ダイエットのクリームチーズ、冷蔵直後はなぜ硬い?発酵・安定剤と温度変化

ダイエット中、冷たいクリームチーズが塗りにくいからと温めると、使う量まで増えるのだろうか。市販品の温度試験、製造条件、安定剤、口の中の食感の研究を手がかりに、柔らかさと実際の使用量を分けて考える。塗り広げる前に取り分ける工夫と、研究の温度を食べ方の目安にしない理由も示す。

冷蔵庫から出したクリームチーズを朝のパンに塗ろうとして、表面だけがナイフについてくる。パンを押さえ、容器へ戻り、また少しすくう。塗りにくさに手間取ると、「柔らかくしたら今度は使いすぎるのか」と気になるかもしれない。

答えの芯は、温度で変わるのはまずチーズの力学的な性質であり、その変化を食べる量の増加と同じには扱えない、である。米国の市販クリームチーズを調べた実験では、脂肪を含む製品で加熱に伴い弾性的な硬さが大きく低下した。これは食品を対象とする物性試験である。18〜39歳の女性が家庭で使う量への影響は、この結果だけでは判断できない。[7]

既存記事「ダイエット中のクリームチーズはふんわりなら軽い?塗る体積と表示の分母を読む」には空気を含む見た目と表示の読み方を譲る。ここでは同じ容器のチーズでも、冷たい時と温度が上がった時にナイフへの抵抗がどう変わるか、その違いを朝食の取り分けにどう生かすかを考える。

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温めると変わるのは、まず押した時の抵抗である

クリームチーズの「硬い」は、感想だけでなく測り方を持つ。食品を押し込んだ時の抵抗、広げる時の抵抗、小さく変形させた時に元へ戻ろうとする性質などである。市販品の実験では、押し込みと広げる試験に加え、訓練された評価者による硬さや塗りにくさの評価も行われた。同じ食感を、装置と人の両方から確かめている。[7]

この研究が扱ったのは、米国で販売される通常脂肪、脂肪を減らした種類、脂肪を含まない種類を合わせた18試料である。温度を5°Cから80°Cへ上げ、さらに冷却する条件で性質を調べた。測定項目の貯蔵弾性率は、小さな変形に対して弾性的に支える性質の指標である。パンに塗った面積そのものでも、食べた重さそのものでもない。[7]

脂肪を含む種類では、40°Cまでの加熱中に貯蔵弾性率が急に低下し、その低下は脂肪を減らした種類より通常脂肪の種類で大きかった。加熱中の25°C未満では、通常脂肪の多くの製品が、ほかの種類より高い貯蔵弾性率を示した。つまり、冷たい時の硬さの違いに加えて、温度上昇に伴う変化の大きさにも製品差がある。[7]

ここで「40°Cが塗る時の適温だ」と読み替えてはいけない。この温度は物性の変化を観察した実験条件である。家庭の朝食で目指す温度や、保存してよい温度を決めた試験ではない。食品を測るための温度と、食べるための手順は役割が違う。[7]

また、人による評価では、通常脂肪の製品は比較対象より硬く、まとまりがあり、溶けにくく、塗り広げにくい一方、べたつきは少なかった。この比較では、硬さが大きい製品ほどべたつきも大きい、という対応にはならなかった。ナイフに残るから硬い、すぐ広がるから脂肪が多い、といった単独の手触りによる判定は、この比較と整合しない。[7]

朝の台所へ引き寄せるなら、最初に確かめたいのは「今日は薄く塗れたか」より「同じものを、同じ条件で扱ったか」だ。冷たいチーズと温度が上がったチーズで手の抵抗が違っても、それだけで自分の食べ方を採点する必要はない。ナイフは便利だが、量を自動的にそろえる道具ではない。

押し込み試験は、食品へ器具を入れる時の抵抗を見る。一方、小さな振動を加える測定は、構造を大きく崩さない範囲で支える性質を見る。人による評価には、口の中でのまとまりや溶けにくさも含まれる。異なる方法で似た傾向が見えれば食感を理解する助けになるが、それぞれが答える問いは異なる。[7]

たとえば容器からすくう瞬間と、パンの上へ押し広げる瞬間を思い浮かべたい。どちらも普段は「塗る」と呼ぶ作業だが、研究では押し込みや広げる操作を分けて測っている。[7] 朝に困った場面を言葉にする時も、すくいにくいのか、伸びにくいのか、ナイフから離れにくいのかを分けると、買い替える前に何を確かめたいかが明確になる。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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同じ温度でも、製造時にできた構造は違う

