間食のナッツの薄皮を残すか迷ったら、成分の多さと消化中に出てくる量を分けて考えたい。アーモンドの薄皮を水、ビスケット、牛乳と組み合わせた消化模型と、ヒトの尿中代謝物を調べた試験を読み、渋さだけでは決められない理由と、ミックスナッツ選びで確かめたい点を整理する。
小皿にあけたミックスナッツの底に、茶色い薄皮が散っている。茶色い薄皮が気になり、指でこすって落としてから食べる。反対に「渋いところに大事な成分があるはず」と、口に残る感じを我慢している人もいるだろう。
薄皮にはポリフェノールが含まれる。しかし、食品に含まれる量、消化中に食品から離れる量、体内で変化して検出される量は同じではない。アーモンドの薄皮を使った消化模型では、一緒に入れる食品によって成分の放出が変わった。皮を残せばすべて届く、むけばすべて失う、という選び方では粗すぎる。[15][18]
薄皮を除くこと自体の問いは既存記事「間食のアーモンドは薄皮を除くと違う?成分量と体に届くまでの道のりを読む」に、水に浸す話は「間食のアーモンドは水に浸すとよい?栄養の利用とお腹の調子を研究で読み解く」に譲る。また「ダイエットの間食のくるみは薄皮をむく?渋さで決める前に読む成分と加工の違い」には、くるみの成分と加工素材の性質を譲る。ここではアーモンドの薄皮を水や乳、焼いた食品と組み合わせたとき、消化の途中で何が動くのかを見る。渋さを健康の点数に変える前に、食品の形を確かめたい。

薄皮の成分表と、消化中に出てくる量は別である
アーモンドの薄皮の研究では、ポリフェノールという成分群が調べられている。成分を詳しく分析した研究は、薄皮にプロシアニジンなどの重合体が存在することを確認した。重合体とは、成分の単位がつながった形である。薄皮を単一の成分の袋として扱うより、複数の形の成分が集まる場所と考える方が、この分析結果に合う。[18]
ナッツ売り場では「タンニン」という言葉も目に入るかもしれない。だが、渋さを感じたときに、その食品にどの成分がどれだけあり、消化中にどれだけ出るかを舌だけで決めることはできない。薄皮の研究が化学分析と消化模型を使い分けているのは、見たいものが違うからである。食品中の成分を測る操作と、消化を再現して放出を調べる操作を混同しないことが出発点になる。[15][18]
消化中に食品から離れ、利用されうる状態になることを、ここでは「放出」と呼ぶ。英語でバイオアクセシビリティと呼ばれる段階である。一方、ヒトの血液や尿で、その成分に由来する物質が確かめられる研究は、体内での利用の道筋を見ている。前者が高いからといって、同じ割合がそのまま血液に入るとは読めない。消化模型の値とヒトの検査の値は、測る場所が違う。[15][16]
この違いは、皮つきか皮なしかを選ぶときにも役立つ。原材料の分析で成分が多いことは、その食品の特徴である。一緒に食べるものを変えた消化模型で放出が変わることは、組み合わせの特徴である。そして体調や病気の変化を確かめることは、さらに別の問いになる。同じ「よい」という言葉で包むと、どこまで確かめられた話なのかが見えなくなる。[15][18]
夕方の間食では、薄皮の色や味より、袋の説明が強く印象に残ることもある。「ポリフェノールを含む」と「食べた人に特定の利益がある」の間には、消化と体内での変化が挟まる。薄皮に注目する価値を認めつつ、成分名をそのまま体への約束にしない。分析研究を暮らしに持ち込むときの、実用的な読み方である。[15][18]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
水、ビスケット、牛乳では同じ薄皮も動きが違った
組み合わせを正面から調べたのが、アーモンドの自然な薄皮と、湯通し処理した薄皮を比べた実験である。研究者はヒトの胃の働きを模した動的な消化模型を用い、薄皮を水の中で消化させる条件に加え、自家製ビスケット、クリスプブレッド、全脂乳に組み込む条件を設けた。これは人がおやつを食べて体調を報告した試験ではなく、消化中の成分の動きを調べる食品の実験である。[15]
調べた成分群のうち、フェノール酸は放出される割合が高く、自然な薄皮から68.5%、湯通し処理した薄皮から64.7%が放出された。この数字は薄皮にあるすべてのポリフェノールの吸収率ではない。フェノール酸という成分群について、模型の消化条件で得られた値である。薄皮を食べれば栄養の約7割が取り込まれる、と置き換えてはいけない。[15]
