連載「体型は変えられるか」全10回の第1回です。

この連載は、運動で体型がどこまで動き、どこから先は動かないのかを、公表された研究だけを材料に10回かけて確かめるものです。特定の体型を目標として掲げることはしません。骨・脂肪・筋肉のそれぞれについて、実際に測った人がいて数字が残っている範囲を示し、その数字がどれほどの幅を持つのかまで書きます。読み終えたあとに残ってほしいのは、時間と労力をどこへ向けるかの見当であって、自分の身体への不満ではありません。

体型という言葉は、ひとつのものを指しているように聞こえます。しかし実際には、性質のまったく違う三つの要素が重なった結果です。骨の長さと幅、脂肪の量とその置かれ方、筋肉の量とその付き方——この三つは、動かしやすさがそれぞれ違います。同じ「体型を変えたい」という言葉の下で、一方はほぼ動かず、他方はよく動く。この違いを混ぜたまま話すと、努力の行き先がずれます。

結論から書きます。成人の骨格はほぼ動きません。脂肪は総量を減らせますが、どこから減るかの順序は選べません。筋肉は増やせますが、部位ごとの配分には限りがあります。この三段構えが、連載全体を通じて使う物差しになります。

以下では、三つの要素それぞれについて、どれくらいが生まれつきで決まり、どれくらいが環境や練習で動くのかを順に見ます。最後に、体格指数(BMI)という広く使われる数字が、なぜ体型の説明にならないのかを確認します。

体型は変えられるか 第1回 体型を決めるもの骨格脂肪分布筋量|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

体型は三つの層でできている

身体の輪郭を外から見たとき、いちばん内側にあるのが骨です。肩の幅、骨盤の幅、腕と脚の長さ、胴と脚の比——これらは骨の寸法そのもので決まります。その上に筋肉が乗り、さらにその上に皮下脂肪が乗ります。内臓のまわりに付く脂肪は、腹部の張り出しとして外形に影響します。

三つの層は、動かせる幅がまるで違います。骨の寸法は成長が終われば固定されます。筋肉は訓練で断面積が増え、使わなければ減ります。脂肪はエネルギーの出入りで増減し、三つのなかで最も大きく動きます。したがって「体型が変わった」という経験の大半は、脂肪の量が変わったか、筋肉の量が変わったかのどちらかです。

ただし、変わった結果がどの形に落ち着くかは、その人の骨の寸法と脂肪の付き方の癖に制約されます。同じ量の脂肪が減っても、腹から先に減る人と、顔や胸から先に減る人がいます。ここが、体型の話をややこしくしている核心です。

骨格——変えられない土台

骨の寸法がどれくらい遺伝で決まるかは、双生児研究と全ゲノム関連解析(GWAS、多数の人のゲノムを一度に調べて形質と結びつく領域を探す手法)の両方から調べられています。近年の大規模な研究は、全身のX線画像を機械学習で読ませ、長骨の長さや肩幅・腰幅を一括して取り出すという方法をとりました。

Kun E, Javan EM, Smith O, et al. The genetic architecture and evolution of the human skeletal form. Science. 2023;381(6655):eadf8009.

この研究は31,221枚の全身画像から骨格の比率を抽出し、145の独立した遺伝領域と関連づけました。さらに、四肢の比率どうしは強く遺伝を共有する一方で、幅や胴の比率とは遺伝的に独立していることを示しています。腕と脚の長さを決める仕組みと、肩幅や腰幅を決める仕組みは、別々に働いているということです。

胴と脚の比率についても、大規模な解析があります。

Bartell E, Lin K, Tsuo K, et al. Genetics of skeletal proportions across two different populations. American Journal of Human Genetics. 2026;113(4):794-808.

座高と身長の比を指標に、欧州系と東アジア系の合計で50万人を超える規模を解析し、565の独立した遺伝領域が見つかりました。身長そのものに関連する領域と重なる部分はあるものの、細かく見ると別の信号であることが多いと報告されています。身長が同じでも脚の長さが違うのは、身長とは別の仕組みが働いているからです。

身長の遺伝率そのものは、古くから繰り返し測られてきました。

Silventoinen K, Sammalisto S, Perola M, et al. Heritability of adult body height: a comparative study of twin cohorts in eight countries. Twin Research. 2003;6(5):399-408.

