健康食指数(HEI)など食事の質の点数は、体重や体脂肪とどう結びつくのか。20年の間隔で点数を測った多民族の研究、中国の高齢者の調査、点数を上げる指導の試験、減量後の女性の追跡、妊娠中の研究から、点数が示せることと、食べる量や体格に紛れて示せないことを確かめる。
日曜の夕方、スーパーの袋を2つ、台所の床に下ろす。食パン、牛乳、冷凍の唐揚げ、バナナ、ほうれん草、それに缶コーヒーが3本。どの包みの裏にもエネルギー量は刷ってあるのに、袋の中身をまとめて採点した数字は、どこにも見当たらない。
栄養の研究には、その「まとめた点数」を付ける道具が何種類もある。果物、赤身肉、砂糖入りの飲み物といった項目ごとに食べ方を点に換え、足し合わせて一つの数にする[18]。健康食指数(HEI)はその代表で、減量の試験がこの点数をどれだけ動かしたかを集めた系統的レビューまで書かれている[5]。
ただし、点数の高い人ほど体脂肪が少ないのかという話と、点数を上げれば体重が動くのかという話は、研究の上では別の問いとして扱われる。前者を受け持つのは長い観察研究で、後者を受け持つのは介入試験だ。20年の間隔をあけて点数を測った研究は前者の側にあり、その結果から後者の答えを言い当てることはできない[14]。

点数は一皿ではなく、食べ方のまとまりを採点する
健康食指数には版がある。米国の過体重・肥満の成人を対象にした減量試験の系統的レビューは、2005年版、2010年版、2015年版のいずれかで食事の質を測った試験を集めた[5]。同じ名前の物差しでも、版によって採点の基準が違う。古い論文と新しい論文の点数を、そのまま横に並べるわけにはいかない。
国が変われば、物差しの作りも変わる。ギリシャの小児肥満の外来に通う2〜18歳の1,335人を調べた研究は、食事の多様さ、食品の質、栄養の釣り合い、食事の取り方という4つの小項目からなる食事質指数(DQI)を使った。子どもたちの総合点は63.1%で、10人に3人は質の低い食事と判定されている。過体重の子は、肥満の子より総合点が高かった。男の子は女の子より総合点が高く、都市に住む子は農村の子より食品の質の点が高かった。2〜5歳の幼い子は、栄養の釣り合いの点がほかの年齢より低かった[11]。
植物の食品に目を向けた指数もある。植物性食品指数(PDI)には、植物の食品を「健康的」と「健康的でない」に分けて点を付ける2つの派生版(hPDI・uPDI)がある[3]。同じ食卓を採点しても、どの物差しを当てるかで、何が加点され何が減点されるかが入れ替わる。日曜の買い物袋で言えば、缶コーヒーの3本をどう数えるか、ほうれん草とバナナをどの欄に入れるかが、物差しごとに違うということだ。
だから論文を読むときに見るべきは、点数の高さそのものより、同じ物差しの中で高い群と低い群がどれだけ離れていたか、同じ人の点数がどれだけ動いたかになる。満点も項目も違う点数どうしを比べて、どちらの国の食事が上かを決めることはできない[5][11]。
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
20年分の点数と、MRIに写った内臓脂肪
多民族コホート研究の参加者のうち約2,000人は、1993〜96年の登録時と2013〜16年の受診時の2回、食べた量まで答える較正済みの食物摂取頻度の質問票(何をどれくらいの頻度で食べたかを答える調査票)に回答し、そこから2010年版の健康食指数が計算された。受診時にはDXA(弱いX線で脂肪と筋肉を分けて測る検査)とMRIで、体脂肪の量と付き方を調べている[14]。
点数の平均は、登録時も受診時も女性のほうが高く、登録時は女性67.4、男性64.0、受診時は女性73.6、男性71.0だった。過去の点数も今の点数も、男女とも体脂肪の指標と逆向きに結びついていた。20年間高い点数を保った人と低い点数のままだった人を比べると、内臓脂肪が多い状態になるリスクは女性でだけ有意に低く、脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)のリスクは男女とも点数が高いほど低かった。ただし男女で関連の強さが違うかを調べる交互作用の検定は有意でなく、女性で強く見えたのは傾きと平均の差の大きさからの読みにとどまる。観察研究なので、点数の高さが内臓脂肪を減らしたと言える設計にもなっていない[14]。

中国の高齢女性では、お腹まわりにだけ差が出た
