健康な食事にかかるお金は、食品の値札だけでは比べられない。食費の測り方を問うレビューと、食事の多様性と費用を調べた追跡研究から、支出と食事の質の関係を確かめる。価格で購入内容が変わっても体重まで同じように動くとは限らない理由や、予算の中で何を見直せるかを、研究の範囲に沿って考える。
同じ支出水準にも、健康的な食事を買う家庭とそうでない家庭がある。米国の食費を検討した論考が示したのは、支出の多さだけでは決まらない食卓の違いだ。食品価格の測り方によっても、健康的な食品の高低の見え方は変わる。[8]
一方、英国の追跡研究では、幅広い食品群を食べる食事は、限られた食品群の食事より費用が高かった。「工夫すれば予算内で選べる」という話と、「食事の幅を広げると支出が増える」という話は、どちらかを消せば済む関係ではない。比べている食事と、測っている費用を確かめたい。[8][14]
食費を増やせば健康になれる、とも、減らせば体重が落ちる、とも簡単には言えない。食品価格を変えた実験のレビューでは、対象食品の購入は動く一方、買い物全体の栄養面の変化は一様でなかった。レシートの合計から食事の中身へ、さらに体重へと進む間には、別々の確かめどころがある。[16]

「高い」は、何をそろえて比べた言葉か
Carlsonらの論考は、米国の食事について、所得と食事の質の関係はごく限られており、平均的な食事には改善の余地があると述べている。健康的な食品がどれほど高く見えるかは価格の測り方で変わること、健康的な食品とそうでない食品への予算配分が健康的な食事に沿っていないことも論点だ。収入、価格、支出の配分をそれぞれ検討している。[8]
同論考によると、どの支出水準にも健康的な食事を購入する家庭とそうでない家庭があった。低所得世帯の食料購入を支える米国の補助制度の上限給付額以下でも、健康的な食事を買う家庭が存在したという。著者らは、手頃な費用で健康的な食事へ移るための案内を充実させるよう求めている。これは米国についての議論であり、立川の家庭で買える食品や必要な予算は、身近な売り場で考えることになる。[8]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
食品群を広げた食事には、どのくらい費用差があったか
英国のEPIC-Norfolkコホートは、23,238人の食事を質問票で把握し、その後の糖尿病発症を中央値10年追った観察研究である。研究者は、乳製品、果物、野菜、肉とその代替食品、穀類という食品群の広がりと、各群の中の種類の多さを分けて評価した。単に珍しい食品を食べる人を探した研究とは読み方が違う。[14]
すべての5食品群を含む食事の費用は、3食品群以下を含む食事に比べて18%高く、1日4.15ポンドと推定された。その推定の95%信頼区間は4.14〜4.16ポンドである。費用の推定は英国の食事を対象としている。食事の質問票は1993〜1997年に記入され、追跡中に新たに糖尿病を発症したのは892人だった。食費と食事の幅を調べる部分に加え、その後の発症を追う部分を持つ研究である。[14]
同じ研究で、5食品群を含む食事の人は、3食品群以下の人と比べて糖尿病発症のハザード比が0.70、95%信頼区間は0.51〜0.95だった。ハザード比は追跡中の発症の起こりやすさを比べる指標である。肥満や社会経済的な条件を調整した関連だが、食費を増やす介入で発症を防いだという結果とは区別する。[14]
食品群の中の多様性にも関連が見られた。種類の多さと糖尿病発症の関連を示すハザード比は、乳製品で0.61、果物で0.69、野菜で0.67だった。95%信頼区間は順に0.45〜0.81、0.52〜0.90、0.52〜0.87である。食品群全体の広がりだけでなく、どの群の中で種類が多かったかまで分析している。全体の多様性の点数と、乳製品や果物など各群の内部の点数を別々に作ったため、この両方の結果が得られた。食卓に果物があるかという問いと、果物の中でどれほど種類を食べているかという問いを、研究の設計に組み込んでいる。食事の費用についても、多様性に伴う金額を統計モデルで推定した。発症の分析と費用の分析に、それぞれ別のモデルを用いている。一方で、研究者は自己申告の食事データと、食品群に含まれているかどうかで点数を付ける方法の限界を挙げている。同じ群の中に健康面で異なる食品が含まれることもあり、種類の数だけで食事を採点し切ることは難しい。[14]
家庭の食費へ引き寄せるなら、「何を買うと高いか」の前に、「何が食卓から抜けているか」を見る問いが生まれる。野菜だけに支出を集めるのか、ほかの食品群も残すのか。研究で評価した軸は、食品群の広がりだった。食材の値段の順位と、食事の多様性は違う話なのである。[14]
買う量が動いても、食事全体の質は別に確かめる
価格が食べ方に関わることは、多くの研究で検討されている。食品群の価格と消費を国際的に集めた系統的レビューとメタ分析では、価格が変わった食品自身への影響に加えて、ほかの食品の消費がどう変わるかも扱った。価格弾力性という言葉は、価格変化に対して消費がどの程度動くかを表すために使われている。[19]
このレビューで重要なのは、ある食品の価格が変わると、その食品だけが動くとは限らない点だ。代わりに選ぶ食品への影響は国の所得水準によってさまざまで、元の変化を強める場合も、弱める場合もあった。特定の食品が買われなくなったという結果を、食事全体の改善と同一視できない理由がここにある。[19]
実験室と実際の生活環境で価格を変えた研究を検討したEpsteinらのレビューでも、対象食品の購入は変化したが、購入品全体の栄養の質については結果が混在していた。代替、つまり別の食品を選ぶ動きが影響するためだ。価格による働きかけが効いたかを判断する際には、対象食品の量と、買い物全体の構成を別に見ることになる。[16]
買い物の例なら、いつもの食品を見送った後で何を選んだかまでが比較の続きである。買わなかった食品だけを眺めて「改善した」とするのは早い。実験で結果がそろわなかった背景に代替があると分かれば、買い物かごの中で入れ替わった食品も評価の対象になる。[16]
また、同レビューは価格への反応を左右する条件について、実験で繰り返し確認された知見がないとも述べている。「自分は価格に左右されない」「予算の少ない人は皆同じ選び方になる」と固定せず、どの食品から何へ移ったのかを具体的に見るほうが、この段階の研究に忠実だ。反応の強さを性格の評価にしてしまう材料はない。[16]
価格研究を読むときは、購入量、摂取量、体重という測定の段階を分けておくと見通しがよい。実験レビューが確かめた購入の変化と、長期の観察研究で調べた体重との関連では、評価した指標が異なる。家に持ち帰る食品が変わったところまで示す研究に、その後の体重の答えまで求めないことだ。[12][16]
数字で読む食費と体重の距離
23,238人:英国で食品群の多様性と、その後の糖尿病発症を調べた人数である。[14]
18%:5食品群を含む食事と、3食品群以下の食事の推定費用差である。[14]
0.70:英国の同研究で、食品群の広がりと糖尿病発症の関連を示すハザード比である。[14]
5,115人:食品価格、摂取量、体重の関連を20年間調べた米国の追跡研究に参加した人数だ。[12]
−1.05kg:米国の同研究で、ソーダ価格が1ドル高いことに関連した体重の推定差。95%信頼区間は−1.80〜−0.31kgだった。[12]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