8か国の30,111組の双生児を統合したこの研究では、男性の身長の遺伝率は0.87から0.93、女性では0.68から0.84と推定されました。国ごとに平均身長は大きく違うのに、遺伝率の推定値はほとんど変わりません。栄養や生活水準が十分に満たされた集団では、身長の個人差の大部分は生まれつきの差で説明されるということです。

身長以外の寸法も同様です。シルベントイネン(Silventoinen)らは、双生児の子ども214組について、身長・体重に加えて皮下脂肪厚・周径・骨の径を含む22項目を実測しました。因子分析をかけると、肥満に関わる指標群と、身長・骨の径からなる指標群の二つに整理され、この二因子で男児の変動の80%、女児の73%が説明されました。そして個々の項目の遺伝率は、大半が80%以上と推定されています。骨の径は、身長と強く遺伝を共有しながら、脂肪の指標とは別の束をつくっているということです。

ここから言えることは単純です。肩幅が狭い、骨盤が広い、脚が短い——これらは成人後の運動では変わりません。変わらないことは欠陥ではなく、単に事実です。運動の効果をこの層に期待すると、何をどれだけやっても手応えが出ません。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

脂肪——量は動くが、分布は選べない

脂肪は三つの層のなかで最も動きます。同時に、どこに付くかという配置には強い個人差があり、その差にも遺伝が関わります。

Schousboe K, Visscher PM, Erbas B, et al. Twin study of genetic and environmental influences on adult body size, shape, and composition. International Journal of Obesity. 2004;28(1):39-48.

成人双生児を対象にしたこの研究では、体脂肪率の遺伝率が女性0.59・男性0.63、ウエスト周径が0.48・0.61、ヒップ周径が0.52・0.58と推定されました。身長の0.81・0.69には及びませんが、いずれも小さな値ではありません。体型の輪郭に関わる周径は、体重そのものと同じくらい生まれつきの影響を受けているということです。

ただし遺伝率が高いことと、変えられないことは同じではありません。遺伝率は「ある集団のなかでの個人差のうち、遺伝で説明できる割合」であって、「その人の値を動かせない度合い」ではありません。身長の遺伝率が0.9近くあっても、国が変われば平均身長は数センチ違います。脂肪についても同じで、総量は生活で大きく動きます。動かないのは、減ったときにどこから減るかという順序のほうです。脂肪がどこに付くかを決める仕組みは第3回で詳しく扱います。

筋量——増やせるが、配分は限られる

筋肉は、意図的に増やせる唯一の層です。どの程度増えるのかは、多数の試験を統合した推定があります。

Wewege MA, Desai I, Honey C, et al. The Effect of Resistance Training in Healthy Adults on Body Fat Percentage, Fat Mass and Visceral Fat: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2022;52(2):287-300.

健康な成人を対象に、筋力トレーニングと無運動対照を比べた無作為化試験を統合したところ、体脂肪率は-1.46%(95%信頼区間 -1.78〜-1.14)、体脂肪量は-0.55 kg(-0.75〜-0.34)、内臓脂肪は標準化平均差で-0.49(-0.87〜-0.11)でした。統計的には有意ですが、いずれも小さな変化です。筋力トレーニング単独で脂肪が大きく減るわけではありません。

体重の多い人を対象にした、より大きな統合もあります。

Lopez P, Taaffe DR, Galvão DA, et al. Resistance training effectiveness on body composition and body weight outcomes in individuals with overweight and obesity: A systematic review and meta-analysis. Obesity Reviews. 2022;23(5):e13428.

