筋トレは胸と背中のどちらから始める?先に行う種目と長期の筋力変化を読む

筋トレで胸と背中の順番に迷ったら、まず伸ばしたい種目を決めたい。種目順序のメタ分析と男女の長期試験から、先に行う種目の筋力、全体の成績、筋肉の大きさを分けて読む。胸を必ず先にする根拠があるのか、肩や腕を含むメニューをどう記録し、次の練習につなげるかを考える。

ベンチプレスの準備をしたところで、練習帳のラットプルダウンの欄が気になる。今日は胸を押す重さより、背中で引く重さを伸ばしたい。「胸、背中、肩」と書いたメニューの先頭を、そのまま今日の優先順位にしてよいだろうか。

答えの芯は、胸を必ず先にするのではなく、伸ばしたい種目を先に置くことである。種目順序を扱ったメタ分析では、セッションの初めに行う種目で筋力の伸びが大きいと結論された。一方、筋肉の大きさの変化には、順序による有意な差が認められなかった。筋力を伸ばしたい話と、筋肉を育てたい話では、順番の重みが違う。[5]

既存記事「背中痩せは上から引く種目を先にする?横へ引く順番と休憩で変わる回数を読む」は、その場の回数と引く種目同士の比較に譲る。既存記事「女性の胸筋トレは先に胸を疲れさせる?押す種目で増える負担の行き先を読む」には、胸の先行疲労が次の押す動きへ及ぼす影響を譲る。同じ特集の胸と背中を交互に組む記事も、時短が主題である。ここでは、今日の回数から少し目を離し、練習を続けた後にどの種目の力が伸びるかを考える。

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胸か背中かより、何の記録を伸ばしたいか

「胸を先にするとよい」という文には、何によいのかが抜けている。胸の押す種目の記録を上げたいのか、背中の引く種目を伸ばしたいのか、上半身を広く鍛えたいのか。目的を入れずに部位だけを並べても、順番を評価する物差しは決まらない。研究が支持するのは、筋力で優先したい種目を前に置くという方向である。[5][13]

ここでいう筋力の評価には、決められた運動でどれだけ重い負荷を動かせるかという測定が使われる。上半身の順序を比較した試験では、最大反復重量、すなわち指定回数を行える最大の重さが指標となった。押す種目の記録と引く種目の記録は別々に測られている。「上半身が強くなった」という言葉を、部位ごとの具体的な成績へ戻す必要がある。[13]

胸のベンチプレスを伸ばしたいならそれを先頭の候補に、背中のラットプルダウンを伸ばしたいなら引く種目を先頭の候補にする。これは、胸と背中だけを入れ替えた試験からの固定処方ではない。先に行った種目の筋力が伸びやすいという統合結果を、目的の異なるメニューに応用する考え方である。[5]

逆に、まだ優先種目が決まっていない人が、先頭を決められないために練習を始められないのは惜しい。健康な成人を対象としたレビュー群の統合では、筋トレ自体が筋肉量と筋力を増やす刺激となっていた。順序は計画を調整する要素だが、運動を続けること全体を押しのける主役ではない。[6]

メニューを作る場面では、部位名の横に「今日、記録を確かめたい種目」と書いてみるとよい。胸を先にする日も、背中を先にする日も、その理由を言葉にできる。これは研究の優先順位という発想を使った整理法であり、日替わりで順序を変えればさらに伸びるという主張ではない。[5][13]

目的を書き分けると、記録の見方も変わる。ベンチプレスの成績を優先すると決めた期間なら、胸を先にしたという事実だけで満足せず、その種目の重量の変化を見る。引く種目を優先する期間なら、そちらの記録を同じように確認する。種目ごとに測定した研究の結果を使うなら、自分の記録も種目ごとに読む方が対応を取りやすい。[13]

両方を大切にしたい場合には、優先の差をつける理由がまだない、と整理してもよい。筋肥大では順序の有意差が認められなかったため、体を広く鍛える計画を、胸か背中かの二択だけに縮める必要はない。目標が変わったときに並びを見直せるよう、現在の順序と選んだ理由を残すという使い方で十分である。[5]

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全体では差がなくても、先頭の種目は違う

順序を比べた研究をまとめたのが、方法の質が良好から優秀と評価された11研究の系統的レビュー・メタ分析である。複数の関節が動く多関節種目と、単一の関節を中心に動かす単関節種目の筋力テストを、両方まとめて分析すると、順序間に有意な差はなかった。効果量は−0.11だった。[5]

