連載「痛みをほどく」全10回の第2回です。

腰が痛くてMRIを撮る。画像には「椎間板変性」「椎間板膨隆」と書かれている。だから腰が痛いのだ——この読み方は、医療の現場でも日常会話でも広く共有されています。ところが、この読み方が成り立つためには一つの前提が要ります。痛くない人の背骨には、そうした所見が写らないという前提です。

その前提は、1990年以降くり返し検証され、そしてくり返し否定されてきました。結論を先に書きます。腰痛のない人の背骨をMRIで撮ると、椎間板の変性や膨隆は高い割合で見つかります。その割合は年齢とともに上がり、80歳ではほとんど全員に達します。加齢による変化の多くは、痛みとは無関係に進みます。

ただしこれは「画像は無意味だ」という話ではありません。所見の種類によっては、痛みのある人に有意に多いものもあります。この回では、どの所見がどれくらい「痛くない人」にも見つかるのか、所見と症状の差はどこにあるのか、そして早い時期に画像を撮ることが経過にどう影響したのかを順に見ていきます。

痛みをほどく 第2回 画像所見と症状MRIで見つかるものの意味|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

痛みのない人の背骨に何が写るか

腰痛の既往がまったくない人だけを集めてMRIを撮った研究は、1990年に報告されています。ボーデンらは、腰痛・坐骨神経痛・神経性間欠跛行のいずれも経験したことのない67名を撮影し、3名の神経放射線科医が症状の有無を知らされないまま読影しました。結果、約3分の1に相当な異常が見つかりました。60歳未満では20%に椎間板ヘルニアがあり、60歳以上では約57%の画像が異常と判定され、36%に椎間板ヘルニア、21%に脊柱管狭窄がありました。20歳から39歳の群でも、少なくとも1つの腰椎レベルに椎間板の変性または膨隆がある人が35%いました。

Boden SD, Davis DO, Dina TS, Patronas NJ, Wiesel SW. Abnormal magnetic-resonance scans of the lumbar spine in asymptomatic subjects. A prospective investigation. The Journal of Bone and Joint Surgery. American volume. 1990;72(3):403-408.

この種の研究を集めて年齢別に整理したのが、2015年の系統的レビューです。

Brinjikji W, Luetmer PH, Comstock B, et al. Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. AJNR. American Journal of Neuroradiology. 2015;36(4):811-816.

無症状の人3110名を扱った33本の論文から、年齢ごとの有病率を推定した研究です。数字は次のようになりました。

所見20歳80歳
椎間板変性37%96%
椎間板膨隆30%84%
椎間板突出29%43%
線維輪の亀裂19%29%

著者らの結論は率直です。脊椎変性の画像所見は無症状の人にも高い割合で存在し、年齢とともに増える。画像に基づく変性所見の多くは正常な加齢の一部であり、痛みとは関連していない可能性が高い。したがってこれらの所見は、その人の臨床的な状態という文脈のなかで解釈されなければならない——そう書かれています。

首でも同じことが起きている

肩こりや首の痛みで撮る頸椎のMRIも、事情は変わりません。日本の研究グループが、20歳から70歳までの健常なボランティア1211名を、各年代・各性別におよそ100名ずつ集めて撮影しました。

Nakashima H, Yukawa Y, Suda K, Yamagata M, Ueta T, Kato F. Abnormal findings on magnetic resonance images of the cervical spines in 1211 asymptomatic subjects. Spine. 2015;40(6):392-398.