114件の試験・4184名を統合したこの解析では、筋力トレーニングを食事制限と組み合わせた群で体脂肪率が-3.8%(-4.7〜-2.9)、体脂肪量が-5.3 kg(-7.2〜-3.5)でした。筋力トレーニング単独では-1.6%・-1.0 kgにとどまります。一方、除脂肪量の増加は筋力トレーニング単独が最も大きく、+0.8 kg(0.6〜1.0)でした。脂肪を減らす力は食事制限のほうが大きく、筋肉を保つ・増やす力は筋力トレーニングのほうが大きいという、役割の分かれ方がはっきり出ています。運動様式ごとの違いは別の記事にもまとめてあります。

増えた筋肉がどこに付くかは、種目の選び方である程度は動かせます。ただし動かせる幅は限られており、筋肉そのものの形——筋腹の長さや腱の付き方——は訓練では変わりません。この点は第5回で扱います。筋力の遺伝率も測られており、100万人規模のスウェーデン男性を解析した研究では、身長の81%に対して筋力の指標は50〜60%と推定されています。

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体格指数は体型を表さない

体型の話でしばしば持ち出されるのが体格指数です。体重を身長の二乗で割ったこの数字は、集団を大づかみに見るには便利ですが、個人の身体の中身については何も語りません。脂肪と筋肉を区別しないからです。

Gómez-Ambrosi J, Silva C, Galofré JC, et al. Body mass index classification misses subjects with increased cardiometabolic risk factors related to elevated adiposity. International Journal of Obesity. 2012;36(2):286-294.

6123名を対象に、体格指数による分類と、直接測った体脂肪率による分類を突き合わせた研究があります。体格指数では「やせ」に分類された人の29%、「過体重」に分類された人の80%が、体脂肪率で見ると肥満の範囲に入っていました。同じ体格指数の値を持つ二人が、まるで違う身体の中身を持ちうるということです。

層成人後に動くか付く場所を選べるか
骨(長さ・幅・比率)動かない—
脂肪(総量)大きく動く選べない
筋肉(断面積)動く限られた範囲で

体格指数の代わりに体脂肪率で区分を引き直そうという提案も出ています。ただし本連載では、個人が目指すべき体脂肪率の数値には踏み込みません。集団の健康リスクを見積もるための区切りと、一人の人が日々追いかけるべき目標は、別のものだからです。数字を目標に据えた瞬間、身体は評価の対象になります。この連載が扱うのは、身体が何でできていて何がどう動くのかであって、その値がいくつであるべきかではありません。

測定そのものにも幅がある

ここまでの数字を読むうえで、測り方の限界を先に押さえておく必要があります。周径をメジャーで測る方法は簡便ですが、巻く高さ・張力・呼気か吸気か・測る人が誰かで結果が動きます。数センチ単位の変化を論じるには粗い道具です。

二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)や生体電気インピーダンス法(BIA)は、脂肪と除脂肪を分けて推定できますが、こちらにも誤差があります。特にインピーダンス法は体内の水分量に左右され、飲食・運動・時刻で値が動きます。写真による見た目の評価は、照明・角度・姿勢で印象が大きく変わり、条件を揃えない比較は成立しません。測定法の詳細は第7回でまとめて扱います。

これは細かい注意ではありません。統計的に有意な差と、鏡の前で本人が気づく差は別のものです。数百人を統合して初めて見える平均1 kg前後の差は、個人の見た目としてはまず分かりません。連載を通じて、この区別を毎回つけていきます。

もうひとつ、研究の読み方として押さえておきたいのが対照群です。運動の試験では、比較の相手が「何もしない群」なのか「別の運動をする群」なのかで、見える効果の大きさが変わります。何もしない群との比較は、運動そのものの効果に加えて、測定されているという意識や生活習慣の付随的な変化も一緒に拾います。以降の回で効果量を示すときは、比較の相手が何だったかも併せて書きます。

この物差しで何が言えるか

三層の物差しを手にすると、よくある問いの多くは、答える前に振り分けられます。「肩幅を狭くしたい」は骨の層の話なので、運動では動きません。「腹まわりを細くしたい」は脂肪の層の話で、総量が減れば細くなりますが、腹から先に減るとは限りません。「特定の部位だけ引き締めたい」は、脂肪の層と筋肉の層が混ざった問いで、第2回と第5回でそれぞれ検証します。

