ダイエット中の夜の揚げ物は揚げたてならよい?油の分析値と一食の判断を分ける

運動帰りに揚げ物を選ぶ夜、揚げたてなら油も新しいと考えていないだろうか。繰り返す加熱で変わる油の成分、温度と時間、食品に移る反応を論文で読む。油の分析実験と動物研究、人の一食の判断を分け、夜という時刻だけで食事を決めず、家庭や外食で確かめられる条件を整理する。

揚げ物の袋を開くと、衣がまだ音を立てる。ダイエット中だから夜はやめるべきか。それとも揚げたてなら気にしなくてよいのか。まず、食品が今揚がったことと、油が新しいことは別である。繰り返し使った油で揚げた食品にも、油の酸化に由来する成分が検出されている。[11]

この問いで確かめたいのは、時計よりも調理の履歴である。油の加熱実験では、油の種類、温度、加熱時間によって酸化の指標や生じる成分が異なる。これらは夜の一食による体重変化を直接示す数字ではない。「夜だから悪い」「運動したから帳消し」と決める材料にはならない。[4][9][10]

脂質の総量や必須脂肪酸の話は、既存記事「ソイプロテインの夜の置き換えは油も確認、脂質の総量と必須脂肪酸を分けて考える」に譲る。また「ダイエットの脂質は揚げ油の使い回しでも違う?回数だけでは読めない酸化の研究」と隣り合うが、ここでは買った揚げ物の「揚げたて」という情報と、分析値から一食を判断するまでの距離に焦点を置く。

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揚げたてという言葉は油の履歴まで教えない

揚げ物を受け取った時に分かるのは、今の食品の温かさや食感である。一方、研究が操作するのは油の加熱条件だ。ひまわり油を繰り返し使ってポテトチップスを揚げた実験では、油をどれだけ熱酸化させたかによって、食品に含まれる成分が変わった。食品の出来上がり時刻だけでは、この違いを説明できない。[11]

この実験では、ひまわり油を180℃で0、6、12、18、24時間処理し、それぞれの条件で食品を調べている。実験の軸は昼か夜かではなく、油が熱にさらされた時間である。夜に買ったという情報を、この実験の加熱時間に置き換えることはできない。夜の売り場を見ただけで、朝から同じ油だと推測するのも飛躍である。[11]

家庭なら「前に使った油だ」と覚えていても、何をどれくらい加熱したかは曖昧になりやすい。研究に近づけて考えるなら、食品の名前だけでなく、油と加熱の組み合わせを言葉にする必要がある。同じ揚げ物という分類でも、油の成分の変化を考える時には調理条件が重要になる。[4][10][11]

ただし、履歴が分からない食品を、酸化が進んでいると決めつける必要もない。確かめられる情報と推測を分けよう。「揚げたてだから新しい油」とも「閉店に近いから古い油」とも断定せず、利用する店で油の管理について案内があれば確認する。この姿勢は、油の加熱条件をそろえて比較する研究の読み方を日常に移したものである。[11]

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油が変わるとは、どの成分が変わることか

油の研究に出てくるトリアシルグリセロールは、脂肪酸がグリセロールという骨格についた油の主要な成分だ。加熱による酸化では、もとの成分だけでなく、酸化した成分や、分子同士がつながった成分、分かれて生じた成分が分析の対象になる。油が劣化するという言葉は、こうした複数の変化を含んでいる。[4][6]

ひまわり油とオリーブ油を180℃で6時間処理した分析研究では、酸化したトリアシルグリセロール、酸化によってつながった二量体、分解に由来する断片などが検出された。二量体とは、分子が対になってつながったものだ。研究者は成分を分離してから質量分析を行い、少量の酸化成分まで捉えやすくしていた。[6]

ここでいう極性成分は、油の分析で性質の違いによって分けて捉える成分群である。この研究では、極性成分を濃縮することで、ほかの成分に埋もれて検出しにくかった信号も調べられた。つまり油の変化は、ひとつの成分を探せば全体が分かるほど単純ではない。何を測りやすくする方法なのかによって、得られる情報も変わる。[6]

弁当の衣を見ながら、こうした分子名を暗記する必要はない。覚えておきたいのは、「酸化した油」という同じ言葉の下に、異なる測定対象があることだ。ある実験は反応性の高い分子の信号を、別の実験は揮発する成分を、さらに別の実験は極性成分の割合を測っている。数字を並べる前に、何の数字かをそろえる必要がある。[6][9][10]

