寒い日は消費が増え、暑い日は脂肪が燃える。その説明を体重の予測に使えるだろうか。室温を変えた小さな実験、運動中の脂肪利用、外気温と血糖・血圧を追った研究を照らし合わせる。気温と季節の違い、食べる量を自由にした実験の結果も確かめ、冷暖房を減量の道具にする前の判断材料を整理する。
冷たい環境で代謝が上がる実験がある一方、暑い環境で運動しても消費エネルギーが増えなかった実験がある。寒さも暑さも体への刺激だが、同じ方向の減量効果として足し合わせることはできない。[12][16]
男性を低い室温で過ごさせた研究が測ったのは、食べた量と使ったエネルギーだった。別の若い参加者を自転車で運動させた研究が測ったのは、運動中の脂肪の利用などである。どちらも体温調節に関係するが、長く生活した後に何kg痩せるかを答える設計とは違う。[12][16]
窓の外の気温、部屋の温度、体の中で使われる燃料、翌月の体重。それらをひとつの話として受け取ると、実験室の数字が冷房や暖房の設定値に化けてしまう。温度と代謝のつながりは確かめながら、実験が測ったところに答えを戻したい。[2][12][16]

寒さで増えた消費と、食べる量は別々に動く
室温を下げたときの食事と消費を調べた研究は、食事制限を普段していない男性9人を対象とした、同じ人の条件を変えて比べる無作為化実験である。平均年齢は24歳、平均BMIは22.7だった。BMIは身長と体重から求める体格の指標だ。参加者は呼吸からエネルギー代謝を測る部屋で、22℃の条件と16℃の条件を経験した。衣服と日常の活動内容もそろえられていた。[16]
摂取と消費のつり合いを保った条件では、1日の消費は22℃で12.2MJ、16℃で12.9MJだった。MJはエネルギーの単位である。寒い条件で、睡眠中の代謝と食事に伴う熱産生が増えた。一方、自由に食べられる条件では、22℃でも16℃でも消費を超えて食べており、食べ過ぎの割合はそれぞれ32%、34%だった。低温で消費が増えても、自由な食事まで含めた差し引きが減量に向かうとは限らない。[16]
室内で過ごしたのは、1回60時間を3回である。22℃を1回、16℃を2回経験し、22℃での滞在の最後の24時間と、16℃での滞在のうち1回の最後の24時間には、自由に食べる条件が設けられた。温度だけでなく、食事を管理する時間と自由にする時間を組み込んだ設計だった。[16]
消費の内訳も報告されている。睡眠中の代謝は22℃で1日7.2MJ、16℃で7.6MJ、食事に伴う熱産生はそれぞれ1.0MJと1.7MJだった。睡眠中の値は、レーダーでほとんど動いていないと判断した連続3時間のうち、消費が最も低い部分から求めた。食事に伴う熱産生も、動きによる消費がない状態で評価している。体の動きの影響を抑えながら、温度による代謝の内訳を追っていた。[16]
16℃では直腸温と、体の中心に近い部分および末端の皮膚温が下がった。呼吸商という、呼吸で出す二酸化炭素と取り込む酸素の比には、温度条件による差がなかった。自由摂取のときには、16℃での直腸温の低下が弱まり、その程度は食べ過ぎの割合と関連していた。低い温度への反応は、消費量だけで完結せず、食事の条件と体温の変化を伴っていたのである。[16]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
暑い環境での運動は、脂肪利用を増やしたのか
健康な若者12人が参加した無作為化クロスオーバー実験では、同じ参加者が18.3℃と36.3℃の環境で、段階的に強度を上げる自転車運動を行った。クロスオーバーとは、各人が比べる条件を両方経験する方法である。温度の高い条件では心拍数と耳で測った温度に影響があったが、消費エネルギーには条件間の差が認められなかった。一方、運動全体で使われた脂肪の量は、温和な条件の5.8gに対して暑い条件では4.6gと少なかった。[12]
ここでいう脂肪酸化とは、運動中に脂肪を燃料として利用することである。最大酸素摂取量は、運動中に取り込める酸素の最大量を示す指標だ。この実験は、まず温度が中立的な環境でその最大量を測り、それを基準に自転車の負荷を設定した。各段階を3分ずつ行い、最大酸素摂取量の10%分ずつ強度を上げ、呼吸のガス交換、心拍数、自覚的なきつさを測っている。[12]
最大酸素摂取量の60%に当たる強度では、脂肪の利用速度は温和な条件で毎分0.37g、暑い条件で毎分0.23gだった。30%の強度では毎分0.42gと0.37g、70%では毎分0.22gと0.12gで、これらの段階の差は統計的に有意だった。温度による違いは、運動の最も強い段階だけに現れたわけではなかった。[12]
最大の脂肪酸化速度は、温和な条件で毎分0.55g、暑い条件で毎分0.48gだった。この差のP値は0.052で、統計的には低下の傾向にとどまる。一方、その最大速度が現れた運動強度は最大酸素摂取量の44%から38%へ低下し、こちらの差は有意だった。最大の速度、その速度になる負荷、運動全体の脂肪利用量という別々の結果を報告した実験である。[12]
著者らは、運動中の脂肪利用を増やす目的で暑い環境で運動することを勧めるべきではないとした。暑さの刺激の強さから脂肪の利用量を逆算しないこと、健康な若者の短い自転車実験をほかの運動や長期の減量へ広げないことが、この結果を使う際の注意になる。[12]
外の気温と、画像に映る褐色脂肪の関係
外気温と体の中の反応を結ぶ手がかりとして、褐色脂肪がある。熱産生に関わる脂肪組織で、ここで取り上げる研究は、糖の取り込みを画像で捉える検査を使って評価した。検査を受けた患者4,842人を後から調べたところ、褐色脂肪が画像上で確認されたのは328人、6.8%だった。気温が高いほど、確認される割合、量、糖を取り込む活動は低いという関連があった。年齢、BMI、性別、糖尿病の有無も関係していた。[7]
画像上の活動は年齢とBMIが高いほど低く、男性は女性より、糖尿病のある患者はない患者より低かった。外気温と並んで、検査を受ける人の条件にも違いがあった。過去の検査の解析なので、部屋を冷やすと体重が減るかを直接試した結果としては扱えない。[7]
さらに、画像に褐色脂肪が見つかる割合には、年齢と性別を組み合わせた違いが認められた。若い人ほど男女差が大きかったのである。男女をひとまとめにした温度との関係だけでは、この年齢による違いは表しきれない。検査では首や鎖骨の上、胸の中央部、背骨の周辺、腎臓の周囲にある脂肪領域への糖の取り込みを調べていた。見つかったかどうかに加え、組織の量と糖を取り込む活動も評価している。体重計で測る全身の重さとは違い、特定の脂肪領域の反応を分けて捉えた結果である。[7]
寒さと褐色脂肪の詳しい話は、既存記事「寒冷曝露で痩せるのか 褐色脂肪が働く数字と減量までの距離をヒト研究で読む」に譲る。ここでは外気温と画像の活動との関連にとどめる。[7]
数字で読む気温と代謝
16℃と22℃:男性の室内実験で比較した温度。自宅の推奨設定値ではなく、研究の条件である。[16]
18.3℃と36.3℃:自転車運動実験の温度条件。運動の強度を上げながら反応を測った。[12]
6.8%:検査を受けた患者集団で、画像上の褐色脂肪が確認された割合である。[7]
13,345人:受胎した月の温度と、成人後の体格などの関連を調べた出生コホートの人数である。[5]
587人:長期の外気温と代謝に関する異常の発生を調べた、高齢男性の研究集団である。[10]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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