筋トレで胸と肩を同じ日に鍛えるとき、胸の種目も肩の仕事として数えるべきか。種目順、休憩、反復回数、筋活動を調べた研究から、肩への追加量を考える手掛かりを読む。その日の回数と長期の筋力向上を区別し、胸を優先する日と肩を優先する日の記録の取り方まで、予定表に落とし込む。
胸のプレスを終え、肩のプレス用に椅子の向きを変える。予定表では別の欄なのに、肩はもう働いた気がする。そこで「胸の日だから肩はまだ何もしていない」と考えてよいのか。胸を押す種目でも肩の前側の筋活動が測定され、器具によってその活動に違いが出ている。種目名の境界と、筋肉の仕事の境界は一致しない。[6]
胸と肩を同じ日に行うこと自体を、避けるべき組み合わせとは決められない。両方を含む上半身のトレーニングを続け、筋力が向上した試験がある。ただし、それは同じ日に行う方が別日に分けるより優れているという比較ではない。予定を立てるうえでは、何を先に行い、後半にどれだけ実施できたかを区別する方が役立つ。[2][9][16]
この記事では、胸の運動に重なる肩の仕事を認めたうえで、肩の追加量を記録から考える。「大胸筋と二の腕の筋トレで肘は同じ仕事をする?三頭筋の部位別の活動を読む」には肘と二の腕の論点を譲り、ここでは同じ日の予定表に集中する。胸のセットを肩のセットへ一律に換算する数字は置かず、筋活動、反復回数、長期の変化を別々に読む。[2][5][6]

胸のセットでも肩の前側は仕事をしている
胸の種目として挙がるベンチプレスでは、大胸筋に加えて前部三角筋、つまり肩の前側の筋肉の活動も調べられている。トレーニング経験のある男性19人を対象にした実験は、スミスマシン、バーベル、ダンベルによるベンチプレスと、その後の上腕三頭筋の種目を比較した。胸の運動を終えた後の仕事まで見た実験であり、男性経験者の結果を18〜39歳の女性へそのまま当てはめるには検証が必要だ。[6]
各条件は、最大で10回反復できる負荷によるベンチプレスを4セット、その後の種目も4セット行う構成で、セット間と種目間の休憩は2分だった。肩の前側の筋活動はスミスマシンの条件で、バーベルとダンベルの条件より有意に高かった。一方、大胸筋の活動はダンベルでバーベルより高かった。「胸を何セット」という同じ記録だけでは、そこで測られる筋活動の違いが隠れる。[6]
ここでいう筋活動は、表面筋電図という、皮膚の上から筋肉に伴う電気的な信号を記録する方法で調べたものだ。この実験の数字は、その条件でどの筋肉の活動が大きかったかを示す。活動が高い器具を使えば、将来必ず肩が大きくなると読み替えるための数字ではない。実験が比較したのは反復成績と筋活動である。[6]
したがって、予定表に胸のプレスしか書いていなくても、肩の前側を完全に休ませた日とは扱いにくい。ただし、肩の前側の活動を、肩全体のトレーニング量と同じ意味にしてはいけない。肩の追加種目を考える際は、前に行った胸の種目名と器具を残しておく。これは研究の違いを自分の記録へ持ち込むための工夫である。[6]
たとえばダンベルで胸を押した日と、マシンで胸を押した日を同じ「胸を実施」の印だけで済ませると、その後の肩の記録を比べにくい。実験でも器具の違いにより、その後の三頭筋の種目の実施量や筋活動に差があった。肩への追加量も、前の種目から切り離した固定の宿題として考えるより、前後の組み合わせを残す方が研究の見方に沿う。[6]
比較する筋肉の範囲にも気を配りたい。この器具の実験で肩について測ったのは前部三角筋である。胸のセットを行ったという情報から、肩のどの部分も同じだけ運動したと広げることはできない。「肩も使った」という短い言葉を予定表で使うなら、その中身は胸のプレスに伴う前側の活動だと理解しておく。[6]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
順番は胸が先という決まりより優先目標で考える
胸と肩の順番を直接考える手掛かりになるのが、ベンチプレス、ショルダープレス、上腕三頭筋の種目の並べ方を変えた実験だ。トレーニング経験のある男性12人が、これらの全6通りの順番を実施した。種目の数が同じでも、どれを先に行うかを変えている。対象が男性経験者なので、18〜39歳の女性でも同じ順番の差が出るかは別に確かめる必要がある。[9]
反復成績は、肩、三頭筋、胸の順の条件で、三頭筋、胸、肩の順および三頭筋、肩、胸の順より有意に低かった。それ以外の順番同士では、反復成績と自覚的なきつさに有意差はなかった。研究者は、優先したい種目をセッションの初めに置く可能性を示している。有意差が出た組み合わせと、出なかった組み合わせを分けて読む必要がある。[9]
