ゴーヤ(ニガウリ)の試験を束ねた2つのレビューは、血糖について逆の結論を出した。空腹時血糖とHbA1cが下がった幅、メトホルミンと比べた試験、体重と腹囲が有意に動かなかった試験、前糖尿病の人の試験、糖尿病の薬に重ねたときの注意まで、論文の数字で確かめる。
同じ野菜について、二つのレビューが逆を向いた。
2012年のコクランの系統的レビューは、2型糖尿病の人にゴーヤ(ニガウリ)を使った4つの無作為化比較試験、合わせて479人を調べた。[10] 偽薬と比べて血糖の管理に統計的に意味のある差は無く、効果を判断するには証拠が足りないというのが結論である。[10] その7年後、2型糖尿病の10試験、1,045人を束ねたメタ分析は、空腹時血糖、食後の血糖、HbA1cのいずれも偽薬より有意に下がったと報告した。[2]
調べた人数が479人から1,045人へ2倍あまりに増えたとき、結論の向きが変わった。どちらかが数字をごまかしたわけではない。後で見るように、二つのレビューはどちらも、元になった試験の質を高くは見ていない。[2][10] 二つは、集めた試験の数(4件と10件)も、文献を探した期間(2012年までと2018年まで)も違う。[2][10] そのうえで、作り方のそろわない試験を一つの平均にまとめるかどうかの判断が分かれた。[2][10]
ここで扱う試験の多くは、2型糖尿病の人を対象にしている。[2][10] 糖尿病の薬を飲んでいる人が「ゴーヤで下がるなら薬を減らせる」と読めば、数字の読み違いでは済まない。薬と並べた試験と、薬に重ねた試験は、混ぜずに読む必要がある。同じく糖の吸収にかかわる別の植物は「桑の葉と実のDNJ、量をそろえた抽出物で食後の血糖の上がり方は1〜3割小さく 体重の答えはまだ」で扱うので、ここではニガウリ一つに絞る。
コクランのレビューが平均を出さなかった理由
2012年のコクランのレビューは、医学文献の複数のデータベースを言語を問わず検索し、手作業でも文献をたどった。[10] 条件に合ったのは、期間が最長3か月の無作為化比較試験4件、479人である。[10] 査読を経た完全な論文として発表されていたのは、そのうち2件だけだった。[10] 偏りの危険は、全体として高いと判定されている。[10] 偏りの危険とは、無作為の割り付け、割り付けの隠し方、目隠し、結果のデータの欠け、都合のよい報告の選び方などから結果がゆがむおそれのことで、レビューはこれらの項目で試験を一つずつ評価した。[10]
偽薬と比べた2件は、植物の別々の部分から作った製剤を使い、どちらも血糖の管理で偽薬との有意差を示さなかった。[10] ニガウリをメトホルミンやグリベンクラミドという糖尿病の薬と比べた試験でも、信頼できる血糖の指標に有意な変化は無かった。[10] 重い副作用の報告は無かったが、死亡、病気の発生、生活の質、費用を調べた試験は1件も含まれていない。[10]
著者らは、メタ分析を見送っている。理由として挙げたのは、データの質と、試験ごとの製剤のばらつきである。同じ製剤が2回試された例は無かった、と書いている。[10] 植物の葉から作った製剤と実から作った製剤を一つの平均にしても、どれが効いたのかは分からない。別々の店のカレーの点数を足して割っても、どの店がうまいかは分からないのと似ている。レビューの結論は、まず製剤をそろえ、品質を管理する研究が要るというものだった。[10] 食事療法として勧めるかどうかを決める前に、観察研究を重ねてから無作為化比較試験を組むべきだとも書いている。[10]
ここで読み落としたくないのは、「有意差が無かった」が「効かないと分かった」と同じではないことだ。試験が小さく、偏りの危険が高いままでは、差があってもなくても見分けにくい。差を見つける力そのものが足りない試験があることは、HbA1cの節で数字を使って確かめる。
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10試験を束ねたメタ分析が出した数字
2019年のメタ分析は、1960年1月から2018年4月までの文献を、言語を限らず4つのデータベースで探した。[2] 統合の対象になったのは2型糖尿病の10試験、1,045人で、追跡は4〜16週間だった。[2] 偏りの危険は、全体として中程度から高いと評価されている。[2]

写真: Jpatokal / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
