夜に喉が渇くのはなぜ?寝る前の先回りの渇きはマウスで見つかり、人は食事の前後に飲んでいた

夜に喉が渇くのはなぜか。寝る前に体内時計が水を飲ませる先回りの渇きはマウスで見つかった。人では、50人の7日間の記録で渇きは空腹より強く1日を通して安定し、飲んだ水分のおよそ75%は食事の前後だった。汗で減った水の渇きとの違いと、食後の渇きの仕組みも読む。

夜11時、歯を磨いて布団に入る前に、なぜかもう一杯の水が欲しくなる。夕方のレッスンで汗をかいた日なら分かる。何もしていない日にも、渇く。

渇きは、水が足りなくなってから起きる反応だけではない。体の水の釣り合いが崩れる前に、先回りして起きる渇きがあり、体の中心の温度の上昇、食事、体内時計の信号がそれを促すと考えられている[3]。寝る前の先回りの渇きは、マウスで見つかった。眠る時間帯の前に、体の必要とは関係なく体内時計の働きだけで水を飲む量が増え、その増加を止められたマウスは、眠る時間帯の終わり近くに有意な脱水になった[2]。

人ではどうか。この記事で読んだ研究の中に、人で寝る前の先回りの渇きを確かめたものはない。分かっていることはある。50人の大人が7日間続けて、1時間ごとに空腹と渇きを記録した研究では、空腹が1日に2つの山を描いたのに対し、渇きは空腹より強く、1日を通して安定していた[20]。そして、飲んだ水分のおよそ75%は食事の前後にとられていた[20]。人の夜の渇きは、夕食の前後に飲む流れと、汗などで実際に減った水の両方から考える方が、いまの研究の並びに合う、と私は読む。

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渇きは「足りなくなってから」だけではない

渇きは長く、血液に溶けている物の濃さが上がったとき、あるいは血液の量が減ったときに働く、負のフィードバックの反応と考えられてきた[3]。2018年の総説は、そこに新しい見方を足す。体に負担がかかる前に、先回りして起きる適応の反応としての渇きである[3]。

その先回りの渇きを促すのは、体の中心の温度の上昇、食事、そして体内時計からの信号だという[3]。先回りの信号は、渇きが満たされる側にも働く。水を飲んで体の状態が元に戻るずっと前に、渇きを抑えるのである[3]。総説は、渇きを感じることは体液の釣り合いを保つうえで決定的な役割を持ち、それが無視されたり調節が乱れたりすると命に関わる病態につながりうる、とも書いている[3]。

哺乳類の渇きを扱った2023年の総説は、仕組みを数字で示す[8]。浸透圧(体液の濃さ)がわずか1〜2%上がるだけで渇きが起き、それを感じ取るのは、血液脳関門の外にある脳室周囲器官の、特別な浸透圧の受容体である[8]。口や喉、胃腸の受容体から出る、全身の循環に届く前の先回りの信号は、水分を飲んだときには渇きを抑え、食べるときには渇きを促す[8]。渇きには体内時計のリズムもあり、視床下部の視交叉上核がそれを動かしている[8]。

2019年の総説も、渇きとバソプレシンというホルモンの放出が、血漿の浸透圧による古典的な負のフィードバックに加えて、外から来る先回りの信号でも調節されるとまとめる[13]。その先回りの信号は、血液の組成を見張るのと同じ神経と脳室周囲器官に集まる[13]。足りないから渇く道と、足りなくなりそうだから渇く道は、同じ場所で合流している。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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寝る前に水を飲みだめるマウス

寝る前の渇きを正面から調べたのは、2016年にNatureに載ったマウスの研究である[2]。体内時計のリズムは、地球の24時間の光の周期に合わせて動物を先回りさせ、適応させるために発達した、と著者らは書き出す[2]。

研究が示したのは、マウスの眠る時間帯(研究ではZT0〜12と表す)の前に、水を飲む量が増えることだった[2]。この増加は体の必要に動かされたものではなく、すべて中枢の体内時計によって促されていた[2]。この増加を止められたマウスは、眠る時間帯の終わり近くに有意な脱水になった[2]。著者らは、この飲水が眠る間の水と塩類の釣り合いを保つのに役立っているとみている[2]。

仕組みも追われている。体内時計の中枢である視交叉上核のバソプレシン神経が、渇きの神経のある終板脈管器官(OVLT)へ伸び、そこでバソプレシンを伝達物質として放出する[2]。この神経は先回りの時間帯(ZT21.5〜23.5)に電気的に活発になり、受容体を通してOVLTの神経を興奮させる[2]。光で神経を操る方法で、先回りの時間帯より前にバソプレシンを放出させると、OVLTの神経が興奮して飲水の急増が起きた[2]。逆に、先回りの時間帯に放出を抑えると、OVLTの神経の発火が抑えられ、飲水の増加も起きなかった[2]。著者らは、先回りの渇きの存在を明らかにし、それが中枢の時計の神経からのバソプレシンの放出に動かされていると結論した[2]。

ただし、これはマウスの結果である。マウスの眠る時間帯の前の話で、人の夜11時のもう一杯に、この仕組みがそのまま働いているかは、この研究からは分からない。

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食べながら飲む、を先に読む神経

食事のときの渇きにも、先回りの仕組みが見つかっている。同じ2016年のNatureの別のマウスの研究は、問題をこう立てた。ほとんどの飲水は、血液の組成で直接に調節されるには速すぎ、むしろ体の釣り合いが崩れる前に先回りしているようにみえる[1]。