女性を対象にした実験もある。筋トレ経験が少なくとも2年ある女性23人が、胸、肩、三頭筋、脚の種目を並べた順番と、その逆順を行った。各種目は最大挙上重量の80%で3セット、セット間と種目間の休憩は2分だった。平均反復回数は、種目が後半に置かれたときに少なくなった。[16]
この女性の実験では、運動全体がどれほどきつかったかの評価には順番による有意差がなかった。全体のきつさが同程度でも、種目ごとの回数には順番による差が出た。帰りの中央線で「今日は十分きつかった」と思ったことと、肩のプレスを予定どおり実施できたことは、別の記録になる。[16]
胸のプレスの記録を優先したいなら、それを前に置く。肩のプレスの記録を確かめたい日なら、肩を前に置くことを検討する。これは順番で優先種目の実施を守る考え方であり、胸が先でなければ筋トレにならないという規則ではない。また、先に置くことが長期の筋肥大で必ず有利だと、この反復回数の比較から断定することもできない。[9][16]
女性の実験で使われた最大挙上重量とは、その種目で持ち上げられる最大の重さであり、負荷の基準になっている。ここで重要なのは、その重さに対する割合を揃えても、後に行う種目の回数が変わった点だ。予定に書いた負荷が同じだから、実施量も同じと考えると、この変化を見落とす。肩の追加種目の負荷と回数は、片方だけを記録しても十分ではない。[16]
セット数が同じでも順番で筋活動が変わる
肩の追加量を考えるとき、セット数だけを合計したくなる。しかし上半身の種目順を入れ替えた実験では、運動の量と強度を変えなくても、筋電図に変化が出ている。対象は筋トレ経験のある若い男性で、ベンチプレス、チェストフライ、ショルダープレスなどを並べた順番と、その逆順を比較した。若い男性の結果であり、18〜39歳の女性でも筋活動が同じように変わるかは検証を要する。[5]
各種目は最大で8回反復できる負荷による3セットだった。チェストフライでの大胸筋の胸肋部、つまり胸骨や肋骨側に関わる部分の活動は、ベンチプレスから始める順番で高かった。同じチェストフライでも、肩の前側の活動は逆順の条件で高かった。種目名とセット数を揃えても、筋肉ごとの活動には順番による違いが出た。[5]
この結果は「肩の活動を増やすために必ず胸を後へ回す」という処方ではない。複数の種目をまとめて逆にした実験なので、胸と肩だけを入れ替えた場合と同一視できないためだ。予定表の合計欄は同じでも、実施の文脈が変わる、という読み方が適切である。[5]
肩を追加した日の比較では、肩そのもののセット数に加え、それまでの順番を揃えて見る。胸、肩と行った日と、ほかの上半身種目を挟んだ日を無条件に比べると、肩の回数の差を追加量だけの影響と誤解しやすい。順番で筋活動や反復成績が変わった研究は、比較の前提を残す必要性を教えてくれる。[5][9][16]
追加量を決める前に「今日の肩の成績を、どの日と比べるのか」を決めておくとよい。前回は肩が最初、今回は胸の後だったなら、回数が減っていても同じ条件の比較ではない。増減の理由をすぐに体力の向上や低下と決めず、まず予定表の順を読む。回数が示すのは、その並びで実施した仕事である。[9][16]
筋活動の実験と回数の実験を並べるときは、共通する問いと異なる測定を分けたい。前者は筋肉ごとの信号、後者はその条件で反復できた成績を扱う。肩の追加量を決める際に、筋活動が高かったという結果だけで回数の減少を説明しきったり、回数が減っただけで肩への刺激が不足したと断定したりしない。それぞれの数字を、測ったものの名前で呼ぶことが予定の読み違いを減らす。[5][9][16]
数字で読む胸と肩の予定表
女性23人の種目順比較では、後半に置かれた種目の平均反復回数が少なかった。[16]
男性12人の実験は、胸、肩、三頭筋の全6通りの順番を比べた。[9]
男性33人の8週間の試験では、胸と肩を含む上半身の筋トレを週3回行った。[2]
その試験の肩の反復成績は、休憩を自分で選ぶ条件で24.0回、75秒固定で17.4回だった。[2]
男性20人の実験では、同じ運動量を6セットと12セットに配分して比較した。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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