前立腺がんのホルモン療法と体重の増え方 運動と食事の試験が守ったもの

前立腺がんのホルモン療法中の「太る」は、脂肪の増加と筋肉の減少を分けて考えたい。運動のメタ分析、筋トレと有酸素運動の試験、低糖質食と歩行の試験から、体重だけでは見えない変化を確かめる。疲労や骨への結果、たんぱく質補給の限界と、主治医と相談して続ける方法も整理する。

体重が変わらなくても、疲労が生活を妨げる程度と筋力は改善した。前立腺がんのホルモン療法中の男性155人を対象に、週3回、12週間の筋トレを調べた試験の結果だ。[15] 減量の数字だけでは、運動がもたらした変化を取り落とす。

アンドロゲン遮断療法、略してADTは男性ホルモンを抑える治療であり、脂肪の増加と筋肉量・筋力の低下を伴うとレビューは整理している。[20] 脂肪と筋肉が別の向きに動くからこそ、体の重さに加えて、体の中身や動きやすさを見たい。

ここで扱うのは、がんを治す食べ方や治療薬を減らす方法ではなく、治療を受けながら体を支える介入の研究である。ホルモン療法の開始・変更・中止は主治医の判断に委ねる。一般的な筋肉不足と肥満の重なりとは区別し、治療に伴う体組成の変化と、それに対する運動・食事の結果に焦点を合わせる。

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ホルモンを抑える治療では、体の中身も変わる

ADTの副作用を整理したレビューは、脂肪量の増加、筋肉量と筋力の低下に加え、インスリン感受性の低下を挙げている。[20] インスリン感受性とは、血糖を調節するインスリンへの体の反応のしやすさだ。体形だけの問題として片づけず、代謝の変化も含めて考える治療なのである。[20]

同じレビューで、糖尿病や心血管疾患の危険が高いという記述は、集団を追った研究に基づく。一方、運動で筋力や身体機能がよくなるという結果は、介入研究から得られている。危険との関連が分かることと、運動によって病気の発症を防げたことは、別の証拠だ。著者らは、身体機能や疲労以外のADTに伴う問題については、運動の有益な効果が確定していないと述べている。[20]

骨のことも外せない。ADTは骨量の減少や骨折リスクの上昇に関わるとされるが、運動で脂肪が減ったから骨も守られた、とつなげることはできない。[20] 後に見るメタ分析でも、体組成に有利な結果と、骨密度に明確な差がない結果が同時に並ぶ。[7] 体の項目ごとに、治療側で何を確認するかが異なる。

家族が体形の変化に気づいた場合も、まず食べすぎという評価に結びつけないほうがよい。治療に伴う変化として脂肪と筋肉の両方が挙げられているからだ。[20] 食事だけを削る方針を立てる前に、体重の経過、動きにくさ、現在の治療内容を主治医に伝えることが出発点になる。原因の説明を本人の気合いに預けず、治療と生活の両側から見る。

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運動の平均効果は、脂肪と除脂肪量を分けて読む

治療中の男性715人を含む12件のランダム化比較試験を統合したメタ分析では、対照群に比べ、運動群は除脂肪量が多く、脂肪量と体脂肪率が低かった。[7] ランダム化比較試験は、参加者を無作為に分けて介入の違いを比べる研究だ。この分析は、有酸素運動、抵抗運動、着地などの衝撃を伴う運動を対象としている。[7]

除脂肪量は脂肪を除いた体の量として読み、筋肉量そのものと同一視しない。全身の除脂肪量と手足の骨格筋量を別々に評価した研究もある。[8] 「筋肉が増えた」という短い紹介を見たときには、全身のどの指標を測ったのかまで確かめると、期待する変化の大きさを取り違えにくい。

メタ分析は、複数の試験の結果を統計的に束ね、全体としてどちらの群に有利かを推定する方法だ。この分析では、全身の骨密度、腰椎、股関節の骨密度には明確な運動効果がなかった。[7] 脂肪と除脂肪量で認めた改善と、骨密度の結果を並べると、同じ運動でも変化する項目が分かれる。

より具体的な単位で見られるのが、限局性前立腺がんでADTを受ける男性97人の試験だ。有酸素運動と筋トレを組み合わせ、監督下で6か月行った群では、通常ケア群に対する調整後の差が、除脂肪量で0.8kg、脂肪量で−1.1kgだった。95%信頼区間はそれぞれ0.3〜1.3kg、−1.8〜−0.5kgである。[3]

