インナーマッスルは段差の高さで変わる?足踏みと上る運動の負荷を研究で読む

インナーマッスルを意識して段差を高くすれば、体幹をよく鍛えられるのか。階段を上る研究から、ふくらはぎの筋肉、膝の曲がり、荷物による腰への負担を読み分ける。その場の足踏みとの違い、高齢女性の踏み台練習の成果、筋活動と長期の効果を混同しないメニューの考え方も示す。

家の踏み台を高くしたら、お腹の奥まで鍛えられるのだろうか。脚だけでなく、お腹にも力が入った気がする。その感覚を家の足踏みに持ち帰り、「膝を高く上げるほどインナーマッスルに効く」と考えたくなる。

段差を高くすると、脚の筋肉の動きや関節に求められる力は変わる。ここで扱う研究は体幹深部筋の活動やトレーニング効果を直接測っていないため、インナーマッスルを鍛える最適な高さは決められない。高さを変えた実験で確認されたのは、例えばふくらはぎの筋肉の縮み方や足首の関節モーメントの変化である。どこがきついかと、何を測ったかを分けることが、この問いへの答えになる。[18]

また、その場で脚を上げる動作と、台の上へ体を運ぶ動作は区別したい。今回取り上げるのは階段や踏み台を実際に上る研究である。そこで得られた結果を、段差のない足踏みの最適な膝の高さや、お腹の鍛え方の処方へ直結させずに読む。[1][18]

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段差の研究が測ったのは、主に下肢の働き

「インナーマッスルを使いたい」という希望があっても、脚が強く疲れたことだけでは目的を達成したか判断しにくい。段差の高さを変えた研究には、筋肉の内部の動き、膝の曲がる角度、筋肉が働き始める時刻など、異なる指標が登場する。測る指標が違えば、研究が答えている問いも違う。[18][19]

例えば、ふくらはぎを超音波で観察する研究は、その筋肉の束がどう縮むかを教えてくれる。一方、膝の筋電図は、対象とした筋肉の電気的な活動を捉える。この両方を読んでも、お腹の深部の筋肉を長期にわたって鍛えた成果を測ったことにはならない。「筋肉」という大きな箱の中へ、別々の結果を一緒に入れないことが大切だ。[18][19]

体幹の支えを考えるうえで参考になるのは、荷物を持って階段を移動する実験である。ここでは腰の部分にかかる横曲げのモーメントが測られた。これは体を横に曲げようとする力の作用を表す指標だが、特定の深い筋肉の活動量や成長量を直接示す数字ではない。[15]

検索窓に「インナーマッスル 足踏み」と入れた人が知りたいのは、おそらく複雑な測定法より、今の練習をどう変えるかだろう。そこで最初に目標を言葉にしたい。階段を上る力を練習したいのか、お腹の筋肉の働きを知りたいのか。前者には踏み台練習の試験が手がかりになる。後者の答えを、脚の試験の結果だけで補わない姿勢が必要になる。[1][18]

既存記事「インナーマッスルは足裏でも鍛えられる?座位と立位で違う土踏まずの運動を読む」が扱う足裏の運動とは問いを分け、ここでは段差という環境の変化に焦点を絞る。立っている時間の長さや鏡で見る姿勢の話へも広げず、台の高さで動作の要求がどう変わるかを追っていく。

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ふくらはぎは、高さと重さで同じ反応をしなかった

高さの影響を具体的に示すのが、参加者10人に階段を上ってもらった実験である。18〜39歳の女性にも同じ反応がどの程度生じるかは、この結果だけでは判断できない。基準となる段差は17cm。そこから高さを50%下げた条件、50%上げた条件、75%上げた条件を設けた。動作と床から受ける力を測りながら、腓腹筋内側頭というふくらはぎの筋肉の一部を超音波で観察した。[18]

見ていたのは筋束、つまり筋肉を構成する線維の束の長さだ。段差が高くなるほど、この筋束の短縮量は大きくなり、足首の関節モーメントも増えた。高い段を上る要求の増加が、脚の内部の動きにも現れたわけである。台の高さは、単なる見た目の違いではない。[18]

興味深いのは、同じ研究が重さの条件も調べている点だ。基準の高さでは、体重の20%に相当する重りを着用して上った。重さを増やしても足首の関節モーメントは増えたが、足が離れる局面の筋束の短縮量は増えなかった。その代わり、筋束は動作周期全体で短い状態にあった。[18]

つまり「負荷を増やす」という言葉の中にも違いがある。台を高くすることと、重りを足すことは、どちらも要求を増やしながら、筋束には同じ変化を起こさなかった。きつさを増せば体の中も一様に強く働く、という単純な対応ではない。[18]

