アスタキサンチンのサプリで脂肪は燃え、体重は減るのか。人の比較試験とメタ分析から、運動中の脂肪利用、体脂肪、血中脂質の結果をたどる。動物実験の期待と人の結果、抗酸化の指標と減量の違いを整理し、運動を併用した試験の読み方や、服薬中に医師へ確かめたい点まで考える。
自転車をこぎ続けた参加者が、そのままタイムを競う課題へ移る。よく鍛えた若い男性の自転車競技者やトライアスロン競技者に、アスタキサンチンか比較用カプセルを飲んでもらい、運動中に使う脂肪まで調べた試験の場面だ。[7]
血液中のアスタキサンチン濃度は上がった。それでも、脂肪を使う速さにも競技の成績にも、比較した群との有意な差は見られなかった。[7] 成分が体に入ったことと、期待した働きが起きることの間には、こうした距離がある。
一方、別の自転車の試験では成績が改善し、運動の終盤に脂肪利用が増えた。[13] 赤い色素の可能性を、一言で採点するのは難しい。ここではアスタキサンチンに絞り、人が運動している間の変化と、体脂肪や血液検査で測った変化をたどっていく。

抗酸化の働きから、減量までを一足飛びにしない
アスタキサンチンは、水生生物に見られる脂溶性のカロテノイドである。[7] カロテノイドは色素の仲間で、この成分については抗酸化の働きに加え、筋肉の代謝や肥満との関係が研究されている。筋肉と運動適応を扱うレビューは、脂質利用や、細胞でエネルギーを扱うミトコンドリアへの作用を整理している。[1]
その説明で出てくる酸化ストレスとは、活性酸素と抗酸化の働きの釣り合いが崩れ、細胞や組織に損傷をもたらす状態を指す。過体重や肥満の成人を調べた試験でも、この状態を血液の指標から捉えている。[14] 「抗酸化」という言葉は研究の入口になるが、それだけで何kg減るかまでは分からない。
動物の肥満関連疾患を扱った系統的レビューとメタ分析は、17論文に当たる21の動物実験を統合した。対照の動物では脂肪組織重量の低下(p=0.05)と収縮期血圧の低下があり、2型糖尿病モデルでは血糖が低下した。著者らの目的は、今後の人の臨床試験の設計に役立てることだった。[2] 動物での発見は、人に試す理由を作る段階として受け取れる。
ただし、この動物研究でも結果を一色には塗れない。脂肪肝のモデルでは肝臓重量の低下が示された一方、体重についての検定値はp=0.11だった。[2] 肝臓重量の検定値はp=0.0002であり、体重と肝臓重量では統計的な結論が異なった。[2]
人を含む研究を広く扱うレビューも、前臨床のデータが充実する一方、人の試験は限られ、結果が一致しないことが多いと指摘する。[1] 「細胞でこの経路が動く」「動物の脂肪組織が変わる」「人の体重が減る」は、順番に確かめたい異なる問いだ。仕組みの説明が詳しいほど、実際に人で測った結果へ目を戻す意味がある。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
人の試験を束ねると、体重と血中脂質は違う答えになった
人の無作為化比較試験をまとめた2020年のメタ分析では、14の適格論文が解析された。参加者をアスタキサンチン群と対照群に分けた試験の結果を集め、変化の平均差を調べている。その結果、体重と、身長に対する体重の指標であるBMIには、有意な関連が認められなかった。[3]
同じ解析では、空腹時血糖、血糖管理の指標であるHbA1c、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、血圧についても、全体として有意な関連が見られなかった。一方、HDLコレステロールは平均1.473 mg/dl上昇し、95%信頼区間は0.319〜2.627 mg/dlだった。[3] 信頼区間は、推定した平均差にどれくらい幅があるかを見る材料になる。
HDLコレステロールは血中脂質の測定項目である。体重が有意に変わらない解析でこの値が上がったことは、血液検査の改善と減量を同じ意味にできない実例になる。[3] 「脂質が改善」と聞いて、お腹の脂肪が減った場面を思い浮かべると、測定した対象が入れ替わってしまう。
この違いを見やすくする個別の試験もある。軽度の脂質異常がある肥満でない61人を対象にした無作為化プラセボ対照試験では、アスタキサンチンの用量を分けて12週間比較した。糖尿病と高血圧のない25〜60歳が対象で、開始時の空腹時中性脂肪は120〜200 mg/dlだった。[15]
