運動習慣はパートナーの開始に影響される?暮らしを共にする人との変化を読む

パートナーが運動を始めると自分の活動量も変わるのか。夫婦を追った観察研究、活動量計による測定、カップル向け介入のレビューを読み分ける。似た生活と相手からの影響を区別し、同じ運動を強制せず、互いの予定と好みを尊重して始めるための考え方を具体的な生活場面から考える。

玄関に、見慣れない運動靴が置かれるようになった。夕食後はソファに直行していた相手が、着替えて外へ出ていく。自分も始めた方がよいのか、それとも、誘われるまでは普段どおりでよいのか。身近な人の運動開始は、家の予定にも小さな問いを持ち込む。

答えの芯は、パートナーの活動量の変化と自分の変化には関連があるが、相手が始めれば自動的に自分も動くとはいえない、ということだ。米国の夫婦を追った研究では活動量の変化が同じ方向に動いていた。一方、活動量計で測った研究では、運動の一致は座る行動の一致より弱かった。[20][15]

さらに、夫婦で参加する支援が個人向けの支援より優れているかは、試験によって結果が分かれる。[3] 相手を自分の運動の責任者にする前に、何が一緒に変わり、何は別々に決めてよいのかを見ていこう。友人との欠席やつながりの問題は既存記事「運動習慣は友達と一緒に休みがちになる?支え合う関係と欠席の広がりを読む」に譲り、ここでは同じ家で暮らすパートナーに焦点を絞る。

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相手が動くようになると、自分の活動量も変わるのか

この問いに近いのが、中高年の夫婦3,261組を6年間追った米国の観察研究である。研究では、スポーツ・運動と余暇の身体活動を、それぞれ低い方の1から高い方の5までの指標で評価し、本人の変化と配偶者の変化の関連を調べた。いずれの活動でも、夫婦の変化には正の関連があった。[20]

妻のスポーツ・運動の指標が1標準偏差増えることに対し、夫の指標は0.09標準偏差増える関連を示した。95%信頼区間は0.05〜0.12である。標準偏差は集団の値の散らばりを基準にした物差しで、ここでは運動時間ではなく指標の変化を比べている。[20]

余暇の活動でも、妻の指標の1標準偏差の増加に対し、夫の指標には0.08標準偏差の増加との関連があり、女性についても同様の結果だった。配偶者が両方の調査時点で活動の推奨を満たしていた場合や、追跡時点だけ満たすようになった場合には、本人も推奨を満たす傾向があった。[20]

研究の限界は、相手の開始が本人の変化を引き起こしたと確定できない点にある。夫婦に共通する生活環境の変化も考えられる。[20] また、中高年の夫婦を追った結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、生活段階の違いを考慮する必要がある。[20] 日常で使うなら、相手から受ける刺激と、自分が実行できる予定を分けて考える材料にしたい。

たとえば、早く帰れる側は夕食前に散歩をし、遅い側は昼休みに歩く案を出してみる。まず各自の帰宅時刻、食事の準備、片付けの担当を書き出し、運動に使いたい時間と重なる用事を確かめる。散歩の出発を待つために夕食を遅らせるより、各自で動いてから食卓で合流する方が予定を組みやすい日もある。これは研究で優劣が検証された方法ではなく、暮らしに合わせた計画例である。どちらが先に始めたかより、本人が出発できる条件を具体化したい。

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「似ている夫婦」と「影響し合った夫婦」は同じではない

夫婦の研究では「一致」という言葉がよく出てくる。ここでいう一致は、同じカテゴリーに入る、あるいは測定した値に関連があることを指す。もともと似た生活を好む人同士がパートナーになることと、暮らすうちに行動が近づくことは、区別して考えたい。パートナーと健康を扱ったレビューも、相手選びによる類似と、関係の中で近づくことの両方を挙げ、身体活動の相関は弱いものから中程度としている。[1]

米国の従業員とその配偶者・パートナー5,364組を対象にした研究では、年齢の中央値は男性50歳、女性47歳だった。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、年齢構成の違いに注意が必要である。[18] 運動が不十分なカテゴリーに双方が入る組は53%で、95%信頼区間は52〜55%だった。[18] 「夫婦は健康行動が似る」という話は、一緒に活発になる場面だけを意味しない。双方が十分には動いていない状態も、一致に含まれる。玄関に運動靴が並ぶ家庭だけを思い浮かべると、この研究の読み方を誤る。