大多数に椎間板の膨隆が見られました——全体で87.6%です。20代に限っても、男性の73.3%、女性の78.0%に膨隆がありました。頻度・程度・レベル数のいずれも加齢とともに有意に増えています。一方で、脊髄の圧迫と判定されたのは5.3%、脊髄内の信号変化は2.3%にとどまりました。圧迫は1レベル(58%)か2レベル(38%)に限られ、主にC5-C6(41%)とC6-C7(27%)に生じていました。

つまり、膨隆はほぼ全員にあり、脊髄圧迫はごく一部にしかない。両者を同じ「異常」として扱うと、読み誤りが起きます。圧迫があること自体は珍しくなく、症状を伴う病態はずっと少ない、という関係です。

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では所見に意味は無いのか——差はある

ここまでを読むと「画像は見なくてよい」と結論したくなりますが、それは行き過ぎです。同じ2015年に、50歳以下に絞って有症状群と無症状群を比較したメタアナリシスが出ています。

Brinjikji W, Diehn FE, Jarvik JG, et al. MRI Findings of Disc Degeneration are More Prevalent in Adults with Low Back Pain than in Asymptomatic Controls: A Systematic Review and Meta-Analysis. AJNR. American Journal of Neuroradiology. 2015;36(12):2394-2399.

条件を満たした14本、合計3097名(無症状1193名・38.6%、有症状1904名・61.4%)を統合した結果です。有症状群で有意に多かった所見は、椎間板膨隆(オッズ比 7.54、95%信頼区間 1.28-44.56、P = .03)、脊椎分離症(5.06、1.65-15.53)、椎間板脱出(4.38、1.98-9.68)、Modic 1変化(4.01、1.10-14.55)、椎間板突出(2.65、1.52-4.62)、椎間板変性(2.24、1.21-4.15)でした。

一方、腰痛と関連しなかった所見もあります。Modic変化全般(1.62、0.48-5.41)、脊柱管狭窄(20.58、0.05-798.77)、高信号領域(2.10、0.73-6.02)、線維輪の亀裂(1.79、0.97-3.31)、脊椎すべり症(1.59、0.78-3.24)。信頼区間の広さに注目してください。椎間板膨隆のオッズ比は7.54ですが、区間は1.28から44.56まで広がっています。脊柱管狭窄にいたっては0.05から798.77で、これは「何も言えていない」に近い。統合された研究の数と規模が小さいことの表れです。

正しい読み方はこうなります。所見と症状の間に関連はある。しかし関連の強さは所見の種類によって大きく違い、推定の精度も低い。そして何より、関連があることと、その所見がその人の痛みの原因であることは別の話です。

早く撮ると経過はよくなるのか

より実務に近い問いは、「撮ったら良くなるのか」です。65歳以上を対象にした大規模な前向き研究があります。

Jarvik JG, Gold LS, Comstock BA, et al. Association of early imaging for back pain with clinical outcomes in older adults. JAMA. 2015;313(11):1143-1153.

米国の3つの医療システムで、背部痛のために新たにプライマリケアを受診した65歳以上5239名を追跡した研究です。診断名・痛みの強さ・持続期間・機能状態・過去の医療利用などで傾向スコアを作り、1対1で対照を組みました。6週間以内に単純X線を受けたのは1174名、MRIまたはCTを受けたのは349名です。

12か月後の腰・脚の痛みによる障害(Roland-Morris障害質問票、0-24点)を比べると、早期X線群は8.54点、対照群は8.74点で、差は -0.10(95%信頼区間 -0.71から0.50、P = .36)。早期MRI/CT群は9.81点、対照群は10.50点で、差は -0.51(-1.62から0.60、P = .18)。いずれも有意差はありませんでした。著者らは、背部痛(神経根症状を伴わないもの)で高齢者に早期画像を行う価値は不確かだと結論しています。

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画像のあとに何が起きるか

差が無いだけなら「撮っても損はない」と言えそうですが、その先があります。米国退役軍人省のプライマリケアの電子カルテを使った後ろ向きコホート研究です。

Jacobs JC, Jarvik JG, Chou R, Boothroyd D, Lo J, Nevedal A, Barnett PG. Observational Study of the Downstream Consequences of Inappropriate MRI of the Lumbar Spine. Journal of General Internal Medicine. 2020;35(12):3605-3612.