脳の深い所のカルシウムの動きを見ると、渇きを促す脳弓下器官(SFO)の神経は、食べたり飲んだりする間の口からの入力に反応し、それを血液の組成の情報とまとめていた[1]。このまとめによって、SFOの神経は、いま食べたり飲んだりしている物が先々の体液の釣り合いをどう変えるかを予測し、行動を前もって調整できる[1]。著者らは、この発見が、食事中に水を飲むことが多いこと、渇きがすぐに満たされること、口を冷やすと渇きが和らぐことという、昔からの行動の観察を説明する神経の仕組みになるとしている[1]。

渇きと空腹の関係を扱った2014年の総説の章は、食べることと飲むことは同時に起きる行動と見られてきたが、それぞれを切り離すこともできると書く[15]。自由に食べて飲める24時間の条件でも、かなりの量の水が食べることとは関係なく飲まれていた[15]。それでも、食べ物があるときに水を飲むことには、固い食べ物を滑らかにする働きと、胃や腸で溶けた物が吸収されたあとに起きる浸透圧の刺激という、一緒に起きる必要があるという[15]。「食後に喉が渇く」を考える手がかりは、ここにある。

渇きの満たされ方にも、液体と固体の区別がある。光で神経を操る最近の実験をまとめた2019年の総説によると、正中視索前核のある種類の神経が、液体を飲んだのか固体を食べたのかを見分け、SFOなどを通して渇きをすぐに満たす[13]。舌の上で酸味を感じるとされてきた味の細胞が、水への味の反応も担っていることも分かってきた[13]。水にも、舌の上に入り口がある。

人の記録では、渇きは空腹より高く安定し、飲むのは食事のまわり

人の側に戻る。2008年の論文は、自分たちの観察研究を軸に、渇き、空腹、飲むこと、食べることの関係を見直した[20]。50人の大人が7日間続けて、1時間ごとに食欲に関わる点数をつけ、食べた物と飲んだ物を思い出して記録した[20]。

空腹は1日にはっきりと2つの山を描いた[20]。渇きは、それより強く、1日を通して安定していた[20]。飲んだ水分のおよそ75%は食事の前後にとられ、その多くはエネルギーを含む飲み物だった[20]。空腹や渇きの値も、その変化も、エネルギーの摂取の強い予測の手がかりにはならなかった[20]。1日の空腹と渇きの平均の点数には、はっきりした個人差があった[20]。

2010年の総説は、空腹と食べること、渇きと飲むことの結びつきは一般に弱いと書く[18]。その理由の一部は、感覚の測り方の限界にある[18]。足りなくなったら補う、という決まった筋書きでは、考え、人づきあい、感覚、手に取れるかどうかといった多くの要因を説明できない[18]。そのうえで、渇きの点数は空腹に比べて1日を通して高く安定していること、そして渇きは、空腹が食べることを促すよりも強く、飲むことを促すのかもしれないことを挙げる[18]。飲み物は満腹感をもたらす力が限られている、とも書く[18]。

著者らは、高く安定した渇きが飲むことを後押ししている、と提案している[20]。渇きの点数は空腹より高く、1日中安定しているのに、実際に飲む時刻は食事に寄っている。渇きはいつも高めにあり、飲むきっかけは食事に寄っている、という形に見える。夕食のあとから寝るまでの一杯は、この並びの延長にあるのかもしれない。

食事と一緒の飲み物で、渇きの消え方は違った

何を飲むかでも、渇きの消え方は変わりうる。1990年の試験は、食事制限をしていない成人男性42人を対象に、8オンスか16オンスのレモネード(砂糖かアスパルテームで同じ甘さにしたもの)、同じ量の水、何も飲まない条件を比べた[5]。飲む時刻は、好きに選べる昼食と一緒、昼食の30分前、60分前の3つの群に分けた[5]。

昼食と一緒に飲んだとき、食べた量は条件の間で変わらなかったが、飲み物のカロリーを含めると、砂糖のレモネードの条件で摂取量がほかの条件より有意に多かった[5]。昼食の30分前か60分前に飲んだときは、食べた量に有意な差はなかった[5]。食欲の点数は条件の間で変わらなかった[5]。

渇きでは一つ違いが出た。食事と一緒に飲んだとき、8オンスの砂糖のレモネードだけは、ほかの飲み物と違って渇きを有意に減らさなかった[5]。著者らは、食事と一緒にとる砂糖の甘い飲み物は、水やアスパルテームの飲み物より渇きを減らしにくいかもしれないと書く[5]。対象は男性だけで、昼食の場での試験である。それでも、甘い飲み物で渇きが消えにくいという感覚には、研究の手がかりが一つある。もっとも、差が出たのは8オンスのほうだけだった[5]。

数字で読む夜の渇き

  • 1〜2%: 渇きを起こすのに足りる浸透圧の上昇[8]。
  • ZT21.5〜23.5: マウスで、体内時計のバソプレシン神経が活発になる先回りの時間帯。眠る時間帯の始まりの2時間半前から30分前にあたる[2]。
  • 50人・7日間: 1時間ごとに空腹と渇きを記録した人の研究の規模[20]。
  • およそ75%: その記録で、食事の前後にとられた水分の割合[20]。
  • 1.9%: 暑いテントでの60分と水分の制限で減った体重の割合。水分を補った条件では0.2%[11]。
  • 27〜32mm: その脱水の条件で、渇きの線の尺度が補った条件より高かった幅[11]。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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