腕組みと指組みで右脳左脳は分かる?1万2千人超の調査と双子の研究で読む組み方の左右差

腕組みと指組みで右脳派か左脳派かが分かるという話を、研究はどう見てきたか。121集団と192研究の総説、12,720人の調査、509人の検証、双子と家族の研究を読み、組み方の左右の割合、利き手との関係で答えが割れていること、遺伝が確かめられていないことを確かめる。

会議が長引くと、腕を組む。電車を待つあいだ、気づけば指を組んでいる。そのとき上に来るのは右か、左か。組み方で右脳派か左脳派かが分かる、という診断はよく目にする。けれど研究が長く調べてきたのは性格ではなく、組み方の左右の割合と、利き手や遺伝との関係である。

腕組みでは、121の集団を見渡した総説で、左の腕が上になる人が20%から65%、平均54%だった[7]。指組みでは、192の研究を見渡した総説で、左が上になる人が30%から75%、平均43%である[8]。どちらも半々の近くにあり、集団によって大きく揺れる。利き手との関係は、腕組みの総説では見つからず、指組みの総説では小さいとされた[7][8]。

ところが、中央ヨーロッパの2つの大きな集団、合わせて12,720人を調べた2014年の研究は、組み方と利き手の結びつきを見つけている[11]。組み方は利き手と無関係とも、深く関係するとも言い切れない。研究の答えは割れている。脳の左右の型そのものの話は、同じサイトの「右脳と左脳の性格診断にエビデンスはあるか」に譲り、こちらは組み方の側を読む。

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腕組みは左の腕が上がやや多く、集団で20%から65%まで揺れる

腕組みは、片方の前腕をもう片方の上に重ねる癖で、どちらを上にするかの好みが人ごとにある[19]。研究は、上に来る側で「左が上」「右が上」と分けて数える[3]。

1998年の総説は、腕組みを調べた文献を121の集団について見渡した[7]。左の腕が上になる人の割合は20%から65%で、平均は54%だった[7]。ヨーロッパでは左が上の型が多く、年齢と性別による違いは小さかった[7]。

個別の調査の数字も、この幅に収まる。母親、父親、子どもからなる292の家族を調べた研究では、左が上の人が約54%、右が上の人が42%、残りの4%は好みがない、どちらでもよいと答えた[19]。19〜90歳のドイツの628人では、左が上の人が60.2%だった[17]。ロシアのチュヴァシの人々の研究では、左が上の人が男性の52.02%、女性の58.98%で、この男女差は有意だった(p=0.016)[14]。18〜22歳の医学と看護の学生を調べた研究では、53.9%が左の腕を上にした[9]。

平均は左が少し多い。ただ、20%の集団と65%の集団が同じ総説に並ぶ。「腕組みは左が上が普通」と言い切ると、20%の集団の人々を置き去りにする。

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指組みで左が上の人は平均43%、東と西で傾きが変わる

指組みも同じように、左右の好みがある。1999年の総説は192の研究から、左が上になる人の割合を30%から75%、平均43%とまとめた[8]。この総説は、いわゆる東西の勾配を確かめ、ヨーロッパでは左が上の型が多いとしている[8]。年齢と性別による違いは、ここでも小さかった[8]。

個別の数字はこうだ。292の家族の研究では左が上の人が約55%、右が上の人が44%、好みがない人が1%[19]。ドイツの628人では左が上の人が56.4%[17]。チュヴァシの人々では左が上の人が男性の47.63%、女性の49.32%で、男女差はなかった[14]。医学と看護の学生では50.8%が右を上にした[9]。

面白いのは、ヨーロッパの中でも答えが逆になることだ。腕組みと指組みの研究の流れでは、左が上の型がヨーロッパの右利きにとって「標準」とされてきた[3]。ところが、中央ヨーロッパの7,658人と5,062人の2つの集団を調べた2014年の研究は、指組みでは全体として右が上のほうが好まれていたと報告した[11]。著者らは、それまでの結果がどこまで一般化できるかを議論している[11]。

