ダイエットの間食に選ぶチーズは、低脂肪ほど腹持ちがよいのか。同じ重さと同じ熱量の比較を分け、チーズの比較試験と乳製品の研究から確かめる。満腹感が保たれても次の食事量が減るとは限らない理由、たんぱく質も含めた表示の読み方、夕食までの過ごし方を考える。
夕方、仕事の区切りにチーズの包みを開く。普通のものと低脂肪のものが並んでいたら、夕食まで空腹になりにくいのはどちらだろう。脂肪が少ないと物足りなさそうだが、脂肪が多ければ長くもつとも決められない。チーズの比較試験では、低脂肪側で食後の満腹感が損なわれなかった結果がある。[1][15]
答えの芯は、低脂肪ほど腹持ちが強いと順位をつけることではない。脂肪を減らし、たんぱく質を多くしたチーズでは、少ない熱量に対して満腹感が保たれた。ただし、同じ重さを食べた試験の結果を、同じ熱量で食べ比べた結果へ置き換えることはできない。[15]
既存記事「間食のチーズは脂肪の量だけで選ぶ?バターと違う食品の構造を研究で読む」には、食品の構造という問いを譲る。ここで確かめるのは、間食の包みを選ぶときの比較条件と、食後の感覚と実際の食事量との距離である。

同じ熱量で比べたいなら、先に重さを確かめる
「同じだけ食べた」という言葉には落とし穴がある。同じ重さなのか、同じ熱量なのかで、研究が答える問いが変わる。チーズの成分を変えた試験では、どの種類も80 gを食べている。しかし、そのチーズが持つ熱量はそろっていない。[15]
この無作為化クロスオーバー試験では、普通体重の男女39人が異なるチーズを食べる条件を経験した。男女を合わせた結果であり、18〜39歳の女性だけに同じ反応が生じるかは、この比較だけでは判断できない。クロスオーバーとは、同じ参加者が条件を替えて比較に加わる方法である。高たんぱく・低脂肪のチーズは696 kJ、高たんぱく・高脂肪は976 kJ、低たんぱく・高脂肪は771 kJだった。kJは熱量を表す単位である。[15]
つまり、この研究は「熱量をそろえたら低脂肪が勝つか」を直接比べたものではない。同じ重さを食べたときに、成分を変えて熱量を下げても食欲への働きを保てるか、という試験だ。この違いを取り違えると、低脂肪のチーズを多めに食べればさらに腹持ちがよくなる、という別の話になってしまう。[15]
買い物でも、表示の基準をそろえるところから始めたい。同じ大きさに見える個包装でも、実際に食べる重さと表示の単位を確認する。これは食べる量を細かく管理するためというより、違う物差しで比べるのを避けるためだ。小さい包みと大きい包みの正面だけを見て、脂肪の量の優劣を決める必要はない。
比較するときは、まず自分が食べる分の表示を見る。そこから脂肪、たんぱく質、熱量を並べれば、低脂肪という名前の中身が見えやすい。研究で試したのも、低脂肪という言葉だけではなく、たんぱく質を含めて組み替えたチーズである。脂肪だけを抜き出して結果を説明するのは正確ではない。[15]
同じ熱量という問いを立てるなら、比較する食品の量も変わりうることに気づきたい。量を変えた比較と、量を固定して成分を変えた比較では、確かめる条件が違う。先のチーズ試験は後者なので、結果を紹介するときにも、同じ重さという出発点を残して読むのがよい。[15]
たとえば売り場で知りたいのが「いつもの量を置き換えても、夕食までの感覚は保てるか」なら、この試験は比較的近い問いを扱っている。一方、「熱量をそろえて量を変えたら、どちらが長くもつか」には、その条件での比較が必要になる。自分の疑問に近い部分と、まだ飛躍になる部分を区切れば、研究は使いやすくなる。[15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
チーズの試験で、次の食事まで何が起きたか
この試験の朝食は、チーズだけではなかった。絶食後にチーズ80 gとパン70 g、ジュース132 g、コーヒーや茶、水のいずれか125 gを出し、3時間後には好きな量を食べられるスパゲティを用意した。食欲の感覚も、線の上に印をつける評価方法で測っている。[15]
高たんぱく・低脂肪の条件では、高たんぱく・高脂肪の条件より、試験食とその後の食事を合わせた累積摂取熱量が188.3 kJ少なかった。差の標準誤差は97.4 kJである。標準誤差は推定した差の不確かさを示す値で、個々の参加者の差がこの幅に収まるという意味ではない。この比較では統計的に有意な差だった。[15]
一方、低たんぱく・高脂肪の条件との差は177.0 kJ、標準誤差100.4 kJで、統計的に有意ではなかった。同じ低脂肪側の結果でも、比べる相手によって結論の強さが違う。比較相手を消して「低脂肪なら摂取熱量が減る」と書くと、研究より広い主張になる。[15]
