連載「痛みをほどく」全10回の第6回です。
慢性の腰痛と首の痛みに対して、運動が勧められることは多くの診療ガイドラインで一致しています。ここまでの5回で見てきたとおり、画像所見も姿勢の形も痛みをうまく説明しませんでした。その一方で、身体を動かすことは転帰を改善する側に立っています。
では、どの運動がいちばん良いのか。この問いに答えようとした研究は膨大にあり、順位表もいくつも作られています。結論を先に書きます。運動は最小限の治療より良い。しかし効果量は小さめから中程度にとどまり、様式どうしを比べると差はほとんど残りません。順位表は研究ごとに入れ替わり、信頼区間は大きく重なります。
この回では、統合結果が示す効果の大きさ、順位づけの不確かさ、首の痛みでの比較、そして対照群の設計が効果量をどう変えるかを順に見ていきます。最後に、研究がくり返し示唆している別の変数——続けられるかどうか——に触れます。

まず効果の大きさ
最も規模の大きい統合は、コクランの更新にあわせて行われたネットワークメタアナリシスです。
Hayden JA, Ellis J, Ogilvie R, et al. Some types of exercise are more effective than others in people with chronic low back pain: a network meta-analysis. Journal of Physiotherapy. 2021;67(4):252-262.
12週以上続く非特異的腰痛の成人を対象とした無作為化比較試験217本、参加者20,969名、治療群507を統合した研究です。痛みの強さと腰に関連した機能制限を、それぞれ0から100の尺度に標準化しています。
大半の運動の型は、最小限の治療より痛みと機能制限の両方で有効でした。ピラティス、マッケンジー法、機能回復訓練(痛みのみ)、柔軟性の運動(機能のみ)については、最小限の治療・他の有効な治療・他の運動の型と比べて、中程度から臨床的に重要な水準の効果と両立する結果でした。最小限の治療と比べたときの平均差は、痛みで -15 から -19、機能制限で -10 から -12 の範囲です。0から100の尺度での話なので、100点満点のうち15点から19点、という大きさになります。
この大きさをどう受け取るかは、読み手によって分かれます。著者ら自身の表現は「中程度から臨床的に重要な治療効果と両立する」であって、「臨床的に重要である」と断定してはいません。「効かない」でも「よく効く」でもなく、その境界のあたりというのが正確な受け取り方です。第5回で見たとおり、急性の腰痛は介入がなくても最初の数週で大きく下がります。介入群の改善のうち、どれだけが介入によるものかを切り分けるには、比較の相手が何かが決定的になります。
ここで著者らが結論に添えている一文が、この回全体の伏線になります——慢性腰痛のある人は、継続を促すために自分が楽しめる運動を行うよう勧められるべきである。
順位表は研究ごとに入れ替わる
同じ問いに、別の研究班が別の答えを出しています。
Fernández-Rodríguez R, Álvarez-Bueno C, Cavero-Redondo I, et al. Best Exercise Options for Reducing Pain and Disability in Adults With Chronic Low Back Pain: Pilates, Strength, Core-Based, and Mind-Body. A Network Meta-analysis. The Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy. 2022;52(8):505-521.
118本の試験、9710名を統合した研究です。対照と比べると、ストレッチ(痛みの軽減)とマッケンジー法(障害度の軽減)を除き、すべての型の身体運動が有効でした。累積順位曲線下面積(SUCRA)で見ると、ピラティスが痛みの軽減で93%、障害度の軽減で98%と最も高い順位になっています。
ところが、20の運動介入を比較した別のネットワークメタアナリシスでは、順位が違います。
Li Y, Yan L, Hou L, et al. Exercise intervention for patients with chronic low back pain: a systematic review and network meta-analysis. Frontiers in Public Health. 2023;11:1155225.
