ダイエット用カップ麺を選ぶとき、濃厚な味なら塩分も多いと思っていないだろうか。骨スープでは同じ塩分濃度でも油の添加で塩味が強まった。一方、塩味の増加が好ましさにつながらない実験もある。油、香り、口当たりを調べた研究から、味の印象と栄養表示を分けて読む手がかりを探る。
昼休みにカップ麺のふたを開ける。表面に油が浮いているだけで、いかにも味が濃そうに見える。その印象を「塩分が多い」「食事を整える日に向かない」と、そのまま置き換えてよいのだろうか。
答えの芯は、塩味の強さと塩の量を同じものとして扱わないことだ。骨スープの官能評価、つまり人が食べて感覚を評価する実験では、食塩濃度をそろえても、ひまわり油を加えた試料のほうが強い塩味を示した。対象は特定の骨スープであり、市販カップ麺の麺や具を含む製品全体は比較していない。結果はその配合での塩味の評価であり、加工麺食品全般の味や減量効果には広げられない。[3]
さらに、よく塩味を感じることと、おいしいと思うことも別だった。ぶどうの搾りかすを加えたスープなどの実験では、塩味は強まったのに好ましさは下がった。濃い、好き、食事として選びたい。この言葉の間にある小さな隙間を見ていこう。[6]

同じ塩分でも、油があると塩味は強まるのか
中心になるのは、骨スープの塩分と油の配合を調べた食品研究である。食塩は論文で塩化ナトリウムとして扱われている。食塩濃度が0.36%の試料にひまわり油を2.29%加えると、食塩だけを0.36%含む試料より、評価された塩味の強度が有意に高くなった。比較の要点は、食塩濃度を上げた実験ではないところにある。[3]
ここでいう強度は、人が味をどのくらい強く感じたかを尺度上で表したものだ。成分を測る数値と、感覚を表す数値を別々に置いたことで、同じ食塩濃度でも受け取られる塩味が変わることが見えている。「塩味が強まった」という結果を「塩の量が増えた」と読み替えると、この実験の面白い部分が消えてしまう。[3]
研究では、消費者が受け入れられる範囲も調べている。ひまわり油を3.59%加えた条件では、食塩濃度を最低0.14%まで下げても、感覚上の拒否に至らなかったと報告された。また、食塩0.36%、脂質2.29%の配合では、食塩を20%減らしつつ、全体の受容性も改善したという結果だった。[3]
ただし、0.14%の試料と、20%減塩した試料は、同じ結果を別の数字で表したものではない。前者は拒否に至る境界を探す評価、後者は選ばれた配合の評価である。拒否されない濃さを探す作業と、積極的に好まれる味を探す作業は分けて読む必要がある。研究者は油を足せば何でもおいしくなると示したのではなく、食塩と油を組み合わせて配合を検討したのだ。[3]
この結果を昼休みの選び方に戻すなら、「濃厚に感じた」というメモだけから塩分量を逆算しない、という読み方になる。油を含む骨スープで起きた塩味の変化は、そのまま袋に書かれた成分の増減を意味しない。舌は感覚の担当であり、成分表示の読み上げ係ではない。[3]
この実験では、塩味の強度を評価する尺度と、受け入れられなくなる境界を調べる評価が使われている。前者は「どれほど塩辛いか」という質問に近く、後者は「その配合を食べ物として受け入れられるか」という質問に近い。同じ人が強い塩味だと答えたからといって、拒否すると決まるわけでも、好きだと決まるわけでもない。研究の中に複数の評価があるのは、同じ感想を重ねて聞くためではない。[3]
また、配合の濃度を家庭のスプーンの量へ置き換えるのは控えたい。骨スープの研究で比べたのは、その試料に対する食塩と油の濃度である。カップ麺には麺も具もあり、骨スープの試料と同じ食べ物ではない。結果から受け取れるのは、油の添加によって塩味が変わりうるという関係である。自宅のスープで同じ受容性が得られる油の量を、そのまま示す数字ではない。[3]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
脂質を減らすと、何がおいしさを支えるのか
別の食品でも同じ方向に動くのか。クリーミーなトマトスープを使った研究では、脂質を含まないものから通常のものまでの4段階、ナトリウムの3段階、ハーブの有無という条件を組み合わせた。一般消費者96人が好ましさを9段階で評価し、訓練された評価者10人が感覚の特徴を調べた実験である。[4]
