食べたい気持ちや運動への億劫さが消えるまで、行動を待つべきなのか。受け入れて進む心理療法ACTを取り入れた減量支援について、標準的な支援との比較、長期追跡、電話やオンラインの試験を確かめる。体重への効果と自己批判の変化を分け、日常で試せる行動の考え方を探る。
受け入れる技能を加えた減量支援でも、12か月後に10%以上の減量を達成した割合が30%対30%と並ぶ試験がある。電話支援の予備的な無作為化試験で、体重計の報告が得られた57人の結果だ。[6] 気持ちとの付き合い方を変えることは、食事や運動を支えるうえで何を足せるのだろうか。
アクセプタンス&コミットメント・セラピー、略してACTは、この部分に目を向ける心理療法である。運動を扱った試験では、今の経験に注意を向けること、自分が大切にしたい方向を明確にすること、行動を変えるために不快な気持ちも経験する意思を持つことが教えられた。[18] 気分を合格点にしてから生活を動かす、という順序を問い直す発想だ。
ただし、気持ちを受け入れれば体重が自然に落ちる、と話を飛ばしてはいけない。肥満に対する近年のレビューは、ACTに基づく介入の減量効果を、標準的な行動支援と同程度、場合によっては上回ると整理している。[2] どんな支援に加えたのか、何を改善したのか、その差は支援終了後も残ったのか。そこまで確かめると、期待の置き場所が見えてくる。

受け入れるのは気持ちであり、行動は選び直す
ACTの「受容」は、食べたいと思ったらそのまま食べる、という許可証だろうか。運動に関する予備的な無作為化試験で扱われたのは、行動変容のために不快な経験を引き受ける姿勢であり、価値の明確化や今の経験への気づきと組み合わせた技能であった。[18] 受け入れる対象と、選ぶ行動を区別すると理解しやすい。
たとえば、仕事が終わったときに「今日は面倒だ」と思う場面を考える。その考えが出てきたことを認めることと、運動をやめることは別々に扱える。「面倒だと思っている。それでも、外を歩く準備はできる」と言葉を置き直すのが、日常に引き寄せた考え方の例だ。これは治療手順そのものの再現ではなく、不快な経験と行動を切り離して考えるための例示である。[18]
この身体活動の予備試験は若い成人女性を対象とし、教育群19人とACT群35人に無作為に割り付けていた。両群とも2時間の集団セッションを2回受け、介入を完了した参加者では、ACT群の身体活動の増加が教育群より有意に大きかった。短期の活動開始を扱う結果であり、中高年の男女の長期的な減量まで直接確かめた設計とは異なる。[18]
減量の試験では、この考え方だけを渡して終えるわけではない。過体重または肥満があり、感情などの内的なきっかけで食行動が崩れやすい成人162人の無作為化試験では、受容を取り入れた群にも標準支援群にも、同じ摂取エネルギー目標、運動目標、自己観察の技能訓練が提供された。違いは、困った考えや感情にどう対処するかという支援の部分にあった。[10]
この設計は大事だ。受容型の支援は、食事や運動を考えなくてよくなる方法として調べられたわけではない。生活を変える土台の上に、気持ちの扱い方を加える比較である。[10] 食卓を変えるか心を変えるか、という二者択一にすると、試験で実際に行われた支援から離れてしまう。
自分が大切にしたい方向を考えるときも、体重の目標だけに閉じる必要はない。「休日に出かける体力を保ちたい」「家族との時間を楽しみたい」といった言葉なら、その日の行動と結びつけやすい。こうした例は、価値を明確にするという試験の技能を暮らしに置いたものであり、それぞれの言葉に減量効果が実証されたという意味ではない。[18] 立派な標語を作るより、運動靴を履く理由が自分に通じるかを考える。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
標準的な減量支援を必ず上回るわけではない
成人の過体重・肥満に対するACTの系統的レビューは、無作為化比較試験7件、計698人を集めている。体重にまつわる困難や体重減少率は、ACT群でもACT以外の群でも改善が報告された。著者らはACTを有効な支援として評価しつつ、対象集団を広げ、より体系的な試験設計で確かめることを求めている。[8]
ここで「研究が集まっている」と「どの方法よりも優れている」は分けたい。このレビューは、ACT以外の支援でも改善したと記している。[8] 比較相手が何もしない待機群なのか、食事・運動を十分に支える標準群なのかで、問いの難しさは変わる。生活全体を支える方法同士の比較なら、ACTにしかない追加の利点があるかを問うことになる。