75本の無作為化比較試験、5254名の統合です。従来のリハビリテーションと比べて痛みの改善が良かったのは、太極拳(標準化平均差 -2.11、95%信頼区間 -3.62から-0.61)、ヨガ(-1.76、-2.72から-0.81)、ピラティス(-1.52、-2.68から-0.36)、スリング運動(-1.19、-2.07から-0.30)でした。ここでは太極拳が先頭に来ています。著者ら自身、組み入れた研究の質と量の限界から、確定的な推奨を出すのは難しいと書いています。
信頼区間の幅に注目してください。太極拳の -2.11 は -3.62 から -0.61 まで広がり、ピラティスの -1.52 は -2.68 から -0.36 まで広がっています。これだけ重なっていれば、順位が入れ替わるのは当然です。SUCRA のような順位の指標は、この重なりを一つの数字に押し込んでしまうため、実際より決着がついたように見せる性質があります。

量を問うと別の景色が出る
種類ではなく量に注目した統合もあります。
Liang Z, Tian S, Wang C, et al. The Best Exercise Modality and Dose for Reducing Pain in Adults With Low Back Pain: A Systematic Review With Model-Based Bayesian Network Meta-analysis. The Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy. 2024;54(5):315-327.
82本の試験、5033名を対象に、運動の総量と痛みの関係を推定した研究です。総量と痛みの間には非線形の関係があり、最大の有意な反応は920 MET分の時点で観察されました(標準化平均差 -1.74、95%確信区間 -2.43から-1.04)。臨床的に意味のある改善に達する最小量は週520 MET分と推定されています。用量反応の軌跡はU字型で、証拠の確実性はすべての転帰でごく低いから中程度でした。やればやるほど良い、という直線ではありません。
首の痛みでは「どれも同じ」
首では、結論がさらに明快です。
de Zoete RM, Armfield NR, McAuley JH, Chen K, Sterling M. Comparative effectiveness of physical exercise interventions for chronic non-specific neck pain: a systematic review with network meta-analysis of 40 randomised controlled trials. British Journal of Sports Medicine. 2020.
40本が組み入れられ、痛みの強さで38本・3151名、障害度で29本・2336名のネットワークが作られました。無治療と比べて有効だったのは3つです。運動制御(Hedges’ g で痛み -1.32、95%信頼区間 -1.99から-0.65、障害度 -0.87、-1.45から-0.29)、ヨガ・ピラティス・太極拳・気功(痛み -1.25、-1.85から-0.65、障害度 -1.16、-1.75から-0.57)、筋力強化(痛み -1.21、-1.63から-0.78、障害度 -0.75、-1.28から-0.22)。
一方、可動域の運動(痛み -0.98、-2.51から0.56)、バランス(-0.38、-2.10から1.33)、3種類以上を組み合わせた多様式(-0.08、-1.70から1.53)は、不確かか無視できる効果でした。GRADE による証拠の質は、いずれもごく低い。著者らの結論はそのまま引用に値します——慢性非特異的頸部痛の人にとって、優れた身体運動の型は一つではない。運動制御・心身系の運動・筋力強化は同程度に有効だ、という言い方をしています。
首の痛みに関するレビューでも、最も強い治療効果は運動に伴うものだとされます(Sterling M ら, Journal of Clinical Medicine, 2019)。頸部と上部四肢の筋力強化は短期的に中程度の効果を持ち、他の運動の方法では効果が小さく証拠の質も低い。教育・助言や心理的治療の効果は、ごく小さいから小さい程度でした。ただし証拠の質はよくても中程度であり、今後の研究で結論が変わる可能性が高いと明記されています。

水中と陸上
水中運動は陸上より優れているのか。9つのノードからなるネットワークで比較した研究があります(Wu H ら, Frontiers in Medicine, 2026)。26本の無作為化比較試験を対象に、無介入と比べた痛みの軽減を見ると、水中運動(標準化平均差 1.58、95%信頼区間 0.83-2.32)、陸上運動(1.45、0.56-2.34)、鉱泉浴(1.27、0.19-2.35)がいずれも有意でした。順位では鉱泉浴と一般的ケアの併用が首位ですが、水中運動と陸上運動の区間はほぼ完全に重なっています。なお、陸上運動と一般的ケアの併用(1.55、-0.18から3.27)は有意になりませんでした。組み合わせのほうが単独より上位に来る一方で、有意性は保証されないという、順位表の読みにくさがここにも出ています。
