双子の体重が似ることと、一卵性でも体重差が生じることは両立する。遺伝率の系統的レビュー、成長記録をたどった研究、脂肪と血液を比べた研究から、体質と今の健康の関係を考える。家族との比較で自分を責めず、体重だけでなく腹囲や健診結果を確認するための科学の読み物である。
別々に育った一卵性双生児を調べると、体格はよく似ていた。ところが、同じ一卵性双生児でも、若い成人になってから体重が大きく離れていく組があった。片方は遺伝の関わりを、片方は同じ遺伝的背景でも生じる違いを見せる研究である。[1][13]
家族と食べる量を比べて、自分だけ太りやすいと感じた経験があるかもしれない。体重の似方を調べる研究は、その印象を本人の意志の強さに置き換えずに考える手がかりになる。研究には、別々に育った組を集める方法と、同じ組の中の違いを追う方法がある。[1][19]
双子研究のおもしろさは、似ている点を調べるだけで終わらないところだ。体重が違う組では、脂肪の量、血中脂質、脂肪組織の働きにも違いが見つかっている。生まれ持った背景を考慮しても残る差を見れば、体質という言葉だけでは見えない今の体の状態へ目を向けられる。[3][5]

遺伝率は、自分の体重の内訳を示す数字か
Allisonらは、別々に育った一卵性双生児53組についてBMIを調べた。BMIは体格を表す指数で、この研究では共変量と呼ばれる関連要因を調整した後、遺伝率の推定値は定義によって0.50または0.70になった。研究者は、その間の推定が妥当だと結論している。対象の内訳は男性23組、女性30組。フィンランドの17組、日本の10組、主に米国の症例記録から得た26組が含まれていた。[1]
ここでの遺伝率が指すのは、調べた集団のBMIのばらつきのうち、遺伝的な違いで説明される部分である。同じ研究で推定が変わるのは、全体のばらつきを分母にするか、調整した要因では説明されないばらつきを分母にするかが違うためだ。ある人の体重から「ここまでは遺伝」と重さを切り分ける計算には使えない。[1] 遺伝的な関連と、暮らしを変えたときの効果を分けるのが読み方の基本だ。ここで扱う論文は観察までしか示していない。個々の遺伝子や減量との関係は「太りやすい体質は遺伝なのか FTOと減量研究で読む、変えられる環境の重さ」の記事に譲り、ここでは一卵性の組内比較に焦点を置く。[1]
さらに、遺伝率はどの集団でも同じ値にはならない。Minらが32研究を集めた系統的レビューでは、年齢、観察した時期、集団の平均BMI、国の経済状況によって推定値に違いがあった。系統的レビューとは、決めた条件で研究を集めて結果を検討する方法であり、この研究は遺伝率の違いに何が関係するかを解析している。思春期の集団や平均BMIが高い集団では、比較相手より遺伝率が高い傾向が見られた。[19]
レビューが対象にしたのは、1990年1月から2011年2月までに英語で発表された研究である。フィンランドの7研究、英国の6研究のほか、米国、デンマーク、中国などの研究を含んでいた。年齢は20歳未満、20〜55歳、56歳以上に分けて検討され、調査時期が古い研究でも遺伝率が高かった。国の経済成長率が高い場合には遺伝率を下げる傾向があり、年齢や調査時点も体重の似方に関わる結果になっている。[19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
一卵性で体重が離れた組の成長記録
遺伝率を推定する研究とは逆の方向から、体重の違う一卵性双生児を探した研究がある。Pietiläinenらは、フィンランドの若い成人の一卵性双生児658組から、BMIの差が4以上ある14組を見つけた。そのうち10組が臨床研究に参加し、体格が似ている9組を比較相手にした。体重差が大きい組は、この集団では少数だった。[13] 病院や保健施設の身長・体重の記録をたどると、身長の発達は似ていた一方、体重の違いは18歳で現れ始め、平均25.7歳では16.4kgに広がっていた。重い側は出生時にもやや大きかったが、その差はいったん乳児期に薄れ、思春期後に再び現れた。出生時の体重差が、そのまま成人まで続いたわけではなかった。この研究が示したのは、同じ遺伝的背景でも若い成人期に体重の道筋が離れ得ることだ。[13]