中国の健康栄養調査(CHNS)を使った研究は、1993年から2015年まで続く調査から、60歳以上で2回以上の調査に参加した人を、開始時の体格にも条件を付けて選んだ。食事は連続3日間の24時間思い出し法で聞き取り、調味料と食用油は家庭で量っている。点数には、2016年版の中国の食事指針の主な推奨をもとにした高齢者向けの食事指針指数(CDGI-E)を使った[17]。
考えられる交絡要因を調整した後、点数を6つに分けた最上位の女性は、最下位の女性に比べて腹部肥満のオッズ比が0.62(95%信頼区間0.41〜0.92)で、論文はこれを38%の低下と表している。男性では関連が見られず、全身の過体重・肥満とのつながりは見つからなかった。体重計の数字には差が出ないまま、お腹まわりの分類にだけ、それも女性にだけ差が出たことになる。地域の調査を何度も重ねた観察の結果であり、点数を上げた人の腹部が引き締まったと読む材料はここには無い[17]。
点数は指導で上がるが、上がり幅は数点のことが多い
点数を上げる側の研究に移る。米国の過体重・肥満の成人を対象に、行動面の働きかけを含む3か月以上の減量試験を集めた系統的レビューは、3,707件の文献から18本の無作為化比較試験を選んだ。参加者は1本あたり34〜413人で、対面の指導、携帯端末を使う指導、特定の食品を食べるよう指示する方法まで幅があった。健康食指数の変化は改善なしから20点の改善まで開き、多かったのは4〜7点の改善である。著者らは、減量の行動療法が食事の質を上げる証拠は限られ、改善は控えめだったとまとめている[5]。
減量ではなく、体重が増えるのを防ぐ試験でも点数は動いた。オーストラリア・ビクトリア州の農村の町41か所を、健康的な生活の指導を行う町(21か所)と行わない町(20か所)に無作為に割り付けた試験で、18〜50歳の女性の食事を食事指針指数(DGI)で比べた二次解析がある。開始時と12か月後のデータがそろった409人のうち、申告したエネルギー量がもっともらしい220人を解析した。指導を受けた町の女性では点数が6.2%改善し、対照の町では変化がなかった。点数の変化と体重の変化には負の関連があり(β −0.66、95%信頼区間 −1.2〜−0.12)、点数の上がった人ほど体重は増えにくい方向にあった。エネルギーに占めるたんぱく質の割合とグリセミック指数(食後の血糖の上がりやすさの目安)も指導群で改善しており、論文はこの指導を低強度の介入と呼んでいる[16]。
痩せた後の点数は、体重が戻った人と戻らなかった人で分かれた
農村に住む乳がん治療後の女性131人は、減量の指導で体重を5%以上減らした後、体重を保つための指導に進んだ。食事の質は代替健康食指数(aHEI-2010)で測った。開始時に平均52.3点だった点数は6か月で60.7点に上がり、18か月でも58.4点で、6か月から18か月のあいだに有意な低下は見られなかった[18]。
18か月の時点で、体重の戻りが5%以内に収まった人の点数は60.7点、5%を超えて戻った人は56.0点だった。偶然にも、6か月時点の全体の平均と同じ数字が戻りの小さい側に並ぶ。項目別では赤身肉と果物の点数が健康的な側にあり、砂糖入りの飲み物にも同じ傾向が見えたが、こちらは統計的に境界の値だった。点数を保てたから体重が戻らなかったのか、体重が戻らなかった人が食事も崩さなかったのかは、この解析では区別できない[18]。
数字で読む食事の質の点数
約2,000人:多民族コホート研究で、20年の間隔をあけて2回、健康食指数を計算した男女の人数[14]。
0.62:中国の60歳以上の女性で、点数を6つに分けた最上位の群の腹部肥満のオッズ比(最下位の群に対する値)。男性では関連なし[17]。
4〜7点:米国の減量試験18本で、健康食指数の改善として多かった幅。改善なしの試験もあった[5]。
6.2%:オーストラリアの農村の町で生活の指導を受けた女性の、12か月後の食事指針指数の改善(対照の町では変化なし)[16]。
60.7点と56.0点:減量した乳がん治療後の女性の、18か月時点のaHEI-2010の点数。順に、体重の戻りが5%以内の人、5%を超えた人[18]。
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
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