孤独と肥満はどう関係するか 食べ方と体重、人との距離を分けて考える科学

孤独を感じると太るのか。社会的孤立と食行動を扱うレビュー、思春期からの追跡、肥満の変化と孤独を調べた研究を照らし合わせる。結果の食い違いや、死亡リスクと減量効果の違いも確かめながら、人付き合いを増やす義務にせず、食卓とつながりを整えるための具体的な選択肢を考える。

連絡先はたくさんある。それでも、食事の困り事を話せる相手は思い浮かばない。反対に、人と会わずに過ごす休日を心から楽しむ人もいる。人との距離を、予定表の埋まり具合だけで測るのは難しい。

孤独や社会的孤立と食行動を調べた研究では、野菜や果物の摂取が少ないことや、食事の質が低いこととの関連が報告されている。[3] ただし、そこから「孤独な人は太る」「友人を増やせば痩せる」と一直線に進むと、研究が測ったものを取り違える。肥満の始まりと孤独の変化を追った研究でさえ、性別や調査によって結果は異なる。[5][8][10]

ここで考えるのは、仲間に励まされて減量を続ける方法そのものよりも、食べ方が乱れる背景に、人とのつながりを置き忘れていないかという問題だ。体重の話に人間関係の成績表まで持ち込まず、食事、気持ち、体重を別々に見ていきたい。

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孤独感と社会的孤立は、同じ欄に入れない

孤独を扱う文献のレビューは、その健康との関連が幅広い一方、慢性疾患を持つ成人の孤独を長期的に減らす介入の有効性には限りがあると指摘している。[20] つながりは健康に関わる題材だが、「人と会う」という処方を一律に配れば済むほど単純な関係ではない。

実際の研究も、孤独と孤立を分けて扱う。英国の大規模コホート研究では、孤独の指標と社会的孤立の指標を別々に用い、肥満のある人の死亡リスクとの関連を比較した。[1] ドイツの縦断研究でも、孤独感と自分が社会から孤立しているという感覚を区別して測っている。[8] 同じ人間関係の話でも、何を質問したかで答えは変わる。

日常に置き換えるなら、「誰とも食事をしなかった」という出来事と、「誰にも分かってもらえないと感じた」という体験を、別の欄に置くと理解しやすい。これは自分の状態を整理するための区別である。独り暮らしだから孤独だと決めつけたり、家族と暮らしているから支えは足りていると判断したりする前に、本人がどう感じているかを聞きたい。

たとえば、仕事では会話が多くても、食べ過ぎたことを話すと必ず叱られるなら、その相手に食事の相談をしたいとは思わないだろう。逆に、普段は別々に暮らしていても、気兼ねなく話せる相手がいれば、生活上の頼り先として数えられる。会話の回数を増やす目標を作る前に、どんな関わりなら負担が少ないかを考える余地がある。

肥満と孤独の縦断研究では、孤独を測る尺度も調査集団も異なり、同じ方向の結果ばかりが出ているわけではない。[5][8][10] その違いを踏まえると、「孤独」という大きな言葉だけで自分の体重を説明するより、食べる支度が面倒なのか、誰かの視線がつらいのか、助けを頼む相手がいないのか、と生活の場面までほどく方が使いやすい。

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食事の研究が見ているのは、体重より手前の変化だ

高所得国の16歳超を対象としたスコーピングレビューは、孤独や社会的孤立と食行動の関連を調べた研究を整理した。スコーピングレビューとは、研究の広がりや内容を見渡すための整理である。採用されたのは質的研究3本と量的研究26本で、そのうち8本は感染症流行による外出制限期に実施されていた。[3]

ほぼすべての研究で、孤独や孤立と、野菜・果物の少なさ、低い食事の質など、望ましくないとされる食行動との関連が報告された。体験の語りを調べる質的研究も、食べ方への不利な影響を支持した。ただし、研究ごとの方法が異なり、結果の比較や解釈は難しかったとされる。[3] 全体として関連は見えるが、ひとつの減量効果への換算には進めない。

ここには大事な距離がある。食事の質を調べること、食べる量を調べること、体重の増減を調べることは、それぞれ別の問いだ。[3] 孤独な日に菓子を食べた経験があっても、それだけで長期の体重変化を説明できたことにはならない。研究で食べ方との関連が見つかったという話を、「孤独によって何kg増える」という話に書き換えないようにしたい。

生活の点検に使うなら、食事が変わった場所を探す。献立を考えるのをやめたのか、買い物に行く機会が減ったのか、誰かと食べるつもりで用意していた食事がなくなったのか。ここで挙げた場面は、論文が各経路の効果を証明したという意味ではなく、食行動という言葉を暮らしに戻すための問いである。献立の困り事には献立の助けを、話し相手の不足には話せる場を、と対応を選び分けたい。

食べ方の中でも、過食との関連を日々追った研究がある。女子大学生54人に14日間、食事の抑制、否定的な感情、感じている社会的孤立、過食を毎晩尋ねた研究だ。食事の抑制を考慮した別々の分析では、否定的な感情と社会的孤立はそれぞれ過食の多さに関連した。両者を同時に分析すると、有意な関連が残ったのは社会的孤立だった。[9]