同じ研究では2,186組について5年間の縦断分析も行われた。夫婦の一致の程度に変化があったのは血圧と空腹時血糖で、ほかの項目では変化が認められなかった。[18] ある時点で似ているという結果を、そのまま「暮らす年月に比例して運動も似てくる」と読み替えることはできない。夫婦の状態を撮った写真と、時間を追った記録は、答える問いが違う。

これは、6年間で活動量の変化が関連していた先の研究と、直ちに矛盾する話でもない。[20][18] 個々の活動指標がどれほど変わったかを見ることと、集団全体で同じカテゴリーに入る夫婦の割合が変わったかを見ることは別だからだ。活動量の小さな増加と、カテゴリーが変わるほどの増加を区別すると、両方の結果を理解しやすい。

日本とオランダの大規模な横断研究も参考になる。日本の5,391組、オランダの28,265組を比べたところ、十分な身体活動の夫婦間の一致は、どちらの集団でも年齢が高い群ほど強い傾向があった。ただし、これは異なる年代の夫婦を比較した結果で、同じ夫婦が年を重ねる過程を直接追った結果ではない。[16]

この横断研究には日本とオランダの夫婦が含まれ、18〜39歳の女性だけを追った結果ではないため、その年代への適用は慎重に考える必要がある。[16] 生活条件が違えば、共有できる時間も違う。若い同居カップルなら、平日の帰宅時刻だけでなく、休日が重なるかも相談の入り口になる。休みが合う日には一緒に外出し、合わない日は各自で動く、と予定を分けて考えられる。

運動より、座る時間の方が似ていた研究もある

自己申告だけでなく、機器で測ったらどうなるか。中高年の夫婦72組を対象にした研究では、加速度計を7日間装着し、座る行動、中高強度の身体活動、歩数を測定した。中高強度の身体活動とは、活動の強さで分けた分類である。中高年を対象とするため、18〜39歳の女性でも同じ関連の強さになるかは別に確かめる必要がある。夫婦の座る行動には統計学的に有意な関連があり、標準化した回帰係数は0.30〜0.47だった。[15]

一方、妻の活動量や歩数と夫のそれらの関連は、係数0.22〜0.25で統計学的には境界的な結果だった。夫の活動量や歩数と妻のそれらの関連は、係数0.15〜0.18で有意ではなかった。この研究の結論は、身体活動の一致は座る行動の一致より弱い、というものだ。[15] 同じ家のソファは共有できても、歩幅まで同じにはならない。

この違いは、「一緒に暮らしているのに、自分だけ運動できていない」という採点を見直す手がかりになる。機器による測定では、夫婦の活動量の一致は弱かった。[15] 互いの行動が似ていないこと自体を、関係の失敗と解釈する必要はない。相手の帰宅前に自分は外へ出る、相手の運動中には自宅で過ごす、といった別々の予定から考えてよい。

また、この研究では配偶者への愛着の強さが、夫婦の行動の関連を有意に変える結果は得られなかった。[15] 運動の一致を愛情の点数にする読み方も避けたい。別々の種目を選ぶ理由は、関係の評価を持ち出さなくても、予定や好みを尋ねれば整理できるかもしれない。

測定の対象にも注意したい。座る時間、歩数、中高強度の活動時間は、それぞれ別の指標である。[15] 相手と同じ距離を歩いたかだけを話題にすると、家で座って過ごす場面の共有を見落とすかもしれない。夕食後を一緒に過ごす二人でも、日中は別々に動いている。まずは「休日の外出の話か」「帰宅後の過ごし方の話か」をそろえてから、自分たちの状況を話すとよい。これは活動量を増やす効果が確定した方法ではなく、研究が分けて測った行動を混同しないための整理である。[15]

数字で読むパートナーと身体活動

3,261組・6年間:活動指標の変化の関連を調べた夫婦の観察研究である。[20]

0.09標準偏差:妻の運動指標の増加に対応する夫の変化の関連。95%信頼区間は0.05〜0.12だった。[20]

53%:米国の調査で双方が運動不十分だった組の割合。95%信頼区間は52〜55%である。[18]

72組・7日間:加速度計で測定し、運動より座る行動の一致が強かった研究の規模と測定期間である。[15]

4試験中2試験:夫婦向けと個人向けを直接比べたランダム化比較試験で、夫婦向けが優れていた試験数である。[3]

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