腹筋を鍛えたいのに、横に太くなるのが気になる。女性の筋肥大研究と、筋肉の厚さ・腹囲・脂肪を同時に調べた運動試験を読み、筋肉が育つことと胴回りが増えることを分けて考える。測った部位、対象の年齢、運動の組み合わせを確かめ、自分の記録で何を比べればよいかを整理する。
腹筋の練習を続けたら、いつもの服のウエストも変わるのだろうか。着替える時に浮かぶこの問いには、筋肉の成長と服の寸法という別々の関心が入っている。鍛えたい気持ちと、服の着心地を変えたくない気持ちは両立する。そこで先に押さえたいのは、筋肉が厚くなることと、胴回りが増えることは同じ結果ではない、という点だ。70歳以上の男女の運動試験では、太ももの筋厚が増す一方、腹囲が減った。18〜39歳の女性の腹筋と腹囲の変化を、そのまま予測する結果には使えない。[7]
女性にも筋肥大、つまり筋肉の大きさが増す変化は起こる。男女を対象に上腕を画像で調べた小規模な研究では、女性にも増大が確認された。18〜39歳の女性の腹筋への適用には、部位の違いを考慮する必要がある。だから「女性の筋肉は育たない」で安心を作る必要はない。必要なのは、腕の結果を腹筋へ、筋肉の厚さを胴全体の周径へ、途中の確認なしに置き換えないことである。[15]
既存記事「女性の筋トレで太くなる?筋肉の厚さと長さが同じに育たない理由を角度から読む」には筋肉内部の育ち方を譲る。ここで扱うのは、筋肉の測定値と服のウエストに近い周径が、運動後に同じ向きへ動くと決めてよいか、という問いだ。細くなることを全員の目標にはせず、望む変化を自分の言葉で選ぶために読む。

筋厚を見たのか、胴回りを見たのか
論文に「筋肉が増えた」とあったら、まず体のどこを、何で測ったかを確かめたい。筋厚は筋肉の厚み、周径はその部位を一周した長さである。上腕を調べた研究では、腕の周径、身体計測から推定した骨と筋肉の断面積、画像で捉えた筋肉の断面積を別々に評価している。同じ腕を対象にしても、これらは別の欄に記録される指標なのだ。[15]
この違いは、測定法の細かな話だけではない。筋肉の画像で変化を確認したのか、巻尺の数字が変わったのかによって、読者が受け取れる答えが違う。腕の研究で筋肉の断面積が増えたなら、腕の筋肉が育ったという材料になる。一方、その結果から腹囲の増加量を計算することはできない。実際、その研究では上腕と太ももで結果が異なっていた。[15]
「腹筋の横が太くなる」という検索にも、違う希望が混ざりやすい。横から見た厚みが気になるのか、正面から見た幅が気になるのか、服のウエストが気になるのか。まずは気になる場面を書き分けるとよい。写真を残したいのか、服の着心地を記録したいのかを決めずに、筋厚という専門用語だけを追っても、知りたかったことから離れてしまう。
研究の結果を自分に引き寄せる時にも、この順番が役立つ。超音波で太ももを測った試験を、腹筋の画像検査のように紹介しない。腕の筋肉量が増えた結果を、腹斜筋の成長と呼ばない。筋肉の場所を省くと、研究が実際に答えた問いより大きな答えに見えてしまう。[7][8]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
女性の筋肉は育つが、全部位が同じには育たない
男女の筋肥大を調べた研究では、運動群の男性7人、女性8人と対照群7人を、16週間の前後で調べている。運動群は上腕と太ももの筋肥大を狙うトレーニングを週3日実施した。女性の上腕周径は7.9%、画像で測った上腕の筋断面積は22.8%増えた。女性にも筋肉の増大が生じることを、周径だけでなく画像でも捉えた小規模な研究である。18〜39歳の女性の腹囲の予測には、上腕という測定部位の違いがある。[15]
ただし、この数字は「女性なら腹筋も同じ割合で育つ」という予測値ではない。対象は少人数で、測った部位は上腕である。また、上腕では増大が認められた一方、太ももの周径や筋断面積には統計学的に有意な変化が認められなかった。同じ期間、同じ参加者の研究でも、部位によって結果がそろわなかった点を一緒に読む必要がある。[15]
さらに、女性の上腕周径の増加率と筋断面積の増加率は同じ値ではない。周径の7.9%を筋肉の22.8%と取り違えると、「服の寸法まで大きく変わる」と読み過ぎてしまう。ここで比べているのは長さと面積という異なる指標であり、腹囲への換算表ではない。画像の変化率が大きく見えた時ほど、数字の後ろに何の増加率かを書き添えたい。[15]
