連載「ピラティスの処方箋」全10回の第4回です。

第3回までは、週あたりの回数と1回あたりの時間・反復・セットを見てきました。用量のもうひとつの軸が強度です。現場では「ばねを増やす」「マットから器具へ移す」「きついと感じるところまで」といった言葉で強度が語られがちです。しかしばねの本数、自重、主観的なきつさは、同じものを測っているとは限りません。

結論を先に述べます。リフォーマーではばねを弱くしたほうが体幹の筋活動が上がることがあり、「ばね=負荷」と単純には読めない。代謝強度は軽度から中強度の下限にとどまり、主観的強度は抵抗運動の相対負荷を選ぶ手がかりにはなるが、ピラティスのばね設定そのものを較正した研究は乏しい。

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強度には、少なくとも三つの軸がある

強度を一つの数字にまとめようとすると、すぐに軸がずれます。第一は外的負荷です。リフォーマーのばね、バンドの色と伸び、自重に対するレバーの長さがここに入ります。第二は代謝強度です。酸素摂取量・メッツ・分あたりのエネルギー消費が代表です。第三は主観的強度です。Borg尺度やOMNI-RESのように、本人がどれだけきついと感じるかです。

この三つは相関しますが、一致しません。等尺性の保持が多い動作では心拍数が酸素摂取量より高めに振れやすく、姿勢制御の難しさは代謝と別に主観を押し上げます。「ばねを足したから強度が上がった」「きついから中強度だ」は、軸を明示しないと誤読を生みます。器具とマットの比較はリフォーマーとマットの記事、エネルギー消費はメッツの記事にもまとまっています。

ばねを弱くすると、体幹の筋活動が上がることがある

「ばねを増やす=きつくする」という直感は、現場ではよく使われます。しかし体幹の表面筋電図を指標にした実験では、逆向きの結果が出ています。健常成人女性18名(29.83±4.22歳)が、ヒップロール・ニーオフ・エレファントの3種目を、固定台・中程度のばね(赤1本)・弱いばね(白1本)の3条件で行いました。

Kim HJ, Sung JH, Ryu JK, Jung HC, Wang J. Effect of Reformer Spring Resistance Modifications on Core Muscle Activity During Basic Core Muscle Exercises. Healthcare. 2024;12(23):2447.

ヒップロールでは、腹直筋・脊柱起立筋・多裂筋・大腿二頭筋の平均活動が、弱いばね条件で中程度および固定より有意に高くなりました(p<0.001)。ニーオフでは腹直筋・内腹斜筋・脊柱起立筋・多裂筋が、弱いばねで固定より有意に上昇(p<0.001)。エレファントでも腹直筋・内腹斜筋・大腿直筋が同様でした(p<0.001)。

固定台と比較したときの増加率は小さくありません。ヒップロールでは腹直筋が28%(5.4%MVIC対6.9%MVIC)、脊柱起立筋と多裂筋がそれぞれ54%(6.9対10.6%MVIC、8.9対13.7%MVIC)。ニーオフでは腹直筋62%(11.2対18.1%MVIC)。エレファントでは腹直筋が228%(7.5対24.6%MVIC)、内腹斜筋が66%(16.2対26.9%MVIC)でした。著者らは、弱いばねで台が不安定になることが、体幹の活動を押し上げたと解釈しています。

ここで統計的有意と臨床的重要性を分けます。p<0.001は差が偶然ではなさそうだという話です。一方、活動水準は概ね最大随意収縮の30%を超えず、エレファントの内腹斜筋でも弱いばねで27%MVICでした。著者らが引用する目安では、筋力強化には60%MVIC超、基礎的な強化にはおおむね30%MVIC前後が語られます。有意に上がっても、「筋力トレーニングとして十分」かは別問題です。信頼区間は抄録に無く、効果量の標準化指標も示されていません。サンプルは女性18名の急性実験で、盲検もなく、追跡もありません。

メーカー公称のばね定数は、赤0.22 kg/cm、青0.11 kg/cm、白0.06 kg/cmです。外的負荷の目安にはなりますが、台の安定性が同時に動くため、「定数が大きいほど体幹刺激が大きい」とは言えません。抵抗と不安定性を分けて測った系統的研究は、現時点では乏しいと書くのが正直です。

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弾性抵抗は、伸びとともに力が変わる

ばねもゴムバンドも、伸び(変位)に応じて張力が変わる点が、フリーウェイトと違います。弾性バンドでは、その関係を数式化した報告があります。Therabandを200 cmに揃え、11段階の距離で力センサ(校正用おもり1.25 kg)により測定した研究では、負荷は次の形で近似されます。kg=(弾性定数±標準誤差)×伸びの百分率。

Fernandez-Gamez B, Pulido-Muñoz Á, Olvera-Rojas M, et al. Examining Elastic Band Properties for Exercise Prescription: AGUEDA Equations. Physiotherapy Research International. 2025;30(1):e70010.

