多発性硬化症と体重 若い頃の肥満、診断後の経過と食事の試験を分けて考える

多発性硬化症では、若い頃の肥満と発症、診断後の体重と病気の活動性、食事による疲労の変化を分けて考えたい。小児期から追った大規模研究と食事介入のメタ分析を読み、関連を減量の治療効果に置き換えないための視点を整理する。主治医と体重管理や食事を話す際の具体的な問いも示す。

多発性硬化症のある40人に、12週間、毎日1食を届けた試験がある。食事の質は両群で改善したが、認知機能の群間の変化には有意差がなかった。食べ方が変わることと、狙った健康指標が変わることは、それぞれ評価されていた。[1]

体重管理の情報を探すと、若い頃の肥満と発症、診断後の体格と病気の活動性、食事による疲労の変化が同じ話に見える。しかし、研究が追う時間も、測る結果も異なる。まずは発症前と診断後に分け、食事の試験が何を実際に測ったかを見ていきたい。[2][11][12]

体重に目を向ける理由はある。過去の体格を責めるより、現在の食事を支える方法や、歩行の機能を評価する方法に目を向けよう。疲労と生活の質を扱う食事研究には好ましい結果もあるが、メタ分析の著者らは根拠の確かさを非常に低いと評価している。[4][11]

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若い頃の肥満は、発症とどう結びついたか

多発性硬化症は、中枢神経系の炎症や神経の変性を特徴とする慢性の自己免疫疾患である。栄養と病気を扱ったレビューは、遺伝的な要因とともに、ウイルス、喫煙、肥満、栄養などの環境要因を挙げている。肥満だけで発症を説明する枠組みにはなっていない。[7]

若年期の体格について、スウェーデンの症例対照研究は、患者1,571人と対照3,371人を比較した。発症した人とそうでない人の条件を振り返って比べる研究である。20歳時のBMIが27を超えていた人では、標準体重の人に比べ、多発性硬化症の発症との関連がおよそ2倍と報告された。[2]

より早い時期から見た前向き研究もある。デンマークの学校の健康記録に登録された302,043人について、7〜13歳のBMIと、その後の多発性硬化症を調べたものだ。登録情報を結びつけると、774人の患者が確認され、そのうち女子は501人、男子は273人だった。[17]

女子では、各年齢のBMIの標準化スコアが高いほど、後の発症リスクが高かった。標準化スコアは、この研究で体格の違いを比較するために使った指標である。女子の7歳時点でスコアが1単位高いときのハザード比は1.20、95%信頼区間は1.10〜1.30だった。13歳時点では1.18、1.08〜1.28で、男子では関連が弱かった。[17]

小児期の研究は、女子のBMIを順位で区分した比較も報告している。同年齢の分布で95パーセンタイル以上の女子は、85パーセンタイル未満の女子に比べ、発症リスクが1.61〜1.95倍だった。BMIを連続した値として扱う解析と、分布の上位にいる人を比べる解析の両方が行われたことになる。[17]

男女をまとめた解析では、BMIの標準化スコアが1単位高い場合のハザード比は、7歳時で1.17、95%信頼区間は1.09〜1.26、13歳時で1.15、1.07〜1.24だった。女子だけの値と全体の値を分けて示すことで、男子では関連が弱まったという結果も残せる。研究は、成長期の複数の年齢で体格を測っていた。[17]

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因果関係の手がかりも、診断後の減量効果とは分ける

観察研究では、体格以外の条件が結果に関わる可能性が残る。さらに、病気がいつ始まったかを正確に把握しにくいことも、発症要因を調べる難しさになる。多発性硬化症のメンデルランダム化を扱ったレビューは、こうした交絡や逆因果を、従来の疫学研究の限界として説明している。[15]

メンデルランダム化は、遺伝的な違いを手がかりに、変えうる要因と病気の因果関係を検討する方法である。このレビューでは、複数の研究が肥満と低いビタミンD濃度について、発症への因果的な役割を支持しているとまとめられている。単に体格が似た人を比べる観察研究とは、別の角度からの手がかりだ。[15]

ビタミンDの名前が出ても、読者が自分でサプリを開始したり量を増やしたりする読み方は避けたい。このレビューが扱うのは低い濃度と発症の因果推論であり、補給による治療の試験とは目的が異なる。[15] 検査や補給が必要かは主治医に確認し、薬やサプリの変更は医師・薬剤師と検討する。