心身系の運動だけを比べた統合もあります(Tian Q ら, Complementary Therapies in Medicine, 2026)。32本、2480名の解析で、通常のケアと比べた痛みの軽減はピラティスが最大(標準化平均差 -1.56、95%信頼区間 -2.10から-1.02、中程度の確実性)で、太極拳と気功が続きました。一方、ヨガは追跡時点で対照と有意差がありませんでした。
対照群が何かで効果量は変わる
ここまでの数字は、ほとんどが「無介入」「通常のケア」「最小限の治療」との比較です。この比較は効果を大きく見せます。では、見せかけの治療と比べたらどうなるか。
Costa LO, Maher CG, Latimer J, et al. Motor control exercise for chronic low back pain: a randomized placebo-controlled trial. Physical Therapy. 2009;89(12):1275-1286.
慢性腰痛が12週を超えて続く154名を、運動制御の運動12回か、偽の治療(出力を切った超音波と短波)に無作為に割り付けた試験です。2か月時点で、運動群は活動と本人の全体的な回復の印象を改善しましたが、痛みははっきりとは減りませんでした。効果の平均は、活動(患者特異的機能尺度)で1.1点(95%信頼区間 0.3から1.8)、回復の全体的印象で1.5点(0.4から2.5)、痛みで0.9点(-0.01から1.8)——いずれも11段階の尺度です。痛みの区間は0をまたいでいます。
この試験の限界も明記されています。治療を提供する臨床家を盲検化することはできませんでした。運動の試験ではこれが原則的な制約で、第10回であらためて扱います。
| 比較の相手 | 効果量の見え方 |
|---|---|
| 無介入・待機 | 最も大きく出る。自然経過と注目の効果が混ざる |
| 通常のケア | やや小さくなる |
| 他の運動の型 | 差はほとんど残らない |
| 見せかけの治療 | 痛みでは有意差が消えることがある |
効いているのは「様式」ではないかもしれない
ここまでを並べると、一つの読み方が浮かびます。様式の違いで説明できる部分は小さく、共通している部分——身体を動かすこと、続けること、自分で管理できるという感覚——のほうが大きいのではないか。Hayden らが結論に置いた「自分が楽しめる運動を」という一文も、Fernández-Rodríguez らが挙げた「週1回から2回」「1回60分未満」といった条件も、いずれも継続に関わる変数です。
ただし、これは仮説であって、検証された結論ではありません。継続率そのものを主要転帰に据え、様式と継続を分離して比べた大規模な試験は、まだほとんどありません。現時点で言えるのは、「どれが最も良いか」を決めようとした研究の結果が一致していないこと、そして一致していない理由の多くが、推定の精度の低さで説明できることです。
もう一つ、この回の数字を読むときに外せない点があります。ここまでの効果量は、ほぼすべてが集団の平均です。同じ介入を受けても、大きく改善する人と変わらない人が混ざっています。第5回で見た経過の型の話と同じ構造で、平均の改善量からは、自分がどちらに入るかは分かりません。どの人にどの運動が向くかを見分ける因子の研究は進んでいますが、臨床で使える水準の答えはまだ出ていません。
個別の様式と転帰については、腰痛のネットワークメタアナリシスをまとめた記事と首の痛みとヨガの研究をまとめた記事が別にあります。
次回予告
第7回は「なぜ慢性化するのか——中枢性感作と心理社会的因子」を扱います。痛みが長引く人と長引かない人を分けているものは何か。中枢性感作という概念と、それを測る検査の信頼性、そして破局的思考・うつ・回復の見通しといった心理社会的因子の予測力を見ていきます。「気のせい」という結論には行きません。
この連載の全10回
- 第1回|痛みとは何か——組織の損傷と痛みの乖離
- 第2回|画像所見と症状——MRIで見つかるものの意味
- 第3回|肩こりの正体——僧帽筋の持続的低強度活動
- 第4回|「悪い姿勢」は原因か——姿勢と痛みの関連
- 第5回|腰痛の自然経過——多くはどうなるのか
- 第6回|運動療法——様式による差はあるか(この記事)
- 第7回|なぜ慢性化するのか——中枢性感作と心理社会的因子
- 第8回|職場での介入——何が効いたか
- 第9回|安静と恐怖回避——やらない方がよいこと
- 第10回|総括——研究の限界と、受診すべき兆候
出典
- Hayden JA, Ellis J, Ogilvie R, Stewart SA, Bagg MK, Stanojevic S, et al. Some types of exercise are more effective than others in people with chronic low back pain: a network meta-analysis. Journal of Physiotherapy. 2021;67(4):252-262.