この結果は、食べ過ぎの話を空腹や我慢の問題だけに絞らない理由になる。[9] ただし、対象は非臨床の女子大学生であり、立川で働く中年女性全般の結果としては扱えない。研究の日誌をそのまま全員の宿題にするより、「食べた物を責める前に、その日にどんな出来事があったかも話してよい」と受け止めるための材料にしたい。

肥満が先か、孤独が先かで研究の問いは変わる

思春期の孤独から、その後の体格を追ったノルウェーの研究がある。13〜19歳で調査に参加し、23〜31歳で再調査を受けた2,293人が対象だ。思春期に頻繁な孤独を報告した人は、そうでない人に比べ、若年成人期に肥満であるオッズが高かった。[14] 先の時点の孤独と後の時点の体格を結びつけた点で、同時に測る調査とは異なる。

体格指数であるBMIで判定した肥満のオッズ比は、男性で2.60、95%信頼区間は1.12〜6.06、女性で1.82、同1.03〜3.22だった。[14] オッズ比は、肥満である場合とそうでない場合の比を群間で比較した数値である。男性の体重が2.60倍になったという意味でも、孤独を減らすと同じ割合で肥満を防げるという意味でもない。

BMI増加量の差も報告され、男性で1.97kg/m²、95%信頼区間0.38〜3.55、女性で1.16kg/m²、同0.01〜2.31だった。[14] 信頼区間は推定の幅を表す。関連の方向だけを見るより、幅も一緒に眺める方が、結果にどの程度の不確かさがあるかをつかみやすい。

逆向きの問いもある。ドイツの40歳以上の地域住民を追った研究では、肥満になったことが孤独の変化と関連するかを調べた。2002〜2014年の調査データを用いた研究では、肥満の始まりと孤独の増加との関連が男性で見られ、女性では見られなかった。[5] 「孤独が肥満に先行する」という問いとは、調べている方向が反対である。

別のドイツの縦断研究では、男性は肥満の始まりが孤独の低下と、女性は孤独の上昇と関連していた。肥満でなくなることと孤独の変化には、男女とも関連が見られなかった。[10] さらに2014年と2017年のデータを使った研究では、肥満の始まりも終わりも孤独の変化には関連せず、女性で肥満でなくなることと、感じている社会的孤立の低下が関連した。[8]

この2014年と2017年の研究は、ドイツの40歳以上の地域住民を代表する調査を使い、BMIが30kg/m²以上の人を肥満と分類した。孤独感と感じている社会的孤立には、それぞれ確立された測定方法を用いている。女性で肥満でなくなることと社会的孤立の低下との関連を示す回帰係数は−0.24、有意確率は0.01だった。[8] 回帰係数は分析で用いた尺度上の変化を表す数値で、孤立する人の割合が24%減ったという読み方はできない。男性では同じ関連が見られず、性別による差も有意だった。[8]

男女で孤独の変化の方向が逆だった別の研究は、ドイツの全国を代表する縦断調査の第5〜第7回を利用し、分析対象は10,446観測だった。同じ人を繰り返し測るため、これは参加者の実人数とは区別する。孤独の測定には3項目の尺度を使い、肥満の始まりと終わりを分けて分析している。男性で肥満が始まるときの回帰係数は−0.31、女性では0.33で、有意確率はそれぞれ0.05未満、0.01未満だった。[10] 孤独の変化を尺度で追った研究だと分かると、先の女性の社会的孤立の数値とは測定対象も異なることが見えてくる。[8][10]

結果を並べると、体重が増えると孤独が増し、減ると孤独も消える、という往復の図式には収まらない。[5][8][10] 食事や体重の相談と、人間関係の困り事の相談を、どちらかが解決するまで待たせない方がよい。痩せてから人に会おうと決める前に、今の体で参加できる場所を探す、という選択肢を残しておきたい。

この食い違いは、どれかの結果を好みで捨てるための理由にはならない。肥満が始まる局面と終わる局面を分けて分析した研究では、両者は対称に動かなかった。[10] 増えたときの経験を、そのまま減ったときに逆再生できるとは限らないのである。体重という同じ指標を追っていても、その人の周囲で何が起きたかまで同じとは置けない。

また、ノルウェーの研究は思春期から若年成人期への移行を、ドイツの研究は人生後半の地域住民を扱っている。[5][8][14] 年齢の違う結果をひとつの人生の法則としてつなぐのは控えたい。読者が今の自分に引き寄せるなら、「この数字は自分の未来を決めた」と考えるより、食事やつながりの困り事を早めに扱うきっかけにする方がよい。

数字で読む孤独と体重の研究

29本の研究:食行動のスコーピングレビューに含まれた質的研究3本と量的研究26本の合計である。[3]

54人・14日間:女子大学生の日誌研究であり、全年齢の減量試験の数字ではない。[9]

2,293人:思春期の孤独と若年成人期の肥満を追ったノルウェーの対象者数である。[14]

2.60:同研究の男性における肥満のオッズ比。95%信頼区間は1.12〜6.06だった。[14]

19本:肥満と関連合併症のある人を対象に、孤独・孤立への介入を整理した系統的レビューの採用数である。[7]

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