超加工食品中心の食事では、好きなだけ食べたときの摂取量がどう変わるのか。管理下の比較試験、日本人の試験、長期の観察研究を読み、体重が減った例や研究の限界も確かめる。食品を一律に避ける前に、栄養の組み合わせと食べやすさを見直し、忙しい日の食卓を整える手がかりを探る。
同じカロリーと栄養を用意したのに、食べた量は1日508 kcal違った。食事の比較試験で見られた数字である。[1] 栄養表示を見て選んだ食事でも、実際に食べる量まで決まるわけではない。「何を用意したか」と「どれだけ食べたか」の間に、食べやすさや食事の組み合わせを考える余地がある。
比較したのは、超加工食品を中心とした食事と、加工されていない食品を中心とした食事だった。参加者は研究施設に入院し、好きな量を食べるよう指示された。食事を用意する条件を整えたうえで摂取量に差が生じた点が、この研究の入口になる。[1]
ただし、「超加工食品を口にすれば必ず太る」とまで話を進めると、別の試験を説明できなくなる。栄養指針に沿って組み立てた食事では、超加工食品を含む条件でも体重が減った。[5] 食品への判決を急ぐより、何をそろえて比べ、何が違い、どこまで日常に持ち帰れるのかを読んでいこう。

同じ栄養を用意しても、食べた量は同じにならなかった
Hallらの無作為化比較試験は、体重が安定していた成人20人を対象とした。平均年齢は31.2歳、平均の体格指数は27である。体格指数は身長に対する体重を表す指標だ。参加者は研究施設に入院し、超加工食品中心の食事か未加工食品中心の食事を2週間食べ、続けてもう一方の食事を2週間食べた。同じ人が両方を経験する交差試験という方法である。[1]
ここでいう超加工食品は、研究で食品の加工度に基づく分類の対象となる食品群を指す。この分野で使われるNOVAという分類では加工の程度を区別するが、同じ分類の中にも食べる速さやエネルギーの入り方に幅がある。[9] 包装されているか、家で作ったかだけを判断基準にして読み進めないほうがよい。
試験でそろえたのは、提供する食事のカロリー、エネルギー密度、主要な栄養素、糖、ナトリウム、食物繊維であった。エネルギー密度とは、食品の量に対して含まれるエネルギーの濃さである。そのうえで参加者は、好きなだけ多くても少なくても食べるよう指示された。比較したのは固定量を完食した結果ではなく、用意された食事から自分で選んだ摂取量だった。[1]
超加工食品の条件では、摂取量が平均で1日508±106 kcal多かった。その内訳は炭水化物由来が280±54 kcal、脂質由来が230±53 kcal多く、たんぱく質由来の差は2±12 kcalで有意ではなかった。炭水化物と脂質からの摂取量が増え、たんぱく質からの摂取量には有意な差がなかったという内訳である。[1]
「出した量」と「食べた量」を分けると、この結果は理解しやすい。食べ残す量や追加して食べる量によって、実際の摂取量が決まる。この試験では、提示する食事の設計をそろえても、実際に口に入ったエネルギーに差が生じたのである。[1] 買い物の時点で計算を終えるのではなく、食後の食べ足しまで含めて食事を見る理由になる。
体重は超加工食品の期間に0.9±0.3 kg増え、未加工食品の期間に0.9±0.3 kg減った。体重変化と摂取量には強い相関が報告されている。[1] この増減をすべて体脂肪の変化と呼ぶことはできない。測定されたのは、それぞれの食事を2週間食べた期間の体重変化である。[1]
この設計は、普段の食生活を質問するだけの研究より、食事条件が摂取量に影響するかを直接確かめやすい。一方で、参加者は少人数で、生活の場は入院施設である。[1] 残業、家族の好み、買い物の予算、自炊の手間まで自由に選ぶ生活とは違う。試験の強みは比較を整えたことにあり、日常のすべてを再現したことにはない。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
日本人の試験でも差は出たが、対象は限られていた
Hamanoらは、日本人の過体重または肥満の男性を対象に、超加工食品とそれ以外の食品を比較した。無作為に食事の順番を決め、それぞれ1週間食べ、間には2週間の休止期間を設けた。参加者は9人で、全員が試験を完了した。提供する総エネルギーと主要な栄養素をそろえた、食事内容が参加者に分かる非盲検の交差試験である。[4]
超加工食品の期間と比較条件との体重変化の差は1.1 kgで、95%信頼区間は0.2〜2.0 kgだった。1日の摂取量の差は813.5 kcal、95%信頼区間は342.4〜1284.7 kcalで、超加工食品の条件のほうが多かった。[4] 信頼区間は、参加者のデータから推定した差の不確かさを表す範囲である。
