運動習慣は退職すると増える?通勤が消えた日の余暇と総活動量を研究で読む

退職したら運動する時間が増えるはず。それでも、通勤や仕事で動いていた分まで埋まるとは限らない。退職前後の研究から、余暇の運動と総活動量の違い、収入や生活満足度、歩く環境との関係を読む。年代別の平均だけでは見えない暮らしの変化を整理し、自分や家族の予定を見直す手がかりを考える。

退職後の朝、玄関には履かなくなった通勤靴がある。散歩はいつでもできるはずなのに、朝食のあとに向かう場所が決まらない。仕事の予定が消えた手帳に、今度は何を楽しみに外へ出るかを書き込む。空白の増えた予定表には、足跡までは印刷されていない。

退職後には、運動や余暇の身体活動が増える傾向がある。しかし、仕事や移動を含めた総活動量がどう変わるかは、研究で一致していない。「運動するようになった」と「以前より体を動かしている」は、同じ答えにならないのである。[4]

運動習慣を年齢別・年代別に知りたいときも、退職前の暮らしを出発点にしたい。朝に家を出る理由、昼休みに会う相手、帰りに寄る店。それぞれがなくなったあと、残したい日課と、新しく選びたい外出先を考える。退職に伴う仕事や移動の活動変化を、身近な予定に落とし込む読み方である。[2]

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

退職後の運動は増えるが、一日の合計は別である

退職への移行を調べたBarnettらの系統的レビューは、観察研究19件をまとめたものだ。系統的レビューとは、あらかじめ決めた条件で研究を集め、結果を整理する方法である。対象は退職への移行期の人々で、18〜39歳の女性の日常に同じ変化が起こるかは別に確かめる必要がある。このレビューでは、運動または余暇の身体活動を調べた研究が11件、総身体活動を調べた研究が7件、両方を調べた研究が1件あった。余暇の活動は増える方向だったが、総量の結果はそろわなかった。[4]

ここでいう余暇の活動は、自由な時間に選んで行う運動や体を動かす活動である。総量を考えるときには、それに加えて仕事や移動などの場面も問題になる。退職した人に「最近、運動しているか」と尋ねるだけでは、仕事の日に含まれていた動きを拾いにくい。レビューで異なる結果が出た背景には、何を身体活動として測ったかという違いがある。[2][4]

退職前の一日を思い出すときは、始業から終業までだけでなく、家を出てから帰るまでをたどってみる。朝に寄っていた店、昼食を買いに出た道、帰宅前の買い物などを書けば、暮らしの中にあった行き先が見えてくる。そのうち退職後も残したい場所はどこか。これは活動量を推定する計算式ではなく、仕事と移動を含めて生活を振り返るための例である。[4]

Zantingeらが原著論文20本を整理したナラティブレビューは、成人後期の退職移行を扱っている。18〜39歳の女性の転職や休職に同じ結果を当てはめることはできない。このレビューでも、退職後の余暇の身体活動は少し増え、とくに中程度の強さの活動が増えるとされた。一方、その増加は仕事そのものや通勤で失われる活動を補っていなかった。ナラティブレビューは研究を文章で整理する方法であり、ここでの「補わない」を全員に当てはまる数式として使うべきではない。それでも、余暇だけの増加を暮らし全体の増加と読み替えない理由になる。[5]

より広く心血管疾患とその危険因子を扱ったXueらの系統的レビューは、退職を扱う縦断研究82件を対象としている。退職移行期の集団を扱うため、18〜39歳の女性の活動変化を直接示す結果にはならない。その中でも、退職と余暇活動の増加との関連が繰り返し報告される一方、仕事や移動の身体活動は減りうると整理された。この82件すべてが運動量を調べた研究という意味ではない。研究の総数と、個々の結論を支える対象範囲を分けて読むことも大切だ。[2]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

年代の平均より、退職前の仕事と暮らしを見る

「年齢が上がると運動する人が増えるのか」という問いと、「同じ人が退職を経てどう変わるのか」という問いは異なる。前者では世代や仕事、健康状態の異なる人を比べることになる。後者に近づくには、退職前と後の経過を追う必要がある。Barnettらのレビューには縦断研究と横断研究の両方が含まれており、そこから得られる結論にも測定方法の限界がある。[4]

横断研究はある時点の人々を比較し、縦断研究は時間を追って変化を見る。退職者の活動が多いという比較だけで、退職すれば誰でも活動が増えるとは決められない。そもそも退職前にどのような仕事をし、どのような移動をしていたかによって、失われる活動の中身が異なる。退職前の動きを確認するという実用上の提案は、この領域別の違いを踏まえたものだ。[2][4]