自然な薄皮では、胃と十二指腸に相当する消化を経た後、水の条件でフラバン3オールとフラボノールの放出が高まった。一方、湯通し処理した薄皮では、クリスプブレッドやビスケットが放出に適した組み合わせだった。成分を外に出しやすい相手は、薄皮の処理によっても変わったのである。「焼き菓子に入れれば必ず下がる」とも、「水なら必ず上がる」とも読めない。[15]
ここでいう食品のマトリックスとは、成分を取り囲む食品の構造や組成のことである。薄皮だけを取り出したときと、生地の中に混ぜたときでは、消化液に触れる環境が違う。その違いを含めて比較するための言葉だ。成分名が同じでも、どの食品の中に置かれているかまで見なければ、実験結果を読み違える。[15]
全脂乳では、消化液中に回収されたポリフェノールの割合、遊離した総フェノール、抗酸化の指標が低くなった。研究者は、食品に含まれるたんぱく質にフェノール性成分が結びつく可能性を示している。ただし、ここで下がったのは消化液中で測った指標である。牛乳と食べると健康によくない、という結論にはならない。[15]
朝の器にナッツを入れる人なら、この結果から「組み合わせで挙動が変わりうる」と受け取ればよい。牛乳を避けたり、ビスケットを増やしたりする指示に変える必要はない。実験は薄皮の状態と食品の組み合わせを比べたもので、日々の献立全体を競わせてはいない。間食を選ぶ際には、食べやすさと成分の放出の研究を、それぞれの情報として持っておける。[15]
粉末をパンに入れると、薄皮つきの一粒とは別の食品になる
薄皮を素材として使ったパンの研究もある。伝統的なセモリナのサワードウパンで、粉の一部をアーモンドの薄皮の粉末に置き換え、添加しないパンと比較した。置換割合は5%と10%である。これは薄皮をむく手間を省いたアーモンドの比較ではなく、皮を粉末にしてパンの材料に使う加工研究だ。[6]
薄皮粉末を加えると、パンの皮と中身の色が濃くなり、内部の気泡の形成が減り、においの特徴も変わった。成分の変化に加え、色、構造、香りも一緒に変わる。「薄皮入り」という表示は共通でも、丸ごとのナッツとパンを同じ食べ物のように扱えない理由がここにある。[6]
10%の薄皮粉末を使ったパンでは、模擬消化後の植物由来成分の最終的な放出がほぼ100%に達した。パンの抗酸化能も増え、消化後に放出された成分を用いた腸の細胞に似た実験系で、抗酸化の保護作用が調べられた。これらは加工食品と実験系で得た結果であり、そのパンを食べた人の病気を防ぐ割合を表す数字ではない。[6]
先ほどの薄皮の消化模型と、このパンの研究を並べると、数字の大小だけで勝敗をつけたくなる。しかし、扱った食品、加工、測定対象が異なる。ある研究のフェノール酸の放出率と、別の研究の植物由来成分の放出率を横に置き、「パンなら完全、粒なら不完全」と結ぶのは無理がある。比べるためには、数字の名前を省略しないことが大切だ。[6][15]
パンの研究には、成分の利用とは別に、原料を衛生的に扱う課題も含まれている。薄皮粉末を加えた生地では微生物の違いが確認され、研究者はパン製造に再利用する際、保存中の微生物学的な性質を保つ必要を指摘した。薄皮を食品素材にする話は、抗酸化の測定値だけでは完結しない。食品として扱う工程も、研究の重要な部分である。[6]
この点からも、食卓で出た皮を集めて自分で機能性の粉末を作ることと、研究で調製した原料を同列には扱えない。成分を捨てたくない気持ちから、加工研究を家庭の作業手順に変えないようにしたい。パンの研究は、薄皮を再利用する可能性と、その際に管理すべき課題を併せて示したものとして受け取れる。[6]
数字で読む薄皮と消化
68.5%:自然なアーモンド薄皮から放出されたフェノール酸の割合。消化模型の値である。[15]
64.7%:湯通し処理した薄皮から放出されたフェノール酸の割合。丸ごとの吸収率ではない。[15]
5%と10%:パン研究でセモリナを薄皮粉末に置き換えた割合である。[6]
2〜6時間:薄皮抽出物の試験で、一部の抱合体の尿中排泄が最大になった時間帯である。[2]
6〜10時間:同じ試験で、腸内細菌由来のヒドロキシフェニルバレロラクトン類の尿中濃度が最大になった時間帯である。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