決定係数は0.977から0.995、標準誤差は0.0007から0.069でした。色ごとのAGUEDA定数は、黄0.017、赤0.021、緑0.030、青0.035、黒0.042、銀0.060、金0.069(いずれも伸びの百分率に掛ける係数)です。メーカー参考値はこれより小さく、黄0.009、金0.061などと並びます。同じ色でも、伸びの割合が変わればキログラム換算は線形に動く、というのがこの式の要点です。

メーカー公称と実測のずれを、より早く示したのがUchidaらです。8色のバンドを伸び25%から250%まで25%刻みで測り、100%と200%の伸びで色間の張力に有意差がありました(tanとyellowの対を除く)。

Uchida MC, Nishida MM, Sampaio RA, Moritani T, Arai H. Thera-band(®) elastic band tension: reference values for physical activity. Journal of Physical Therapy Science. 2016;28(4):1266-1271.

100%伸びでの平均張力(kgf)は、tan 1.08、yellow 1.17、red 1.60、green 1.82、blue 2.51、black 3.28、silver 3.89、gold 5.66でした。メーカー参考値との平均差は、yellow 15%、red 13%、green 18%、blue 24%、black 23%、silver 36%、gold 44%で、著者らはメーカー値が過大評価だと結論しています。実験データの傾きは、平均で31%および36%低い側にありました。

リフォーマーのばねはバンドではありませんが、共通する教訓は二つです。第一に、外的負荷は「色」や「本数」だけでは決まりきらず、伸びの状態に依存する。第二に、カタログ値をそのまま用量として使うと、過大または過少になりうる。ばね定数を独自に較正した一次研究は、Kimらがメーカー確認値を載せた程度にとどまり、リフォーマー専用の力—長さ曲線を複数機種で比較したデータは研究が乏しい、と言わざるを得ません。

代謝強度は、どこまで上がるのか

外的負荷が変わっても、セッション全体の代謝強度がどこにあるかは別の問いです。Pilatesのメッツとエネルギーコストを統合した探索的メタ分析では、6本を対象に次の統合値が示されました。

Vitor GBB, de Oliveira LC, Pessôa RAG, Aguiar AF, de Oliveira RG. Metabolic intensity and energy cost of Pilates exercises: an exploratory systematic review and meta-analysis of limited and heterogeneous evidence. Systematic Reviews. 2026;15(1):42.

指標統合値(95%CI)感度分析後
メッツ3.7(3.1〜4.3)3.0(2.3〜3.6)
エネルギー消費(kcal/分)3.8(3.1〜4.5)2.9(2.3〜3.6)
酸素摂取量(ml/kg/分)10.3(8.1〜12.6)—
心拍数(拍/分)108.6(104.1〜113.0)—
主観的運動強度(Borg 6-20)10.6(9.3〜12.0)—

確実性はGRADEで非常に低いから低い。バイアスリスクが高い研究と間接熱量測定を使っていない研究を除くと、メッツは3.7から3.0へ下がります。著者らはこの保守的な推定を、現時点でもっとも信頼できる値として示しています。中強度の下限がおおむね3メッツとされることを踏まえると、統計的に統合された点推定が3前後にあっても、臨床的に「有酸素の代替になる中強度」と読むには幅が狭い、というのが妥当な読みです。種目間の休息が60秒以下だと代謝強度が高くなる傾向も報告されており、第3回で扱った「1回の量」と強度は連動します。

マットと器具を直接比べた測定もあります。健常女性18名(22±3歳)が、各15種目のセッションを行いました。

de Souza Andrade L, da Silva Almeida I, Mochizuki L, et al. What is the exercise intensity of Pilates? An analysis of the energy expenditure, blood lactate, and intensity of apparatus and mat Pilates sessions. Journal of Bodywork and Movement Therapies. 2021;26:36-42.

