痩せ型で筋肉を増やしたいとき、プロテインを主食の代わりにするか、食事に足すか。エネルギー余剰のレビューと筋トレ中の比較試験から、たんぱく質の補給、糖質の追加、体重と筋肉の変化を分けて読む。多く飲めばよいとは限らない理由と、自分の食事を確認する順序を考える。
夕食のおにぎりを皿から下げ、代わりにプロテイン飲料を置く。「筋肉を増やしたいから」という理由でも、ここで起きたのは食事への追加ではなく、食べる物の交換である。買い物袋に入ったたんぱく質だけでなく、入らなくなった食事にも目を向けたい。
痩せ型で筋肉を増やしたい場合も、まず、普段の食事に補給を足すのか、食事と交換するのかを確かめたい。筋トレに伴う筋肉の成長には栄養状態が関わる一方、最適なエネルギーの上乗せ量は確定していない。主食に必ず決まった量を足す、あるいは主食をプロテインへ換えればよいという一律の答えは出せない。[4]
「女性が太りたいときプロテインは役立つ?食事への追加と筋肉の増え方を読む」と「痩せ型の女性の筋トレは食事を増やすべき?余るエネルギーと筋肉の成長を読む」は、増量そのものの問いを扱う。ここでは、同じプロテインでも食事の何と交換したかで比較が変わる点を読む。原料の比較は「女性の小麦プロテインは量を増やせば乳由来と同じ?筋合成の比較条件を研究で読む」に譲る。

主食を戻す話と、余分に食べる話は違う
エネルギー余剰とは、摂取するエネルギーが必要量を上回る状態を指す。筋トレと筋肥大の関係を検討したレビューは、たんぱく質量の調整、サプリメントの使用、エネルギー余剰を、それぞれ検討する食事上の要素として扱っている。筋肥大とは筋肉が大きくなることであり、たんぱく質を摂る行為そのものとは違う。[4]
昼食の主食を飲料へ換えた人と、普段の昼食を食べたうえで飲料を足した人は、同じ商品を飲んでいても同じ食事ではない。たんぱく質がどれほど変わったかと、食事全体のエネルギーがどう変わったかは、別々に確かめる必要がある。レビューも筋肉の成長を、たんぱく質だけから説明せず、栄養状態とトレーニング経験を含む問題として整理している。[4]
ここで「主食を戻そう」と考えるのは、「今の食事に際限なく上乗せしよう」という意味ではない。もともと食べていた食事を何かに換えているのか、普段の食事に追加しているのかを区別するためである。必要量を満たしているかという問いを飛ばし、最初から余剰の大きさだけを決めようとすると、自分の食事の出発点が見えなくなる。[4]
痩せ型という見た目だけで、その人の必要量や筋肉の増え方を割り出すこともできない。レビューが挙げる要因には、練習内容、経験、性別、遺伝的な素因、栄養状態がある。細い体には必ず同じ飲み方が必要だ、とひとまとめにする根拠にはならない。体の形を評価するより、何を食べ、どのような運動を続けているかを言葉にするほうが、この研究の読み方に合っている。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
たんぱく質の材料と、長期の筋肉の成長を分ける
人のたんぱく質と筋肉の研究を整理した論文では、摂取後に血中のアミノ酸が増えると、筋たんぱく質合成が促され、分解が抑えられ、数時間にわたり正味の蓄積が促されると説明されている。アミノ酸はたんぱく質を構成する成分であり、筋たんぱく質合成は筋肉のたんぱく質を作る過程である。[8]
ただし、飲んだ直後の反応と、生活の中で筋肉が増えたという結果は時間の幅が違う。この論文は、短時間の反応を長期の食事戦略へつなぐ際に、量、原料、摂る時期を考慮している。筋トレによる筋量や筋力の増加を補給が後押ししうるという整理であり、飲料を飲むだけで筋トレと同じ変化が起こるという意味ではない。[8]
主食との置き換えを考えるときも、この区別が役立つ。たんぱく質の材料を足すことと、食事全体を組み替えることは同じ操作ではない。「筋肉の材料だから」という説明だけでは、交換した食事の役割まで判断できない。補給の効果を考えるには、それがどのような食事戦略の中で行われたかを含めて読む必要がある。[4][8]
補給の量を見比べる際は、飲料の容量と、その中のたんぱく質量も分けたい。大きい容器ほど筋肉への作用が大きい、とはこれらの研究から言えない。論文が検討しているのは栄養素の摂取と運動への反応である。容器の見た目ではなく、食事で摂る分を含めて何を変えたのかを書き出すことが、研究と日常をつなぐ入口になる。[4][8]

糖質を足した比較試験では、筋肉の増え方に差が出なかった