その問いで差が出なかったのが、成人283人を無作為に割り付けた試験である。従来の行動支援に、食べ過ぎを誘う食環境への対処技能を加えた方法、さらに受容の技能も取り入れた方法などを、12か月間、26回の集団セッションで比べた。体重の経時変化は、条件間で有意に異ならなかった。[7] 受容という言葉が加わっただけで、全体の成績が上がるとは言えない結果だ。
一方、この試験の探索的な解析では、人種によって支援の影響が異なる可能性が示された。アフリカ系米国人の参加者では、受容と環境への技能を組み合わせた群で、他の条件より良好な減量の指標が見られた。[7] ただし、これは全参加者で優位だったという話とも、日本の読者に同じ差があるという話とも区別する。探索的な結果は、次に誰を対象として検証するかを考える手がかりである。
先ほどの成人162人の試験でも、24か月時点の平均体重減少は受容型で4.1%、標準型で2.4%だったが、主要な比較の差は有意ではなかった。ところが副次的な解析では、治療終了から最終追跡までの再増加は4.6kg対7.1kgと受容型で少なく、開始時から5%の減量を達成した割合も38%対25%と高かった。[10] 平均の結果だけで希望を消すのも、副次的な結果だけで勝利とするのも早い。
この違いは、本人にとっての目標を考える際にも役立つ。支援を選ぶときには、「平均してどれだけ減るか」に加え、「減った状態を保つ人がどれくらいいるか」「支援が終わってからどうなるか」という質問ができる。ただし、指標を都合よく取り替えないことが前提だ。主要な比較で有意差がなかった事実を置いたうえで、維持に関する可能性を読むのが、この試験に見合った理解である。[10]
減量直後の差と、その後の暮らしは別に見る
過体重または肥満の成人190人を、受容型または標準型の支援に割り付けた試験の長期追跡は、その後を考える材料になる。両群は1年間に25回のセッションを受け、開始から36か月まで評価された。治療終了時に見られた受容型の減量の優位は、その後の追跡では弱まった。[12]
36か月時点で10%の減量を維持した割合は、治療を完了した人では受容型31.6%、標準型17.1%で、有意差があった。ところが、割り付けられた参加者全体を対象とする解析では25.0%対14.4%となり、有意差には達しなかった。治療終了後に再増加した量にも、群間差は認められなかった。[12] どの人を分母にした数字かで、結論の確かさが変わる。
完了した人の成績は、支援を受け切った場合の姿を考える参考になる。一方、途中で続けられなくなる人も含めて支援を選ぶなら、割り付け全体の結果も外せない。この試験は、終了後も受容型の優位が同じ強さで続く、という見通しを支持していない。[12] ダイエットの計画表に終了日は書けても、その翌日から暮らしが休業するわけにはいかない。
体重以外には違いが残った。受容型の群では、24か月と36か月の生活の質が標準型より高かった。また、自分で選んで行動する動機や、食べ物に関する衝動の心理的受容が、体重への介入効果を媒介する結果が報告された。[12] 「媒介」とは、支援から結果へ至る途中の経路として、統計的に検討されたという意味である。それだけで心の変化から体重までの因果関係がすべて確定するわけではない。
だから、支援後の評価では、体重の推移と生活の過ごしやすさを並べて眺めたい。人と食事をする場面が負担なのか、運動を始めるときに何が引っかかるのか。こうした具体を話すことは、体重の評価を放棄することと違う。長期追跡で体重差が弱まっても生活の質の差が残ったという結果は、支援の価値を単独の数字に閉じない理由になる。[12]
数字で読むACTと減量支援
7件・698人:成人の体重関連の困難を扱う系統的レビューに含まれた無作為化比較試験と参加者数。[8]
4.1%対2.4%:成人162人の試験における24か月時点の平均減量率。受容型と標準型の差は有意ではなかった。[10]
31.6%対17.1%:長期追跡の治療完了者で、36か月時点に10%減量を維持した割合。全割り付け参加者では有意差に達していない。[12]
30%対30%:電話支援の予備的試験で、12か月時点の体重計の報告に基づき10%以上減量した割合。評価対象は57人だった。[6]
0.32:身体活動に関するメタ分析の標準化平均差。95%信頼区間は0.07〜0.57で、小〜中程度の効果だった。[17]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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