この試験では、どの用量でもBMIとLDLコレステロールに変化がなかった。その一方、用量によって中性脂肪の低下やHDLコレステロールの上昇が確認された。[15] 中性脂肪が有意に低下したのは1日12 mgと18 mg、HDLが有意に上昇したのは6 mgと12 mgの条件だった。[15]
メタ分析に戻ると、炎症の指標であるCRPには、比較的長い投与期間や高用量の条件で低下が見られた。これは条件を分けた解析で得られた結果である。[3]
個別の脂質の試験では、血中のアディポネクチンという物質も1日12 mgと18 mgで増加した。その変化とHDLの変化には、年齢とBMIとは独立した正の相関があった。[15]
脂肪を使う速さが増えたのは、自転車試験の終盤だった
冒頭の試験では、よく鍛えた男性32人が、1日20 mgのアスタキサンチンかプラセボを4週間摂取した。両群とも、一定の負荷で60分運動した後に、約1時間のタイムトライアルを行った。試験は、参加者にも評価する側にも割り付けを知らせない二重盲検の方法だった。[7]
運動中の全身の脂肪酸化、つまり脂肪をエネルギーとして使う速さは、アスタキサンチン群で開始前の毎分0.66 gから毎分0.61 gへ変化した。対照群も毎分0.71 gから毎分0.68 gへ変化し、群の間に違いはなく、時間による変化にも有意差はなかった。[7] 競技成績にも差がなく、アスタキサンチン群の出力は開始前の238 Wから244 W、対照群は236 Wから239 Wだった。[7]
対して、2021年に報告された試験は、余暇にトレーニングする男性の自転車競技者12人を対象とした。1日12 mgを7日間摂る条件とプラセボの条件を、間に摂取しない期間を置いて同じ参加者が経験する交差試験だった。[13] 参加者同士の比較だけでなく、同じ人の条件の違いを比べる組み立てである。
40 kmのタイムトライアルでは、平均の所要時間がプラセボの70.76分からアスタキサンチンの69.90分へ短縮した。改善は平均51秒で、標準化した効果の大きさはg=0.21だった。脂肪酸化が増えたのは39〜40 kmの区間で、差は毎分0.09 gと報告されている。[13] 所要時間の改善率は1.2±1.7%、平均短縮時間のばらつきは51±71秒で、平均と個人差の両方が報告されている。[13]
この結果は前の試験と食い違うが、対象の鍛え方、摂取期間、運動課題が違う。[7][13] 前者は32人を別々の群に分けた並行群試験、後者は12人が両条件を経験する交差試験であり、後者の短縮時間には51±71秒のばらつきがあった。[7][13] 人数や設計、結果のばらつきが異なるため、用量と期間の比較から効き方を推し量ることはできない。後者では、2つの摂取条件の間に14日間の休止期間を設け、7日目に自転車エルゴメーターで40 kmを走った。運動中を通して代謝の指標を測り、39〜40 kmでは呼吸交換比も0.03低下したと報告されている。[13]
前者では、参加者の平均年齢は25歳、平均体重は73 kgだった。血中アスタキサンチン濃度は検出できない値から187 μg/kgへ有意に上昇したが、総抗酸化能はp=0.90、脂質の酸化に関わるマロンジアルデヒドはp=0.63で、有意な変化が見られなかった。[7] 成分が血液中に増えたことまで確かめたうえで、運動中の脂肪利用や競技成績への上乗せを検討した研究だった。
数字で読むアスタキサンチン
14論文:人の比較試験を統合し、体重とBMIに有意な関連がなかったメタ分析の規模。[3]
1.473 mg/dl:同じメタ分析で見られたHDLコレステロールの平均上昇幅。[3]
32人:脂肪酸化と競技成績に差がなかった、よく鍛えた男性の試験の人数。[7]
51秒:別の男性の自転車試験で見られた40 kmの平均短縮時間。体重の変化ではない。[13]
39〜40 km:好結果の試験で脂肪酸化の増加が報告された終盤の区間。[13]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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