内転筋の筋トレは開いた位置だけでよい?狭い範囲の反復と成長を分けて読む

内転筋の筋トレで、脚を開いた位置だけを小さく動かすと成長しやすいのか。筋肉の構造、ストレッチ直後の可動域、競技者の筋力改善を手がかりに、動く角度と筋肥大を分けて考える。狭い反復をメニューに入れる前に確かめたい記録の条件や、痛みがある場合の判断も整理する。

脚を閉じるマシンで、開いたところだけを小刻みに往復する動画を見る。最後まで閉じなくてもよいなら、今のメニューを変えたくなる。内ももが引っ張られる感覚も強そうだ。しかし、感覚の強さを、そのまま筋肉が育つ証拠にはできない。

答えの芯は、内転筋では「開ける角度が変わった」「挟む力が伸びた」「筋肉が大きくなった」を別々に確かめる必要がある、という点だ。股関節の可動域を扱う試験と、筋力を扱う試験をつなぎ合わせても、開いた位置だけの反復が筋肥大に優れるという比較にはならない。[1][14]

既存記事「内転筋の筋トレマシンは深く座ると違う?股関節の角度と内ももの力を研究で読む」には座り方の問いを譲る。ここで考えるのは、座面の奥行きではなく、反復のどの区間を使い、その成果を何で判断するかである。

また、「内転筋の筋トレは滑らせて開くと違う?閉じる力と受け止める力を分けて読む」が扱うのは、力を出す局面の違いである。ここでは動く区間の選択と筋肥大の関係に問いを絞る。

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開いた位置だけの反復は、何を選んでいるのか

ここでは、アダクションを脚を内側へ寄せる動き、部分反復をその動きの一部だけ往復する方法として話を進める。「開いた位置で行う」とは、閉じきるところまで進まず、開いた側に往復の区間を置く、という意味である。これは記事内で比較する動作の呼び方であり、特定の角度や重さを推奨するものではない。

まず、自分が変えようとしているものを言葉にしたい。始めに脚を広く開くことと、開いた側だけを反復することは違う。広く開いてから閉じる人もいれば、広く開いたまま短く戻す人もいる。同じ「伸ばして鍛える」という説明で、この別々の動作が混ざりやすい。

さらに、開いた姿勢を保つことと、その場所で動かすことも区別したい。姿勢の写真から分かるのは、その瞬間の配置である。写真だけでは、そこからどちらへ動き、どこで折り返し、何を成果として追うのかまでは決まらない。メニューの名前よりも、往復の始点と終点を説明できるかが先だ。

内転筋の研究には、関節をどれほど動かせるかを測るものも、抵抗に対してどれほど力を出せるかを測るものもある。前者で角度が増えた結果を読んで、後者の力も増えたと補うことはできない。まして筋肉の大きさの増加を付け足すことはできない。[1][14]

動画の字幕が短いほど、見る側で説明を埋めてしまう。「大きく開く」「よく伸びる」「よく育つ」が一続きに見えても、確かめたい問いはそれぞれ異なる。内ももへの刺激を探しているのか、動きやすさを求めているのか、筋力を伸ばしたいのか。目的を言い分けると、必要な研究も変わる。

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大内転筋の構造は、単純な一本のゴムではない

筋肉の長さを考える手がかりになるのが、大内転筋の解剖研究である。大内転筋とは内転筋の一つで、研究者は遺体標本を用いて、その内部の構造を詳しく調べた。対象は10標本であり、生きた人に筋トレをさせた比較試験ではない。[3]

この研究では、大内転筋を血管の走り方に基づいて4つの部分に分け、体積、筋の長さ、筋線維の長さ、力を出す構造を表す生理学的断面積を評価している。筋線維とは、筋肉を構成する細長い線維のことである。筋全体の外形と、その中の線維の長さを分けて調べた点が大切だ。[3]

結果からは、最も体の中心に近い部分と、残る部分とで構造上の特徴が異なることが示された。後者は前者より筋線維が長く、大きな範囲で太ももを動かす働きに適した構造と考察された。一方、最も中心に近い部分は、主に股関節を安定させる方向に適していると解釈された。[3]

つまり、大内転筋の大きさは、機能の異なる部分がまとまったものとして捉えられる。同じ筋の名前でも、内部を一様なものと考えないほうが、構造に沿っている。ただし、これは形から働きを考える研究であり、どの反復区間ならどの部分が多く育つかを決める試験とは役割が違う。[3]

