ダイエット中のキムチ鍋は菌も摂れる?煮た具の酸味と香りから加熱を読み解く

ダイエット中のキムチ鍋で、生のキムチと同じように菌を摂れるのか。分離した乳酸菌の耐熱性、菌が作った物質、発酵白菜を煮たときの酸味と香りを食品実験から読み分ける。熱に強いという数字を家庭の煮込み時間に置き換えず、鍋の具と生の付け合わせを選ぶときの判断を整理する。

鍋のふたを開けると、キムチの酸っぱい香りが湯気とともに立つ。「乳酸菌まで煮てしまった」と気になる。火を止めてから加えるべきだったのか。温かい夕食を作るつもりが、鍋の前で菌のことを考え始める。

生のキムチと煮たキムチを、生きた菌の摂取という点で同じものとして数えるのは避けたい。ただし、温度だけで菌が全部残るか全部なくなるかを決めるのも乱暴だ。キムチから分離した菌には熱への耐性が調べられたものがあり、菌そのものとは別に、加熱後にも働きが保たれた物質もある。[4][16][18]

既存記事「キムチ・発酵食品とダイエットの科学 体重が減った研究で比較相手を確かめる」には体重の論点を、「間食のキムチは加熱しても菌が働く?生きた菌と残る成分の違いを研究で読む」には加熱の一般論を譲る。ここで考えるのは、鍋に入れた発酵白菜の酸味や香りが変わることと、生菌が残ることをどう読み分けるかだ。[3][4]

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生の付け合わせと鍋の具は、同じ条件ではない

キムチを食べる場面は、冷たい小皿だけではない。発酵白菜を生で食べる場合と、煮る場合、炒める場合を比べた食品実験がある。18〜39歳の女性が食べた後の健康変化に、そのまま当てはめることはできない。対象は中国の発酵白菜であり、日本の家庭で作るキムチ鍋そのものではないが、発酵した野菜に加熱を加えたときの品質を考える手掛かりになる。[3]

その研究では、煮ることと炒めることによって、香り成分や官能特性、つまり人が感じる味や香りなどの性質が変化した。調理後には滴定酸度も上昇した。滴定酸度は、酸を中和する操作から酸の量を評価する指標である。[3] 食卓でいう「酸っぱい」と、測定した酸の量は、関連する話でも同じ表現ではない。

ここで注目したいのは、実験が何を比較したかだ。発酵白菜という食品について、未調理、煮る、炒めるという調理条件を比較している。人に食べてもらって体重や腸内環境を追った試験ではない。[3] 鍋の香りが変わった理由を考えるときには役立つが、その変化をダイエット効果の大小に読み替える用途には向かない。

帰宅後の献立で「今日は温かい鍋にしたい」と思うことと、「生きた乳酸菌を摂るためにこれを選ぶ」と考えることは、別の目的として置ける。前者なら調理後の味が大事になり、後者なら菌の状態を確かめる必要がある。発酵白菜の風味を測る実験と、分離菌の耐熱性を測る実験は、それぞれ違う部分を支えている。[3][16]

キムチという材料名だけで、調理後も未調理の状態を保っていると考えないことだ。逆に、加熱したから発酵した素材としての特徴まで消えるとも考えない。煮た発酵白菜では、新たな香り成分が生じ、酸度にも変化があった。[3] 生か加熱かの優劣より、料理として何が変わったかを先に見ると、鍋を選ぶ理由がはっきりする。

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耐熱性の数字を、煮込み時間の目安にしない

キムチ由来の乳酸菌を調べた実験では、菌株ごとの性質を測っている。菌株とは、同じ種類の菌の中でも区別して扱う個々の系統である。大根の水キムチから乳酸菌を800株分離した研究では、その中から硝酸塩などに対する性質をもとに選んだ菌株について、酸や胆汁、熱への耐性を評価した。対象は分離した菌であり、18〜39歳の女性の腸内で同じ性質を発揮するかは、この実験では確かめていない。[16]

選ばれたのはラクトプランチバチルス・プランタラムのLB5という菌株で、40℃、50℃、60℃の加熱に対する耐性が報告された。[16] この数字が示すのは、選抜した特定菌株の実験条件下での性質だ。「乳酸菌はこの温度ならどれも平気」とするための共通基準ではない。

別の研究は、サツマイモの茎で作ったキムチから分離した乳酸菌を対象としている。調べた4菌株では、75℃の熱処理後にも培養して数えられる菌が確認された。菌株の実験なので、18〜39歳の女性が煮たキムチから摂取できる生菌数にそのまま当てはめることはできない。[4] 水キムチの研究と合わせると、加熱という言葉だけで生存を一律に決めるより、どの食品から取り出したどの菌なのかを確かめる必要があると分かる。[4][16]

ただし、この結果を家庭の鍋へ直結させてはいけない。サツマイモの茎のキムチから取り出した菌の性質と、市販の白菜キムチを具材や煮汁とともに調理した結果は、対象が違う。[4] 実験の温度をひとつ覚えて、鍋の中に同じ菌数が残ると見積もる計算はしない。