温度だけで全製品の塗りやすさを説明することもできない。クリームチーズの製造には、酸によって乳の成分が網目状につながる段階があり、その後にかき混ぜる、加熱する、水分を除くといった工程が続く。製造条件を変えた実験は、この最初の網目と完成品の硬さが、単純な対応にならないことを示している。[4]

製造実験では、乳を均質化する圧力を10 MPaと25 MPa、発酵温度を20°Cと26°Cとして比較した。均質化は脂肪の粒などの状態を整える処理である。最初にできた酸性のゲルは、発酵温度と均質化圧力が高いほど押し込みに対する抵抗が増した。しかし、かき混ぜて加熱した後には、高い発酵温度で作った試料の見かけの粘度が低くなった。[4]

完成したクリームチーズでは、発酵温度が上がるほど、貯蔵弾性率、装置による硬さ、人が感じる硬さが低下した。これらの指標の間には強い相関があり、相関係数は0.84を超えた。最初のゲルの頑丈さだけを見て、最終製品も硬いはずだと予測する読み方は、この工程全体の結果を取り落とす。[4]

研究者は、高い発酵温度では粗い網目ができやすいことや、脂肪の粒の表面と周囲でたんぱく質の分布が変わることが、完成品の硬さに関わる可能性を論じている。カゼインという乳たんぱく質が、どこで構造を支えるかが問題になる。単に温かいから柔らかいという、食卓での温度変化とは別の話である。[4]

さらに、発酵温度と均質化圧力がともに高い条件では、完成品のべたつきが大きく増した。柔らかくなったら必ずナイフ離れまでよくなる、という一列の変化ではなかった。食べ物の構造には、押せるか、流れるか、くっつくかという別々の側面がある。[4]

この違いは、家庭で製造工程を再現するための知識ではない。買い替えたチーズが前のものより塗りにくくても、すぐに冷蔵庫の温度だけを疑わなくてよい、という見取り図になる。同じクリームチーズという名前でも、作られた時点で異なる出発点を持つからだ。[4][7]

安定剤と酸性度も、柔らかさの意味を変える

クリームチーズの水分が分かれて出る現象を抑えるために、製造時に安定剤を使うことがある。安定剤を比較した実験では、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガムをそれぞれ使った製品と、それらを組み合わせた製品を作った。組み合わせた製品は、単独で使った製品より硬さが高かった。[6]

比較した濃度は、単独なら0.33%、組み合わせなら各0.11%である。合計量をそろえても硬さに差が生じ、組み合わせによる相互作用が問題になった。安定剤の名前を見て、入っているかどうかだけで塗りやすさを予測するより、組み合わせまで含む製品設計として読む必要がある。[6]

温度との関係も一様ではない。35°Cを超える領域では、キサンタンガムを使った製品と混合した安定剤の製品が、ほかの製品より高い貯蔵弾性率を示した。冷却中にも温度領域によって差があった。温度が上がれば全製品が同じように抵抗を失う、という説明では足りない。[6]

別の製造実験は、酸性度を示すpHに注目した。試験用のクリームチーズでpHを約4.2から6.8へ上げると、硬さが低下し、加熱した時の溶けやすさが増した。電子顕微鏡では、脂肪の粒を囲むたんぱく質の網目にも大きな変化が見られた。研究者は、水との相互作用によってカゼインの網目が膨らむという仮説を支持する結果だとしている。[15]

これは家庭で酸性度を調整する提案ではない。酸味の感じ方からpHや硬さを逆算する方法でもない。温度、脂肪の状態、たんぱく質と水の関わり、安定剤の組み合わせが重なるからこそ、指に感じる柔らかさを栄養成分の判定器にしない、という説明になる。[6][7][15]

数字で読むクリームチーズの抵抗

18試料:市販の通常脂肪、脂肪を減らした種類、脂肪を含まない種類を比較した食品物性の実験である。[7]

40°Cまで:脂肪を含む種類で貯蔵弾性率が急に低下した加熱域であり、食べ方の推奨温度ではない。[7]

0.84超:製造実験での貯蔵弾性率、装置による硬さ、人が感じる硬さの相関係数である。[4]

0.33%:安定剤の単独添加量。混合条件は各0.11%で、混合した製品の硬さが高かった。[6]

0.85〜1.99 N:成分を加えたクリームチーズの官能・物性研究で示された硬さの変化幅である。[5]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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