連載「痛みをほどく」全10回の第4回です。
「姿勢が悪いから痛い」。肩こりと腰痛について、これほど広く共有されている説明はほかにありません。前に出た頭、丸まった背中、傾いた骨盤。写真を並べて「正しい姿勢」と「悪い姿勢」を示す図は、医療の現場にも職場の掲示にも、そして運動の指導の場にもあります。
この説明は、どこまで研究に支えられているのでしょうか。結論を先に書きます。姿勢の形と痛みの間には関連が報告されていますが、関連は弱く、研究によって消えます。そして、姿勢を変えれば痛みが減るという因果は、まだ示されていません。一方で、同じ姿勢を続ける時間のほうは、その場の痛みの増加と結びついています。
この回では、前方頭位と首の痛み、姿勢や力学的負荷と腰痛、座位時間と腰痛、そして姿勢を直す介入の結果を順に見ていきます。最後に、「正しい姿勢」という指導の言葉そのものを検討します。

前方頭位と首の痛み——統合すると何が残るか
頭が前に出た姿勢(前方頭位)は、耳の穴と第7頸椎の棘突起を結ぶ線と水平線のなす角(頭椎角)で測るのが一般的です。この角が小さいほど頭が前に出ています。関連を調べた研究を集めたメタアナリシスがあります。
Mahmoud NF, Hassan KA, Abdelmajeed SF, Moustafa IM, Silva AG. The Relationship Between Forward Head Posture and Neck Pain: a Systematic Review and Meta-Analysis. Current Reviews in Musculoskeletal Medicine. 2019;12(4):562-577.
条件を満たしたのは15本の横断研究です。うち10本が、無症状群と首の痛みのある群で前方頭位を比較しており、統合した平均差は4.84(95%信頼区間 0.14から9.54)でした。群間差は有意ですが、信頼区間の下端は0.14で、ほとんどゼロに接しています。そして青年を対象にした研究では、平均差は -1.05(-4.23から2.12)で、差はありませんでした。
8本の研究では、前方頭位と首の痛みの強さに有意な負の相関(r = -0.55、95%信頼区間 -0.69から-0.36)、障害度にも負の相関(r = -0.42、-0.54から-0.28)が見られました。頭椎角は小さいほど頭が前に出るので、負の相関は「頭が前に出ているほど痛みが強い」という向きです。ただしこれは成人と高齢者に限った話で、青年では首の痛みのほとんどの指標と関連がありませんでした。著者らは、年齢がこの関係の重要な交絡因子として働いていると結論しています。
個別の研究では消えることがある
統合した平均差が小さいということは、関連が見つからない研究も少なくないということです。実際にそうした報告があります。
Sarig Bahat H, Levy A, Yona T. The association between forward head posture and non-specific neck pain: A cross-sectional study. Physiotherapy Theory and Practice. 2023;39(8):1736-1745.
19歳から62歳の43名(無症状20名、首の痛みのある23名)を対象に、横顔の写真から頭椎角を測った研究です。結果、頭椎角は痛みのある群で48.24度(標準偏差7.29)、無症状群で48.90度(5.89)で、群間に有意差はありませんでした。視覚的アナログ尺度・首の障害度指標・頸部の運動学的指標のほとんどとも、有意な相関がありませんでした。
一方で、痛みのある群は頸部の可動域が狭く、動きが遅いという差ははっきり出ています。つまり「違いが無かった」のではなく、違いは姿勢の形ではなく動きのほうに現れたということです。著者らは、前方頭位と首の痛みの間に臨床的に適用できる関連は支持できないと結論しています。

腰痛と姿勢・力学的負荷
腰痛でも、同じ問いが長く調べられてきました。系統的レビューをさらに統合した「アンブレラレビュー」があります。
Swain CTV, Pan F, Owen PJ, Schmidt H, Belavy DL. No consensus on causality of spine postures or physical exposure and low back pain: A systematic review of systematic reviews. Journal of Biomechanics. 2020;102:109312.
