのか、位置も調べたのか、誰を対象にしたのかをたどるとよい。[5][15][17]

既存記事「利き手と利き足は同じ側になる?右手と左足の組み合わせを研究から読み解く」には、手と足の好みの組み合わせを譲る。こちらで追うのは、外から見える髪の模様が、手の使い方や言葉を扱う脳の働きの代役になるか、という別の問いである。[5][15]

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髪の向きと、使う側の好みは別の測定である

時計回りか、反時計回りか。つむじの研究では、この回転方向を記録する。さらに、頭頂部の右寄り、左寄り、中央という位置を調べる研究もある。向きと位置は同じ情報ではない。中央にある渦が必ず反時計回りという意味ではなく、それぞれを分けて記録したうえで利き手との関係を調べている。[11][17]

一方の利き手は、髪の流れではなく手を使う際の好みである。研究によっては、右利きと「右利きではない人」に分けて比較している。後者をすべて、どの作業でも左手を使う人と読み替えると、分類が変わってしまう。男性を対象にしたBeatonらの研究も、この右利きと非右利きの比較である。男性での分類と分布を、18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[2]

髪の模様は見える。手の好みも日常で分かる。それでも、見える特徴がもう一方を予測できるかどうかは、実際に組み合わせて確かめる必要がある。時計回りの渦が多い集団で右利きも多ければ、両方の特徴を持つ人は目につくだろう。しかし、それだけで「時計回りだから右利き」とはならない。Jansenらは、渦の向き、利き手、言語の優位側それぞれの分布では従来の結果を再現しながら、特徴同士の関連は見いださなかった。[15]

この違いは日常の答え合わせでも大切だ。家族の中に右巻きの右利きが見つかると、噂が当たったように感じる。そこで確認したいのは、反対の組み合わせも含めて、集団全体でどのような関係があるかである。研究の関心は「当たった人がいた」から先に進み、髪の向きが利き手を見分ける情報として働くかに置かれている。[5][15]

観察の項目を先に決めることにも意味がある。回転方向だけなら、同じ反時計回りとしてまとめられる人たちも、位置まで記録すれば中央・右・左に分かれる。小児科の研究はこの位置を含めて解析した。一方、健康な若い男性の研究は、髪の回転方向に対して手・足・目という複数の機能を照合した。髪の側の情報を増やす研究と、機能の側の情報を増やす研究で、問いの組み立てが違うのである。後者の男性集団の結果が18〜39歳の女性でも再現するかは、別に検証する必要がある。[5][17]

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関連を認めた研究は、何を見つけたのか

関連がないという結果だけを読むと、つむじと利き手の話は単なる作り話に見えるかもしれない。しかし、関連を支持した観察も実際にある。2007年のBeatonらの研究では、男性の非右利き群で時計回りと反時計回りが同数だったのに対し、右利き群では時計回りが多かった。著者らは、回転方向に一定の偏りが生じる人と、出生前の神経系の発達で偶然に左右される人がいるという見方を支持している。これは男性の比較であり、18〜39歳の女性にも同じ分布が成立するかは別の検証課題である。[2]

ここで注目したいのは、支持した研究であっても「非右利きなら全員が反時計回り」とはなっていない点だ。非右利き群に両方の向きが同数あったという観察は、左巻きだけを探せば手の好みが分かる、という単純な対応から離れている。集団ごとの頻度の違いと、目の前の人を間違いなく分類できることの間には距離がある。[2]

位置を加えると、さらに話は細かくなる。2008年のSchmidtらは、小児科を受診した519人でつむじを調べ、そのうち217人では利き手を特定できた。非右利きだったのは40人、利き手を特定できた人の18.4%である。著者らは、中央寄りという位置と反時計回りの向きが、非右利きと関連すると結論した。小児科を受診した子どもの観察なので、18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[17]