結果は、脂質を減らしたときには、ナトリウム濃度の高さがおいしさを支える要因になっていた。また、脂質とナトリウムの組み合わせにより、塩味と口の中で感じるトマトの香りに有意な違いがあった。脂質を減らすという変更は、単に油っぽさを引き算するだけでは済まなかったのである。[4]
低脂質のスープを口にして「何か物足りない」と感じたとき、その感想をすぐ「塩を足せばよい」に結びつけるのは早い。この研究で低脂質・低ナトリウムのスープを特徴づけたのは、酸味やその後味、ざらつき、見た目の暗さでもあった。食べ物の評価には、塩味以外の特徴も同時に入っていた。[4]
ハーブを加えると、低ナトリウム・低脂質のスープの全体的な好ましさは高まった。これは、塩味を最大にすることだけが受容性を保つ道ではないと考える手がかりになる。骨スープで油を組み合わせた研究と、トマトスープでハーブを組み合わせた研究は、料理の種類も変更する材料も異なる。それぞれの配合の中で何を改善したかを読むのが筋である。[3][4]
カップ麺の売り場で「脂質控えめ」の文字を見た場面でも、食べたときの感想を細かくする余地はある。塩味が弱いのか、香りが違うのか、口当たりが違うのか。トマトスープの実験は、その区別をする意味を示している。研究の結果を商品全体の順位表に変えるより、感想の語彙を増やすほうが役に立つ。[4]
塩味が強まっても、好きになるとは限らない
ぶどうの搾りかすを使った食品研究では、トマトスープを88人、野菜ジュースを99人が評価した。搾りかすとは、ワインの製造でぶどうを搾ったあとに残る種や皮などである。減塩食品に加えたとき、塩味の感じ方と消費者の好みがどう変わるかを調べた実験だった。[6]
添加した試料では塩味の強度が高まったが、全体の好ましさと風味への好ましさは下がった。評価では苦味、酸味、ワインの風味も特徴になっていた。塩味を強める材料が見つかっても、その材料が一緒に持ち込む味や香りによって、食べ物全体の評価は変わる。[6]
この結果は骨スープの研究を否定するものではない。骨スープでは油と食塩の配合を調整して受容性を改善できた一方、ぶどうの搾りかすの実験では塩味の増加と受容性の低下が同時に起きた。材料が違い、食品も違う。同じ「塩味が強くなる」という結果から、「好ましさも上がる」という続きは自動的には出てこないのだ。[3][6]
さらに、辛味成分を包み込んでトマトスープに加えた実験では、調べた配合のいずれも塩味の感じ方を有意には変えなかった。成分を包む方法の異なる試験には、それぞれ79人と93人が参加している。一方の方法では、とろみやクリーミーさ、トマトの風味が強まり、全体の好ましさは上がった。[8]
こちらは逆向きのずれである。おいしさの評価が改善しても、塩味が強まったとは限らない。ぶどうの搾りかすと辛味成分の実験を並べると、「強い塩味」と「好ましいスープ」を別々に測る意味がよく分かる。研究の読み手も、目立つ結果だけを拾って、もう一方の評価を省かないようにしたい。[6][8]
辛味成分の研究で使われた「包み込む」という操作にも意味がある。成分そのものの可能性だけを見るのでなく、加工してスープに入れた状態で、実際に塩味が変わるかを評価したのだ。塩味に有意な変化がなかったという結果は、その配合についての結果として受け止める。一方で、とろみなどへの変化と好ましさの改善も残して読む。期待した項目に差がなかったからといって、ほかの結果まで消す必要はない。[8]
「減塩のための材料」と聞くと、塩の代役としての働きだけを期待したくなる。だが、ぶどうの搾りかすは苦味や酸味も加え、包み込んだ辛味成分の配合は口当たりにも関わっていた。食品へ何かを足す操作は、その材料に期待する役割だけを足す操作にはならない。この点を押さえると、油の効果を調べた骨スープも、料理全体の評価を伴う研究として読める。[3][6][8]
数字で読むスープの油と塩味
食塩0.36%:同じ濃度で、油を加えた試料と食塩だけの試料を比較した。[3]
ひまわり油2.29%:この添加条件で、骨スープの塩味が有意に強まった。[3]
食塩20%減:選ばれた骨スープの配合では、減塩と全体の受容性改善が両立した。[3]
消費者96人:脂質、ナトリウム、ハーブを変えたトマトスープの好みを評価した。[4]
トマトスープ88人、野菜ジュース99人:搾りかすによる塩味の増加と好みの低下を調べた別々の試験の人数である。[6]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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