ココナッツオイルで痩せるのか オリーブ油・バターと比べた試験の結論

ココナッツオイルで腹囲が減った試験と、体重への効果を認めなかった研究は何が違うのか。小さな減量差を示したメタ分析も含め、オリーブ油・バターとの比較、LDLコレステロールの変化、食後の満腹感を確かめる。MCTオイルと混同せず、料理の油を選ぶための判断材料を整理する。

ココナッツオイルをとった女性で腹囲が減った。肥満の男性を対象にした別の試験では、大豆油と比べて体の計測値に差が出なかった。同じ油についての無作為化比較試験、つまり参加者を偶然の割り当てで分けた研究なのに、読後に残る印象は違う。[1][2]

女性の試験には食事のエネルギーを抑える指導と歩行があり、男性の試験ではエネルギー量をそろえた食事が組まれていた。参加者も比較の条件も同じではない。[1][2] 台所の瓶を替える話に進むには、「減った」という短い言葉の中から、誰が何と比べて減ったのかを取り出したい。

複数の研究をまとめても答えは一枚岩にならない。小さな体重差を認めた分析と、有意な減少を認めなかった分析がある。[10][18] ココナッツオイルそのものを食べた人の結果に絞ると、期待の置き方と、血液の数値への注意が見えてくる。

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腹囲が減った試験では、食事も歩行も変えていた

出発点は、腹囲が88cmを超える20〜40歳の女性40人を対象にした二重盲検の試験である。参加者にも評価側にも割り当てを伏せ、ココナッツオイルか大豆油を毎日30mL、12週間とってもらった。同時に全員へ、バランスを保ちながらエネルギーを抑えた食事と、毎日50分の歩行を指示している。[1]

試験中は両群ともエネルギーと炭水化物の摂取が減り、たんぱく質と食物繊維の摂取が増えた。BMIという体格の指標は両群で下がったが、腹囲の有意な減少が認められたのはココナッツオイル群だけだった。著者らは腹部肥満の減少を促す可能性を述べている。[1]

ここで区別したいのは、各群の開始前後の変化と、油の間での変化量の差だ。「片方だけ有意に減った」という報告だけでは、油同士の優劣を直接示す群間差まで確認したことにならない。油以外の指導も一緒に行われた研究として受け止めるのが妥当である。[1]

一方、肥満の成人男性29人の試験は、毎日12mLのエクストラバージン・ココナッツオイルか大豆油を、エネルギー量をそろえたバランスのよい食事と組み合わせ、45日後に比べた。体の計測値には群間差が認められなかった。HDLコレステロールが増え、総コレステロールをHDLで割った比が下がった。[2] 体の計測値と血液の脂質で、結果の出た項目が分かれた。[2]

女性の試験は各群20人、男性の試験はココナッツオイル群15人と大豆油群14人だった。摂取量、期間、併用した食事の条件に加え、群の人数も異なっていた。[1][2]

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メタ分析の平均差は、小さく、結論もそろわない

メタ分析は、複数の試験で得られた差を統計的にまとめる方法である。2023年の系統的レビューとメタ分析では、成人でココナッツオイルと他の油脂を比較した9本の試験が選ばれた。多くの摂取期間は4〜12週間で、例外的に2年間の試験も含まれている。[10]

体重の解析対象は546人で、比較油脂より平均0.75kg小さくなり、統計的に有意だった。BMIと体脂肪率にも小さな差があった一方、腹囲、ウエストとヒップの比、脂肪の重量には有意差がなかった。体脂肪率の差と脂肪重量の差は、判定が分かれた。[10]

別の2022年のメタ分析は、無作為化比較試験を対象とし、7研究、計515人をまとめた。体重の平均差は−0.24kg、95%信頼区間は−0.83〜0.34kgだった。信頼区間は推定に伴う不確かさの幅を示す。この幅が差のないゼロをまたいでいるため、有意な減量効果は認められなかった。[18]

同じ分析では腹囲と体脂肪率にも有意な減少はなく、研究全体の偏りのリスクは高く、証拠の確実性は非常に低いと評価された。摂取方法のばらつき、少人数、短い追跡期間などが限界として挙げられている。[18] 平均値にマイナスの符号が付くことと、頼れる減量手段として確立することの間には距離がある。

二つの分析では選ばれた研究数や対象条件が異なる。2022年の分析では参加者の50%が女性で、追跡期間は4週間から2年間だった。[18] 2023年の分析とともに、短期の試験を多く含む結果である。少なくとも、ココナッツオイルで大きく体重が落ちるという見通しを支える結果にはなっていない。[10][18]

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オリーブ油とバターでは、比較の意味が違う

英国の地域住民から募集した50〜75歳の男女を、ココナッツオイル、エクストラバージン・オリーブ油、無塩バターの群へ無作為に分けた試験がある。割り当てられた96人のうち、開始時に評価を受けたのは94人だった。各油脂を毎日50g、4週間、普段の食事に組み込むか補う形でとってもらった。[8]