2名の査読者が4285本を選別し、41本のレビューが最終的に含まれました。脊椎の姿勢、長時間の立位、座位、前屈とひねり、不自然な姿勢、全身振動、重労働の要素について、肯定的な関連もゼロの関連も、どちらも報告されていました。興味深いのは、メタアナリシスの結果は関連を支持する側に一貫して寄るのに対し、前向き研究だけを含めた系統的レビューは一貫した結論を出せなかった点です。これらの因子が初発の腰痛に先行するという証拠、あるいは用量反応関係の証拠は、まちまちでした。著者らの結論は、多くのレビューがあるにもかかわらず因果についての合意はない、というものです。
前向きコホート研究だけを集めたレビューも、同じ方向を指しています。
Bakker EW, Verhagen AP, van Trijffel E, Lucas C, Koes BW. Spinal mechanical load as a risk factor for low back pain: a systematic review of prospective cohort studies. Spine. 2009;34(8):E281-93.
ベースラインで腰痛のない18歳以上を対象とした前向きコホート研究18本、合計24,315名を対象にしたレビューです。すべてが方法論的に質が高いと評価されました。結果、余暇のスポーツや運動、座位、長時間の立位や歩行は腰痛と関連しないという強い証拠が得られました。一方、日曜大工や庭仕事といった余暇活動、全身振動、看護業務、重労働、前屈やひねりを伴う作業については、証拠が相反していました。
座っている時間は腰痛の原因か
「座りすぎ」はよく名指しされます。前向き研究を統合した結果を見てみます。
Damato TM, Christofaro DGD, Pinheiro MB, et al. Does sedentary behaviour contribute to the development of a new episode of low back pain? A systematic review of prospective cohort studies. European Journal of Pain. 2022;26(7):1412-1423.
ベースラインで腰痛のない成人を追跡し、追跡期間中の新規発症を調べた前向きコホート研究10本が対象です。標本は107名から57,504名、平均年齢は21.7歳から53.6歳の範囲にありました。9本を統合した結果、座位行動が多い人が腰痛の新規エピソードを起こしやすいということはありませんでした——リスク比 1.01(95%信頼区間 0.98から1.04、I2 = 9%、中等度の証拠)。著者らは、座位行動はおそらく成人の腰痛の新規エピソードに寄与しないと結論しています。
縦断研究16本・合計100,002名を統合した別のメタアナリシス(Alzahrani H ら, PeerJ, 2022)も同じ結論です。1日あたりの座位時間で分けると、3時間以上6時間未満のオッズ比は0.95(95%信頼区間 0.85から1.07)、6時間から8時間で0.95(0.88から1.02)、8時間超で0.92(0.85から1.00)で、いずれも腰痛の発症と関連しませんでした。ただし、1日3時間以上の座位は腰痛に関連した障害度の悪化とは関連しており(オッズ比 1.24、1.02から1.51)、痛みの強さとは関連しませんでした。著者らは、証拠の多くが座位時間を自己申告で測った質の中程度の研究に由来することを限界として挙げています。

その場の痛みは増える——「形」ではなく「持続」
ここまでの結果は「座位は無害だ」と読めてしまいますが、それは早い。測っている転帰が違うからです。
De Carvalho DE, de Luca K, Funabashi M, et al. Association of Exposures to Seated Postures With Immediate Increases in Back Pain: A Systematic Review of Studies With Objectively Measured Sitting Time. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2020;43(1):1-12.