レッドフラグに該当せず、直前6か月に腰痛での受診がない非特異的腰痛の患者405,965名が対象です。初診から6週間以内の腰椎MRIを受けた群と受けなかった群を比べると、早期MRI群では腰の手術が1.48%(非早期MRI群0.12%)、処方オピオイドの使用が35.1%(28.6%)、1年以内に記録された最後の痛みの点数が3.99(3.87)、急性期の医療費が8082ドル(5560ドル)でした。すべてP < 0.001です。

観察研究なので、因果関係を確定することはできません。重症な人ほど画像を撮られやすいという交絡が残ります。著者らもその限界を明記しています。それでも、出来高払いの誘因がほとんど働かない環境でも同じ傾向が見られた点は重要だと述べています。

複数の研究を統合したレビュー(Lemmers ら, European Spine Journal, 2019)も同じ方向を示しています。X線を受けた患者の直接費用の増加には中等度の質の証拠(無作為化比較試験1本、n = 421)、早期MRIによる費用増加には低い質の証拠(観察研究3本、n = 9535)、MRIまたはCTによる医療利用の増加には中等度の質の証拠(無作為化比較試験1本と観察研究2本、n = 3897)があります。休業日数については、無作為化比較試験2本(n = 667)では群間差がなく、観察研究2本(n = 7765)ではMRI群の方が有意に長いという、食い違う結果でした。

言葉が変える——診断名のラベル効果

画像の害として挙げられるものの一つに「ラベリング」があります。所見に付いた名前が、その人の考えや行動を変えてしまう、という指摘です。これを直接調べた実験があります。

O’Keeffe M, Ferreira GE, Harris IA, et al. Effect of diagnostic labelling on management intentions for non-specific low back pain: A randomized scenario-based experiment. European Journal of Pain. 2022;26(7):1532-1545.

腰痛のある人とない人を含む1375名(平均年齢41.7歳、標準偏差18.4、女性748名・54.4%)を、6つの診断名のいずれかに無作為に割り付けたオンライン実験です。参加者は自分がどの群かを知りません。主要評価項目は「画像検査が必要だと思う程度」でした。

結果、「腰痛のエピソード」(4.2、標準偏差2.9)、「腰部捻挫」(4.2、2.9)、「非特異的腰痛」(4.4、3.0)という名前を与えられた群は、「関節症」(6.0、2.9)、「変性」(5.7、3.2)、「椎間板膨隆」(5.7、3.1)を与えられた群より、画像の必要性を低く評価しました。同じ名前の群では、回復の見通しがより良く、セカンドオピニオン・手術の必要性、深刻さの評価がいずれも低くなっています。差は、現在腰痛があり受診歴のある参加者で大きくなりました。身体活動と仕事についての考えには、6つの名前の間で差がありませんでした。

これはシナリオ実験であり、実際の患者の行動を測ったものではありません。それでも、同じ状態に付ける名前が、その後の希望する検査や治療を変えうることは示しています。

それでも画像が要る場面がある

ここまでの話は、あくまで「深刻な原因が疑われない腰痛」に限った話です。英国医学雑誌の実践記事(Hall ら, BMJ, 2021)は、腰痛全体のうち特定の脊椎病変によるものは5%から10%未満であり、残りの90%から95%は重篤な原因の徴候がないものだと整理しています。逆に言えば、その5%から10%を見落とさないために、病歴と診察による選別(診断的トリアージ)が必要だということです。

この記事は、重篤な状態が疑われない場合には画像が益より害をもたらしうると書く一方で、患者の主な関心——「何か深刻なものが原因ではないか」「回復のために何をすればよいか」——は、画像なしで、しっかりした説明と安心の提供によって満たしうるとしています。「撮らない」と「放っておく」は違います。どのような症状があれば速やかに受診すべきかは、この連載の第10回でまとめます。