- Fernández-Rodríguez R, Álvarez-Bueno C, Cavero-Redondo I, Torres-Costoso A, Pozuelo-Carrascosa DP, Reina-Gutiérrez S, et al. Best Exercise Options for Reducing Pain and Disability in Adults With Chronic Low Back Pain: Pilates, Strength, Core-Based, and Mind-Body. A Network Meta-analysis. The Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy. 2022;52(8):505-521.
- Li Y, Yan L, Hou L, Zhang X, Zhao H, Yan C, et al. Exercise intervention for patients with chronic low back pain: a systematic review and network meta-analysis. Frontiers in Public Health. 2023;11:1155225.
- Liang Z, Tian S, Wang C, Zhang M, Guo H, Yu Y, Wang X. The Best Exercise Modality and Dose for Reducing Pain in Adults With Low Back Pain: A Systematic Review With Model-Based Bayesian Network Meta-analysis. The Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy. 2024;54(5):315-327.
- de Zoete RM, Armfield NR, McAuley JH, Chen K, Sterling M. Comparative effectiveness of physical exercise interventions for chronic non-specific neck pain: a systematic review with network meta-analysis of 40 randomised controlled trials. British Journal of Sports Medicine. 2020.
- Sterling M, de Zoete RMJ, Coppieters I, Farrell SF. Best Evidence Rehabilitation for Chronic Pain Part 4: Neck Pain. Journal of Clinical Medicine. 2019;8(8):E1219.
- Wu H, Diao P, Del Coso J, Liu X, Min Y, Ran R, et al. In water or on land? A network meta-analysis of aquatic and land-based exercise interventions for pain and disability in chronic lower back pain. Frontiers in Medicine. 2026;13:1739263.
- Tian Q, Li D, Xiong H, Zhu T, Li X, Huang W. Comparative efficacy of different mind-body exercise modalities in low back pain: Systematic review and network meta-analysis. Complementary Therapies in Medicine. 2026;96:103309.
- Costa LO, Maher CG, Latimer J, Hodges PW, Herbert RD, Refshauge KM, et al. Motor control exercise for chronic low back pain: a randomized placebo-controlled trial. Physical Therapy. 2009;89(12):1275-1286.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。特定の運動・施術・器具を勧めるものでもなく、個々の症状に適した運動を判断するものでもありません。脚や腕のしびれ、力が入らない感じ、排尿や排便の異常、原因の分からない体重減少、発熱、夜間や安静時に強くなる痛み、外傷のあとの痛み、がんの既往がある場合の新たな痛みは、速やかに医療機関にご相談ください。運動中に痛みが強くなる場合や、痛みが続いて日常生活に支障が出ている場合も、自己判断で続けず医療機関にご相談ください。