この研究が興味深いのは、髪の渦を右巻きか左巻きかだけで処理していないところだ。中央寄りの位置自体にも関連があり、反時計回りの場合は位置によって非右利きとの関係が異なったと報告している。つまり、支持する側の結果を丁寧に読んでも、「回転方向だけ見ればよい」という話にはならない。[17]

ただし、この519人を「利き手とつむじの対応が確認された519人」と書いてはいけない。利き手を特定できた人数は217人であり、全員ではない。小児科での観察という対象も、30代の男女を広く集めた調査とは違う。関連が見つかったという結論を残したまま、誰について、どの人数で比較できたのかを一緒に読む必要がある。[17]

身近な例に置き換えるなら、子どものつむじを見つけて「将来は左利きかもしれない」と会話する場面だろう。この研究は模様と手の好みの関連を調べたもので、髪の向きを変えて手の使い方を変える試験ではない。観察された結び付きは、髪が手を操るという因果の証明でもない。発見の面白さを残すには、著者の結論を強めすぎないことが必要だ。[17]

大きな調査で、同じ結び付きは見えなかった

支持する報告に対して、Jansenらの研究は重要な反証となる。頭髪の渦の向きと利き手を調べた対象は1,212人。その一部の212人では、言葉を作る課題を使い、機能的経頭蓋ドプラ法という血流を調べる方法で、言語を扱う脳の優位側も評価した。結果は、渦の向きと利き手にも、渦の向きと言語の優位側にも関連なしだった。[15]

ここには見落としやすい点がある。各特徴の分布そのものは、以前に報告された結果を再現している。時計回りの人がどれだけいるか、右利きがどれだけいるか、といった単独の特徴を見た段階では、過去の研究と大きく違う話になっていない。それでも、同じ人の中で特徴を結び付けたときには、関連が認められなかったのである。[15]

これは、見た目の多数派が重なることと、予測の手掛かりになることを区別する実例になる。右利きで時計回りの人を見ても、この研究の反証にはならない。調べるべきなのは、それ以外の組み合わせも含めた関係だ。著者らは、利き手や言語の左右差と頭髪の渦に共通の遺伝的基盤があるという見方に、強く反対する結果だと論じた。[15]

2020年のÇetkinらは、健康な若い男性317人を対象に、手だけでなく足と目の好みも調べた。渦は時計回りが76.7%、反時計回りが23.3%だった。向きと手・足・目の好みのいずれにも有意な関連はなく、著者らは機能的な左右差の明瞭な目印にはならないと結論した。男性を対象にした観察であり、18〜39歳の女性で同じ分布や関係が得られるかは、この結果から確定できない。[5]

この研究の特徴は、体の左右差を利き手だけで代表させず、利き足と利き目も比較の対象にした点にある。髪の向きという同じ観察項目に対して、異なる機能の好みを照合する設計だ。手の結果だけを紹介すると、研究者が目や足まで調べた理由が見えなくなる。身体の左右差をまとめて説明する仮説を考えるうえで、照合する機能を広げることには意味がある。[5]

ここまでの研究の限界はまとめておきたい。男性の比較、小児科の観察、より多人数の調査では、対象も観察項目もそろっていない。集団内で見つかった関連は因果を証明せず、集団間の結果の違いだけで原因を特定することもできない。18〜39歳の女性個人の判定に進むには、その対象での検証も必要になる。支持と反証を併記するのは、その違いを残すためである。[2][5][15][17]

数字で読むつむじと左右差

1,212人:つむじの向きと利き手を調べ、関連を認めなかった研究の対象数である。[15]

212人:同じ研究の部分集団で、この人たちには言語の優位側の測定も行った。[15]

317人:手・足・目の好みとの関連を調べた、健康な若い男性の人数である。[5]

76.7%:その男性集団での時計回りの割合。利き手を当てた割合ではない。[5]

217人:小児科の519人のうち、利き手を特定できた人数である。[17]

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宮川涼 Founder

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