実験室での時間試験、直接観察、装着型センサーのいずれかで座位時間を客観的に測り、それと時間的に対応づけて痛みを評価した研究だけを集めたレビューです。609本から絞り込み、10本が条件を満たしました。1本を除くすべてが、座位時間がその場の腰痛の増加と関連すると報告していました。そのうち6本は臨床的に意味のある水準の痛みを報告しています(合計330名)。含まれた研究の半数はバイアスのリスクが低く、残りは中程度でした。
著者らが慎重なのは結論の部分です。長時間の座位は成人において腰痛の即時的な報告を増やすが、座位と腰痛の臨床的なエピソードとの間に結論を出すことはできない——そう書かれています。「座っていると痛くなる」という日常の実感と、「座位時間が長い人は腰痛になりやすい」という疫学の主張は、別の話だということです。
姿勢を直すと痛みは減るのか
関連の話から、介入の話へ移ります。前方頭位に対する運動療法の試験を統合したメタアナリシスがあります。
Sheikhhoseini R, Shahrbanian S, Sayyadi P, O’Sullivan K. Effectiveness of Therapeutic Exercise on Forward Head Posture: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2018;41(6):530-539.
7本の無作為化臨床試験、合計627名が対象です。群間の統合オッズ比は、頭椎角で6.7(信頼区間 2.53から17.9、P = .0005)、頭蓋角で0.7(0.43から1.2、P = .2)、痛みで0.3(95%信頼区間 0.13から0.42、P < .001)でした。運動が頭椎角を変えることには強い証拠(レベル1a)、痛みを改善しうることには中等度の証拠(レベル1b)があり、頭蓋角は改善しませんでした。
ここで著者ら自身が書いている一文が重要です。前方頭位と筋骨格系の痛みの関係の正確な性質、そして運動療法のあとに両者がともに改善することの関係は、まだ確立されていない。つまり、運動をすると姿勢の指標も痛みも改善するが、姿勢が改善したから痛みが減ったとは言えていません。運動には筋力・持久力・可動域・自己効力感など多くの成分が同時に含まれており、どれが効いたのかを分けるには別の設計が要ります。加えて、この種の試験の対照群はしばしば無介入か通常の生活で、その比較は効果を大きく見せます。
姿勢は固定した性質ではない
もう一つ見落とされやすいのが、姿勢が状況によって変わるという事実です。事務職の健常者60名を対象に、精神的な集中を要するパソコン作業を、心理社会的ストレスのある条件とない条件で行わせた研究があります(Shahidi B ら, Journal of Electromyography and Kinesiology, 2013)。
前方頭位は、安静時の座位に比べて精神的集中によって有意に増えました。しかし、そこにストレスを加えても、それ以上は変わりませんでした。一方、僧帽筋上部の活動は低ストレスから高ストレスへ移ると左右とも有意に増え、頸部の伸筋・屈筋には対応する変化がありませんでした。姿勢と筋活動は、別々の要因で別々に動いているということです。第3回で見た「精神的な負荷が僧帽筋を選択的に活性化する」という所見とも整合します。
| よくある指導の言葉 | 研究の言葉で言い直すと |
|---|---|
| 姿勢が悪いから痛い | 関連は報告されているが弱く、研究によって消える。因果は示されていない |
| 座りすぎが腰痛の原因 | 新規発症との関連はリスク比 1.01。ただしその場の痛みは増える |
| 正しい姿勢を保ちましょう | 同じ姿勢を保つこと自体がその場の痛みと関連する |
| 姿勢を直せば痛みが治る | 運動で姿勢も痛みも改善するが、媒介関係は確立していない |
「正しい姿勢」という言葉を考え直す
ここまでの証拠から、姿勢の話を捨てる必要はありません。捨てるべきなのは、姿勢の形を痛みの原因として名指しする言い方のほうです。第2回で見た診断名のラベル効果と同じ問題がここにもあります。「あなたの姿勢は悪い」という言葉は、身体への否定的な見方と、動くことへの不安を生みかねません。
研究が繰り返し指し示しているのは、形ではなく変化のほうです。同じ姿勢の持続時間、姿勢を変える頻度、活動の水準が実際に下がる時間。第3回で見た「痛みのない人は仕事を離れると筋活動が下がる」という所見も、同じ方向を向いています。ただし、これらはいずれも観察された関連であり、変えれば痛みが減るという証拠ではありません。関連と因果を分けて読むことが、この題材ではとくに重要です。
姿勢と筋活動の関係そのものについては、ピラティスと姿勢・筋活動の研究をまとめた記事と前方頭位と顎関節の研究をまとめた記事が別にあります。
次回予告
第5回は「腰痛の自然経過——多くはどうなるのか」を扱います。急性の腰痛は放っておけば治るのか。前向き研究を統合すると、痛みと障害度は最初の数週で大きく下がり、そのあと改善は緩やかになります。ただし1年後も痛みが残る人の割合は小さくなく、再発は多い。「治る」と「良くなる」を分けて見ていきます。
この連載の全10回
- 第1回|痛みとは何か——組織の損傷と痛みの乖離
- 第2回|画像所見と症状——MRIで見つかるものの意味
- 第3回|肩こりの正体——僧帽筋の持続的低強度活動
- 第4回|「悪い姿勢」は原因か——姿勢と痛みの関連(この記事)
- 第5回|腰痛の自然経過——多くはどうなるのか
- 第6回|運動療法——様式による差はあるか