指を組んだときの心地よさを決めるのは、親指の位置か、指の重なり方か。親指はほかの指より感覚が鋭いので、指の重ね方の好みは親指の位置に左右されやすいのではないか、という見立てがある[5]。2012年の調査はこれも調べたが、見えた傾向は統計的に有意ではなく、今後の研究に値するという結論にとどまった[5]。

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利き手との関係は、研究で答えが割れている

組み方は利き手と関係するのか。ここで研究は二つに分かれる。

関係は無い、または小さいとする側。腕組みの総説は、腕組みと利き手のあいだに関係を見つけられず、腕組みと指組みのあいだにもごく弱い関係しかないとした[7]。指組みの総説は、指組みと利き手の関係は小さいとまとめた[8]。2012年の調査は、指組み、腕組み、利き手の左右の好みは互いに独立していると結論した[5]。一方で、指組みと腕組みの好みの強さどうしは相関していた[5]。ドイツの628人の研究は、指組みと腕組みが、利き手や利き足、利き耳、脚の組み方がつくる大きな特徴とは別だという仮説を支持する結果を得た[17]。

関係があるとする側。12,720人の研究は、利き手の分け方に統計の手法を使い、右利きは右が上の指組みと左が上の腕組みに、左利きと両手利きは左が上の指組みと右が上の腕組みに結びつくと報告した[11]。著者らは、それまでの証拠が少なく食い違い、比較的少ない人数と恣意的な利き手の分け方に頼る研究が多かったと指摘している[11]。チュヴァシの研究でも、利き手と指組みのあいだに有意な相関があった[14]。

同じ問いに、「無い」と「ある」が並ぶ。私の読みでは、組み方と利き手の結びつきは、あるとしても小さく、大きな人数で初めて見える種類のものなのだろう。

「隠れ左利き」の説を、509人の組み合わせで確かめる

組み方が注目されてきたのには理由がある。ルリア(1947年/1970年)は、腕の組み方や指の組み方が、左手への隠れた好み、つまり「隠れ左利き」を映すのではないかと論じた[3][19]。腕組みと指組みで左が上になることを、隠れ左利きの兆しとみたのである[3]。その後の研究は、左が上がヨーロッパの右利きの標準の型であることに加え、腕と指を組み合わせて見るほうが、片方だけより脳の左右差について多くを語るかもしれないことを示してきた[3]。

2006年の研究は、この説を509人の健康な参加者で確かめた[3]。腕組みと指組みのそれぞれと、その組み合わせが、12の項目で測った右利きの弱さを予測するかを調べている[3]。結果は三つあった。腕組みも指組みも左が上の人が多く、右利きも多かった。指組みで右が上の人は右利きの度合いが弱かった[3]。右手の好みは、腕と指で上に来る側がそろった組み合わせ、とくに腕も指も左が上の型と結びつきやすかった[3]。右手を好まない人に多かったのは、腕が左で指が右という、そろわない組み合わせである[3]。

著者らの推論はこうだ。腕も指も左が上の型は、運動について左の脳が優位であることを示し、腕が左で指が右の型は、脳の左右差が弱まっていることを示すのではないか[3]。そのうえで、腕組みで左が上になることが隠れ左利きを指すというルリアの考えは、指組みで右が上と組み合わさったときに限って支持される、と結論した[3]。腕も指も一貫して左が上なら、むしろ右利きを予測するようだ[3]。

右脳と左脳に近づくのは、この意味までである。運動の左右の優位という脳の話で、性格の型の話ではない。

数字で読む腕組みと指組み

  • 54%: 121集団の腕組みで、左の腕が上になる人の平均。幅は20%から65%[7]
  • 43%: 192研究の指組みで、左が上になる人の平均。幅は30%から75%[8]
  • 12,720人: 組み方と利き手の結びつきを報告した中央ヨーロッパの2集団の合計(7,658人と5,062人)[11]
  • 509人: 腕と指の組み合わせで、ルリアの隠れ左利きの説を確かめた研究の人数[3]
  • 0.19: チュヴァシの家族の研究で、利き手について得られた遺伝率の推定。指組みと腕組みでは遺伝率が確かめられなかった[14]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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