この振り分けには、実務的な利点があります。動かない層に努力を向けている限り、どれだけ続けても手応えは出ません。手応えが出ないことを自分の努力不足と読み替えてしまうと、続ける理由そのものが失われます。何が動いて何が動かないかを先に知っておくことは、続けるための条件です。

同時に、動く層についても期待の水準を合わせておく必要があります。ここまで見た統合結果の効果量は、どれも小さいか中程度でした。数週間で別人になるという話は、研究のどこにも書かれていません。時間の見積もりについては第8回で実測値を並べます。

次回予告

第2回は「部分痩せは起きるのか」を扱います。片腕だけ、片脚だけを訓練した実験がいくつも行われており、統合した結果も出ています。局所の脂肪分解が実際に起きることを示した生理学の測定と、それでも局所の脂肪が減らないという訓練試験の結果を、どちらも落とさずに並べます。

この連載の全10回

  1. 第1回|体型を決めるもの——骨格・脂肪分布・筋量(この記事)
  2. 第2回|部分痩せは起きるのか
  3. 第3回|脂肪はどこに付くか——遺伝・性差・ホルモン
  4. 第4回|腹筋運動で腹囲は減るか
  5. 第5回|筋肥大の部位特異性——狙った場所は育つか
  6. 第6回|姿勢とシルエット——骨盤前傾・胸椎後弯の実像
  7. 第7回|体組成の測り方——体脂肪率という数字の誤差
  8. 第8回|見た目が変わるまでの期間——実測値
  9. 第9回|様式の比較——筋トレ・ピラティス・ヨガで体型は違うか
  10. 第10回|総括——変えられないものとの付き合い方

出典

  1. Kun E, Javan EM, Smith O, et al. The genetic architecture and evolution of the human skeletal form. Science. 2023;381(6655):eadf8009.
  2. Bartell E, Lin K, Tsuo K, et al. Genetics of skeletal proportions across two different populations. American Journal of Human Genetics. 2026;113(4):794-808.
  3. Silventoinen K, Sammalisto S, Perola M, et al. Heritability of adult body height: a comparative study of twin cohorts in eight countries. Twin Research. 2003;6(5):399-408.
  4. Silventoinen K, Maia J, Li W, et al. Genetic regulation of body size and morphology in children: a twin study of 22 anthropometric traits. International Journal of Obesity. 2023;47(3):181-189.
  5. Schousboe K, Visscher PM, Erbas B, et al. Twin study of genetic and environmental influences on adult body size, shape, and composition. International Journal of Obesity. 2004;28(1):39-48.
  6. Silventoinen K, Magnusson PK, Tynelius P, Kaprio J, Rasmussen F. Heritability of body size and muscle strength in young adulthood: a study of one million Swedish men. Genetic Epidemiology. 2008;32(4):341-349.
  7. Wewege MA, Desai I, Honey C, et al. The Effect of Resistance Training in Healthy Adults on Body Fat Percentage, Fat Mass and Visceral Fat: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2022;52(2):287-300.
  8. Lopez P, Taaffe DR, Galvão DA, et al. Resistance training effectiveness on body composition and body weight outcomes in individuals with overweight and obesity: A systematic review and meta-analysis. Obesity Reviews. 2022;23(5):e13428.
  9. Gómez-Ambrosi J, Silva C, Galofré JC, et al. Body mass index classification misses subjects with increased cardiometabolic risk factors related to elevated adiposity. International Journal of Obesity. 2012;36(2):286-294.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。体重や体型が気になって食事・運動・人づきあいに支障が出ている場合、意図しない体重の減少や増加が続く場合は、自己判断で食事量を減らす前に医療機関にご相談ください。妊娠中の方、糖尿病・甲状腺疾患・摂食障害の治療を受けている方は、新しい運動や食事の変更を始める前に主治医に確認してください。

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