主に調べたのはLDLコレステロールの変化である。LDLは血液の脂質に関する検査項目で、この論文では冠動脈疾患の確立した危険因子として位置づけられている。LDLの上昇はバターで大きく、ココナッツオイルとの差は0.42mmol/L、95%信頼区間は0.19〜0.65mmol/Lだった。一方、ココナッツオイルとオリーブ油の間に有意差はなかった。[8]

ただし体重、BMI、腹部への脂肪のつき方の変化には、いずれの群間でも有意差がなかった。バターよりLDLの変化が小さかったという成績は、バターより痩せたという成績とは別に扱う。瓶の中身を替えた結果が、検査項目ごとに違っていても不思議はない。[8]

さらに2024年には、腹部肥満のある25〜45歳の156人を対象に、レッドパームオレイン、エクストラバージン・ココナッツオイル、エクストラバージン・オリーブ油を含む等エネルギーの食事を12週間比較した試験が報告された。平均LDLコレステロールは、オリーブ油群で他の油の群より有意に低かった。[5]

この試験の主な評価項目だった高感度CRPという炎症の指標は、群間で統計的に同程度だった。炎症の結果とLDLの結果は違う方向の判定を含んでいる。[5] 「オリーブ油と同じだった」「ココナッツオイルが劣った」と一語で処理せず、測った項目と比較した期間を添えると、食い違いを過大に見せずに済む。

英国の試験の参加者は平均60歳で、67%が女性だった。がん、心血管疾患、糖尿病の既往がなく、脂質を下げる薬を服用していない人が対象で、4週間後の評価には91人が参加した。空腹時血糖と収縮期・拡張期血圧の変化も比較され、3群間の有意差は認められなかった。[8]

LDLとHDLが一緒に上がる結果をどう受け止めるか

2020年の系統的レビューとメタ分析は16報を集め、ココナッツオイルと他の調理用油脂を比べた。非熱帯性の植物油との比較では、LDLだけでなくHDLコレステロールも有意に増えた。HDLの差は平均4.00mg/dL、95%信頼区間は2.26〜5.73mg/dLだった。血糖、炎症、体脂肪に関連する指標には有意な影響を認めなかった。[7]

この分析は少なくとも2週間続いた試験を選んだ。無作為化されていない試験や質の低い試験を除いて解析しても、LDLとHDLの上昇は統計的に有意なままだった。[7]

この分析には、血液の脂質についての結果が全試験にあった一方、体重を報告した試験は8本、体脂肪率は5本、腹囲は4本という違いがある。[7] 油の研究がたくさんあると聞いても、減量に答える研究まで同じだけそろっているとは限らない。体重よりも血液の脂質を測った試験が多い構成だった。

一方、先ほどの2022年の分析では、LDLの平均差は−1.67mg/dL、95%信頼区間−6.93〜3.59mg/dLで有意差がなかった。[18] 2020年の分析が非熱帯性の植物油との比較を示したのに対し、こちらは他の油脂などとの比較を含む。2022年の分析で有意に増えたHDLの平均差は3.28mg/dL、95%信頼区間は0.66〜5.90mg/dLだった。[18]

HDLが上がった結果だけで安心する前に、同じ試験の他の項目を見る。メタボリックシンドロームの成人48人を対象にした試験では、普段の食事の脂肪を同量のバージン・ココナッツオイルへ替えた。毎日30mLを4週間使い、普段の食事を続ける群と比べている。[16]

この試験では中性脂肪と空腹時血糖が下がり、HDLは上がった。ただしLDL、総コレステロール、血液中のADMAという測定物質も上昇した。身体の計測値と血圧には有意な群間差がなく、著者らは長期の影響が明らかになるまで注意を求めている。[16] 良好に見える数値を拾うだけでは、研究が示した全体像から外れてしまう。

料理に使う油の話は、体重だけで完結させなくてよい。検査で脂質の異常を指摘された人や、その治療を受けている人は、ココナッツオイルへの変更を主治医に相談する。その際は、今使っている油と、替えたい料理を具体的に伝える。

数字で読むココナッツオイル

9試験をまとめた解析の体重差は−0.75kg。小さいながら統計的に有意な差が出た分析である。[10]

別の7研究の解析では体重差−0.24kg、95%信頼区間−0.83〜0.34kg。有意な減少は認めなかった。[18]

同じ解析の腹囲差は−0.64cm、95%信頼区間−1.69〜0.41cm。こちらも差のないゼロをまたいだ。[18]

非熱帯性の植物油との比較では、LDLの平均上昇は10.47mg/dL、95%信頼区間3.01〜17.94mg/dLだった。[7]

朝食の油を比較した短期試験の対象は女性15人。食後の代謝と空腹感を調べたもので、長期の減量試験とは区別する。[3]

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宮川涼 Founder

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