運動と睡眠の時刻はそろう?論文で読む、眠る長さとは別の日ごとの揺れ

運動した夜によく眠れても、翌日も同じ時刻に眠れるとは限らない。運動と睡眠の関係を論文から読み、睡眠時間、就寝時刻、日ごとのばらつきを区別する。大学生や成人の観察研究、夜勤の研究を手がかりに、運動だけに期待を集めず、仕事や予定と合わせて続け方を考える。

帰宅して着替え、体を動かした日は早く布団に入れた。ところが翌日は残業、その次は休日で朝寝坊。運動を始めた手応えはあるのに、睡眠の時刻表には、運動の日より勤務と休日の違いがくっきり出ている。そんなとき、「運動は睡眠に良い」という言葉だけでは、自分の疑問に届かない。

答えの芯は、運動と規則的な睡眠には関連が見られるが、関連だけで「運動をすれば毎晩の時刻がそろう」とは決められない、である。大学生の調査では運動と睡眠の規則性が結びついていた一方、成人の研究は活動量と睡眠を組み合わせた健康指標の違いを調べている。どちらも、運動で就寝時刻をそろえる効果を直接確かめた試験とは異なる。[14][19]

また、長く眠ることと、毎日似た時刻に眠ることも別である。睡眠の量と時刻の日ごとの揺れを分ける視点が、規則性の研究では重視される。[9] 体重との関係は既存記事「睡眠の規則性とダイエット 寝る時刻のばらつきが体重と結びつく研究の現在地」に譲り、ここでは運動の予定を入れると睡眠の時刻までそろうのかを考える。

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長さが同じでも、睡眠の並び方は違う

睡眠時間は眠った長さ、睡眠時刻はいつ眠ったかという位置である。そして規則性は、その位置や眠りと覚醒の並びが日ごとにどれくらい安定しているかに関わる。思春期を扱ったレビューは、眠る量のばらつきと時刻の規則性を区別し、睡眠時間や睡眠の中央の時刻の夜ごとのずれに注目している。対象は思春期であり、18〜39歳の女性への適用には、成長段階や生活条件の違いを考える必要がある。[9] 「昨日は長く眠れた」は有用な感想だが、それだけで規則的になったとは判断できない。

たとえば平日は夜遅く寝て朝早く起き、休日には寝る時刻も起きる時刻も後ろへずれる生活を想像する。平均の長さだけを書いたメモからは、どの日にずれたかが消えてしまう。反対に、寝る時刻が似ていても、起きる時刻が仕事の都合で大きく動くなら、就寝だけを見て安心するのも早い。睡眠を長さと時刻に分けて扱う研究の読み方は、こうした生活の違いを見落とさないために役立つ。[9][19]

成人の共同研究では、太ももに装着した加速度計から睡眠時間、歩数、睡眠規則性指数を求めている。睡眠規則性指数は、日ごとの睡眠の一貫性を数量化する指標である。[19] 名前は少し硬いが、朝の自分が「よく寝た」と答える質問とは別のものを測っている。気持ちよく眠れた日があっても、生活全体の並びは別に見る必要がある。

ここで大切なのは、規則性を新しい採点競争にしないことだ。研究で使う指標と、手帳に残す就寝・起床の記録は同じではない。手帳の用途は、自分に研究用の点数をつけることではなく、運動が入った日、帰宅が遅かった日、翌朝の予定がある日を見分けることにある。長さだけでは拾えない違いを観察する、という研究の視点を暮らしに借りるのである。[9][19]

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大学生の関連は、運動の効果をどこまで語れるか

中国の大学生470人を対象とした横断調査では、マインドフルネス運動、睡眠の規則性、自己統制、精神的健康を質問票で調べた。マインドフルネス運動とは、注意を自分の体験へ向ける要素を含む運動としてここでは読む。運動と睡眠規則性の間には正の関連があり、標準化された係数は0.457であった。[14] 運動に取り組んでいる学生ほど、規則的な睡眠を報告する傾向があった、という結果である。

この係数は、運動すると就寝が何分早まるかを表す値ではない。睡眠のずれが何割減るかでもない。研究は質問票同士の関連を統計モデルで検討したもので、参加者に運動を割り当て、その前後で時計の動きを比較した試験ではない。[14] 数字があると効果の約束に見えやすいが、数字の単位が何なのかを確かめるだけで読み違いは減る。

研究では、睡眠の規則性と自己統制が順につながる経路も検討された。自己統制は、目先の行動を自分の目標に沿って調整する力として考えると分かりやすい。運動、睡眠、自己統制、精神的健康の関係を説明する統計的な経路が示されたが、同じ時点の調査から、その順番で実際に変化が起きたと証明したわけではない。[14] 矢印を描けることと、生活の中で矢印が動いたことは違う。

