ヨガの帰りは平気だったのに、翌々日の階段で脚が痛い。遅発性筋痛の研究から、運動直後の疲れと遅れて現れる痛みの違い、痛みと筋力が同時には戻らない理由を読む。初心者がレッスン後の変化を記録し、次の予定を考えるための視点を、ヨガ以外の実験との違いも含めて整理する。
マットを片付けた夜は、自宅の階段を普通に下りられた。翌朝もそれほど気にならない。ところが、その次の朝、椅子から立つと太ももが抗議する。運動をした日の記憶と、体から届く返事の日付が合わない。
慣れない運動のあとに時間を置いて現れる痛みは、遅発性筋痛と呼ばれる。運動に伴う痛みを整理したレビューでは、強い伸張性運動などのあと、24〜48時間で現れるものとして説明されている。直後に平気でも、あとから筋肉痛が出ることは矛盾しない。ただし、ヨガのあとなら必ず翌々日が山になる、という意味ではない。[14]
読むべきなのは「効いた日付」ではなく、痛みと動きやすさがどう変わったかである。筋肉痛が効いた証拠かという問いは、既存の「【連載】その常識、研究では? 第2回|筋肉痛は効いた証拠か——遅発性筋痛と筋肥大の関係」に譲る。ここでは、運動直後と翌日以降の違い、そして次の予定を決めるときの時計に絞る。

直後のつらさと、遅れて出る痛みは同じではない
レッスン中の「もう支えられない」と、翌朝の「動かすと痛い」を、ひとまとめに疲れと呼ぶことはできる。しかし、研究を読むときは分けたい。MilesとClarksonのレビューは、運動中または直後の痛み、遅発性筋痛、筋けいれんによる痛みを区別し、それぞれ経過と成り立ちが異なると整理している。痛いという言葉が共通でも、すべて同じ出来事ではない。[14]
遅発性筋痛では、痛みに加えて、筋力の低下や関節を動かせる範囲の減少、血中のクレアチンキナーゼの上昇が伴うことがある。クレアチンキナーゼは、研究で筋への負担を調べる際に用いる酵素である。これらは筋損傷を間接的にみる指標であり、痛みだけでなく、力や動かせる範囲も別に確かめる必要がある。[14]
たとえば、帰り道では「脚が重い」と感じ、翌々日は「座るときに太ももが痛い」と感じたとする。この場合、つらさの強弱だけでなく、何をしたときの感覚かが変わっている。日記に残すなら、前者を疲労感、後者を動作に伴う痛みとして別々に書くと、あとで読み返しやすい。これは自分で診断するためではなく、時間と場面を混ぜずに伝える工夫である。
実際の研究でも、主観的な痛みだけでなく、力や動作を別に測っている。強いジャンプ運動を行う群と休む群に、それぞれ12人を割り付けた実験では、筋肉痛などの上昇が24〜48時間で山を迎えた。一方、測定した筋力は回復期間を通して変わらず、ジャンプの成績は8〜20%低下した。同じ実験の中でさえ、痛み、筋力、跳ぶ能力は同じ変化ではなかった。[11]
ここでいうジャンプ運動は、反動を使って跳ぶような強い運動であり、その結果をそのままヨガの予定表にはできない。それでも、痛みの程度だけで、どんな動作も同じようにできると決めないための例にはなる。研究が測る「回復」には、いくつもの窓がある。どの窓を見た結果なのかを確認して初めて、数字の意味が見える。[11]
レッスンを終えた直後の感想を消す必要はない。ただ、帰宅時の感想欄だけで翌日以降の予定まで確定しないことだ。「今日は楽だった」という記録と、「あとからどうなったか」という記録は、両方あってよい。時間差のある痛みを考えるときには、片方だけでは経過の途中を見落とす。[14]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
翌々日に強くなる背景には、慣れない負荷がある
遅れて出る痛みを考える鍵のひとつが、伸張性収縮である。筋と腱のまとまりが伸ばされる局面の収縮を指す。Hodyらのレビューは、慣れない伸張性運動が筋損傷と遅れて出る痛みを引き起こしうると整理している。単に「筋肉を伸ばしたから痛い」という説明より、力を発揮する局面と、慣れない負荷の組み合わせを考える必要がある。[8]
ヨガで検索していると、ポーズの完成形ばかりが目に入る。けれども、自分のレッスンを振り返るときには、完成した姿勢だけでなく、そこへ入る動きや戻る動きも思い出しておきたい。「普段より深くした」「ゆっくり戻ろうとした」「初めての流れだった」といった具体である。これは、特定のポーズが痛みの原因だったと断定するための作業ではない。
レビューが述べるのは、慣れない伸張性運動という運動の性質である。ヨガの名称ごとに、いつ、どこが、どれだけ痛くなるかを保証するものではない。写真で簡単そうに見えたことと、自分にとって慣れた負荷だったことは別の話である。初心者が振り返るなら、難易度の名前より、自分が初めて行った部分を残すほうが論点に合う。[8]