この試験では、心肺機能と血糖にも有利な変化が報告された一方、運動による前立腺特異抗原やテストステロンの変化はなかった。[3] 前立腺特異抗原は治療経過の評価にも使われる指標だ。脂肪の減少や体力の改善を、がんへの治療効果に置き換えない。体を支える成果は、それ自体の項目として評価できる。

筋トレで体重が変わらなくても、成果はありうる

抵抗運動、つまり筋肉に負荷をかける運動に絞った別のメタ分析では、除脂肪量や体脂肪率、脚で押す力、階段を上る成績に改善があった。一方、脂肪量、歩行、立ち上がって移動する検査では、統計的に明確な改善が得られなかった指標もある。[8] 改善の有無は、評価した項目ごとに分かれた。

脂肪量の群間平均差は−0.21、95%信頼区間は−0.79〜0.37で、差がない値をまたいでいた。[8] 先ほどの、複数の種類の運動を含めた分析とは結果の出方が違う。[7][8] ただし、別々の研究群をまとめた分析どうしの比較から、有酸素運動を足せば脂肪が必ず減ると断定することはできない。運動の構成、対象、評価した項目をそろえて読む必要がある。

初期の試験には、ADTを受ける男性155人を、週3回、12週間の筋トレ群と待機対照群に無作為に分けた研究がある。筋トレ群では、疲労が日常生活を妨げる程度、生活の質、上半身と下半身の筋力がよくなった。しかし、体重、体格指数、腹囲、皮下脂肪の厚さによる体組成には改善がなかった。[15]

この結果を日常に引き寄せるなら、「体重が減っていないから、運動は無駄だった」と判定するのは早い。研究が成果として拾ったのは、疲労による生活への支障や力の出しやすさでもある。[15] 服のゆとりで見る体形と、買い物で感じる負担の両方が、生活の中の目印になる。減量の評価表にも、日常で使う力の欄を残しておきたい。

個人ごとのデータを集めた560人のメタ分析では、監督下の抵抗運動を中心とするプログラムで、全身と手足の除脂肪量、骨格筋の指標が改善した。身体機能が低い人ほど、歩行検査で大きな効果が見られた項目もあった。[13] ただし対象には、現在ADTを受けている人と過去に受けた人の両方が含まれる。[13] 現在の状態から何を目標にするかを考える材料として使いたい。

筋力と歩行への反応にも違いがある。個人データのメタ分析で、体重当たりの筋力は、より若い参加者で運動の効果が大きかった。一方、歩行検査では開始時の機能が低い人で大きな効果が見られた。[13] 「年齢が高いから効果がない」「もともと動けないから始めても遅い」と、年齢や現在の能力だけで運動の価値を決める読み方は、この結果と合わない。何を伸ばせるかは、評価する項目によっても変わる。

運動の時期と期間も研究されている。体組成のメタ分析の部分集団の解析では、治療開始から遅れて運動する場合より早く始めた場合、短い期間より長い期間で、有利な結果が示された。[7] 治療を受ける体に運動を合わせるため、主治医と運動の担当者に早めに話題を出す材料として受け取れる。

また、体幹の脂肪と全身の脂肪は、別々に測られている。併用運動の試験では、体幹の脂肪量の調整後の群間差は−1.0kg、95%信頼区間は−1.4〜−0.6kgだった。[3] 全身だけでなく体幹でも脂肪の変化を捉えた試験であり、部位ごとの測定結果が得られている。

6か月の併用運動の試験では、対象の年齢は43〜90歳で、運動群50人と通常ケア群47人を比較した。監督下の運動は週2回、中等度から高強度で実施された。[3] 対象は限局性前立腺がんでADTを受ける男性であり、治療状況と運動の支援体制が明示されている。

同じ試験では、安静時の脂肪酸化にも有意な改善があり、群間の効果は1分当たり12.0mg、95%信頼区間は2.3〜21.7mgだった。[3] 体組成に加えて、安静時の代謝と心肺機能を評価した点にも、この試験の特徴がある。

数字で読むホルモン療法中の体づくり

715人:運動と体組成・骨密度を検討したメタ分析の参加者数。[7]

0.8kg:有酸素運動と筋トレの試験で示された、除脂肪量の調整後の群間差。[3]

−1.1kg:同じ試験で示された脂肪量の調整後の群間差。[3]

155人:体組成の改善なしでも、疲労や筋力に改善を認めた筋トレ試験の対象者数。[15]

560人:抵抗運動の効果の個人差を検討した個人データのメタ分析の対象者数。[13]

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宮川涼 Founder

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