宅トレの動画で台の高さと手に持つ重りを同時に変えると、動作が変わった理由を自分では整理しにくい。この研究を生活へ持ち帰るなら、何を変えたかを区別して記録するという読み方が役立つ。これは効果を保証する手順ではなく、高さの変更と重さの変更を同じものと扱わないための工夫である。[18]

なお、この実験はその場の動作を比較したものだ。筋束が大きく縮んだ結果を、ふくらはぎがどれだけ成長するか、あるいは深い腹筋がどれだけ強くなるかという将来の数字に変換することはできない。動作中の変化を知る研究と、練習の成果を追う研究には、それぞれ役割がある。[18][1]

膝が深く曲がっても、筋活動の比率は変わらなかった

高さを増やしたら、すべての筋活動の指標も増えるのだろうか。膝のお皿の周辺に痛みを持つ20人と、対照となる20人を比較した症例対照研究は、その予想を慎重に見直す材料になる。参加者は高さの異なる5種類の段差を上り、膝の動きと太もも前側の筋電図を測られた。患者を含む比較であり、18〜39歳の女性一般へそのまま当てはめるには、痛みの有無などの条件を考える必要がある。[19]

対象の筋肉は、内側広筋斜走線維と外側広筋である。どちらも太もも前側で膝の動きに関わる筋肉として、この研究では働き始める時刻の差と、活動の大きさの比率が比べられた。特定の筋肉が他方より遅れて働くか、一方に比べて活動が小さいか、という問いだ。[19]

段差を高くすると、足が段に触れるときの膝の曲がりは大きくなった。しかし、両筋の活動開始時刻の差や活動の大きさの比率には、高さによる違いも、群の間の違いも認められなかった。高い段差で動作が変わることと、狙った筋活動の比率が変わることは同義ではない。[19]

一方、痛みのある群では、足が段に触れるときの膝の曲がりが対照群より4.7度大きく、活動時間の比率にも違いがあった。何も変わらなかった研究ではない。変わった項目と変わらなかった項目を、そのまま分けて受け取る必要がある。[19]

ここで「高さは筋肉に影響しない」と読むのも早計だ。ふくらはぎの筋束の短縮を測った実験では変化があり、太もも前側の筋活動の比率には変化がなかった。筋肉の場所も測定指標も違うため、結果は矛盾しない。体を上へ運ぶ動作に、すべてを代表する単独のメーターはないのである。[18][19]

この膝の研究では、痛みのある群の平均年齢は29.5歳、対照群は25.4歳だった。若い大人を含む比較ではあるものの、痛みのある人とない人を調べた結果を、すべての女性のトレーニング効果に広げることはできない。年齢が自分と近いと感じても、対象者がどんな理由で研究に参加したかまで見る必要がある。[19]

筋活動の「比率」という言葉にも注意したい。比べているのは内側と外側の相対的な関係であり、体全体の運動の大きさではない。比率が変わらなかった結果から、上るのに必要な力まで同じだったと推測することはできない。研究の指標の名前を省略して「筋活動は変わらない」と短くすると、意味が広がりすぎてしまう。[19]

ふくらはぎの研究でも、観察したのは腓腹筋の内側の部分だ。足首のモーメントの増加は筋束の短縮量の増加によって少なくとも一部が生じた、と研究者は考えている。ここでも「一部」を落とさないことが大切になる。足首にかかる力の変化を、観察した筋肉だけの仕事としてすべて説明してはいない。[18]

例えば家で踏み台を上る際、台の高さを変えた途端にふくらはぎがきつく感じても、その感想からお腹の働きを逆算することはできない。反対に、お腹へ意識を向けたからといって、脚に求められる条件が消えるわけでもない。階段を用いた実験で確かめられた変化を軸に、感覚の記録と測定された事実を隣り合わせに置いておくとよい。[18][19]

研究で使われた高さは、比較のための設定である。基準の台と呼ばれていても、自分がそこから練習を始めるべきという意味にはならない。実験条件と推奨値を分けて読もう。[18]

数字で読む段差と筋肉

10人:段差の高さと重さを変え、ふくらはぎの筋束を調べた実験の参加者数。[18]

17cm:その実験で基準とした高さ。万人に勧める設定値ではない。[18]

20人ずつ:膝のお皿周辺に痛みがある群と対照群の人数。[19]

4.7度:痛みのある群で大きかった、足が段に触れる際の膝の曲がりの差。[19]

12週間:高齢女性の踏み台練習で、筋量や身体機能の変化を追った期間。[1]

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