ニガウリだけを使った製剤を偽薬と比べると、空腹時血糖は平均0.72mmol/L下がり、95%信頼区間はマイナス1.33からマイナス0.12mmol/Lだった。[2] 食後の血糖は1.43mmol/L(区間はマイナス2.18からマイナス0.67)、HbA1cは0.26%(マイナス0.49からマイナス0.03)下がった。[2] HbA1cは長めの期間の血糖の平均を映す値で、健診の結果票にも並んでいる。試験の間のばらつきを示すI²は、空腹時血糖で14%、食後の血糖とHbA1cで0%と小さかった。[2] 糖尿病の手前の人でも、空腹時血糖が0.31mmol/L下がった試験が1件あった。ただし人数は52人で、偏りの危険が不明なことと人数の少なさから、証拠は低い質に格下げされている。[2]
ここまで読むと、コクランと逆の答えに見える。ところが同じ論文の著者らは、主な結果の証拠の質を「低い」から「非常に低い」と格付けし、いくつかの安全性の項目ではデータがまばらだと書いた。[2] 結論も「血糖の管理を改善した」と言いながら、さらに研究が要ると続く。[2] 求めているのは、製剤をそろえ、十分な人数を集め、割り付けの順番を無作為に作って隠し、研究者と参加者の両方に群を伏せた試験である。[2] コクランが求めた製剤の標準化と、向きはほとんど同じだ。[10] どちらの数字を引くにしても、「質の低い証拠から出た値」という札は外せない。
HbA1cで0.26%という幅は、大きいのか
0.26%の大きさを測るには、試験を計画した人が何を目標にしていたかが手がかりになる。2004年の4月から9月にかけて、フィリピン総合病院の外来で行われた試験がある。[16] 対象は、HbA1cが7〜9%の18歳以上の2型糖尿病の人40人で、新たに診断された人か、血糖の管理がうまくいっていない人だった。[16] ふだんの治療はそのまま続け、その上にニガウリのカプセルか偽薬を加えた。1回2カプセルを1日3回、食後に、3か月である。[16]
研究者らは、HbA1cが1%下がることを目標に置き、検出力を88%と見積もっていた。[16] 検出力とは、本当に差があるときにそれを見つけられる確率のことだ。結果は、2群の変化の差が0.22%でニガウリの側にわずかに傾いただけで、95%信頼区間はマイナス0.40から0.84%と0をまたぎ、P値は0.4825だった。[16] 実際に見えた低下は0.24%で、その大きさに対する検出力は11%しか無かった。[16] 1%を測るつもりで用意した物差しで、0.24%を測ろうとしたことになる。空腹時血糖、総コレステロール、体重にも有意な影響は無く、腎臓と肝臓の検査値も動かなかった。[16] 著者らは効くとも効かないとも結論できないとし、この結果は次の大きな試験の人数を見積もるのに使える、と結んでいる。[16]
メタ分析の0.26%も、この試験の群の差0.22%と同じくらいの大きさで、当初に目標とされた1%には遠い。[2][16] 区間の端がマイナス0.03%と0に近いことも合わせれば、HbA1cの低下は「あるとしても小さい」と読むのが、数字に沿った読み方になる。[2]
12週間の偽薬対照試験でも、似た形が出ている。最終的に90人が血糖の解析に入り、年齢、性別、開始時のHbA1cは2群の間でそろっていた。[5] 12週間後、ニガウリの抽出物の群でも偽薬の群でも、HbA1cは変わらなかった。[5] 一方で、ニガウリの群では空腹時血糖の平均が下がった(p=0.014)。[5] 重い有害事象は報告されず、著者らはニガウリには血糖を下げる効果があると結論している。[5] 長めの平均を映すHbA1cは動かず、空腹時に測った値が動いた。どちらを見出しに選ぶかで、同じ試験が「効いた」にも「変わらなかった」にも読める。
数字で読むニガウリの試験
- 479人:2012年のコクランのレビューが調べた4試験の人数。偽薬との差は有意でなかった。[10]
- 1,045人:2019年のメタ分析が束ねた10試験の人数。追跡は4〜16週間だった。[2]
- 0.72mmol/L:束ねた空腹時血糖の低下。区間の端はマイナス0.12で、証拠の質は低い〜非常に低い。[2]
- 0.26%:同じ統合でのHbA1cの低下。区間の端はマイナス0.03%で、0にかなり近い。[2]
- 11%:HbA1cを1%下げる見込みで計画された40人の試験が、実際に見えた差に対して持っていた検出力。[16]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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