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油の名前だけで順位をつけると食い違う

亜麻仁油、ひまわり油、菜種油、パーム油を比べた加熱実験では、フリーラジカルの信号は亜麻仁油で最も強く、ひまわり油、菜種油、パーム油の順だった。フリーラジカルとは、ここでは油の酸化反応を追う対象となる反応性の高い分子などを指す。どの油でも、加熱時間とともにその信号が強くなった。[9]

ところが、酸化後の揮発性成分の総量は、パーム油で最大、亜麻仁油で最小だった。揮発性成分とは、気体として出てくる成分のことだ。同じ実験でも、フリーラジカルの信号の大小と揮発性成分の量では順序が逆になる。片方の数字だけを取り出して「この油が最も悪い」とする読み方は成り立たない。[9]

別の揚げ油の分析では、32時間後の大豆油に、ほかの油より多い重合したトリアシルグリセロールや特定のアルデヒドなどが認められた。一方、菜種油で多かった別のアルデヒド群もある。アルデヒドは、酸化によって生じる成分として調べられた化合物の一群である。大豆油と菜種油の違いも、ひとつの数値では表せなかった。[4]

この結果は、油を選ぶ時に何も判断できないという意味ではない。名称に加え、使う温度や時間、何を比較した研究なのかを見ようということだ。たとえば普段使う油と同じ名前が論文にあっても、長時間の実験で多く生じた特定の成分を、そのまま家庭の短い調理の含有量だと受け取れない。共通する名前と共通する条件は別である。[4][9]

油の構造に踏み込んだ研究では、不飽和脂肪酸の鎖がトリアシルグリセロールのどの位置についているかも、分解に関わっていた。油を脂肪酸の種類だけで捉える場合と、そのつながり方まで調べる場合では見ている細かさが異なる。研究者は、揚げる過程で生じた揮発しない成分と揮発する成分の両方を追い、構造と生成物の関係を検討している。[4]

また、植物油の比較実験では、油の特徴を使ってフリーラジカルを予測するモデルも作られた。予測と実測の対応を表す決定係数は0.97を超えていた。これはモデルがその実験で測った値をよく予測したという結果であり、食べた人の健康を同じ精度で予測できるという意味ではない。測定の精度と健康への影響の大きさは別の問いである。[9]

こうした分析技術が役立つのは、目の前の油に含まれる成分を、条件をそろえて比べられる点だ。反対に、売り場で見た衣の色や料理名を入力すれば同じ評価ができるわけではない。実験で使った油の情報と測定方法があって初めて成立する比較だと理解すれば、研究の結果を外食の印象だけに当てはめる誤りを避けられる。[6][9]

温度と時間の数字は家庭の交換期限ではない

ヘーゼルナッツ油の加熱実験では、210℃で10分加熱すると総極性成分の割合が24%を超えた。研究者はこの油について、高温で長く加熱する用途には適さないと述べている。温度によって脂肪酸や酸化指標が変化し、リノール酸や特定のアルデヒドの量と酸化指標に強い関連があった。[10]

この「10分」を、すべての家庭の揚げ油に共通する使用期限にはできない。数字にはヘーゼルナッツ油、210℃という条件がついている。ほかの油の180℃での分析と比べる時にも、温度も油も異なる。その数字だけを切り抜いて台所のタイマーに設定するのは、実験条件を捨てて結論だけを持ち帰ることになる。[6][10]

反対に、長時間の実験だから日常には関係がないと切り離す必要もない。実験は、どの条件でどの変化が起こるかを調べる手段である。油の加熱条件を意識する理由にはなるが、そこから「何回までなら安全」という共通の回数を作るには別の比較が必要だ。今回の温度や時間は、読者の油の状態を判定する検査結果ではない。[4][6][10]

日常でこの違いが役立つのは、料理の手順を考える時だ。家庭で新しい油を使う場合も、油の名前を決めたところで判断を終えず、その油を高温で長く加熱する予定なのかまで考える。実験の分単位の数字を自分用の限度にしないまま、加熱条件に目を向けることはできる。油の選択と使い方を別々に扱わない、という読み方である。[4][10]

数字で読む揚げ油の実験条件

180℃・6時間:ひまわり油とオリーブ油の酸化成分を分析した加熱条件であり、家庭の使用期限ではない。[6]

4種類:フリーラジカルと揮発性成分で順位が異なった、植物油の比較実験の対象数である。[9]

32時間:大豆油と菜種油などで、生成する酸化成分の違いを調べた時点である。[4]

210℃・10分:ヘーゼルナッツ油で総極性成分が24%を超えた条件であり、ほかの油に共通する基準ではない。[10]

29 mg/kg:180℃で6時間処理したひまわり油で揚げたポテトチップスの、特定のアルデヒドの濃度である。[11]

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宮川涼 Founder

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