リフォーマーは2.59±0.53 kcal/分、マットは1.93±0.26 kcal/分。酸素摂取量は8.67±1.15対6.44±0.73 ml/kg/分でした。器具のほうが高い一方、血中乳酸・心拍数・血圧は安静時から有意に上がりませんでした。著者らの結論は、心血管系への負荷もエネルギー消費も低い、というものです。器具の有無は、代謝軸では差を作りますが、その差の先が中強度の入口を大きく超えるわけではない、と読むのが安全です。

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主観的強度は、抵抗の相対負荷を選べるか

フリーウェイトでは、主観的運動強度から相対負荷(1回最大挙上の何パーセントか)を選ぶ手続きが検討されています。女性20名(平均21.3歳、SD 2.2)が、チェストプレスと膝伸展の1RMを測ったあと、OMNI-RESの3・6・9に対応する負荷を自分で選びました。

Lagally KM, Amorose AJ, Rock B. Selection of resistance exercise intensity using ratings of perceived exertion from the OMNI-RES. Perceptual and Motor Skills. 2009;108(2):573-586.

選ばれた平均は、チェストプレスで最大の50%・69%・88%、膝伸展で56%・74%・90%でした。級内相関係数は0.69から0.95。セッション内の3段階の差は大きく、セッション間の差は小さい、と報告されています。主観で「ややきつい」付近を狙うと、おおむね筋力向上に使われる相対負荷帯に入る、というのがこの研究の読みです。

ただし、これはマシン抵抗での推定—産出課題です。リフォーマーのばね本数やバンドの色に、同じOMNI-RESを当てはめて較正した一次研究は、本稿の検索範囲では見つかりませんでした。Vitorらが統合したBorg 6-20の平均10.6(95%CI 9.3〜12.0)は、セッション全体のきつさが「やや楽」付近に寄ることを示しますが、個々の種目の相対負荷(その人の最大に対する割合)を表すものではありません。主観は用量調整の実務的な手がかりになりうる一方、ピラティス器具の外的負荷スケールとしては未較正、と区別して書く必要があります。

同じ種目でも、戦略が分かれる

外的負荷を揃えても、内部の筋戦略が同じとは限りません。Cantergiらは、リフォーマーのレッグエクステンションを各自が選んだ抵抗で行った15名の解析で、二つの概念的に異なる戦略を報告しています。一方は股関節と膝の伸展モーメントを同時に使う戦略、他方は股関節屈曲と膝伸展を同時に使う戦略です。違いは、足がバーに加える合力の向きにありました。力の向きを制御しなければ、意図と違う負荷分担になりうる、と述べています。

ばねを増やしても、バーへの力の向きが変われば働く筋は変わります。Kimらの「弱いばねで体幹活動が増える」現象も、外的負荷の増減ではなく不安定性と制御要求の変化として読めます。本数や色だけを強度の代理変数にすると、実際に何が強くなっているかを取りこぼす、というのが共通点です。

効果量・有害・限界——強度を上げれば心肺は上がるか

1回のセッションが軽度から中強度の下限でも、積み重ねれば心肺は変わるのでしょうか。Pessôaらのメタ分析は、健常成人の12本の無作為化比較試験(569名)を統合しました。対照群より優れるという結果で、標準化平均差は0.96(95%CI 0.39〜1.54)。方法論的質が高い3本に限っても1.14(95%CI 0.25〜2.04)でした。効果には総計1440分以上が必要で、マットか器具かは結果を変えず、他の運動との差はありませんでした。確実性は非常に低いから低い。信頼区間はゼロをまたぎませんが下限は0.25と広く、臨床的意味は尺度と個人の目標なしには決まりません。質の高い研究は3本で、出版バイアスの評価もこの規模では不安定です。

有害事象について、Andradeらの急性測定では血中乳酸も血圧も安静から有意に上がらず、心血管負荷は小さい側にあります。ただし有害を検出する設計ではありません。Kimらも急性・少人数、Lagallyらは若年女性のマシン課題です。強度操作(ばね・休息短縮・反復増)の安全性を発生率で比べた研究は、本稿の主題では乏しい。

限界をまとめます。

  • ばね負荷の較正研究が少ない。 定数のメーカー値はあっても、機種間・経年劣化・温度を含む系統的測定は不足しています。
  • 参加者が偏る。 Kim・Andrade・Lagallyは若年〜成人の女性が中心で、高齢者や有疾患者への一般化は慎重であるべきです。
  • 盲検と追跡が弱い。 急性の生理測定が多く、長期の適応やドロップアウトは強度の議論と切り離されています(継続は別回・別記事の領域です)。
  • 異質性が大きい。 Vitorら自身が探索的と呼び、確実性を低く評価しています。休息・反復・種目定義が揃わないと、強度の統合値は揺れます。
  • 効果が示されていない/小さい領域。 ばね本数を増やせば代謝強度が線形に上がる、主観がピラティス器具の相対負荷を正確に表す、器具があれば心肺刺激が他の運動を上回る——いずれも支持されていません。Pessôaらでは他運動との差がなく、Andradeらでは器具でも心血管応答は安静から有意に上がりませんでした。