主食をどうするかに近い問いを扱ったのが、筋トレ経験のある男性20人を対象としたクロスオーバー試験である。参加者が条件を入れ替えて経験する設計で、準無作為化、二重盲検として行われた。たんぱく質30g・糖質4gの補給と、たんぱく質30g・糖質54gの補給を、それぞれ8週間比較している。対象は筋トレ経験のある男性であり、18〜39歳の女性に同じ追加効果を当てはめるには、性別と経験の違いを考慮する必要がある。[19]
たんぱく質量をそろえ、糖質を増やす比較である。普段の運動と食事を続けたところ、糖質を加える条件では、実際の食事全体のエネルギー摂取が平均485kcal/日、糖質摂取が33g/日多かった。これは試験で観察された摂取差であり、読者にそのまま勧める上乗せ量ではない。[19]
この条件間で、除脂肪量、超音波で測った筋肉の厚さと断面積、スクワットの最大挙上重量、疲れに対する抵抗などに有意差はなかった。たんぱく質と脂質の摂取量、トレーニング量にも差はなかった。少なくとも、この経験者たちの条件では、糖質とエネルギーを追加しても、測定した筋肥大や筋力がさらに伸びたとは言えなかったのである。[19]
これは「主食を抜いてよい」という試験ではない。比較しているのは、日常の食事と練習を続けながら、たんぱく質量をそろえた補給に糖質を加える条件である。食事が十分か分からない人が夕食を飲料へ換える場面へ、そのまま当てはめることはできない。追加の効果を調べた結果を、食事の削減を支持する結果に読み替えないことが大切だ。[19]
逆に、「筋肉を増やすなら主食は多いほどよい」という断言にもならない。参加者は平均26.7歳、平均9.7年のトレーニング経験を持つ男性だった。筋トレを始めたばかりの女性、食事を十分に取れない人、体重が意図せず減っている人とは条件が異なる。対象と比較内容をそろえてから結論を受け取る必要がある。[19]
補給飲料の糖質差と、実際の食事全体で生じた糖質差が同じでないことにも目を向けたい。この試験では補給に含まれる糖質は4gと54gだったが、食事全体の摂取差は33g/日だった。補給の表示だけで、その日の食事全体が同じ幅で増えたと決めることはできない。食事記録を見る理由は、計算を精密にするためだけでなく、意図した変更と実際の摂取を分けるためにもある。[19]
例えば朝食のあとに飲むつもりだったのに、忙しい朝には飲料だけになっていたなら、予定と実際が異なる。これを「毎日同じ補給を続けた」と一括りにしないほうがよい。研究でも、食事時間を制限した群は指定された摂取量を下回っていた。飲む予定を守ったかと、食事全体を確保できたかは、違う確認事項なのである。[1]
多く足す戦略にも、万能という結果はない
別の二重盲検の無作為割り付け試験では、筋トレ経験のある男性21人が、たんぱく質と糖質を含む補給、または糖質の補給を取りながら8週間の筋トレを行った。たんぱく質を含む群の追加量は、たんぱく質94gと糖質196g/日、比較群は糖質312g/日である。かなり大きな補給を比較した試験だ。男性の経験者を対象とした結果なので、18〜39歳の女性にこの補給量や結果をそのまま当てはめることはできない。[6]
それでも、たんぱく質を加えた補給が、糖質の補給より筋量や筋力の増加を優先的に高めたとは示されなかった。血液や筋肉で測った、筋たんぱく質合成や筋細胞の形成に関わる指標にも、たんぱく質を含む補給の優位性はなかった。この数字は摂取の手本ではなく、量の大きさだけでは結果を説明できない例として読むべきである。[6]
この試験には、追加の補給をしない群との比較はない。したがって「補給はすべて無意味だ」と結論することもできない。分かるのは、ここで比べた大量の補給同士で、たんぱく質を含む側の明確な上乗せ効果がなかったことだ。何と何を比べたかを省くと、肯定にも否定にも話を大きくしすぎてしまう。[6]
数字で読む食事への上乗せ
20人:たんぱく質量をそろえて糖質の追加を比較した、筋トレ経験者の男性の人数である。[19]
30g:上の試験で両条件に含まれたたんぱく質量。自分に必要な量を確定する数字ではない。[19]
8週間:上の試験で各補給条件を続けた期間。生涯の食べ方を比較した結果ではない。[19]
21人:大量のたんぱく質・糖質補給と糖質補給を比較した試験の男性の人数である。[6]
4.8%:過剰摂取と筋トレの予備的研究で観察された全身の除脂肪量の平均増加率。個人の達成目標とは違う。[7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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