Barnettらは、社会経済的な状況によっても関連が違うと報告した。社会経済的な状況とは、収入や教育などに関わる生活条件である。低い状況では活動の減少、高い状況では増加と関連していた。ただし、変化を予測する要因の研究は少なく、方法面も弱いと評価されている。収入が少なければ運動できない、と個人の将来を決める結果ではない。[4]

この点を長い経過で見たのが、ヘルシンキ市の元職員5,209人を対象とする研究だ。女性が80%を占め、定年退職をまたぐ22年間に、余暇の身体活動、主観的な健康状態、世帯収入を併せて追った。主観的な健康状態とは、本人が自分の健康をどう評価するかである。研究では、それらの組み合わせに異なる経過が見つかった。定年退職を迎えた集団の結果であり、18〜39歳の女性の収入と活動の経過にそのまま当てはめることはできない。[18]

全体の22.6%に当たる群は、健康の自己評価が一貫して低く、身体活動が推奨量に届かず、収入も低い経過を示した。その一方、12.3%の群は健康の自己評価が良好で、活動量は非常に多かったが、収入は変動していた。低収入の人がすべて低活動、あるいは健康の自己評価が低いわけではなかった点も、著者らは指摘している。[18]

この割合はフィンランドの特定の職員集団で見つかった経過の分類であり、日本の同年代の割合ではない。また、群に付けられた特徴を、そのまま人の性格や努力の評価に変えてはいけない。読者が使えるのは、運動、健康、生活費を別々の問題として切り離さず、同時に見直すという視点である。予定を決める際にも、参加したい気持ちだけでなく、無理なく払える費用や移動の負担を一緒に書いてみる。[18]

既存記事「退職後の体重はどう変わるか 定年で消える仕事の動きと増える余暇を見直す」には、体重の変化という問いを譲る。ここで確かめたいのは体重計の数字ではなく、余暇の活動を始めたとき、日常から消えた動きまで把握できているかである。

好きなことと役割が、空いた時間の行き先になる

運動の予定を立てるとき、「健康のため」とだけ書けば十分だろうか。高齢者の身体活動を扱うMorganらの系統的レビューと質的研究の統合は、もう少し広い目的に目を向けている。対象は地域で暮らす60歳以上の人、または退職への移行期にある人であり、39本の論文が統合された。18〜39歳の女性にも同じ目的や役割が重要かは、この高齢期の知見だけでは判断できない。[3]

質的研究は、経験や感じ方を言葉から調べる研究である。この統合では、高齢期への移行が、自分らしさや人生での役割を揺さぶることがあると整理された。身体活動は、目的を持つ感覚、集団の中で必要とされる感覚、日々の決まった流れを取り戻すことに関わっていた。参加者の経験をまとめた知見であり、参加すれば同じ心理効果が一定の大きさで得られるという試験結果ではない。[3]

朝の散歩を「体のための課題」と呼ぶ人もいれば、「近所の人に会う時間」と呼ぶ人もいる。どちらを予定に書くかは本人が決めてよい。研究から考えるなら、活動を説明する言葉を健康上の利益だけに狭めず、自分がその時間に何を楽しみ、どんな役割を持ちたいかまで尋ねる余地がある。[3]

定年後の予定を家族が手伝う場面でも、運動するよう促す前に、本人が残したい日課を聞いてみる。外へ出たいのか、誰かと会いたいのか、黙って体を動かしたいのか。これらは面談で使う問いの例である。研究が示す目的や役割という視点を、本人の言葉で具体化するために使える。[3]

予定表を作る場面では、退職前から残したい活動と、退職して初めて試したい活動を分けて眺めてもよい。前者には暮らしの連続性があり、後者には新しく選ぶ意味がある。どちらが優れているかを比べるためではなく、本人が大切にしている時間を見落とさないための整理だ。日課と目的に注目した質的研究の知見を、具体的な相談に使う方法である。[3]

数字で読む退職と身体活動

19件:退職移行と活動の変化を扱った系統的レビューの研究数。余暇と総量で結果が違った。[4]

39本:高齢者の活動経験を統合した論文数。目的、役割、日課という意味が浮かんだ。[3]

3,535人:退職前後の生活満足度と余暇活動を調べたフィンランドの公的部門の職員数。女性は83%だった。[11]

102人:移動中の活動と利用可能な緑地との関連を、位置情報と活動量計で調べた対象者数。[14]

22年間:余暇活動、健康の自己評価、収入の経過を併せて追った研究の期間。[18]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

1

2

Warning: Attempt to read property "show_author" on false in /home/c1531448/public_html/ontheshore.jp/wp-content/themes/heal_tcd077/single.php on line 165

関連記事

ご体験予約