現場で強度を決めるとき、何が残るか

変わらないこと。 ばねの選択と、台の安定性は別物として扱う必要がある、というKimらの示唆です。弱いばねが常に「易しい」わけではありません。弾性抵抗では伸びを見ないと負荷が決まらない、というUchida・Fernandez-Gamezの指摘も、バンドを併用するクラスでは実務的です。

変わること。 「器具にすれば強度が足りる」「きついから有酸素になる」という説明は、代謝の数字と一致しません。心肺を目的にするなら、歩行や自転車など持続的な運動を別に確保するほうが、現時点の統合では確実です。価格やクラスの人数といった運用の都合で強度ラベルを付けるのではなく、休息・反復・安定性・主観を分けて記録するほうが、再現性は上がります。

主観の使い方。 Lagallyらが示したのは、マシン抵抗ではOMNI-RESが相対負荷の選択に使える可能性がある、という点です。ピラティスでは、セッション全体のBorgが10前後に寄りやすいことと、種目ごとの相対負荷が未較正であることを同時に意識する必要があります。主観だけでばねを決める根拠は、まだ薄い。

次の回との接続。 強度をどう決めるかが分かっても、いつ上げるかは別問題です。難度の進行基準——何を見て負荷や種目を進めてきたか——を第5回で扱います。

次回予告

第5回は「進行——難度は何を基準に上げられてきたか」を扱います。反復の余裕、フォームの安定、痛みの変化、検査値のどれが進行の合図として使われてきたか、介入研究の記述を整理します。

この連載の全10回

  1. 第1回|「週2回・8週間」はどこから来たのか——介入研究の用量の分布
  2. 第2回|頻度——週1回と週3回で差は出るのか
  3. 第3回|1回の量——時間・反復・セット数の実際
  4. 第4回|強度をどう決めるか——ばね負荷・自重・主観的強度(この記事)
  5. 第5回|進行——難度は何を基準に上げられてきたか
  6. 第6回|期間と立ち上がり——何週で何が変わるか
  7. 第7回|やめたらどうなるか——効果の持続と再開
  8. 第8回|個別とグループ——監督の密度は用量の一部か
  9. 第9回|併用——有酸素運動・筋力トレーニングと組み合わせたとき
  10. 第10回|総括——自分の用量を決める手順

出典

  1. Kim HJ, Sung JH, Ryu JK, Jung HC, Wang J. Effect of Reformer Spring Resistance Modifications on Core Muscle Activity During Basic Core Muscle Exercises. Healthcare. 2024;12(23):2447.
  2. Vitor GBB, de Oliveira LC, Pessôa RAG, Aguiar AF, de Oliveira RG. Metabolic intensity and energy cost of Pilates exercises: an exploratory systematic review and meta-analysis of limited and heterogeneous evidence. Systematic Reviews. 2026;15(1):42.
  3. de Souza Andrade L, da Silva Almeida I, Mochizuki L, et al. What is the exercise intensity of Pilates? An analysis of the energy expenditure, blood lactate, and intensity of apparatus and mat Pilates sessions. Journal of Bodywork and Movement Therapies. 2021;26:36-42.
  4. Lagally KM, Amorose AJ, Rock B. Selection of resistance exercise intensity using ratings of perceived exertion from the OMNI-RES. Perceptual and Motor Skills. 2009;108(2):573-586.
  5. Fernandez-Gamez B, Pulido-Muñoz Á, Olvera-Rojas M, et al. Examining Elastic Band Properties for Exercise Prescription: AGUEDA Equations. Physiotherapy Research International. 2025;30(1):e70010.
  6. Uchida MC, Nishida MM, Sampaio RA, Moritani T, Arai H. Thera-band(®) elastic band tension: reference values for physical activity. Journal of Physical Therapy Science. 2016;28(4):1266-1271.
  7. Cantergi D, Loss JF, Jinha A, Brodt GA, Herzog W. Muscle strategies for leg extensions on a “Reformer” apparatus. Journal of Electromyography and Kinesiology. 2015;25(2):260-264.
  8. Pessôa RAG, de Oliveira LC, Vitor GBB, de Oliveira RG. Effects of Pilates exercises on cardiorespiratory fitness: A systematic review and meta-analysis. Complementary Therapies in Clinical Practice. 2023;52:101772.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。運動中に胸の痛み、強い息切れ、めまい、動悸が出る場合は中止してください。心臓や肺の病気で治療を受けている方、高血圧や整形外科的な制限がある方は、運動を始める前に主治医にご相談ください。ばねやバンドの負荷は個人差が大きく、痛みやフォームの崩れがあるときは強度を下げてください。

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