熱量に対して評価した総合的な食欲の指標では、高たんぱく・低脂肪の条件がほかの条件より有利だった。高たんぱく・高脂肪と比べ、低脂肪側の後の食事に、熱量の差を埋めるような代償的な食べ方は認められなかった。ここから読めるのは、少ない熱量でも満腹感を支えうる、という可能性である。[15]
ただし、累積摂取熱量は昼食だけの数字ではない。最初のチーズの熱量も含まれるため、差が出たことをそのまま「昼食をその分少なく食べた」と読み替えない。食べ始めの熱量を下げた利点が、その後の食事で帳消しにならなかったという読み方が、この試験の設計に合っている。[15]
夕方の小さな間食へ使うなら、「高脂肪でないと次の食事までもたない」という決めつけをいったん外す程度が妥当だ。朝食にパンや飲み物と一緒に出した結果であり、チーズだけを仕事帰りに食べた結果ではない。試験の食事を、そのまま毎日の間食量の指定にする必要もない。[15]
脂肪を減らしても、満腹感が変わらない場合がある
別の無作為化比較パイロット試験では、熱量制限食に取り組む参加者の食事に、脂肪量の異なる市販のヤギ乳チーズを組み込んだ。朝食に出したチーズは80 gで、満腹感は食前と食後30分、120分に調べられた。脂肪量を25.9%減らしても、食後の満腹感が生じることや、その持続に違いは認められなかった。18〜39歳の女性が普段の食事に間食を足す場面への適用には、熱量制限食という条件の違いを考える必要がある。[1]
これは「脂肪を減らすほど満腹感が高まった」という結果ではない。少なくとも試した条件では、脂肪を減らした側が満腹感の面で劣るとは示されなかった、という結果だ。低脂肪を選ぶ意味は、似た満腹感で食事の熱量を組み立てられることにもある。[1]
両群で体重や身体計測値は減ったが、群間の有意差はなかった。研究では、この変化は主に熱量制限を含む食事介入によるもので、割り当てたチーズの脂肪量が大きく変えたものではないと評価している。チーズの選択によって体重が減った、と原因を付け替えないことが大切だ。[1]
介入が進むにつれて、持続する満腹感の指標には両群で緩やかな改善があった。週あたりの推定変化は0.164ポイントで、95%信頼区間は0.058〜0.270だった。信頼区間は、推定した変化の不確かさを示す範囲である。この数字も、低脂肪だけに起きた改善ではない。[1]
こちらはヤギ乳の市販チーズを使った初期の小規模な検討で、先の試験はたんぱく質と脂肪の組み合わせを変えたチーズの急性試験である。製品も食事条件も異なるが、低脂肪だと必ず満腹感を失う、という見方を支持しない点は共通する。反対に、あらゆるチーズで同じ結果になると決める材料でもない。[1][15]
研究を日常へ近づけるとき、普通のチーズを食べている人が急に替えなければならない、という話にはならない。低脂肪を試してみたい人が、腹持ちを最初から諦める必要はないという程度の見通しが得られる。選択肢が増えることと、選択を命じられることは別である。[1][15]
日常で試す際にも、替えたチーズ以外の場面を一緒に振り返ると、比較の意味がはっきりする。昼食から間食までの流れや夕食の予定が違う日に感じた空腹を、チーズの違いだけの結果と決めないことだ。試験ではパンや飲み物も定めていた。日常を実験室にする必要はないが、違った条件を見落とさない姿勢は借りられる。[15]
そして、研究が対象としたのは人の平均的な反応である。同じ参加者が条件を替える方法でも、結果には個人差が含まれる。普通のチーズの味が好きか、低脂肪でも満足できるかという自分の感想は、研究の順位に合わせて消す必要はない。満腹感を保てる可能性を、選ぶ際の材料として使えばよい。[15]
数字で読むチーズと満腹感
39人:普通体重の男女が参加したチーズの無作為化クロスオーバー試験の完了者数である。[15]
80 g:その試験で各条件に出されたチーズの重さ。日常の間食の推奨量ではない。[15]
696 kJと976 kJ:高たんぱくのチーズで、低脂肪と高脂肪の条件に含まれた熱量。同じ重さでも熱量は異なる。[15]
188.3 kJ:高たんぱく・低脂肪側で少なかった累積摂取熱量の差。標準誤差は97.4 kJである。[15]
25.9%:ヤギ乳チーズの試験で比較された脂肪量の低減幅。満腹感に違いは認められなかった。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







