コーヒーを飲むと眠くなる体質はあるか、カフェインの遺伝子差と抜いたときの眠気

コーヒーを飲むと眠くなる体質はあるのか。飲んでも眠い理由は3つに分けて読める。抜いて12〜24時間で眠気が始まる離脱、379人の試験で覚醒が元に戻るだけだった飲み慣れ、徹夜後にカフェインが効きにくかった遺伝子型。結果が割れた別の試験と、元気のなさの原因も分ける。

昼休みの紙コップを飲み干して席へ戻る。午後2時、まぶたが下がってくる。コーヒーを飲んだのに、ではなく、コーヒーを飲んだから眠くなったように感じる。そういう体質はあるのか。

短く答える。飲んでも眠いことには、少なくとも3つの説明がつく。1つ目は、飲む前から眠かった場合である。カフェインを抜いたときの症状として眠気、だるさ、覚醒の低下などが確かめられていて、抜いて12〜24時間で始まる[21]。2つ目は、カフェインが覚醒を上げていない場合だ。379人の試験では、飲まない人と少ししか飲まない人で上がらず、飲み慣れた人でも抜いて下がった分が元へ戻るだけだった[14]。3つ目は、徹夜のあとでカフェインが効きにくかった遺伝子型や、カフェインでは埋まらない睡眠不足があることである[11][15]。

つまり、飲んでも眠いからといって、体がおかしいとは限らない。カフェインそのものが眠気を起こす体質を示した試験は、この記事では挙げられない。眠くなったのはコーヒーのせいではなく、コーヒーで消えると期待していた眠気がそのまま残っていただけかもしれない。

カフェインと夜の眠りの時刻は「ホットヨガ後のコーヒーはデカフェなら安心か、残るカフェインと眠る時刻を考える」が、汗と体温は「汗をかく量はコーヒーでも増える?カフェインと運動中の体温を分けて読む」が、中断と筋肉痛は「筋肉痛の朝はコーヒーを抜くと違う?カフェインの中断と試験条件を読み分ける」が先に扱っているので譲る。

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379人の試験が示した「元に戻るだけ」

いちばん重要な試験から読む。カフェインを飲まないか少ない162人と、中程度から多く飲む217人が参加した、無作為化二重盲検の試験である[14]。16時間カフェインを断ったあと、100mgのカフェイン、90分後にさらに150mgのカフェインを飲むか、両方とも偽薬を飲み、不安、覚醒、頭痛を自分で評価した[14]。

結果は2つに割れた。飲み慣れた組では、偽薬を飲むと覚醒が下がり頭痛が増えた[14]。飲まない組では、カフェインを飲んでも覚醒が上がらなかった[14]。著者たちの結論は明快で、頻繁に飲むとカフェインで不安が出にくくなる耐性はつくが、覚醒についての正味の利益は得られず、抜くと下がった分を飲むことで基準まで戻しているだけだという[14]。

朝の1杯で目が覚めるという実感は嘘ではない。ただ、それは普段より上へ持ち上げているのではなく、前の日からカフェインを抜いて下がった分を埋めている可能性がある。午後2時の2杯目を調べた試験ではないが、もし同じことが起きているなら、さえわたるのではなく普通に戻るだけである。

この試験には、体質の問いへの答えに近いものがもう1つある。ADORA2A の変異と ADORA1 の変異を合わせて十数か所調べたところ、カフェインによる不安に関わる1か所と、それとほぼ一緒に受け継がれる1か所を除くと、不安にも、覚醒にも、頭痛にも、はっきり関連する変異は見つからなかった[14]。覚醒の感じ方を、調べた遺伝子の違いで説明することはできなかったのである。

さらに、カフェインで不安になりやすい遺伝子型の人は、コーヒーを控えているどころか、むしろ多く飲んでいた[14]。体に合わないものは自然に避ける、という話は、ここでは成り立たなかった。

もちろん、どの研究も同じことを言っているわけではない。国際スポーツ栄養学会の声明は、カフェインは多くの人で注意力や集中の持続に有利に働くとまとめる[8]。健康な80人の試験でも、比較に使った200mgのカフェインは、覚醒の感覚を含めて期待どおりの効果を出した[19]。平均すれば効く。だが平均の中に、効かない人が混じっている。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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抜いたときの眠気は、66本の研究で確かめられている

飲み慣れた人の「元に戻るだけ」を裏づけるのが、カフェインの離脱を扱った総説である。57本の実験と9本の調査を整理し、49に分類された症状のうち、基準を満たした10項目を挙げた[21]。頭痛、疲労、活力の低下、覚醒の低下、眠気、満足感の低下、気分の落ち込み、集中しにくさ、いらだち、頭がぼんやりする感じである[21]。

時間の数字が具体的だ。症状は抜いてから12〜24時間で始まり、20〜51時間で最も強くなり、2〜9日続く[21]。1日100mgでも起こり、一般に量が多いほど頻度や強さが増す[21]。実験では頭痛が50%に出て、生活に差し支えるほどの苦痛や機能の低下は13%だった[21]。思い込みが主な原因ではないともされる[21]。379人の試験が断った16時間は、ちょうどこの窓に入る[14]。