この研究で体格が似ているとした比較群の条件は、BMI差が2以下である。一方の体重差が大きい組では、平均25.7歳時点のBMI差は5.6だった。比較群では成長の仕方も似ており、生後6か月以降の平均的な成長は、単胎児の基準の成長パターンと区別されなかった。体重差の大きい組では、軽い側も重い側も、8歳以降には単胎児の基準より重かった。双子の軽い側を、必ず集団の中でも軽い人だと想像すると、この特徴を見落としてしまう。[13]
重さの差を、脂肪と血液の差まで追う
体重差があるとき、その中身まで確かめたのがWangらの研究だ。中国の20〜60歳の女性の一卵性双生児987組、計1,974人を調べ、BMIや腹囲に加えて、脂肪量と除脂肪量を測った。除脂肪量は脂肪以外の体の成分を指す。この集団は平均BMIが21.8と比較的低かったが、脂肪の指標と血中脂質には幅があった。[3]
双子の組内で比べても、脂肪の指標が高いほど、LDLコレステロール、総コレステロール、中性脂肪は高く、HDLコレステロールは低い関連が見られた。一方、除脂肪量には同じ関連がなかった。脂肪と除脂肪量を別々に測ったことで、体重の内訳に対応した関連が見えた。研究者も、BMIと体脂肪がよく対応しない集団では、脂肪を直接評価する必要性を挙げている。[3] 脂肪の測り方にも注意したい。女性の大きな双子集団では、画像による全身や体幹の脂肪の評価を使っていた。腹囲、全身の脂肪量、体幹にある脂肪の割合は、それぞれ測っている範囲が異なる。この研究では全身の脂肪だけでなく、体幹の脂肪量やその割合、腹囲と腰囲の比も含めて評価している。血液では、空腹時の総コレステロール、中性脂肪、LDL、HDLを測っていた。[3]
別のRönnemaaらの観察研究は、平均18kgの体重差がある一卵性双生児23組を比べた。重い側ではLDLコレステロールが約20%高かった。腹部の内臓脂肪が多い組では、中性脂肪を含む指標の組内差も目立ち、脂肪の付き方や特定の遺伝的特徴によって結果が違った。内訳は男性9組、女性14組で、重い側ではHDLの一部であるHDL2コレステロールも約20%低かった。[8]
体重管理中に健診票を見る場面でも、この区別は使える。体重の欄だけで結果全体を良い、悪いと決めず、脂質の欄に別の変化がないかを見るのである。体重が家族に似ているという情報から、自分の検査値まで同じだと予想するのも避けたい。一卵性双生児でさえ、脂肪と脂質の組み合わせは異なっていた。検査値の判断は、自分の結果を基に医師と行う。[3][8]
同じ「双子の体重研究」でも、参加者の選び方を見れば役割が違う。別々に育った組を集めた研究は、暮らした家庭を共有しなくても残る似方を調べる。体重差がある組を集めた研究は、遺伝的背景がそろっていても違っている体の状態を調べる。似ることを確かめたい研究と、違いの中身を確かめたい研究では、入り口が異なるのだ。片方の結論をもう片方への反論にせず、どちらも体重を理解する材料として置ける。[1][13]
数字で読む双子の体重研究
53組:別々に育った一卵性双生児を対象にした遺伝率の研究。男性と女性の組を含む。[1]
32研究:遺伝率が年齢や環境でどう違うかを検討した系統的レビューの採用数。[19]
16.4kg:成長記録をたどった体重差のある組で、平均25.7歳に見られた組内の平均差。[13]
987組:脂肪量と除脂肪量を分け、血中脂質との関連を調べた女性の一卵性双生児。[3]
47%:若い成人の体重差がある組で、重い側の脂肪組織に見られたミトコンドリアDNAコピー数の減少割合。皮下脂肪の組織で測られた値である。[7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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