効果量は、異なる測定尺度の結果を比較するために差を標準化した値である。ここでは、持ち上げる重量が何割増えたかを直接表す値ではない。「全体では差なし」を、「先に何をしても、どの種目の記録も同じ」と読み替えないことが大切である。[5]

種目を分けると景色が変わる。多関節種目の筋力は、多関節種目から始める順序が有利で、効果量は0.32だった。単関節種目の筋力は、単関節種目から始める順序が有利で、効果量は−0.58だった。負の符号は改善しなかった意味ではなく、比較した順序のどちらが有利かを表す。どちらの分類でも、優先して先に行う側へ筋力の伸びが寄っていた。[5]

たとえば、押す種目と腕の種目をまとめて「同じだけよくなった」と扱うと、それぞれの違いが見えにくくなる。全体の平均と、自分が上達させたい種目の成績は、同じ問いに答えていない。全体の成績表を見て安心しても、伸ばしたい欄まで確認する余地は残る。[5]

この研究の比較の軸は、主に多関節と単関節の並べ方である。胸と背中という部位の名前には、そのまま対応しない。したがって、「胸が背中より必ず有利」「背中の後に胸を行うと伸びない」という部位別の序列は導けない。先頭に置く目的を決める根拠として読み、体の部位に永久の順位を付ける根拠にはしない。[5]

上半身の長期試験は、どこまで支持するか

上半身を扱った無作為化比較試験では、筋トレ経験のある男性16人が、実施する種目の順番で分けられた。大きな筋群の種目から小さな筋群へ進む群と、逆に小さな筋群から始める群である。期間は6週間、週4回、各種目は3セット、8〜12回、セット間休憩は1分という条件だった。経験のある男性を対象にした結果であり、18〜39歳の女性に同じ伸び幅をそのまま当てはめることはできない。[13]

評価されたのは、ベンチプレス、ラットプルダウン、腕の伸ばす種目、腕の曲げる種目だった。最大1回の重量は両群のすべての種目で有意に増えたが、群同士に有意な差はなかった。つまり、後に回った種目も含め、どちらの順番でも改善が認められた試験である。[13]

一方、効果量でみると、大きな筋群から始めた群は、ベンチプレスとラットプルダウンの最大1回と最大10回の重量の伸びが大きかった。小さな筋群から始めた群では、腕の種目の伸びが大きかった。この傾向を踏まえ、研究者は個人の必要に応じて上半身の運動を優先することを提案している。[13]

有意差がなかった事実と、効果量の方向を両方残して読む必要がある。少人数の試験で見えた方向性だけを切り取り、「先頭にすれば確実に勝てる」とは言えない。反対に、有意差がなかったから順序を考える意味が皆無だと片付けるのも、統合研究の結果とは合わない。[5][13]

また、この試験は胸を先にした群と背中を先にした群の直接対決ではない。押す種目と引く種目を、腕の種目より前に置くかという比較である。男性の経験者の結果を、運動を始めたばかりの若い女性へそのまま当てはめることもできない。採用できるのは、自分の目的に合わせて優先するという判断の方向までである。[13]

メニューを眺めるときは、胸と背中の前後だけでなく、その前に何をしているかにも目を向けたい。「胸は最初のつもり」でも、腕の種目を済ませてからなら計画上の先頭とは違う。部位の見出しではなく、実際の実施順を記録する方が、この試験の比較の仕方に近い。[13]

期間にも注目したい。この試験は、その日の回数だけを比べた実験ではなく、練習前後の成績を比較している。仕事が長引いた日の記録が振るわなかったとしても、それだけで長期の順序の効果が決まったとは扱えない。研究と日常の記録を比べるなら、今日の出来事と期間を通じた変化を別の欄で見る方がよい。[13]

また、試験のセット数、回数、休憩は、その比較を成立させた条件である。セット数や回数まで採用するかは、自分の経験と能力を踏まえて決める。経験者の男性に行った計画と、自分の計画を区別しながら、優先種目の置き方という論点を取り出したい。一般指針も、身体能力と経験に応じた適用を前提としている。[13][17]

数字で読む種目順序

11研究:種目順序と筋力・筋肥大を統合したメタ分析の採用数である。[5]

0.32:多関節種目を先にしたときの、その種目の筋力の伸びに関する効果量である。[5]

−0.58:単関節種目を先にする側に有利だった、単関節種目の筋力の効果量である。[5]

0.03:筋肥大に関する順序の効果量であり、有意差は認められなかった。[5]

16人・6週間:上半身の種目順序を比べた、経験のある男性の試験規模と期間である。[13]

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宮川涼 Founder

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