ここで「広い範囲を動かすのに適している」という考察を、「すべての反復を最大限の開脚で行うべきだ」に変えてはいけない。構造についての説明と、運動方法の優劣を比べる説明では、必要な確かめ方が違うからだ。筋肉の図はメニューを考える地図にはなるが、それだけで最適な折り返し地点は決まらない。[3]

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ストレッチで開けた角度は、成長の量ではない

内転筋が伸びにくい男女40人を対象にした無作為化クロスオーバー試験では、参加者が異なる日に複数のストレッチ条件や対照条件を経験した。クロスオーバーとは、同じ参加者が条件を替えて比較に参加する設計である。男女は各20人で、測ったのは運動直後の股関節の開く角度などだった。[1]

ストレッチ後の可動域の増加は1.0〜1.7度と小さく、条件間の違いも、多方向へのストレッチが対照条件を上回った比較を除いて認められなかった。研究は、単回のストレッチによる直後の変化を最小限のものと評価している。「伸ばしたから大幅に開けるようになる」という話ではない。[1]

この角度は、その日の動きの変化を読むための値である。筋肉の体積が増えた量でも、次の筋トレで増やせる重さでもない。帰り道で脚が動かしやすく感じられたとしても、その体験に「筋肥大が進んだ」という札を付けるには、別の評価が必要になる。[1]

測定の時点も読み落とせない。直後に確かめた研究は、直後の問いに答えている。継続した運動の成果を考えたいときは、取り組んだ期間と、その後に何を測ったかを確認する。今日開けた角度を、そのまま来月の筋肉の大きさへ読み替えることは避けたい。[1]

日常の記録でも、開きやすさを書き留めることには意味がある。ただし、その欄には「開きやすさ」と書く。筋力の欄や見た目の欄へ同じ評価を複写しない。この区別は細かいようでいて、「開く感じが強い方法を選べば全部かなう」というメニュー選びを防いでくれる。

筋力が改善しても、可動域がより広がるとは限らない

別の無作為化比較試験は、内転筋に関係する鼠径部痛のある男性サッカー選手30人を対象にしている。鼠径部とは脚の付け根のあたりである。通常のリハビリにコペンハーゲン・アダクションという内転筋の運動を加える群と、加えない群を比べた。期間は8週間、実施は週2回だった。[14]

主に評価したのは、伸ばされる動きに抗して出す内転筋の力である。これは遠心性筋力と呼ばれる。運動を加えた群では、この筋力の改善が比較群より大きく、群間差は体重あたり0.49 Nm/kg、95%信頼区間は0.31〜0.66だった。Nm/kgは、回転させる力を体重で割った単位である。[14]

この0.49という値は、追加群の全員がその分だけ伸びたという意味ではない。比較群に対する改善の差を表す値であり、信頼区間も併せて読む。自分の次の練習の目標値として転記する数字ではない。何と何を比較した差なのかを残すことで、結果の大きさを取り違えずに済む。[14]

一方、股関節の可動域の変化には、群間で有意な差がなかった。筋力や痛み、自覚する生活・競技上の状態では追加群が良好でも、動く角度で同じ優位性が認められたわけではない。同じ試験の中でも、成果の項目によって答えは分かれる。[14]

この結果は、筋力と角度を別々に見る実例になる。角度が比較群より広がらなくても、筋力の改善を否定する理由にはならない。反対に、動く角度が広がっただけで筋力も改善したと決めない、という読み方にもつながる。[14]

ただし、対象は痛みのある男性競技者で、比較はリハビリに運動を加えるかどうかだった。健康な女性のマシン運動で、開いた側だけを反復する方法と全体を動かす方法の筋肥大を比較した結果としては扱えない。参考になる点は成果の分け方であり、そのまま持ち帰る運動処方ではない。[14]

数字で読む内転筋の角度と力

40人:ストレッチ直後の開く角度などを調べた試験の参加者数である。[1]

1.0〜1.7度:その試験で示された可動域増加の大きさであり、筋肥大の量ではない。[1]

10標本:大内転筋の内部構造を調べた解剖研究の対象である。[3]

8週間:痛みのある男性サッカー選手のリハビリ比較試験の実施期間である。[14]

0.49 Nm/kg:同試験の遠心性内転筋力の改善の群間差で、95%信頼区間は0.31〜0.66だった。[14]

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宮川涼 Founder

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