では、なぜ運動した瞬間に痛みが完成しないのか。運動に伴う痛みのレビューでは、遅発性筋痛の正確な原因は確定しておらず、損傷に対する炎症反応の関与が考えられている。また伸張性収縮のレビューも、初期の損傷反応と、その後の適応を支える細胞・分子の仕組みには、なお理解すべき点があるとしている。単純な傷の量だけで時刻表を描ける段階ではない。[14][8]
ここは、分からないことを大げさな物語で埋めないほうがよい。翌々日に強く感じたからといって、その朝に新しい損傷が突然始まったと読み替える必要はない。一方で、すべてを「体が強くなる途中」として片付けるのも急ぎすぎである。痛みの経過と、運動後に起きる複数の反応を分けて扱うのが研究の姿勢である。[14][11]
初心者に近い運動経験という点では、最近の抵抗運動経験がない31人を対象にした無作為化比較試験が参考になる。腕の伸張性運動後に振動を加える群と加えない群などを比べ、痛み、等尺性筋力、筋の硬さを別々に測った。等尺性筋力は、関節を動かさずに発揮する力である。測定は運動前、24時間後、48時間後、1週間後に行われた。参加者はヨガ初心者の女性に限定されておらず、18〜39歳の女性に同じ経過を当てはめるには検証が必要だ。[5]
この試験では、振動を加えた群は加えない群に比べ、24時間後の痛みが小さく、筋力低下も抑えられた。筋の硬さにも時間に伴う変化があった。ここから読み取りたいのは、翌日以降を繰り返し測り、痛みと力を別の項目として扱っている点だ。腕の実験からヨガ後の脚の痛みの頂点は決められないが、「いつ、何を測った結果か」を確かめる読み方は使える。振動器具の利用を勧めるための比較ではなく、経過を複数の角度から追う研究として位置付けたい。[5]
痛みの山と、動けるようになる時刻はずれる
時間差は、痛みが出るときだけの問題ではない。痛みが引くときにも起きる。活動的な男性16人に、台から降りて跳ぶ運動を強く繰り返してもらった研究では、筋肉痛は48時間で最大となり、72時間では解消した。ところが、筋力の指標は測定した各時点で低下が続き、最大パワーの低下は72時間で最も大きくなった。男性の強い運動負荷で得た結果であり、18〜39歳の女性のヨガ後の経過への適用には検証が必要だ。[17]
この研究は、スクワットとベンチプレスを用いて力や速さ、パワーを評価している。パワーとは、ここでは力と動作の速さに関わる出力の指標である。痛みがなくなったという本人の感覚と、測定した運動能力の回復が一致しなかった点が大切だ。参加者も負荷もヨガ初心者とは異なるので、痛みが消えた後の待機時間をこの数字だけで決めることはできない。[17]
中央線で座席から立てたので安心したのに、階段ではいつものように踏ん張れない。こうした場面を記録するときは、「痛くない」の後ろに「何はできて、何が気になったか」を添えたい。痛みと能力がずれる実験結果を日常で生かすとは、自宅で筋力検査をすることではなく、感覚だけで予定を押し通さない見方を持つことである。[17]
抵抗運動の経験がある男性14人が、スクワットとレッグプレスを行った無作為化順序の実験でも、回復の物差しはそろわなかった。条件ごとに次の運動までの間隔を24、48、72時間と変え、同じ負荷で持ち上げられなくなるまで反復した。全体の運動量は24時間条件で低下し、最初のセットの運動量は48時間でも低下が残った。訓練経験のある男性の結果を18〜39歳の女性のヨガ後に直接当てはめることはできない。[3]
著者らは、その強い下半身抵抗運動後の成績を戻すには少なくとも48時間が必要で、主観的な反応は72時間でより良かったと述べている。ここでの48時間は、訓練を積んだ男性が限界まで運動した条件の結果だ。「ヨガは必ず中何日」と変換するための数字ではない。何をどの強さで行い、何を回復と呼んだかが数字に付いている。[3]
数字で読む、運動後の時計
24〜48時間:強い伸張性運動などの後、遅発性筋痛が現れる時間帯としてレビューが説明している。[14]
24時間:最近の抵抗運動経験がない参加者の腕の実験で、振動を加えた群と加えない群の痛みに差があった時点である。[5]
48時間:活動的な男性の強い反復ジャンプ後に、筋肉痛が最大となった時点である。[17]
72時間:同じ反復ジャンプ研究で筋肉痛は解消したが、力の指標の低下は残った。[17]
50人:筋力トレーニング未経験で痛みのない人に、背中の運動後の説明を変えた無作為化実験の規模である。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






