夜勤・交代勤務と体重の科学 食べ過ぎだけでは説明できない肥満リスクを読む

夜勤明けの食事は、時計では朝でも生活では夕食だ。肥満との関連を示すメタ分析、全体と条件別で結果が異なる看護師の研究、摂取量と体内時計の実験を読み分けながら、勤務形態による違いと、睡眠・食事・休憩を見直す手がかり、まだ確定していない対策の境界を整理する。

仕事を終えて立川駅へ向かうころ、街では朝食の時間が始まっている。こちらはこれから夕食を食べて眠るところだ。家族から「そんな時間に食べるから」と言われても、勤務表の夜勤を消すことはできない。食事の名前と時計の針が、日勤の日とはうまく重ならない。

夜勤や交代勤務と肥満の間には関連が報告されている。勤務形態をまとめた研究と、看護師に絞った研究では、結果の見え方も違う。[2][18] 自分の勤務と研究の対象を照らし合わせるところから、食事と睡眠の見直しを考えたい。

この記事で焦点を当てるのは、普通の夕食が遅れる場面よりも、夜に働き昼に眠る暮らしである。在宅勤務の食事は「在宅勤務で太るのか」の記事に、休日を含む体重変動は「体重の週内変動は減量の失敗か」の記事に譲る。ここでは勤務の違い、食事量の違い、実験で測れた体の反応を順に重ね、現場で手を付ける場所を考える。

28研究が示した夜勤と肥満の関連を読む

観察研究とは、研究者が勤務を割り当てず、実際の働き方と健康状態の関係を調べる研究である。夜勤と肥満を扱うメタ分析も、その観察研究を束ねたものだ。多くの人を含むほど平均的な関連は見えやすくなるが、勤務以外の違いが消えるわけではない。[2]

2018年の系統的レビュー・メタ分析は28研究をまとめ、夜勤と過体重・肥満の関連について、オッズ比1.23、95%信頼区間1.17〜1.29を報告した。[2] オッズ比は、肥満である確率とそうでない確率の比を群間で比べる指標である。信頼区間は、関連の推定に伴う不確かさを示す。

研究の型を分けると、同じ時点の勤務と肥満を比べる横断研究では指標が1.26だったのに対し、人を追跡するコホート研究ではリスク比1.10だった。[2] オッズ比とリスク比を同じ尺度として細かく引き算することはできない。それでも、追跡研究と横断研究を区別せず、大きく見える数字だけを掲げる読み方は避けたい。

横断研究では、勤務歴と体重のどちらが先に変わったかを十分に確かめにくい。コホート研究では順序を追いやすいが、夜勤群と日勤群の生活が完全に同じになるわけではない。勤務以外の条件も関わる観察研究として、この関連を読む必要がある。[2]

このレビューでは腹部肥満のオッズ比が1.35と報告され、夜勤の関連が体重の区分だけに限られないことも示された。[2] 体重による区分と腹部肥満を分けて集計した点が、このレビューの特徴だ。

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固定夜勤と交代勤務、同じ職場でも結果は一枚岩ではない

夜勤と呼ばれる働き方には、夜だけ働く固定夜勤も、日勤と夜勤が入れ替わる交代勤務もある。先のメタ分析では、固定夜勤のオッズ比は1.43、交代勤務では1.14だった。[2] 勤務の型ごとの関連を集計した観察研究であり、勤務変更による健康への効果は別途検証が必要だ。

薄いカーテン越しに自然光が差し込む寝室と、枕を並べて整えられたベッド。
薄いカーテン越しに自然光が差し込む寝室と、枕を並べて整えられたベッド。
写真: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

さらに、看護師に対象を絞ると印象が変わる。2020年の系統的レビュー・メタ分析は、11研究、74,651人の看護師を含んだ。交代勤務をする看護師全体の肥満のオッズ比は1.05、95%信頼区間0.97〜1.14で、統計学的に明確な差には達していない。[18] 「夜勤の研究はどれも肥満の増加を示す」と言ってしまうと、この結果が抜け落ちる。

同じレビューでも、夜勤のみの群に絞った分析では、オッズ比1.12、95%信頼区間1.03〜1.21という関連があった。女性看護師だけの分析は1.09、95%信頼区間0.84〜1.35で、明確な差を示さなかった。[18] 対象を絞ると、関連の推定値とその不確かさも変わる。