先の入院試験と同じ方向の結果だが、対象者、食事、実施期間が違う点も比べる必要がある。[1][4] 日本人の試験であることは身近な材料になるものの、対象は過体重または肥満の男性に限られていた。また、糖尿病や高血圧などで定期的に受診していた人は除外されていた。[4]
この試験では、摂取カロリー当たりの咀嚼回数も測定され、超加工食品の期間のほうが少なかった。咀嚼とは食べ物を噛むことである。[4] 体重や摂取量の差と並んで、口の中で食品を処理する仕方にも違いが見られた。ただし、噛む回数の差だけが摂取量増加の原因だと、これだけで決めることはできない。
日常に置き換えるなら、食事の後で「何を食べたか」に加え、「どんな食感で、どのように食べ終えたか」を振り返る視点になる。噛み応えのある部分があったか、食べる途中で量を考える余地があったか。これは買った食品への評価を、食卓全体の観察へ広げるための問いである。試験では噛む回数の目標を指示するのではなく、食事条件を替えて摂取量と咀嚼回数を測定した。[4]
食べやすさは、加工度のラベルだけでは見えない
Fordeらの研究は、加工度と「エネルギー摂取速度」を比べた。これは、食べる速さとエネルギー密度を組み合わせ、口に入るエネルギーを時間当たりで見る指標である。速く食べられることと、少ない量にエネルギーが集まっていることは別の特徴だが、組み合わさると食事中のエネルギーの入り方を考えやすくなる。[9]
公表済みの5研究から327食品のデータを統合した結果、平均のエネルギー摂取速度は、未加工食品で35.5、加工食品で53.7、超加工食品で69.4 kcal/分だった。しかし、どの分類にも大きなばらつきがあった。[9] 分類とともに、それぞれの食品の食感やエネルギー密度を見ていく必要がある。
この研究は、食品の測定データを統合した分析であり、この平均値を毎日の食事に当てはめて体重変化を計算する試験ではない。[9] 読み取れるのは分類の傾向と、その内側の違いである。同じ分類に入る食品を同じ食べやすさだと扱うと、実際の食卓の差が見えなくなる。加工度は手がかりにはなるが、食感を見る目の代わりにはならない。
ここから先の「食べる速さそのものをどう変えるか」は、特集のよく噛んでゆっくり食べるダイエットの科学 食事量と体重は同じように変わるかに譲る。本記事で確かめたいのは、加工度だけを取り出して原因と呼べるかという点だ。食事を替えると、栄養の配分に加えて食感やエネルギーの入り方も同時に変わり得るため、加工度の分類と、食べる動作に関わる特徴を併せて見る視点が要る。[9]
買ってきた夕食を前に、この論点は役に立つ。主食、主菜、添え物を並べたとき、何がすぐ食べ終わり、何が口の中に残るかを眺めてみる。食品名の一覧を覚えるより、食事がどのような動作で進むかを観察するほうが、自分の食べ足しと結びつけて考えやすい。食事の食感に注目すると、同じ加工度の分類内にもある違いを、自分の食卓で探しやすくなる。
食感を替えて食べる速さを変えた比較試験もある。Fordeらの試験では41人が、超加工食品で構成された食事を14日間ずつ経験した。ゆっくり食べることにつながる食感の条件と、速く食べることにつながる食感の条件を比べ、好ましさ、提供量、提供エネルギー、飲料以外のエネルギー密度、食事の種類の豊富さをそろえた。平均年齢は27歳、平均の体格指数は23.4で、男性は21人だった。[15]
ゆっくり食べる食感の条件では、摂取量が1日369 kcal少なく、95%信頼区間は221〜517 kcalだった。摂取量への影響は食事を続けた日数によって有意に変わらず、食事の好ましさや主要な栄養素の摂取量では説明されなかった。一方で、体重は試験前後で変わらず、食事条件間の差もなかった。ゆっくり食べる食感の条件では体脂肪量が0.43 kg減った。[15] 食べる量の違いと体重の違いを同じ結果として扱わずに読む必要がある。
この試験で変えたのは、噛む回数を意識して増やす指示ではなく、提供する食品の食感であった。[15] 忙しい夕食でも、急がないよう自分に言い聞かせる以外に、食べる動作が変わる組み合わせを用意するという考え方がある。加工度の分類を替えずに食感を比べた点は、買ってきた食品を使う日の食卓にもつながる。
数字で読む超加工食品の比較
成人20人の入院交差試験:食事条件をそれぞれ2週間経験した。[1]
摂取量の差508±106 kcal/日:超加工食品の条件で多かった。[1]
体重変化は増加0.9 kgと減少0.9 kg:同じ試験の異なる食事期間である。[1]
日本人男性9人の試験:摂取量の差813.5 kcal/日、95%信頼区間342.4〜1284.7だった。[4]
327食品の分析:分類内にもエネルギー摂取速度の幅があった。[9]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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