そして、この総説には重い1行がある。離脱の症状を避けることが、習慣的にカフェインをとる理由の中心にあるという[21]。目を覚ますために飲んでいるつもりで、眠くならないために飲んでいるのかもしれない。前の日の夕方の1杯から朝までは、12時間を超えることが多い。朝いちばんの1杯の前の眠気の一部は、夜のあいだに眠ったかどうかとは別の理由で来ているのかもしれない。これは私の読みで、朝の眠気を分けて測った話ではない。

抜くと覚醒が下がる話は、運動の側からは「運動前のカフェインを急に抜く日は、飲み慣れと休止後の頭の重さを分けて考える」が先に扱っている。ここでは眠気の側だけを読む。

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徹夜のあとでカフェインが効かなかった遺伝子型

カフェインの主な標的は、脳のアデノシン受容体である。眠気の信号を受ける受け皿をふさぐことで、眠気の圧力を弱める[1]。受容体のうち A2A 型を作る遺伝子が ADORA2A で、ここには人によって違いがある[16]。

82人の遺伝子を調べ、うち若い男性45人を徹夜させた試験がある[11]。カフェイン200mgを2回飲むと、多くの人では注意力の低下が抑えられたが、HT4 という型をもつ人では、カフェインは徹夜による低下を打ち消せず、回復睡眠で深い眠りが増える反応にも効かなかった[11]。一方、別の覚醒薬は型に関係なく効いた[11]。少なくともこの試験では、効かない型があった。

ただし奇妙なことに、この HT4 の人たちは、徹夜の間ずっと、ほかの型の人より注意の課題が速かった[11]。カフェインは効かないが、もともと速い。カフェインが効かない体質は、必ずしも損な体質ではない。

別の試験は同じ答えを返さなかった

ここで話が揃えば簡単だが、揃わない。37人の徹夜の二重盲検の試験では、注意の反応時間について、ADORA2A は徹夜の影響は左右したが、カフェインの効果は左右しなかった[6]。カフェインの効果を左右したのは、体内時計の遺伝子の1つである PER3 だった[6][9]。

22本の報告を整理した系統的レビューは、CYP1A2 の違いは認知の働きと、ADORA2A の違いは不安と睡眠の乱れと関連すると分けている[2]。眠気そのものの差を決める遺伝子として、1つを指させる段階ではない。著者たちも、どの変異がどの結果に関わるのかを調べる研究がさらに必要だと書く[2]。

CYP1A2 はカフェインの95%を分解する酵素で、ここにも個人差がある[16]。同じ杯数でも血中にとどまる度合いが変わる、という話である。しかも分解の速さを左右するのは遺伝子だけではない。年齢、性とホルモン、肝臓の病気、肥満、喫煙、食事、一緒に飲む薬まで挙がる[16]。遺伝子の検査結果を1枚もらっても、それだけで午後2時の眠気は説明しきれない。

研究の偏りにも気をつけたい。コーヒーと睡眠の系統的レビューは、研究の大半が西洋の成人男性で行われ、一般化に限界があると書いている[10]。ここで読んだ徹夜の試験にも、若い男性だけのものがある[11]。立川駅北口で紙コップを持っている女性にそのまま当てはまるかは、確かめられていない。

そもそも、カフェインが効かないのか、寝不足に弱いのかは、分けて考える必要がある。睡眠不足への弱さそのものにも遺伝子の候補が挙がっていて、アデノシン系、体内時計、認知の発達、ドーパミン、免疫に関わる遺伝子まで並ぶ[9]。飲んでも眠い人の一部は、コーヒーが負けているのではなく、もともと寝不足に強くないだけかもしれない。

元気のなさの原因として、カフェイン以外に4つが挙がる

飲んでも眠い理由を、遺伝子だけに求める必要はない。カフェイン入り飲料の総説は、人が元気のなさを感じる原因として、睡眠不足、体内時計の時間帯、起きた直後のぼんやり、同じ作業を続ける疲れの4つを挙げている[13]。カフェインはこれらに対抗する手段として調べられてきた[13]。

ところが、対抗しきれない領域がある。睡眠不足の神経科学をまとめた総説は、カフェインは睡眠の代わりにはならず、重い睡眠不足で落ちた高次の認知機能にはほとんど効かないと書く[15]。徹夜や睡眠不足の対策として有効とされるのは、回復の睡眠、睡眠を延ばすこと、カフェイン、そして仮眠である[12]。

昼食のあとの2時、前の晩が5時間で、午前中ずっと同じ表を埋めていた。こういう日の眠気は、4つのうち2つか3つが重なっているのだろう。紙コップ1杯に任せるには、荷が重い。

コーヒーを飲む時刻の問題もある。運動の研究で最もよく使われるカフェインのタイミングは運動の60分前で、最適な時間はとり方で変わるとされる[8]。ただし、これは運動前にとる時刻の慣行で、飲んでから何分で覚醒が上がるかを測った話ではない。飲んだ直後の眠気の答えにはならない。

数字で読むカフェインと眠気

  • 379人: 飲まない組162人と飲む組217人の二重盲検。飲む組の覚醒は基準へ戻るだけだった[14]
  • 16時間: その試験でカフェインを断った長さ。飲み慣れた組は偽薬で覚醒が下がった[14]
  • 95%: 摂ったカフェインのうち CYP1A2 が分解する割合[16]
  • 45人: 5つの型を含む若い男性を徹夜させた試験の人数。HT4 型ではカフェインが低下を打ち消せなかった[11]
  • 12〜24時間: カフェインを抜いて眠気などの症状が始まるまでの時間。ピークは20〜51時間[21]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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