肥満を区切る基準も、含まれた研究の間で違っていた。BMI(体重と身長から算出する体格の指標)30以上を肥満とした分析では、オッズ比1.12、95%信頼区間1.03〜1.20で有意な関連があり、米国の分析でも1.36、95%信頼区間1.30〜1.42だった。[18] 著者らは、交代勤務が看護師の肥満の発生に重要な役割を果たしうると結論づけている。[18] 同じ勤務という言葉を使っていても、勤務の分類、対象となる職種、肥満の定義まで同一とは限らない。研究を束ねるときのこの違いは、読者が自分を平均値へ当てはめる際にも残る。

病棟の休憩、警備の巡回、工場の交代時刻を、すべて同じ生活として想像するのは難しい。自分の勤務表を見ながら、固定夜勤なのか、日勤と入れ替わるのか、食事と睡眠の機会がどこにあるのかを書き出す。研究が区別している条件に、自分の暮らしを近づけて理解するための作業である。[2][18]

食べ過ぎが原因なのか、摂取量のレビューは答えが分かれる

夜勤で体重が増えたと聞くと、まず深夜のお菓子を思い浮かべがちだ。しかし2016年の系統的レビュー・メタ分析では、12研究に含まれる日勤者10,367人と交代勤務者4,726人を比べ、報告された摂取エネルギーに明確な差はなかった。標準化平均差は−0.04、95%信頼区間−0.11〜0.03だった。[1] 標準化平均差は、研究間で比較できるよう差を共通の尺度にした指標であり、食事の熱量そのものではない。

ここで大切なのは「報告された」という部分である。この結果だけで、現実の食事量がいつでも完全に等しいと決まったわけではない。レビューは栄養素の摂取に関する結果も食い違っていたと述べ、体内時計とのずれ、食事時刻、食べ物の選び方、夜のエネルギー代謝など別の要因を候補に挙げている。[1] 食事記録の誤差は「食事記録の過小報告はなぜ起こるのか」の記事に譲り、ここでは平均値の差がなかった範囲を保って読む。

一方、2023年のレビューは交代勤務に焦点を絞り、31研究、18,196人を検討した。日勤者との摂取エネルギーの比較に使われたのは18研究、16,633人のデータで、交代勤務者の24時間平均摂取量は264 kJ高く、95%信頼区間は70〜458 kJだった。[6] kJは食べ物のエネルギーを表す単位である。新しいレビューには差があり、古いレビューには明確な差がない。両方を置いて考える必要がある。

ただし、交代勤務者の中で日勤の日と夜勤の日を比べた分析は、7研究、327人に基づき、差は101 kJ、95%信頼区間−651〜852 kJで有意ではなかった。[6] 別の人同士の「日勤者と交代勤務者」の比較と、交代勤務者内の「日勤の日と夜勤の日」の比較は違う。交代勤務という働き方の比較と、同じ働き方での勤務日ごとの比較を分けて読む。

食事の内容や並び方には、交代勤務者で不規則で頻回な食事、夜の間食、基本的な食品の少なさ、嗜好的な食品の多さという傾向が報告された。[6] そこで実生活では、合計量だけでなく「ちゃんと食べる予定だった食事が休憩で飛び、つまむ場面が続いたのか」も観察候補になる。

たとえば、出勤前の食事、休憩中のパン、帰宅後の家族との食事を、別々の出来事として覚えていることがある。勤務日をまたいで食べると、夕食という名前も複数になりうる。食事に勤務表を添えれば、呼び名に頼らず、どこで食べる機会が重なったかを確認できる。カレンダーの日付が替わっても、食事の研究は24時間の合計を見ている。[1][6]

数字で読む夜勤と体重

28研究の統合で、夜勤と過体重・肥満のオッズ比は1.23、95%信頼区間1.17〜1.29。因果を確定する数字ではない。[2]

74,651人の看護師を含む分析では、全体のオッズ比1.05、95%信頼区間0.97〜1.14で明確な差はなかった。[18]

交代勤務と日勤の摂取量の差は平均264 kJ、95%信頼区間70〜458 kJ。交代勤務に絞ったレビューの値だ。[6]

成人14人の模擬夜勤実験では、夜勤の2日目と3日目の総消費エネルギーが約3%低下した。[5]

慢性的な夜勤者7人の実験では、食欲に関わるホルモンが約17%増えたが、消費エネルギーの明確な変化はなかった。[14]

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