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治療中の体格と画像所見には関連があった

診断後を扱った研究として、インターフェロンβによる治療中の患者86人を追ったコホートがある。BMIが25以上の過体重・肥満群では80%、25未満の標準体重群では48%に、MRIで病気の活動性が認められた。MRIは画像で状態を評価する検査で、この研究では治療中の活動性を捉えるために使われた。[12]

研究は、再発がないこと、持続する障害の進行がないこと、MRI活動性がないことを組み合わせた評価も行った。こうした「病気の活動性の証拠がない状態」に達した割合は、標準体重群で26%、BMIが25を超える群で13%だった。NEDAと呼ばれるこの複合評価の差はP=0.05と統計的に境界の結果であり、対象も86人の小規模なコホートだった。MRI活動性の差はP=0.001で、両者の統計的な確かさは異なる。著者らは、BMIが治療反応に関わる可能性を示している。[12]

ここには、同じ治療中でも体格により経過が違うかもしれない、という臨床上の問いがある。一方、体重を落とす介入は割り当てられていない。体格の異なる人を追った結果から、減量すれば画像の活動性も同じ割合だけ変わる、と計算することはできない。[12]

BMIによる区分にも目を留めたい。MRI活動性の比較はBMIが25以上と25未満、複合評価は25を超える群と標準体重群という記述で報告されている。ともに同じ治療を受けていた集団の比較だが、画像に変化があるかを調べる評価と、再発・障害の進行も含める評価では達成条件が違う。画像の活動性がないことに加えて、再発と障害の進行もないことを求める指標である。[12]

歩行と疲労は、同じ物差しでは測れない

体格と歩行を調べた横断研究は、多発性硬化症のある436人を、肥満群178人と標準体重群258人に分けた。横断研究は、同じ時点で条件の異なる人を比較するものだ。6分間歩行テストで進んだ距離は、肥満群で平均378.2m、標準体重群で426.1mだった。[4]

歩幅は肥満群で短く、歩く際の左右の幅は広かった。一方、自分で歩行の状態を答える質問票と、姿勢の制御に関する測定では、有意な群間差は認められなかった。検査で歩く距離に差があっても、本人の評価や姿勢の指標まで一緒に差が出たわけではない。[4]

この違いは、日常の「歩きにくい」という言葉をほどく手がかりになる。歩く速さ、一定時間に進む距離、本人の感じ方には、それぞれの測り方がある。研究の結果を自分に当てはめる際にも、どの側面を見たいのかを先に確かめたい。なお、この比較も減量による歩行の改善を調べた試験ではない。[4]

食事試験をまとめた研究が主に見ていたのは、患者自身が答えた疲労と生活の質である。歩行距離やMRIを測った研究とは、評価の焦点が違う。疲労の改善を軽く扱う理由はないが、それを神経の障害や病気の進行全体の改善と言い換えると、研究から離れてしまう。[11]

歩幅の平均は肥満群54.8cm、標準体重群58.1cmで、歩く際の左右の幅はそれぞれ12.1cm、10.9cmだった。前者の差はP=0.003、後者はP=0.01と報告されている。距離だけでなく、足を前に出す幅と左右に開く幅という歩き方の特徴も調べられた。[4]

一定の距離を歩く検査も行われた。25フィートを歩く時間は、肥満群で平均9.0秒、標準体重群で7.2秒で、差はP=0.006だった。6分間にどこまで進めるかという検査と、決められた距離を何秒で歩くかという検査の両方が用いられている。歩行の評価には、持続して進むことと、距離に対する所要時間という見方が含まれる。[4]

数字で読む多発性硬化症と体格・食事

302,043人:小児期のBMIと後の発症を調べたコホートの規模。[17]

86人:治療中のBMIと病気の活動性を調べたコホートの対象者数。[12]

436人:肥満の有無と歩行・姿勢の制御を比べた横断研究の規模。[4]

608人:疲労と生活の質のネットワークメタ分析に含まれた参加者数。[11]

40人:遠隔で食事を支援するMIND食の無作為化試験に参加した人数。[1]

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宮川涼 Founder

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