なお、ヨガやピラティスが腰痛・首の痛みの転帰に与える効果については、腰痛の研究をまとめた記事と首の痛みの研究をまとめた記事が別にあります。

次回予告

第3回は「肩こりの正体——僧帽筋の持続的低強度活動」を扱います。画像に写らない痛みの代表が、いわゆる肩こりです。筋電図は僧帽筋で何を捉えたのか、低い強度で働き続ける運動単位という考え方(Cinderella仮説)はどこまで支持されているのか、そして「こり=硬さ」という触診の手応えがどれくらい当てになるのかを見ていきます。

この連載の全10回

  1. 第1回|痛みとは何か——組織の損傷と痛みの乖離
  2. 第2回|画像所見と症状——MRIで見つかるものの意味(この記事)
  3. 第3回|肩こりの正体——僧帽筋の持続的低強度活動
  4. 第4回|「悪い姿勢」は原因か——姿勢と痛みの関連
  5. 第5回|腰痛の自然経過——多くはどうなるのか
  6. 第6回|運動療法——様式による差はあるか
  7. 第7回|なぜ慢性化するのか——中枢性感作と心理社会的因子
  8. 第8回|職場での介入——何が効いたか
  9. 第9回|安静と恐怖回避——やらない方がよいこと
  10. 第10回|総括——研究の限界と、受診すべき兆候

出典

  1. Boden SD, Davis DO, Dina TS, Patronas NJ, Wiesel SW. Abnormal magnetic-resonance scans of the lumbar spine in asymptomatic subjects. A prospective investigation. The Journal of Bone and Joint Surgery. American volume. 1990;72(3):403-408.
  2. Brinjikji W, Luetmer PH, Comstock B, Bresnahan BW, Chen LE, Deyo RA, et al. Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. AJNR. American Journal of Neuroradiology. 2015;36(4):811-816.
  3. Nakashima H, Yukawa Y, Suda K, Yamagata M, Ueta T, Kato F. Abnormal findings on magnetic resonance images of the cervical spines in 1211 asymptomatic subjects. Spine. 2015;40(6):392-398.
  4. Brinjikji W, Diehn FE, Jarvik JG, Carr CM, Kallmes DF, Murad MH, Luetmer PH. MRI Findings of Disc Degeneration are More Prevalent in Adults with Low Back Pain than in Asymptomatic Controls: A Systematic Review and Meta-Analysis. AJNR. American Journal of Neuroradiology. 2015;36(12):2394-2399.
  5. Jarvik JG, Gold LS, Comstock BA, Heagerty PJ, Rundell SD, Turner JA, et al. Association of early imaging for back pain with clinical outcomes in older adults. JAMA. 2015;313(11):1143-1153.
  6. Jacobs JC, Jarvik JG, Chou R, Boothroyd D, Lo J, Nevedal A, Barnett PG. Observational Study of the Downstream Consequences of Inappropriate MRI of the Lumbar Spine. Journal of General Internal Medicine. 2020;35(12):3605-3612.
  7. Lemmers GPG, van Lankveld W, Westert GP, van der Wees PJ, Staal JB. Imaging versus no imaging for low back pain: a systematic review, measuring costs, healthcare utilization and absence from work. European Spine Journal. 2019;28(5):937-950.
  8. O’Keeffe M, Ferreira GE, Harris IA, Darlow B, Buchbinder R, Traeger AC, et al. Effect of diagnostic labelling on management intentions for non-specific low back pain: A randomized scenario-based experiment. European Journal of Pain. 2022;26(7):1532-1545.
  9. Hall AM, Aubrey-Bassler K, Thorne B, Maher CG. Do not routinely offer imaging for uncomplicated low back pain. BMJ. 2021;372:n291.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。撮影の要否を判断するものでもなく、既に受けた検査の結果を解釈するものでもありません。脚のしびれや力が入らない感じ、排尿や排便の異常、原因の分からない体重減少、発熱、夜間や安静時に強くなる痛み、外傷のあとの痛み、がんの既往がある場合の新たな痛みは、速やかに医療機関にご相談ください。画像所見について不安がある場合は、撮影を受けた医療機関にご相談ください。

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