- 第7回|なぜ慢性化するのか——中枢性感作と心理社会的因子
- 第8回|職場での介入——何が効いたか
- 第9回|安静と恐怖回避——やらない方がよいこと
- 第10回|総括——研究の限界と、受診すべき兆候
出典
- Mahmoud NF, Hassan KA, Abdelmajeed SF, Moustafa IM, Silva AG. The Relationship Between Forward Head Posture and Neck Pain: a Systematic Review and Meta-Analysis. Current Reviews in Musculoskeletal Medicine. 2019;12(4):562-577.
- Sarig Bahat H, Levy A, Yona T. The association between forward head posture and non-specific neck pain: A cross-sectional study. Physiotherapy Theory and Practice. 2023;39(8):1736-1745.
- Swain CTV, Pan F, Owen PJ, Schmidt H, Belavy DL. No consensus on causality of spine postures or physical exposure and low back pain: A systematic review of systematic reviews. Journal of Biomechanics. 2020;102:109312.
- Bakker EW, Verhagen AP, van Trijffel E, Lucas C, Koes BW. Spinal mechanical load as a risk factor for low back pain: a systematic review of prospective cohort studies. Spine. 2009;34(8):E281-93.
- Damato TM, Christofaro DGD, Pinheiro MB, Morelhao PK, Pinto RZ, De Oliveira Silva D, et al. Does sedentary behaviour contribute to the development of a new episode of low back pain? A systematic review of prospective cohort studies. European Journal of Pain. 2022;26(7):1412-1423.
- Alzahrani H, Alshehri MA, Alzhrani M, Alshehri YS, Al Attar WSA. The association between sedentary behavior and low back pain in adults: a systematic review and meta-analysis of longitudinal studies. PeerJ. 2022;10:e13127.
- De Carvalho DE, de Luca K, Funabashi M, Breen A, Wong AYL, Johansson MS, et al. Association of Exposures to Seated Postures With Immediate Increases in Back Pain: A Systematic Review of Studies With Objectively Measured Sitting Time. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2020;43(1):1-12.
- Sheikhhoseini R, Shahrbanian S, Sayyadi P, O’Sullivan K. Effectiveness of Therapeutic Exercise on Forward Head Posture: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2018;41(6):530-539.
- Shahidi B, Haight A, Maluf K. Differential effects of mental concentration and acute psychosocial stress on cervical muscle activity and posture. Journal of Electromyography and Kinesiology. 2013;23(5):1082-1089.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。個々の姿勢を評価するものでも、特定の運動や器具を勧めるものでもありません。脚や腕のしびれ、力が入らない感じ、排尿や排便の異常、原因の分からない体重減少、発熱、夜間や安静時に強くなる痛み、外傷のあとの痛み、がんの既往がある場合の新たな痛みは、速やかに医療機関にご相談ください。痛みが続いて日常生活に支障が出ている場合も、自己判断で対処を続けず医療機関にご相談ください。