この研究は、女性の筋トレを怖がるための資料でも、見た目の変化を否定するための資料でもない。「女性だから育たない」とは言えず、同時に「どの部位も同じように大きくなる」とも言えない。性別だけで結論を作るより、部位と測定法を残した方が、服の着心地への疑問に近づける。[15]
筋肉の増加と腹囲の減少は同時に起こっている
筋肉が育つなら体の外周も増すはず、という予想を考える材料に、健康な高齢者の無作為化比較試験がある。対象は筋トレ経験のない70歳以上の男性53人、女性35人で、ゆっくり動く自重運動を行う群と、介入を受けない対照群に分けられた。運動の内容はスクワット、台を使う腕立て伏せ、腹筋運動で、期間は12週間だった。18〜39歳の女性に同じ変化が起こるかは、この高齢者の試験だけでは判断できない。[7]
運動群では対照群に比べ、太ももの筋厚、膝を伸ばす力、股関節を曲げる力の増加が大きかった。同時に、腹囲、ヒップ周径、腹部の腹膜前脂肪と皮下脂肪の厚さは減少していた。腹膜前脂肪は腹部内部の脂肪を評価する指標として測られている。筋肉の増加と胴回りの減少が、同じ運動試験の中で並んだのである。[7]
重要なのは、腹筋運動を含むプログラムだったことと、増えた筋厚として示されているのが太ももであることを区別する点だ。この試験は「腹筋運動をすれば腹筋が厚くなり、その分以上に腹囲が減る」と証明したものではない。複数の運動を組み合わせた高齢者の結果であり、若い女性が腹筋だけを鍛えた時の見通しへ、そのまま移すことはできない。[7]
それでも、筋肉が増える変化と腹囲が減る変化を、矛盾として扱う必要がないことは分かる。研究では筋肉と脂肪、腹囲を分けて測っているからこそ、異なる方向の変化が見える。「筋肉が増えた」の一言だけで、胴回りの増減を決めない読み方につながる。[7]
別の比較試験でも、健康な65〜82歳の男性22人、女性30人を対象に、自重やゴムチューブを使う運動を12週間調べている。運動群では対照群より太ももの筋厚が増え、腹囲や腹膜前脂肪厚は減った。一方、体重、脂肪量、除脂肪量の変化には群間差がなかった。除脂肪量とは脂肪以外の体の量で、筋肉だけを指す言葉ではない。対象が高齢の男女であるため、18〜39歳の女性の変化量へ直接当てはめることはできない。[14]
こちらは無作為に群分けした試験ではないため、先の無作為化比較試験と同じ強さの証拠として数えない。それでも、体重に群間差がない時にも、腹囲と局所の画像に違いが現れた点は参考になる。体重計の欄が目立って変わらなくても、他の指標まで全部同じだったことにはならない。[14]
筋肉の厚さと腹囲を同時に測る価値は、変化の説明を単純にし過ぎないところにある。もし腹囲だけを読めば「細くなった運動」と記憶するかもしれない。太ももの筋厚だけを読めば「筋肉を増やした運動」と記憶するだろう。実際には、同じ参加者の経過を異なる測定で捉えている。片方の結果で、もう片方を消す必要はない。[7]
また、対照群との比較という言葉も落としたくない。運動群の開始前後の数字が動いたという話と、運動しなかった群より変化が大きかったという話では、確かめている内容が違う。高齢者の無作為化比較試験で示されたのは、運動群の変化が対照群より大きかったという結果である。自分の記録には対照群がいないため、同じ書き方で効果を断定せず、経過を残すものとして使う。[7]
たとえば、立川駅北口で服を選ぶ時に知りたいのは、論文中の最大の増加率より、気に入った服で動きやすいかどうかかもしれない。その希望は、筋肉の成長を否定しなくても持てる。逆に、筋力を伸ばしたい人は、周径だけを成果の採点表にしなくてよい。上腕では筋力と筋断面積を、太ももでは別の結果を確認した研究のように、目的に合う項目を選んで見るのである。[15]
数字で読む筋肉と周径
女性8人を含む運動群を16週間追った研究では、女性の上腕周径は7.9%増加した。腹囲の数字ではない。[15]
同じ研究で女性の上腕筋断面積は22.8%増加した。周径の増加率との取り違えに注意したい。[15]
70歳以上の男性53人、女性35人を対象にした試験では、12週間後に太ももの筋厚増加と腹囲減少が対照群との比較で示された。[7]
糖尿病患者32人の試験では、8週間後に腕の筋肉量増加と腹囲減少が見られた。筋トレに加えて有酸素運動も行っていた。[8]
過体重・肥満の21人を対象にした8週間の研究では、筋力は増したが、筋厚には有意な変化が検出されなかった。[13]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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