「菌は熱に弱い」と聞いた人と、「熱に耐えた菌がある」と読んだ人が、反対の結論に向かうことがある。両方とも、主語を乳酸菌全体に広げると話が粗くなる。これらの研究で調べたのは、分離し、選び、条件を設けて評価した菌株である。[4][16] 実験の細かな温度は、台所の正解を決める数字というより、比較の条件として読むほうがよい。

火を止めた鍋に後から足せばよいのかという迷いも、同じ整理になる。目的が生菌の摂取なら、後入れという操作名だけで未加熱と同じ扱いにはしない。生菌をめぐる判断には菌株や処理条件が関わるからだ。[4][16] 味のために後から加える工夫と、生菌数を保証する工夫を同じ説明にしないようにしたい。

酸味が残っても、生菌の証明にはならない

キムチ鍋を食べて酸味を感じると、発酵の働きもそのまま続いているように思える。しかし、菌が生きていることと、菌が作った物質があることは分けて扱う必要がある。キムチ由来の乳酸菌を調べた食品微生物の実験では、菌体を除いた液にも抗菌活性が認められた。[2]

この実験で使ったのは、4菌株の培養液から菌体を取り除いた上澄み液である。研究者は、それぞれの液が食品に関わる病原菌などの増殖を抑える性質を調べた。対象は培養液であり、18〜39歳の女性が食べた場合の健康効果にそのまま当てはめることはできない。酸性を中和すると抗菌活性は下がった一方、熱処理では下がらず、乳酸や酢酸などの有機酸がその性質に関わると考察している。[2]

菌を取り除いてから液の働きを調べた、という順番が大切だ。加熱後も活性が保たれたという結果は、生きた菌が残った証拠として出されたものではない。[2] 鍋で酸味を感じたことから生菌数を推定するのも、この区別を飛び越えてしまう。味見は夕食のための作業であって、培養検査の代わりにはならない。

また、ここでいう抗菌活性は、食品保存などへの応用を考えるための実験結果だ。酸っぱい鍋を食べれば体内で病原菌を減らせる、という食べ方の効果ではない。[2] 食品の中での微生物の増殖と、食べた人の健康は、同じ「菌」という語を使っていても評価する対象が異なる。

調理した発酵白菜で滴定酸度が上がったという研究も、酸味を生菌の目印にしないために読める。調理後に酸に関わる指標が変化したこと自体は確認されているが、それは乳酸菌の生存率を表す数字ではない。[3] 「酸っぱいから生きている」「酸味が弱まったから全部死んだ」と、舌の印象だけで判断するのは避けたい。

鍋のつゆを味見するときには、酸味が好みに合うかを見ればよい。そこに生菌摂取の確認まで背負わせる必要はない。発酵で生じた物質を評価する話、生きて増殖できる菌を評価する話、料理のおいしさを評価する話を分けると、ひと口の感想から言いすぎずに済む。[2][3][4]

もうひとつ、数字を比べる前に押さえたいのが、菌を調べる方法の違いだ。海産物を加えたキムチなどを対象とする研究では、菌を培養して調べる方法と、培養を介さず調べる方法で、検出された菌や相対的な多さが異なった。研究者は、菌によって回収されるDNAの割合が異なることも確認している。食品中の菌の検出を比べた研究なので、18〜39歳の女性の体内の菌の構成を示す結果としては使えない。[7]

培養は、菌を育てて調べる操作である。この研究では、使う培地によっても乳酸菌やバチルス属の検出される割合が違った。[7] つまり、研究の菌の一覧を見るときにも、それがどんな方法で得られた一覧なのかが関わる。「菌が見つかった」という短い説明だけでは、鍋で生き残った菌を数えた話なのかさえ区別しにくい。

家庭の献立で検査方法まで覚える必要はないが、菌数らしい数字を見たら、その数字の出どころを確かめる習慣は役立つ。今回の培養法の比較は海産物入りなどのキムチを調べた研究であり、加熱した鍋の残存率を測った結果ではない。[7] 商品名や料理名に加えて、検査の目的も確かめる。生存、食品中の成分、食べた後の変化のどれを確かめた数字かを、文章の主語から追いたい。

数字で読む発酵白菜と熱の実験

47種類:発酵白菜の調理研究で検出された揮発性の香り成分の数。生菌数ではない。[3]

800株:大根の水キムチから分離された乳酸菌。耐熱性を調べたLB5を選ぶ前の集団だ。[16]

40℃・50℃・60℃:選抜したLB5の熱への耐性を評価した条件。鍋の推奨温度ではない。[16]

4菌株:サツマイモの茎のキムチ由来で、75℃の熱処理後にも菌が確認された実験の対象。[4]

121℃・15分:キムチ由来の菌が作った物質の抗菌活性が変わらなかった条件。菌の生存条件ではない。[18]

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宮川涼 Founder

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