もともと予定を整えやすい学生が運動も睡眠も続けやすかった可能性は残る。睡眠が安定しているから運動する余裕が生まれた可能性もある。こうした逆向きの説明を考えるのは、運動を否定するためではない。横断調査が示す関連を、介入の効果と混同しないためである。[14] 講義の終わる時刻がそろう日と、アルバイトで帰宅が変わる日を一緒にせず、自分の予定も横に置いて読むのがよい。

さらに、この研究の対象は大学生であり、測定は自己申告である。[14] 夜勤のある人、育児で夜中に起きる人、運動を始めたばかりの成人に、同じ大きさの変化が起きると見積もることはできない。「若い人で関連がある」は出発点にはなるが、自分の来月の就寝時刻の予報にはならない。

成人の研究は、歩数と睡眠を別々に見ている

成人については、欧州とオーストラリアの6つのコホートをまとめた横断研究がある。参加者は11,903人で、平均年齢は54.7歳、女性は54.9%であった。加速度計で測った歩数と睡眠の特徴を、血液検査や体格などの指標と組み合わせて検討した研究である。[19] 18〜39歳の女性にこの関連の大きさをそのまま当てはめるには、年齢構成の違いがある。大学生の自己申告とは違う測り方だが、こちらも運動を始めさせる試験ではない。

睡眠規則性が低く歩数も少ない組み合わせは、規則性が高く歩数も多い組み合わせに比べ、腹囲が8.58cm大きいことと関連した。95%信頼区間は7.78〜9.38cmであり、睡眠時間にかかわらず関連が認められた。[19] 信頼区間は推定の不確かさを示す幅である。この差を、「歩けば腹囲がその分減る」「睡眠をそろえれば同じ差が埋まる」という治療や減量の予測へ置き換えてはいけない。

この研究から持ち帰りたいのは、運動と睡眠をひとまとめの合格印にしない、という視点である。歩く量が多いかと、睡眠の並びが安定しているかは、それぞれ測定された別の特徴である。[19] よく歩いたから睡眠の不規則さは帳消しだ、と読むことも、睡眠がそろっているから活動量は考えなくてよい、と読むこともできない。

平均年齢を考えると、結果を若い女性にそのまま当てはめることにも慎重さが要る。[19] ただ、運動の記録と睡眠の記録を同じ欄に押し込めないという発想は借りられる。歩数には達成感が出やすく、時刻の揺れは目につきにくい。スマートフォンに歩いた量が残っていても、それだけでは眠りの時刻表を読んだことにはならない。

成人研究の比較は、睡眠規則性と歩数の組み合わせ同士である点にも注意したい。差があったからといって、その差のどれだけが歩数で、どれだけが睡眠で説明されるかを、この比較だけから取り分けることはできない。[19] 「運動と睡眠の関係」を検索したとき、運動が睡眠を変えた研究と、運動と睡眠を一緒に健康指標へ結びつけた研究が並ぶことがある。似た言葉が並んでいても、答えている問いは違う。

測り方にもそれぞれの役割がある。大学生の調査は本人が回答した尺度を用い、成人の共同研究は機器から歩数や睡眠の指標を求めている。[14][19] 自分で「規則的だ」と感じることと、機器で日ごとの一貫性を数量化することを、同じ測定と見なすことはできない。両者の結果を合わせる際には、対象だけでなく、何を記録して関連を調べたのかまで目を向けたい。

思春期のレビューでは、睡眠のばらつきや不規則さは、身体活動の少なさ、食行動や食事の問題、代謝の問題などとも関連していた。[9] これは生活行動が互いに孤立していないことを示唆する一方、運動だけを変えれば全体が整うという意味にはならない。帰宅が遅い日は食事も睡眠も後ろへ動く、といった場面を想像すると、行動を別々に記録しつつ、同じ日の出来事として読む意味が分かる。

なお、こうした思春期の知見と、中年中心の成人データの間には対象の距離がある。[9][19] 複数の研究で睡眠規則性という言葉が使われていても、年齢ごとに関連の大きさを確認する必要がある。自分に近い対象の研究かを確かめることは、数字の大きさを見比べるより先の作業である。

数字で読む運動と睡眠の規則性

470人:中国の大学生を対象に、運動と睡眠規則性などの関連を調べた横断調査である。[14]

0.457:同調査の運動と睡眠規則性の関連を表す係数であり、改善率や短縮時間ではない。[14]

11,903人:歩数と睡眠を加速度計で測定した成人の共同研究の対象人数である。[19]

18人:日勤から夜勤への移行と、生活行動の時刻の変化を調べた警察訓練生の人数である。[7]

1.43:中年女性で、睡眠規則性が最も低い群の月経痛のオッズ比。95%信頼区間は1.08〜1.91である。[2]

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